目次
📍 クイックナビゲーション
双子(双胎)の妊娠では、母体血中の胎盤由来DNAの総量は単胎より多いのに、NIPTの判定は単胎より難しくなります。理由は、2人の赤ちゃん(2つの胎盤)が出すDNAの量が同じではないからです。合計の胎児分画が十分に見えても、異常のある子の分だけでは検出の閾値に届かないことがあり、それを避けようとすると判定保留が増えます。このページでは、双子のNIPTで見逃しと判定保留が起こる技術的な理由を、一卵性・二卵性の違い、母体の体重や体外受精の影響まで含めて整理します。
Q. 双子のNIPTは、なぜ単胎より難しいのですか?
A. 2人の胎盤が出すDNAの量に差があり、合計の胎児分画では異常のある子の分を正しく測れないためです。二卵性では、それぞれの子の胎児分画は単胎より平均で約3割少ないと報告されています。異常のある子の分が少ないと見逃しにつながり、それを防ぐために「少ないほうの子」の胎児分画で判定すると、今度は判定保留が増えます。また、NIPTでは陽性のときにどちらの子に異常があるかは分かりません。
- ➤合計の胎児分画 → 双胎では単胎より高いが、1人あたりは少ないことがある
- ➤判定保留 → 双胎では単胎の2〜3倍程度の頻度で起こる
- ➤卵性 → 二卵性では2人の結果が食い違いやすく、判定が難しい
- ➤どちらの子か → NIPTでは特定できず、確定検査で確かめる
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. 双子のNIPTはなぜ判定保留になりやすい?
二卵性では、それぞれの子が出すDNAが単胎より少ないためです。多くの検査は見逃しを防ぐために少ないほうの子の胎児分画で判定するので、基準に届かない例が増えます。体外受精での妊娠や母体の体重も影響します。
📊 Q. 合計の胎児分画が高ければ安心?
いいえ。合計は2人分の足し算なので、異常のある子の分だけが少ない場合は見逃されることがあります。双子では、2人それぞれの分を考える必要があります。
👶 Q. 陽性のとき、どちらの子か分かる?
NIPTでは分かりません。母体血中のDNAは2人分が混ざっているためです。どちらの子かは、超音波所見と確定検査(羊水検査・絨毛検査)で確かめます。

双子でもNIPTは受けられ、21トリソミーについては単胎に近い精度が報告されています。ただし、その精度は検査の側がいくつもの技術的な工夫をして初めて得られるものです。双子のNIPTの結果を正しく読むには、何が難しく、どう補っているのかを知っておく必要があります。一般向けの解説は双子のNIPTにまとめているので、ここでは仕組みに絞って掘り下げます。
1. 双子ではcfDNAが多いのに、なぜ判定が難しいのか
双胎妊娠では胎盤由来のDNAの合計は単胎より多くなりますが、2人の寄与は等しくないため、異常のある子の分だけを見ると単胎より少ないことがあります。この「合計は多いのに、1人あたりは少ない」というずれが、双子のNIPTのあらゆる難しさの出発点です[1]。
1-1. 双胎では胎盤由来のDNAの総量が多い
NIPTが測る「胎児由来」のDNAは、実際には胎盤の栄養膜(トロホブラスト)の細胞から出てくるため、胎盤の量が多い双胎では母体血中の量も多くなります。男児同士の双胎でY染色体由来のDNAを定量した研究では、双胎のほうが男児の単胎より濃度が有意に高く、栄養膜の量が多いことで説明されています[2]。双胎では母体と胎盤が接する面も広く、母体血中に入るDNAが増えると考えられます[1]。
SNP法で単胎12万1,446例、一卵性双胎1,454例、二卵性双胎3,161例を比べた大規模な解析では、合計の胎児分画は単胎に比べて一卵性で26%、二卵性で35%高いという結果でした[3]。数字だけを見ると、双子のほうがNIPTに有利なように見えます。
💡 用語解説:胎児分画(fetal fraction)
母体の血液中を流れる細胞外DNA(cfDNA)のうち、胎盤に由来するDNAが占める割合です。NIPTは、この胎盤由来の部分に含まれる染色体の量のわずかな偏りを読み取ります。胎児分画が低いと偏りが統計的なばらつきに埋もれてしまうため、多くの検査は一定の値(例:4%)を下回ると結果を出しません。仕組みは胎児ゲノム率(胎児分画)で詳しく解説しています。
