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NIPT陽性結果の確率とその理解: 重要な情報を知る

NIPT陽性結果は、妊娠中の染色体異常の可能性を示しますが、その確率と理解が重要です。この記事では、NIPT陽性結果の確率に焦点を当て、妊娠中の確切な情報を提供します。NIPTの精度や確率に関する情報を知ることは、妊婦とその家族にとって、適切な対応を決定する際に役立ちます。確率の理解とその背後にある意味を把握することは、健康な妊娠に向けた重要なステップです。詳細な情報と具体的なアドバイスを通じて、NIPT陽性結果に対する適切な対応についての情報を提供します。

NIPTで陽性判定が出る確率

では、日本でNIPTをうけた妊婦さんの中でどのくらいの割合の方がNIPTの陽性判定をうけるのでしょうか。

陽性判定が出るのは50人に1人前後

実際にNIPTを受検した約10万人の妊婦さんの結果を追った調査によると、NIPTでの陽性率は全体の1.8%、約50人に1人が陽性との判定を受けています。陽性を受けた中で最も多かったのが21トリソミー(ダウン症)であり、その次に多かったのが18トリソミーでした。
この陽性率ですが、妊婦さんがNIPTを受検した経緯によって変化することが分かっています。母体血清マーカー検査の結果を受け、再度検査された妊婦さんの陽性率は4.1%、超音波検査でトリソミーが疑われた妊婦さんの陽性率は14.7%となっています。

NIPTを受検するに至ったきっかけ

では、NIPTを受けようと決意された妊婦さんにはどのような理由があったのでしょうか。
高齢出産であることが理由で事前に染色体異常を調べたいという妊婦さんが94.3%と圧倒的多数を占めますが、他にも染色体異常をもつお子さんをもつ方が2.5%、超音波検査でトリソミーの疑いがあるといわれた方が1.9%、母体血清マーカー検査をもってトリソミーの疑いがある方が0.5%、妊婦さんご本人またはパートナーが染色体転座保因者であるなどの理由が0.9%となっています。

しかし、ここで1点注意が必要です。出生前検査認証制度等運営委員会は認定施設で行われた臨床データのみを収集している機関です。認定施設では基本的に、トリソミーが起こる可能性が高い人のみを検査対象としています。

認証施設でNIPTが受けられる妊婦さんの条件▼
・高齢出産の人(出産時年齢35歳以上)
・染色体転座によるトリソミーリスクを指摘された人
・トリソミーを持つ子を妊娠した経験がある人
・他の検査でトリソミー可能性を指摘された人
※2022年春以降は条件付きで年齢制限が解除の指針が出ていますが、今回参考のデータはこれにはあたりません。

つまり、50人に1人という陽性判定が出る確率は、陽性判定が出る可能性が高い傾向にある方々のデータと考えることができます。
もちろんNIPTを受ける上での参考にはなるものの、認可施設と無認可施設を含んだ全ての妊婦さんに当てはまる数字ではないという点は心得ておきましょう。

NIPTで陽性が出る確率は1~5%

500人以上の規模のNIPT研究結果をまとめた、合計75万人を超えるNIPTの事例を検討したメタアナリシスによると、全体として、NIPTで検査された女性の95~99%は陰性となることが予想されます。逆に、1~5%は陽性の可能性があり、別途確定のための検査が必要となります。
ミネルバクリニックにおけるNIPTでも、約30人に1人が陽性結果となっています。

項目 人数
NIPTを受けた妊婦 10万1,218人
陽性判定が出た人数 1,827人
(割合としては1.8%、約50人に1人)
ダウン症陽性の人数 1,100人
(うち981人が確定検査を受検)
981人中本当にダウン症だった人数 955人
(26人は偽陽性)

引用元:NIPTを受けた10万人の妊婦さんの追跡調査 | 出生前検査認証制度等運営委員会

Taylor-Phillipsら(2020年) によると、一般産科集団では、10万妊娠のうちトリソミー13が40例(0.040%)、T18が89例(0.089%)、T21が417例(0.417%)しか認められませんでした。性染色体異数性のある新生児頻度は0.0022%、珍しい常染色体のトリソミーの頻度は、見逃し流産では41%、妊娠第2期では2.3%であるとされています。さらに、新生児全体における常染色体異常の検出率は0.6%とされています。ところが、NIPTでは全体として、常染色体異常について、出生予定数の10.8倍の異常症例が検出されます。T13、T18、T21については、これらの異常染色体を持つ正常出生児の2倍がNIPTで検出され、性染色体については、異常出生児の90倍以上が検出されています。
このことは、NIPTで検出された症例たちが、その後流産・死産していることを意味しています。

