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「出生前診断」と聞いたことがある方もいるでしょう。お腹の赤ちゃんが生まれる前に受けられる検査ですが、検査の種類がたくさんあり、どのような検査なのか、いつ頃受けられるのかわからないという方もいるかもしれません。
この記事では、出生前診断の検査時期について、検査ごとに解説します。出生前診断を受けるかどうか悩んでいる方や、検査が気になっている方はぜひ最後まで読んでください。
出生前診断とは?いつから導入されたの?
出生前診断は、妊娠中の赤ちゃんがお腹の中にいる時期に検査をし、赤ちゃんの染色体異常の有無などを調べる検査です。女性の社会進出に伴い、高齢出産と呼ばれる35歳以上で出産する妊婦が増え、出生前診断が注目されるようになってきました。
日本では1960年代から導入されました。
出生前診断とは
出生前診断は、「非確定検査」と「確定検査」の大きく2つに分かれます。
非確定検査は、検査だけでは赤ちゃんに生まれつきの病気を持っていると断定できない検査のことです。
確定検査は、その名の通り、検査結果が医師の診断となる検査です。
確定検査と非確定検査の違いは検査精度の違いで、非確定検査は検査の種類によって精度が異なりますが、検査の精度が80〜99%に対し、確定検査は100%です。
また、非確定検査は、検査の特性から妊娠初期の比較的早い時期に検査を受けられるものが多くあります。
しかし、確定検査は、非確定検査で陽性と判定された後に受けるため、検査の時期が少し遅めになることが多いです。
日本で出生前診断が導入されたのはいつから?
日本で出生前診断が導入されたのは、1968年の羊水検査と言われています。導入にあたり、さまざまな論争が起こりながら、1970年以降全国的に検査が広がりました。
その後、1990年代に母体血清マーカーが導入されましたが、厚生労働省から妊婦に積極的に推奨しないとする通達が出されたため、検査の件数はイギリスなどの海外と比べると少ない状況でした。
2013年に新型出生前診断であるNIPTが導入され、実施施設が拡大されるようになりました。どの時期も「命の選別」になるのでは、という部分で、出生前検査をめぐる選択について、大きな論争が巻き起こりました。
しかし、妊娠中の不安を払拭したいという女性(カップル)の自己決定権という部分において、出生前診断が社会に認められています。
参照:www.mhlw.go.jp/content/11908000/000652443.pdf
出生前診断の種類
出生前診断には非確定検査と確定検査の2種類あります。ここからは、出生前診断の種類とそれぞれの検査の特徴について解説します。
非確定検査
非確定検査は、お母さんからの採血のみで検査ができるため、流産や死産といったリスクはありません。しかし、従来の母体血清マーカーやコンバインド検査は、検査精度が低いことが大きな問題点でした。
新型出生前診断(NIPT)は、非確定検査でありながら、高精度の検査で、陽性的中率は99%と言われています。
しかし、新型出生前診断(NIPT)のような高精度の検査において、仮に高い確率で「染色体疾患が疑われる」ことを示す検査結果が出たとしても、非確定的検査、つまり「診断が確定できない検査」です。そのため、羊水検査や絨毛検査などの「診断が確定できる検査」(確定的検査)を受ける必要があります。
新型出生前診断(NIPT)
新型出生前診断(NIPT)は、お母さんから採血をした後、血漿成分の中に含まれる胎盤由来のセルフリーDNAの分析を行う検査です。
セルフリーDNAの断片を集めてDNAの遺伝子配列を解読することによって、特定の染色体に異数がないかどうかを調べます。
検査の時期は施設により異なりますが、妊娠9〜10週以降に実施できます。
染色体数が1本多いトリソミーという状態が確認された場合は、染色体の番号に応じてダウン症候群(21トリソミー)・18トリソミー・13トリソミーといった染色体異常症を持つ可能性が高いと診断されます。
非確定検査は、検査精度の低さが問題としてありますが、NIPTの検査精度は99%と他のスクリーニング検査よりも圧倒的に高いです。
そのため、陰性だった場合は胎児が染色体異常症を持つ確率は0.1%以下となるため、結果で陰性と伝えられた時は大きな安心感を得られる検査と言えます。
ただし、NIPTはあくまで非確定的検査のため、検査結果で染色体異常症の有無を確定することはできません。そのため、NIPTを受けて陽性が出た場合は、絨毛検査、または羊水検査を受けることが一般的です。
胎児精密超音波検査(胎児ドッグ)
超音波検査(胎児ドッグ)は妊婦検診でも行われていますが、染色体異常を見つけるためにも利用されています。
染色体異常を対象とした検査は妊娠10週頃〜13週頃の妊娠初期、妊娠18週頃〜30週頃の妊娠中期以降の2回に分けて実施されるのが一般的です。
胎児の成長に伴って現れる身体の異常も含めて調べる検査のため、妊娠初期と妊娠中期では観察できる箇所が異なります。赤ちゃんの首の後にあるむくみの厚さ(NT)や心拍数、血流などを計測することで染色体異常であるダウン症候群・18トリソミー・13トリソミーが発生している可能性を調べます。
妊娠中期以降では、赤ちゃんの身体的特徴や臓器の異常を調べることが可能で、超音波検査は訓練を受けた医師もしくは検査技師が実施している施設がほとんどです。
クアトロ検査(母体血清マーカー)
クアトロ検査は、NIPTの登場まで一番検査精度が高いものとして知られていました。
お母さんの採血だけで検査ができ、非確定的検査の中では遅めとなる妊娠15週頃〜妊娠18週頃に実施されています。
NIPTよりも実施時期は遅いですが、検査費用が安い(2~3万円ほど)場合が多いです。