1-2. 2人の寄与は等しくない:二卵性では差が大きい
二卵性双胎では、2つの胎盤が出すDNAの量がそれぞれ違い、その差は2倍近くになることがあります。二卵性の35例を調べた研究では、2人のうち少ないほうの胎児分画の中央値は7.9%で、同じ時期の単胎の目安とされる10%前後より低い値でした[4]。前述の大規模解析でも、二卵性の一人ひとりの寄与は単胎より平均32%少なく、2人の胎児分画の相関は中等度(r=0.66)にとどまりました[3]。
SNP法で2人の胎児分画を別々に推定した検証研究では、一卵性の合計が平均13.0%だったのに対し、二卵性では少ないほうが6.5%、多いほうが8.1%でした[5]。つまり二卵性では、合計は単胎より多くても、一人ひとりは単胎より少ないのが普通の姿です。
📊 単胎・一卵性・二卵性の胎児分画のちがい
| 妊娠の種類 | 合計の胎児分画 | 一人あたりの胎児分画 | 判定できない割合(FF2.8%未満) |
|---|---|---|---|
| 単胎 | 基準 | 基準 | 1.7% |
| 一卵性双胎 | 単胎より26%高い | 2人は同じ遺伝情報なので合計で評価できる | 0.8% |
| 二卵性双胎 | 単胎より35%高い | 単胎より平均32%少ない | 5.6% |
※SNP法による大規模解析[3]をもとに作成。判定できない割合は、二卵性では各胎児、一卵性と単胎では合計の胎児分画が2.8%未満の場合。
1-3. 合計の胎児分画が十分でも見逃しが起こる仕組み
二卵性で片方の子だけに21トリソミーがある場合、21番染色体の量の増え方に反映されるのは、その子の胎盤から出たDNAの分だけです。正常な子のDNAは、合計の胎児分画を押し上げても、21番染色体の偏りは生みません。そのため、合計の胎児分画が十分に高く見えても、異常のある子の分が検出の閾値を下回れば、偏りは統計的なばらつきに埋もれて「陰性」と判定されてしまいます[1][4]。
偏りが検出できるかどうかは、胎児分画だけでなく、どれだけ多くのDNA断片を読んだか(シーケンス深度)にも左右されます。全ゲノム法のNIPTは、21番染色体のDNAの割合が正常集団からどれだけ外れているかをZスコアで表します。異常のある子の寄与が小さいほどZスコアは小さくなり、閾値を超えにくくなります。同じ検体でも、読む量が少ない検査ほど見逃しが起きやすいということです。
実際に、二卵性で片方だけが21トリソミーの双胎を対象にした臨床研究では、12例中11例が高リスクと判定され、1例が見逃されました[6]。双胎のNIPTの研究は単胎より症例数がはるかに少なく、見逃しがどのくらいの頻度で起こるかは、まだ幅をもって考える必要があります。
🩺 院長コラム【合計の数字だけで安心しない】
NIPTの報告書に胎児分画が書かれていると、その値が高いほど安心だと受け取られがちです。単胎ならおおむねその理解で構いませんが、二卵性の双子では、合計の値は2人分を足したものにすぎません。大事なのは、異常があるかもしれない子の分がどれだけあるかです。
双子のNIPTを評価するときは、検査が「合計」で判定しているのか、「少ないほうの子」で判定しているのかを確かめることが欠かせないと考えています。同じ「陰性」でも、どちらの方法で出た結果なのかによって、その重みは変わります。
2. 「少ないほうの胎児分画」で判定するか:見逃しと判定保留のトレードオフ
見逃しを減らすために、少ないほうの子の胎児分画が基準に届くかどうかで判定する方法がとられていますが、そうすると今度は判定保留が増えます。見逃しと判定保留は、どちらかを減らせばもう一方が増えるトレードオフの関係にあります[1]。
2-1. 少ないほうの胎児分画で判定する考え方
二卵性の双胎では、臨床的に意味があるのは合計ではなく、2人のうち少ないほうの胎児分画です。二卵性の胎児分画を調べた研究は、合計の胎児分画が十分でも一人の分が4%を下回るケースが誤判定の原因になると指摘し、少ないほうの値を判定の指標にするよう提案しました[4]。英国の研究グループも、双胎では少ないほうの胎児分画をもとにしたアルゴリズムで判定しています[7][8]。