流産死産するのにNIPTをすることに意味がないという人もいるかもしれませんが、そうではありません。
現在、胎児を可能な限り早期に検査したいという要望は世界的に高まっていますが、先進国では、多くの夫婦が1人か、多くても2人しか産まないこと、初産婦の年齢が上昇しており、同時に、染色体異数性を持つ子供の出生に伴う年齢上昇リスクを最小限に抑えたいという思いから、早期発見早期中絶して次の妊娠に備えたいというニーズがあります。

NIPTの精度と信頼性について

NIPT(非侵襲的出生前診断)は、染色体異常のスクリーニングにおいて高い精度を誇ります。一般的に、NIPTの精度は95%以上と言われており、陽性結果の正確性が高いことを示しています。しかし、NIPTは確定診断ではなく、スクリーニングテストであるため、陽性の結果がでても、確率が100%で陽性が当たっているわけではありません。

陽性結果の確率に影響を与える要因

NIPTの陽性結果の確率にはいくつかの要因が影響します。これには以下が含まれます。

妊娠週数
NIPTの精度は妊娠週数に影響されることがあり、適切なタイミングで検査を受けることが大切です。
事前確率
NIPTは母体の血液中の胎児DNAを分析し、胎児の染色体異常を検出します。事前確率と呼ばれる年齢ごとの染色体異常の確率が陽性結果に関与します。
妊婦の年齢
高齢の妊婦は染色体異常のリスクが高まるため、NIPTの陽性結果の確率も増加することがあります。

NIPT陽性結果の意味と理解

NIPTの陽性結果は、染色体異常の可能性が高いことを示しますが、確定診断ではありません。陽性結果を受けた場合、追加の検査が必要です。遺伝カウンセリングと共に、医師と協力して結果を詳細に解釈し、適切な対処を検討することが大切です。 NIPTは妊娠中の染色体異常のスクリーニングに有用ですが、確定診断には追加の検査が必要です。

NIPTの陽性的中率は年齢によって異なる

次に注目したいのが、実際に陽性が出た方のその後です。
上記のデータを見ると、NIPTでダウン症の陽性判定が出た981人のうち26人は、実際には病気がなかったとしています。

NIPTでは陽性が100%的中するわけではありません。「陽性」と判定されたとき、それがどれだけ確実であるかをあらわす数字を、陽性的中率といいます。
基本的に陽性的中率は、妊婦さんの年齢が若いほど低く、高齢になるほど高くなる傾向にあります。

以下にNIPTの陽性的中率を年齢別にまとめています。

妊婦さんの年齢 陽性的中率
ダウン症 18トリソミー 13トリソミー
25 79.32 48.14 16.70
30 85.28 58.40 23.26
35 93.58 77.92 43.23
40 98.20 92.88 89.96
41 98.64 94.54 78.89
42 98.99 95.86 83.89
43 99.25 96.87 86.96
44 99.43 97.67 89.96

※NIPTコンソーシアムの実測と文献J Obstet Gynaecol Res. 2021 47:3437-3446.を参考に出生前検査認証制度等運営委員会が算出したものを引用しています

上記表の陽性的中率の数字は、NIPTで陽性と判定された上で実際本当に陽性だった人の割合です。25歳と44歳の各トリソミーの陽性的中率を比較すると、かなりの差があることがわかります。

NIPTは他の出生前検査に比べると非常に高い精度を持ちますが、あくまでも病気の可能性を調べるためのスクリーニング検査であるため、陽性的中率は100%ではなく、確定的な診断を下すことはできません。
同時に、陽性と出たのに実は陰性だった(偽陽性)、陰性だったのに実は陽性だった(偽陰性)ということが起こりうる検査であることも理解しておきましょう。
※偽陰性がでることは本当に稀なことです

偽陰性と偽陽性とは?

