目次
NIPT陽性後に羊水検査を受けず中絶の判断をした方をご紹介しています。この方は、NIPTの結果が出るまでの間に超音波検査で赤ちゃんがどんどんむくんでいるという症状もありました。
2箇所の検査機関でNIPT陽性の結果
当院では2020年1月より第三世代NIPTに単一遺伝子疾患をチェックできるスーパーNIPTを提供しています.
なかには全染色体もしたいということで,スーパーNIPTの検査会社は全染色体を検査していないので2か所に出す人もいます.このケースはそういう2か所に出した患者さんの3例目の陽性事例です。
それも、スーパーNIPTとカリオセブンという第3世代、第2世代、どちらも非常に正確な検査で陽性でした。
2か所で陽性にどういう意味があるのか?
これについては、
minerva-clinic.or.jp/nipt/niptjirei/termination-without-amniocentesis/case2-positive-result-of-two-labo/#2
リンク先をご覧ください。
結果を待っている間にかわったこと
赤ちゃんが全身むくんでいる、というエコー所見にかわってきました。
2つのうち、1つの会社からトリソミー陽性の結果が返ってきました。
患者さんがもう一つの検査会社からの結果を待つ間に決めたこと
赤ちゃんがむくんでいて、トリソミー陽性なことから羊水検査を勧められましたが、早い段階で中絶を決めていたようです。
2か所目の結果が出て担当医として仲田が患者さんにお伝えしたこと
患者さんなりに葛藤があるようでした。
でも。わたしはこう言いました。
エコーでむくみがどんどん進行していて、2か所で陽性結果が出ていることからこれで確定診断として良いと思います。
あなたは間違っていません。
この赤ちゃんはどう頑張っても長く生きられない。
それならば母体の負担が大きくなることを避けるのが良いという判断になります。
そして、一日もはやく回復し、また、赤ちゃんを迎えればよいのですよ。
今回のことで、次のお子さんがトリソミー陽性なリスクは、35歳以上だと不思議ですが減るんですよ。
たまたま起こった事故のようなものなので。
そのかわり、一つ約束してください。
今回のことで、お子さんが受胎して無事に生まれてきて無事に育つことがどんな奇跡かを学んだはずです。
このお子さんはあなたにそれを教えてくれるために宿ったんです。
上のお子さんを大事にしてください。
そしてこの赤ちゃんがいたことを忘れないでください。
妊娠することを怖いと思わないで。
次に健康なお子さんを迎えて、この赤ちゃんの分まで一緒に育ててください。
また、お目にかかりましょう。
そういう人たち、うちにはたくさんいますよ。
辛いときは何時でもわたしに電話していいです。
もう一度言います。
あなたは何も間違っていません。
自分を信じて自分の道をまっすぐ歩いてください。
どのような決断でも、患者さんがした決断をわたしは背中を押してあげたい。
定石としては、羊水検査を、という場面なのでしょうが、わたしはおそらく日本一の症例数を、ちゃんと患者さんと向き合ってNIPTを提供している臨床遺伝専門医なのと、産婦人科でも小児科でもありませんので、母体、赤ちゃん のどちらに傾くこともない中立性を保ち、ファミリーという全体の単位で最善が実現するようサポートしたいと考えることができるのかもしれません。
そもそも、ガイドラインが存在しても、個別具体的にどう適応するかは考えるべきで、それがエビデンス・ベースド・メディシン 科学的根拠に基づいた医療 なのです。
決してガイドラインに患者を従わせるのが科学的根拠に基づく医療ではありません。
ガイドラインに患者をはめ込むだけの、血も涙もない医療なんてあってはならないものなのです。
ちなみに、この患者さんは第1子の時は別の認定外でNIPTを受けてたんですが、今回、集団で説明受けるのが嫌なのでうちに来たということでした。
たまたまですが、こういう結果になったとき
ちゃんと相談ができる、心が軽くなる、ということのメリットを感じていただけて
わたしもとってもホッとしました。
これからも 信頼できる医療 を提供していきたいと思います。
万人受けを目指すことはできませんが。
わたしなりの道を歩んでいきたいと思います。
そして学会というのはこうした専門医の活動を邪魔するべきではないと思います。
なぜなら、わたしはこうした患者さんにとって希望の光なので。
こうやってつらい思いをしているときに
間違ってないよ、大丈夫だよ、自信を持ちなさい
そう言ってもらえることがいかに大事か、わたしは知っているからです。
一卵性双生児の一人が急に心拍停止してて、緊急帝王切開
初めての妊娠出産でそんな思いをしました。
母になった日は、もう一人の息子の命日。
28年たっても涙が出ます。
そして、そんな私だから言える哲学的な重たい一言があるような気がします。
大学4年の春の
妊娠出産のトラウマで苦しんで
小児科にも産婦人科にも進めずに
内科に進んだ私が
どうして今、こんなに妊婦さんたちと遺伝専門医として向き合っているのかと思いますが。
当然の摂理かもしれませんね。
あの日のわたしには
きみは悪くないんだよ
と言ってくれる人が誰もいませんでした。
そのことが妊婦・褥婦をどれくらい傷つけるのかを私は知っています。
これからも、ファミリーに手を差し伸べたいと思います。
遺伝専門医として。
いつの日もそうありたい。
たとえ世界中を敵に回しても
たとえ神に背いても
わたしはわたしの患者を守ろう。