2人の胎児分画を別々に測るには工夫が必要です。SNP法では、母体と2人の子で異なる一塩基多型のパターンから、胎児のゲノムが1種類(一卵性)か2種類(二卵性)かを判定し、二卵性なら一人ひとりの寄与を推定できます。この方法の検証研究では、卵性の判定は93例すべてで正しく、二卵性では各胎児の胎児分画が2.8%未満なら結果を出さない基準が使われていました[5]。母体血漿のDNAを大規模に解析して卵性を判定する方法も、早くから香港のグループによって示されています[9]。全ゲノム法では、男女の双子ならY染色体由来のDNAから男児の分を推定できますが、同性の双子では一人ひとりの分を直接測ることはできません。
2-2. 双胎の判定保留率と、その主な原因
双胎のNIPTで1回目の採血で結果が出ない割合は、単胎の2〜3倍程度と報告されています。双胎515例と単胎1,847例を比べた研究では、初回の判定保留は単胎1.7%に対して双胎5.6%で、胎児分画の中央値も双胎8.7%、単胎11.7%と双胎のほうが低い値でした[6]。妊娠初期に前向きに調べた研究では、双胎438例の初回の判定保留は9.4%、単胎は2.9%でした[8]。
判定保留の頻度が研究によって大きく違うのは、少ないほうの子の胎児分画で判定しているかどうか、どの解析法を使っているか、対象に体外受精での妊娠がどれだけ含まれるかが違うためです。単胎2万3,495例と双胎928例を比べた研究では、初回の判定保留は単胎3.4%、二絨毛膜双胎11.3%、一絨毛膜双胎4.9%で、二絨毛膜双胎で特に多いという結果でした[10]。一絨毛膜双胎はほとんどが一卵性で、2人のゲノムが同じため合計の胎児分画で評価できることが、この差の背景にあります。判定保留の一般的な原因と対処はNIPT結果が出ない原因と対処法で解説しています。
2-3. 判定保留を増やす要因:母体の体重と体外受精
双胎であること以外にも、母体の体重が重いこと、体外受精で妊娠したことが、胎児分画を下げて判定保留を増やす独立した要因です。単胎の妊娠初期の研究では、胎児分画の中央値は母体体重60kgで11.7%、160kgで3.9%と大きく下がり、胎児分画が4%未満となる割合は60kgで0.7%、160kgで51.1%と推定されました[11]。肥満の妊婦では脂肪組織で細胞死が増え、胎児由来のcfDNAの量は変わらないまま母体由来のcfDNAが約2倍に増えていたことから、母体のDNAで薄まることが胎児分画低下の機序と考えられています[12]。
体外受精での妊娠も、判定保留の大きな要因です。前述の単胎・双胎の比較研究では、体外受精は自然妊娠に比べて判定保留のオッズを3.82倍に高め、妊娠初期の血清マーカーPAPP-Aが低いほど判定保留が多いことも示されました[10]。体外受精による妊娠では、単胎でもPAPP-Aが自然妊娠より低い(中央値の0.83倍)ことが知られており[13]、胎盤の形成の違いが胎盤由来DNAの量にも表れていると考えられます。
双胎では体外受精で妊娠した人の割合が高く、先の前向き研究では体外受精による妊娠が単胎の9.5%に対して双胎では56.2%を占めていました。双胎で判定保留が多い理由の大きな部分は、双胎であること自体に加え、体外受精の多さで説明できるとされています[8]。体外受精と染色体異常の関係については体外受精後の染色体異常リスクもあわせてご覧ください。
3. 卵性・膜性で何が変わるか
双子のNIPTの難しさは、一卵性か二卵性か(卵性)によって大きく変わります。二卵性では2人の遺伝情報が違うため、片方だけに染色体異常がある「不一致」が起こりやすく、ここまで見てきた見逃しと判定保留の問題がそのまま当てはまります。一卵性では2人が同じ受精卵から生まれるため、原則として結果は一致しますが、例外もあります[1]。
3-1. 二卵性:2人の結果が食い違いやすい
二卵性双胎は別々の卵子と精子から生まれるため、染色体異常は多くの場合どちらか一人にだけ起こります。2人がともに同じトリソミーなら、2人分のDNAが偏りに加わるので検出しやすくなりますが、一人だけの場合は異常のある子の寄与だけが偏りを生みます。そのため理論上は、一卵性より二卵性のほうがNIPTの検出率は低くなると考えられます[1]。