NIPTは他の出生前検査に比べると精度の高い検査であるものの、スクリーニング検査であるため、時に偽陽性や偽陰性が起こってしまいます。
ここでは、偽陽性や偽陰性の意味や原因について解説します。

偽陽性は「本当は陰性なのに、陽性が出たこと」

偽陰性とは、本当は染色体異常が無いのにもかかわらず検査で陽性と判定されてしまうことです。偽陽性は次のような理由で起こるとされています。

・母体の胎盤に染色体異常(胎盤モザイク)がある
・双子の1人を流産し、亡くなった子のDNAが残っている
・3つのトリソミー以外の染色体異常を持っている
・母体に腫瘍がある

先述のとおり、NIPTの偽陽性は年齢が若いほど起こりやすい傾向にあります。

偽陰性は「本当は陽性なのに、陰性が出たこと」

偽陰性とは、本当は染色体異常があるにもかかわらず検査で陰性と判定されてしまうことです。ただし、NIPTは偽陰性ができるだけ起こらないような設定になっており、3つのトリソミーの陰性的中率は99.99%と非常に精度の高いものです。
※陰性的中率…検査で陰性と判定された場合に本当に陰性である確率

偽陰性が起きる原因としては、血液中の赤ちゃんのDNAが少なすぎることが挙げられています。非常に稀であるものの、1万人に1人の確率で起こりうるものであること、陰性判定は赤ちゃんの病気を100%保証してくれるものではないことは理解しておきましょう。

NIPTで陽性判定が出たら?その後の流れ

陽性が出てからの対応は、認可施設と無認可施設で少し異なります。おおまかな流れについては以下の通りです。

流れ 認可施設 無認可施設
①NIPTの結果返却 専門家による対面式の結果返却が必須 郵送やメールで結果報告される場合がほとんど
②陽性判定の説明 遺伝カウンセリングでの説明 遺伝カウンセリングはほとんど行われない
③確定検査を受ける 認可施設の連携施設で検査を受けることができる 自分で病院を探さなければけない場合がある
④確定検査の結果説明 遺伝カウンセリングでの説明 遺伝専門医カウンセリングによる説明が受けられるかは、遺伝専門医が在籍しているかによる

では、より詳しく陽性判定後の流れを解説します。

専門家に相談する

認可施設・無認可施設どちらで陽性判定になったとしても、診断を確定させるために羊水検査や絨毛検査といった確定検査を受けるか受けないかを決断します。

認可施設では結果通知を対面式で行っており、陽性・陰性を問わず検査後には遺伝カウンセリングを受けることができます。専門家に相談し適切な援助を受けた上での決断は、情報が少なく不安を抱えたままのものよりも後悔や不安は少なからず和らぐはずです。
陽性後の遺伝カウンセリングは、結果の詳しい説明だけでなく、今後どのような選択ができるのかの相談、心のケアも目的としています。

一方、無認可施設の多くは結果通知を郵送やメールで行っており、遺伝カウンセリングを行っている病院はほとんどありません。中にはパニックを起こしてしまう妊婦さんも出ており、問題視されています。

確定検査を受ける

NIPTで陽性が出た場合、通常は羊水検査を受ける流れをたどります。NIPTで陽性が出たとしても、赤ちゃんに染色体異常があると断定することはできません。
診断を確定させるためには、羊水検査や絨毛検査といった確定検査を受ける必要があります。(絨毛検査ができる病院が少ないため、通常は羊水検査が選択されます。)

羊水検査や絨毛検査は赤ちゃんのDNAを直接取り出す検査のため、流産リスクを伴う検査ではありますが、その結果は非常に確度が高いものです。
認可施設の場合は提携している病院で羊水検査の準備を整えてくれますが、無認可施設では一部を除いて自分で羊水検査を受ける病院を探す必要があります。
また、認可施設では羊水検査費用を負担してくれますが、無認可施設では病院側の負担や補助がない場合も少なくありません。

確定検査の結果説明

確定検査後には、本当に陽性なのかどうかが明らかとなります。
この場合も、認可施設では遺伝の専門家による結果説明を受け、遺伝カウンセリングやフォローが受けられます。もし本当に陽性だった場合には、どのような選択をすべきか、さまざまな観点からアドバイスを受けることもできるでしょう。

