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40歳以上でNIPTを受けるのは当たり前?検査精度やわかることについて

妊娠時の年齢が40歳以上の場合、産科学的には高齢出産と呼ばれ、様々なリスクを併発する可能性があることからハイリスク妊婦として位置付けられています。
適齢期での妊娠と違い、遺伝子疾患を持った子どもが生まれるケースも多く、実際に不安を感じている方もいるのではないでしょうか。
このような不安を軽減するために有効な検査として活用されているのが、出生前診断の一種であるNIPTです。

今回は40歳以上のNIPTの検査の正確性やどれくらいの人が受検しているのか、受けることによってどのようなメリットがあるのかご紹介します。

NIPT(新型出生前診断)とは?

NIPTは妊娠中から胎児の遺伝子異常の可能性を探る出生前診断の一種であり、2013年から日本に導入されました。

母体の採血のみで検査が可能であり判定結果の正確性も高いことから、近年では受検する人が増え認知度も高まっています。

実際にNIPTについて気になっているけれど検査に関する内容についてよくわからないと疑問を感じている方いるのでしょうか。
この項目ではNIPTの検査内容や判定結果の正確性についてご紹介します。  

NIPTでわかること

NIPTは染色体異常を精査することができる検査ですが、認証施設と非認証施設とでは検査できる項目の範囲が異なります。

認証施設とは日本医学連合会が認可した施設のことであり、主に一般的な産婦人科施設や総合病院が含まれます。

認証施設の場合は、NIPTで精査ができる項目は3つの代表的な疾患、13,18,21トリソミー(エドワーズ症候群、パトウ症候群、ダウン症候群)のみに限定されています。
一方、非認証施設の場合は代表的な疾患に加えて、全染色体や性染色体、微小欠失といったより詳しい遺伝子の状態まで精査することが可能です。

NIPTの陽性的中率

NIPTの検査結果の正確性は年齢が高くなるにつれて陽性的中率も高まるという傾向があります。その理由は年齢と共に生殖機能が衰退することにより卵子分裂によるエラーが起こりやすいことが要因であると推測されています。

特にハイリスク要因である40代での妊娠は他の年代での受検結果と比べると、仮に陽性と判定された場合の的中率は極めて高い確率で実際に陽性となっています。

高齢出産のリスク

高齢出産が妊娠においてハイリスク要因であることは多くの方がご存知ではないでしょうか。ではなぜ年齢が妊娠に大きく関係するのでしょう。

周産期における体力的な問題だけでなく、遺伝子的な問題や合併症を発症するリスクなど適齢期の妊娠と比べると多くのリスクが発生しやすくなります。

この項目では高齢出産に起こりうるリスクとその理由について詳しく解説します。

障害を持って生まれる可能性が上がる

遺伝子疾患の異常は卵子の分裂異常によって起こることがあります。その確率は、35歳では378分の1、38歳では175分の1、,40歳では106分の1にまで高まります。
35歳の時点での確率と5年後の40歳の確率とでは、分裂異常が起きる確率が約3.5倍上昇しています。
また、実際の発症割合は35歳未満の女性から生まれた赤ちゃんが先天異常を持っている場合は1.7%なのに対し、35〜39歳では2.8%、40歳以上では2.9%と35歳を境に増加を示しています。

つまり妊娠時の年齢が高まることで遺伝子異常も発生しやすい傾向であるということが明らかになっています。

高血圧症候群・妊娠糖尿病・前置胎盤のリスクが上がる

遺伝子異常だけではなく母体への影響も出やすくなります。例えば、妊娠高血圧症候群の発症頻度は母体年齢が40歳の場合35歳未満のほぼ2倍になります。
妊娠糖尿病を発症するリスクは35歳以上では20〜24歳の8倍、20〜34歳の2倍です。

胎盤が子宮の下の方にあり赤ちゃんの出口を覆ってしまうことで帝王切開の適応となる前置胎盤も、30歳未満の妊婦と比べて35歳以上は発生が倍のリスクがあるといわれています。
このように高齢妊娠では、多くの妊娠合併症を発症するリスクが高まるということが証明されています。

参照:www.jstage.jst.go.jp/article/kyorinmed/47/1/47_77/_pdf

流産の危険性が増大する

一般的に年齢に関係なく1回の妊娠で流産が起こる頻度は平均的に15%といわれています。そして流産が発生する頻度は妊娠時の年齢が高いほど増加します。
特に40歳以上では妊娠の約半数が流産となります。また、初期流産率の増加とは別で、37〜41週の子宮内胎児死亡の増加がピークとなることが明らかになっています。そして35歳未満との比較では40歳以上で1.9倍という統計結果が出ています。

その理由は、加齢に伴う卵子の老化が要因となっています。高齢であるほど、受精に必要な卵子の減数分裂にエラーが生じやすくなり結果的に染色体異常が起こり流産となる経過を辿ることがあります。このことから妊娠時の年齢は分娩に大きく影響するということが示されています。