二卵性の双胎は、2人の胎盤の大きさや発育にも差が出やすく、胎児分画の差が大きくなる要因になります。双胎の染色体異常の頻度そのものは双子のダウン症確率で扱っています。
3-2. 一卵性・一絨毛膜性:濃度は高いが、食い違いがないわけではない
一卵性双胎は2人のゲノムが同じなので、合計の胎児分画をそのまま判定に使うことができ、NIPTには有利です。一卵性の合計の胎児分画は単胎より26%高く、判定できない割合も単胎より低い0.8%と報告されています[3]。一絨毛膜双胎(胎盤を1つ共有する双胎)は、ほぼすべてが一卵性です。膜性の診断については絨毛膜性(膜性診断)をご覧ください。
ただし、一卵性でも2人の染色体が食い違うことがあります。受精後の早い時期の細胞分裂で染色体不分離や分裂後期の遅れ(アナフェーズラギング)が起こったり、トリソミーの受精卵の一部の細胞で余分な染色体が失われるトリソミーレスキューが起こったりすると、2つに分かれた胚の核型が違ってきます[1]。一卵性双胎がまったく同一であることはまれで、核型が異なる一卵性(ヘテロカリオタイピア)も報告されています[14]。実際に、一卵性なのに片方だけが18トリソミーだった双胎で、NIPTが見逃した例が報告されています[15]。
💡 用語解説:ヘテロカリオタイピア(heterokaryotypia)
一卵性双胎なのに、2人の核型(染色体の構成)が異なる状態です。受精卵が分かれる前後に、一部の細胞で染色体の分配の誤りや余分な染色体の消失が起こることで生じます。たとえば片方が正常核型、片方がターナー症候群や18トリソミーという組み合わせが報告されています。また一絨毛膜双胎では胎盤の血管がつながっているため、血液の検査結果が体の組織の染色体と一致しないこともあります。
3-3. 同性の二絨毛膜双胎では卵性が分からない
超音波で分かるのは膜性(胎盤と羊膜の数)で、卵性そのものではありません。一絨毛膜双胎はほぼ一卵性ですが、二絨毛膜双胎には二卵性と、受精後早期に分かれた一卵性の両方が含まれます。男女の双子なら二卵性と分かりますが、同性の二絨毛膜双胎では超音波だけで卵性を決めることはできません[1]。SNP法のNIPTは同じ採血で卵性を推定できる点で、この不確かさを補うことができます[5]。卵性と膜性の関係は双子の卵性・膜性とNIPTで詳しく解説します。
🩺 院長コラム【一卵性でも「同じ」とは限らない】
一卵性の双子は遺伝的に同じ、というのは基本的には正しい理解です。けれども染色体のレベルでは、受精卵が分かれる前後に起こる分配の誤りによって、2人の核型が違ってくることがあります。モザイクやトリソミーレスキューは、胎盤と赤ちゃんの染色体の食い違い(胎盤限局性モザイク)と同じ仕組みの上にある現象です。
そのため一卵性の双子でNIPTが陽性になった場合でも、2人とも同じ結果だと決めつけず、超音波所見と確定検査で一人ひとりを確かめることが大切だと考えています。遺伝学の視点からは、「一卵性だから同じ」は出発点であって結論ではありません。
4. NIPTでは「どちらの子か」は分からない
双子のNIPTで陽性と判定されても、どちらの子に異常があるかはNIPTでは分かりません。母体血中のDNAは母体と2人の胎盤のものが混ざった状態で解析されるため、偏りがあることは分かっても、その偏りがどちらの胎盤から来たものかは区別できないからです。仮に結果から2人が不一致だと推測できたとしても、超音波で所見がなければ、どちらの子かは特定できません[1]。
このため、双子のNIPTで陽性となった場合は、超音波で2人の形態を詳しく調べたうえで、確定検査で一人ひとりの染色体を確かめることになります。二絨毛膜双胎や膜性がはっきりしない場合は、原則として2人それぞれの羊水を採取します。膜性を妊娠初期に正確に記録しておくことが、その後の確定検査の計画にも関わります[1]。陽性後の具体的な流れは双子でNIPT陽性だったときの対応で扱います。
5. 単胎と共通する偽陽性・偽陰性の原因
双子に特有の難しさに加えて、単胎のNIPTで偽陽性や偽陰性の原因になる要因は、双子でもそのまま当てはまります。NIPTが調べているのは胎盤由来のDNAなので、胎盤と赤ちゃんの染色体が食い違う胎盤限局性モザイク(CPM)があれば結果は赤ちゃんの状態とずれます。母体自身の染色体の変化や母体の悪性腫瘍、妊娠初期に一人が育たなくなるバニシングツインも、結果に影響します[1]。