コンバインド検査
コンバインド検査もお母さんからの採血のみでできる検査で、母体血清マーカー検査よりも検査精度はやや落ちるものの、胎児超音波検査よりも高い確率で染色体異常の発見につながります。
検査は、妊娠初期にあたる妊娠11週頃〜妊娠13週頃に実施され、胎児超音波検査と2種類のタンパク質成分を対象とした母体血清マーカー検査の両方を実施して染色体異常症を持つ可能性を検査します。
超音波検査で胎児の向きや状態を確認した上で検査し、検査精度は約80%で、母体血清マーカー検査(3種類のタンパク質を分析)やクアトロテスト(4種類のタンパク質を分析)よりも精度は低くなります。
確定検査
確定検査は、検査の結果に基づいて診断が確定できます。基本的には非確定検査よりも検査できる週数が遅いことが特徴です。
また、検査方法は侵襲的検査のため非確定検査と異なり、流産などの可能性があり、妊婦さんへの体の負担やリスクが高い検査です。
ここからは確定検査である羊水検査と絨毛検査について解説します。
羊水検査
羊水検査は古くから医療施設で実施されている染色体検査です。
子宮内の羊水を穿刺針を用いて採取するため、侵襲的検査ではありますが、出生前診断の中で最も高い検査精度で、検査の結果診断がつきます。
羊水検査は妊娠14週以降に実施します。NIPTと同じく実施期間になれば妊娠週数に関係なく受けることができますが、検査結果に応じて人工妊娠中絶を考えている場合は、妊娠17週までに受けることが推奨されます。
羊水検査の方法は、超音波検査で針を刺しても安全な場所を特定した後、子宮内まで穿刺針を挿入して羊水を10ml〜20ml採取します。採取した羊水細胞の培養を行って染色体異常があるか確認する検査です。
超音波で赤ちゃんや胎盤の位置を確認しながら検査をしますが、お腹に針を刺して検査をするため、流産や死産、感染のリスクがあります。
絨毛検査
絨毛検査は確定的検査に分類され、流産や早産のリスクが伴う検査です。
検査は妊娠10週頃〜妊娠14週頃に実施します。
確定的検査は絨毛検査と羊水検査のみで、妊娠14週以降は羊水検査を受けられるようになります。
絨毛検査は侵襲的検査であり、羊水検査と同じようにお腹に針を刺して検査をするため、約100人に1人の割合で流産や早産など胎児が死に至る可能性があると言われています。
検査で胎児の死亡に至らなくても、子宮内感染・破水・出血などのリスクが伴う検査のため、検査前には十分な知識が共有されるカウンセリングを受けることが必須です。
また、確定的検査のため、染色体異常が見つかった場合はほぼ確実にダウン症候群などの疾患を持っていると診断されます。
出生前診断でわかるおもな先天性疾患
出生前診断は、赤ちゃんがお腹の中にいるときから、染色体異常などの先天性の疾患を調べる検査です。
しかし、生まれつきの病気はさまざまなものがあり、出生前診断でわかる病気はその中の一部で、すべてがわかる訳ではありません。
出生前診断で分かる先天性疾患とは?
出生前診断でわかる赤ちゃんの病気は検査により異なります。
21トリソミー(ダウン症候群)についてはすべての検査で調べることが可能です。
ただ検査で疾患を持っているのがわかっても合併症も含めて出産前に治療はできません。
また、ダウン症や他の先天性疾患を治療することは不可能です。
すべての赤ちゃんのうち3〜5%は、なんらかの異常を持って生まれてくると言われていて、出生前診断で見つかるのは全体の4分の1ほどと言われています。
さらに、その染色体の病気にもいろいろな病気があり、ダウン症、18トリソミー、13トリソミーの赤ちゃんは、染色体の病気がある赤ちゃん全体の70%にとどまります。
その他の疾患については産まれた後にわかり、出生前診断ですべての疾患がわかるわけではありません。
先天性疾患のおもな原因
先天性疾患の主な原因は、以下の通りです。
・染色体の異常によるもの ・1つの遺伝子の異常によるもの ・複数の遺伝子が影響しているもの ・環境や催奇形因子によるもの |
これらが起きる要因の1つとして挙げられるのが卵子と精子の劣化です。
年齢が高くなると質が悪くなるため先天性疾患を持つ子どもが生まれる確率が高くなると言われています。
他にもさまざまな理由があるため、高年齢が原因とは言い切れませんが、高年齢であることで、リスクが高くなることは間違いないでしょう。
出生前診断を受けるかどうか迷ったら
「高齢出産の年齢だから」「先天性疾患の話を聞き、不安」など、出生前診断を受けるかどうか迷うこともあるでしょう。
出生前診断を受けるかどうか迷ったら臨床遺伝専門医によるカウンセリングを受けるのがおすすめです。
臨床遺伝専門医はDNAや染色体といった遺伝子の専門家です。そのため、遺伝に関係する疑問や悩みに対して、医学的な情報を提供できます。検査に関する疑問や検査内容について理解を深めた上で出生前診断を受けられます。
新型出生前診断(NIPT)を実施する前にも、臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングを行っている医療機関か調べてから受けるかどうか決めてもいいでしょう。
まとめ
出生前診断という言葉を聞く機会が増え、どのような検査なのか、いつ頃から受けられるのかと気になっている方もいるでしょう。
検査を受ける前にまずはしっかりパートナーとともに話し合いましょう。その上で、専門家の意見を聞いてから、受けるかどうか決めると、認識の違いがなく、後悔のない選択につながります。
また、出生前診断を受ける時は、臨床遺伝専門医など、専門家のカウンセリングが受けられる施設を選びましょう。
出生前診断の中で特に新型出生前診断「NIPT」を受けるかどうか検討されている方は、ぜひ一度ミネルバクリニックへお気軽にご相談ください。