参照:www.jstage.jst.go.jp/article/kyorinmed/47/1/47_77/_pdf

難産の可能性が高まる

流産だけでなく、難産も年齢に依存して発生リスクが高まります。主な理由は加齢によって基礎疾患をすでに発症していた場合(高血圧や糖尿病など)と、妊娠によって身体的負担が強くなり年齢と共に低下しつつあった臓器が影響を受けて、妊娠高血圧症候群や切迫早産といった妊娠合併症を引き起こすことにより難産となることがあります。

40歳でNIPTを受ける人の割合

実際に40歳以上で何らかの出生前診断を受けた人がどれくらいの割合かというと、例えば40歳以上の妊婦が100人いた場合、そのうちの約60人が受検をしています。そして何も受けなかった人が約40人という結果が出ています。
つまり、何も受けなかった人の割合の方が40代の妊娠では少ないという結果が出ています。

出生前診断の種類としてはコンバインド検査やクアトロ検査、羊水検査などがありますが、なかでもNIPTは22.7%を示しており、胎児超音波検査と並んで最も多く実施されている検査項目となっています。

NIPTの対象となる人

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引用元:女性から見た出生前検査 | 厚生労働省
NIPTは2022年までは、35歳未満は定められた条件に該当しない限り受検ができないという決まりがあり、受検をしたくても誰でも受検をすることはできない状況にありました。
2023年からは認証要件が緩和され、現在では比較的受検しやすい環境になっています。

しかし国が認証している医療機関によっては依然として様々な条件が定められているところがあり、施設によって対応が異なるといったケースが存在します。

この項目では認証施設と非認証施設では何が違うのか、どのような人が対象となるのかについて解説します。

認証施設の場合

認証施設の場合は対象となる検査項目が定められています。主に13トリソミー(パトウ症候群)、18トリソミー(エドワーズ症候群)、21トリソミー(ダウン症候群)に限定されています。
受検する際には医療機関によって様々な条件が定められていることがあり、妊娠期間や遺伝カウンセリング時に夫婦で在籍すること、実施する施設で分娩予定の方のみといった内容が挙げられます。

予約の枠も定められている場合があり、すぐには受検できないケースもあるので事前に希望する医療機関に確認する必要があります。

非認証施設の場合

非認証施設の場合は受検する妊婦さんの条件は特にありません。

検査を受けたい方は誰でも希望する項目の検査を受けることができます。より詳しく遺伝子疾患の状態を調べたい場合は、検査項目を組み合わせてご自身の状況に応じたプランを選択することができ、自由度の高い検査を受けることが可能です。

NIPTがもたらす希望と安心感とは

NIPTを受検することは遺伝子異常の可能性を早期的に知るだけではなく、精神的な面でも大きなメリットを得ることができます。

この項目ではNIPTを受検することによって妊婦さんやパートナーにとってどのようなメリットがあるのかについてご紹介します。

適切な医療アプローチを受けられる

出産前に遺伝子異常の疾患がわかることで、分娩時から出産に至るまで環境や体制が整った病院で医療アプローチを早くから受けることができます。

例えば、実際に当院でもNIPTを実施した結果、ターナー症候群という病気が発覚したことがありました。生後すぐに心臓の手術が必要な状態でしたが、医療体制の整った医療機関で出産したことで、出産後すぐに処置を受けることができ、現在も健やかに成長することができているというケースもあります。

このように遺伝子疾患によっては、生まれてすぐに手術や蘇生が必要となるケースも少なからず存在します。このような事態を防ぐためにも事前に状態を知ることは、大切な赤ちゃんを守るうえでも重要な役割を果たすことができるといえるでしょう。

安心して妊娠生活を送ることができる

妊娠時期の早い段階で、検査を受けて赤ちゃんの状態を知ることは高齢出産であるがゆえの不安要素を減らすことができます。
ハイリスク要因であるからこそ、大切な赤ちゃんの状態に不安を感じることは自然なことです。

もし、遺伝子疾患が見つかったらどうするべきかという悩みを出産までの間、抱え続けていくよりも、事前に状態を知って少しでも不安の緩和に努めたい方には有益な検査であるといえます。

検査結果によっては想定と異なる結果になることもあります。しかし事前に理解があれば焦ることなく心の整理をゆっくりと進めることも可能です。

まとめ

40代の妊娠・出産は、晩婚化により出産年齢が上昇している背景がありますが、それだけでなく長年の不妊治療を経てやっとの思いで授かった命である場合など適齢期での妊娠と比べると、さまざまな社会的背景が関与していることがあります。

妊娠・出産に対する希望や喜びが大きい一方で、高齢出産による身体的リスクや遺伝的問題も大きく伴うことから、不安を抱えやすい状況に置かれやすくなります。

NIPTはこのような不安を解消し、妊娠中を少しでも健やかに過ごすための手段の一つとして非常に有効な検査であるといえるでしょう。
受検をするかどうかは個人の判断になりますが、受検を希望する場合は、まずは検査に関する正しい知識を身につけること、家族内でしっかりと話し合いを行なって受検に臨むようにしましょう。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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