双子では胎盤が2つ(または共有の1つ)あるため、CPMの影響を受ける場面も増えます。それぞれの原因については、第5章の胎盤限局性モザイク、母体側の要因、バニシングツインで詳しく解説しています。母体の悪性腫瘍が見つかる仕組みはNIPTで母親のがんが見つかる理由をご覧ください。見逃し(偽陰性)全体の考え方はNIPTの偽陰性にまとめています。
6. それでもNIPTは従来のスクリーニングより精度が高い
ここまで見てきた技術的な課題があっても、双子のNIPTの精度は、従来の血清マーカーや超音波を組み合わせたスクリーニングを上回ります。双胎の妊娠初期のコンバインド検査(NTと血清マーカーの組み合わせ)を統合したメタ解析では、21トリソミーの感度は89.3%、特異度は94.6%でした[16]。コンバインド検査では、約20人に1人が偽陽性となり確定検査を検討することになります。
一方、双胎のNIPTについては、2021年の英国の研究と統合解析で21トリソミーの検出率99.0%、偽陽性率0.02%と報告され[17]、2025年の35研究のメタ解析では感度が21トリソミー98.8%、18トリソミー94.9%、13トリソミー84.6%で、特異度はいずれもほぼ100%でした[18]。18・13トリソミーでは症例数が少なく、数字の幅は大きいままです。精度の詳しい数字と研究ごとの違いは双子妊娠でのNIPTの精度で整理します。
高い精度は、少ないほうの胎児分画での判定、十分なシーケンス深度、判定保留にした検体の再採血といった工夫の上に成り立っています。国際出生前診断学会(ISPD)の2021年の声明も、双胎でのcfDNAスクリーニングを認めたうえで、卵性を考慮して結果と胎児分画を解釈し、結果が出なかった場合は再採血を検討してよいとしています[19]。なお、日本医学会の2022年の指針には、双胎・多胎についての明文の規定はありません[20]。
7. まとめ:双子のNIPTは「2人分」を考えて読む
双子のNIPTが難しいのは、母体血中で2人分の胎盤由来DNAが混ざり、その量が2人で等しくないためです。二卵性では一人ひとりの胎児分画が単胎より少なく、異常のある子の分が閾値に届かなければ見逃しにつながります。それを避けるために少ないほうの子の胎児分画で判定すると、判定保留が単胎の2〜3倍程度に増えます。母体の体重や体外受精での妊娠も、胎児分画を下げる要因です[10][3]。
一卵性では合計の胎児分画で評価できる分有利ですが、受精後の機序で2人の核型が食い違うこともあります。そして双子のNIPTでは、陽性でもどちらの子かは分かりません。双子のNIPTの結果は、検査がどのように2人分を評価したのかを確かめたうえで、超音波所見と合わせて読むことが欠かせないと考えています。次の6-4では、双子でNIPTが陽性だったときの確定検査と、その後の選択肢を扱います。
よくある質問(FAQ)
Q1. 双子のNIPTはなぜ判定保留になりやすいのですか?
二卵性の双子では、それぞれの子の胎盤から出るDNAが単胎より平均で約3割少ないためです。見逃しを防ぐために少ないほうの子の胎児分画で判定する検査が多く、その値が基準に届かないと結果が出ません。初回の判定保留は単胎の2〜3倍程度と報告されており、体外受精での妊娠や母体の体重が重いことも影響します。
Q2. 合計の胎児分画が高ければ、双子でも見逃しの心配はありませんか?
言い切ることはできません。合計の胎児分画は2人分を足した値なので、片方の子だけに異常がある場合、その子の分が少なければ偏りが小さくなり、見逃しにつながることがあります。双子では、検査が少ないほうの子の胎児分画を確認しているかどうかが重要です。
Q3. 一卵性と二卵性で、NIPTの難しさは違いますか?
違います。一卵性は2人のゲノムが同じなので合計の胎児分画で評価でき、判定できない割合も単胎より低いと報告されています。二卵性は2人の結果が食い違いやすく、一人ひとりの胎児分画が少ないため判定が難しくなります。ただし一卵性でも、受精後の染色体の分配の誤りで2人の核型が違うことがあります。
Q4. NIPTで陽性のとき、どちらの子に異常があるか分かりますか?