一方、無認可施設では、羊水検査をするために紹介されたクリニックに遺伝の専門家が在籍しているとは限らず、適切な援助は必ずしも約束されていません。

陽性判定後のフォローが受けられる施設を選ぼう

もし陽性となった場合、ほとんどの妊婦さんは不安やショックに襲われてしまうことでしょう。頭が真っ白になり、適切な判断ができない状態になるかもしれません。そんなときに専門家による適切な援助やフォローが受けられるかは、今後の選択を大きく左右する要因となります。

また、羊水検査は心身や経済面の負担になってしまう可能性も考えられるため、アフターケアをしてくれる病院を選ぶ方がよいでしょう。
NIPTを受けるにあたっては、次のような陽性判定後のフォローが受けられる病院を選ばれることを強くおすすめします。

・専門家による遺伝カウンセリングが受けられる
・羊水検査を受ける病院を紹介してもらえる
・羊水検査の費用を負担してくれる、補助してくれる

陽性判定後、妊婦さんや家族は今後の人生を左右する選択を強いられることもあります。
そんなとき、できるだけ負担をかけることなく最適の選択をするためには、病院や専門家など周りのフォローが必要不可欠です。

臨床遺伝専門医のカウンセリングが受けられるミネルバのNIPT

当院、ミネルバクリニックでは、陽性判定を受けた妊婦さんやご家族に負担ができるだけかからないよう、次のような準備を整えております。

・臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングの実施
・陽性判定後の羊水検査費用の全額を互助会が負担
・羊水検査は信頼できる病院をご紹介

ここからは、陽性判定後のミネルバクリニックでの対応についてご紹介します。

陽性判定後は、専門家のフォローが不可欠

ミネルバクリニックで陽性判定が出た場合、臨床遺伝専門医である院長が妊婦さんとご家族に遺伝カウンセリングを行います。
臨床遺伝専門医は医師33人以上のうち1200名程度の難関資格です。
染色体や遺伝子に関する高度な知識を有しており、遺伝に関する専門診断や治療も行える遺伝のスペシャリストでもあります。
NIPTは偽陽性の可能性があり、遺伝子疾患や検査についても専門的な知識が必要です。そこで、患者さんが十分に理解できる説明ができ、医学的情報の提供だけでなく、心理的・社会的側面からもフォローできる臨床遺伝専門医の存在が強く必要とされます。

また、ミネルバクリニック院長の沖田は臨床遺伝専門医であり3児の母でもあります。医師としてだけでない経験からも、少しでも患者さんの気持ちに寄り添えるよう努めております。

羊水検査の全額を互助会が負担

ミネルバクリニックでは、NIPTで陽性が出て羊水検査を受ける場合、費用を全額負担いたします。
※NIPT1回あたり8000円の互助会(カトレア会)への入会が条件です。
羊水検査を受ける病院は当院が責任を持ってご紹介します。
羊水検査を受けるにあたっての疑問点や羊水検査の結果を待つ間の不安、羊水検査の結果を踏まえての選択の相談についても、当院の遺伝カウンセリングを受けていただくことも可能です。

また、緊急を要するときのことを考え、24時間の相談窓口を設けております。ミネルバクリニックでは、初めから最後まで患者さんと一緒に、という気持ちです。
1人1人の最善を一緒に探しましょう。

まとめ

NIPTで陽性が出る確率は50人に1人とされていますが、トリソミーのリスクが起こる可能性が高いと判断された方のデータであるため、全ての妊婦さんに当てはまる数値というわけではありません。NIPTには偽陽性が稀に起こるため、実際に陽性となるのは50人に1人よりも低い確率になると考えられます。さらに、若い妊婦さんほど偽陽性は起こりやすいため、さらに陽性の確率は低くなります。

NIPTはあくまでも病気の可能性を調べるための検査のため、本当に陽性であるか確認するには確定検査(羊水検査)を受ける必要があります。
偽陽性の可能性や羊水検査を受けるかどうかの判断については、専門家による遺伝カウンセリングを受け、十分に理解した上で判断することが望ましいです。
また、羊水検査を行うにあたっても心身や経済面に負担がかかることが予想されます。

こういったことを踏まえると、NIPTを受ける病院は、専門家による相談ができるかつ、陽性後や羊水検査についてのフォローが整った施設を選ぶようにしましょう。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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