NIPTでは分かりません。母体血中のDNAは2人分が混ざった状態で解析されるため、偏りがどちらの胎盤から来たかは区別できないからです。超音波で2人の形態を詳しく調べ、確定検査(羊水検査・絨毛検査)で一人ひとりの染色体を確かめます。
Q5. 体外受精で授かった双子でもNIPTは受けられますか?
受けられます。ただし体外受精での妊娠は、自然妊娠に比べて胎児分画が低くなりやすく、判定保留のオッズが約3.8倍になるという報告があります。判定保留になった場合は、週数を進めての再採血などが検討されます。
🏥 双子の妊娠でNIPTをお考えの方へ
ミネルバクリニックでは、双子(双胎)の妊娠でも受けられるNIPTを用意しており、常駐する臨床遺伝専門医が検査前と結果が出た後の遺伝カウンセリングを担当しています。陽性の場合の確定検査(羊水検査・絨毛検査)まで院内で対応しています。検査の内容は双子で受けられるNIPTのページでご確認いただけます。
参考文献
- [1] Mackie FL, Kilby MD. The Role of Cell-Free DNA-Based Prenatal Testing in Twin Pregnancy. In: Page-Christiaens L, Klein HG, eds. Noninvasive Prenatal Testing (NIPT): Applied Genomics in Prenatal Screening and Diagnosis. Academic Press; 2018:83-96. ISBN 978-0-12-814189-2
- [2] Quantification of free fetal DNA in multiple pregnancies and relationship with chorionicity. Prenat Diagn. 2011;31(10):967-972. [PubMed 21769896]
- [3] Cell-free DNA fetal fraction in twin gestations in single-nucleotide polymorphism-based noninvasive prenatal screening. Prenat Diagn. 2020;40(2):179-184. [PubMed 31711265]
- [4] Fetal fraction estimate in twin pregnancies using directed cell-free DNA analysis. Fetal Diagn Ther. 2014;35(3):199-203. [PubMed 24356438]
- [5] Validation of a single-nucleotide polymorphism-based non-invasive prenatal test in twin gestations: determination of zygosity, individual fetal sex, and fetal aneuploidy. J Clin Med. 2019;8(7):937. [DOI 10.3390/jcm8070937]
- [6] Performance of screening for aneuploidies by cell-free DNA analysis of maternal blood in twin pregnancies. Ultrasound Obstet Gynecol. 2015;45(1):61-66. [PubMed 25297464]
- [7] Cell-free DNA analysis for trisomy risk assessment in first-trimester twin pregnancies. Fetal Diagn Ther. 2014;35(3):204-211. [PubMed 24247435]
- [8] Prospective first-trimester screening for trisomies by cell-free DNA testing of maternal blood in twin pregnancy. Ultrasound Obstet Gynecol. 2016;47(6):705-711. [PubMed 26970114]
- [9] Noninvasive prenatal determination of twin zygosity by maternal plasma DNA analysis. Clin Chem. 2013;59(2):427-435. [PubMed 23115054]
- [10] First-trimester screening for trisomies by cfDNA testing of maternal blood in singleton and twin pregnancies: factors affecting test failure. Ultrasound Obstet Gynecol. 2019;53(6):804-809. [PubMed 30977206]
- [11] Fetal fraction in maternal plasma cell-free DNA at 11-13 weeks’ gestation: relation to maternal and fetal characteristics. Ultrasound Obstet Gynecol. 2013;41(1):26-32. [PubMed 23108725]
- [12] Increased death of adipose cells, a path to release cell-free DNA into systemic circulation of obese women. Obesity. 2012;20(11):2213-2219. [PubMed 22836687]
- [13] Pregnancies conceived using assisted reproductive technologies (ART) have low levels of pregnancy-associated plasma protein-A (PAPP-A) leading to a high rate of false-positive results in first trimester screening for Down syndrome. Hum Reprod. 2009;24(6):1330-1338. [PubMed 19246467]
- [14] Non-identical monozygotic twins, intermediate twin types, zygosity testing, and the non-random nature of monozygotic twinning: a review. Am J Med Genet C Semin Med Genet. 2009;151C(2):110-127. [PubMed 19363805]
- [15] Noninvasive prenatal testing of trisomies 21 and 18 by massively parallel sequencing of maternal plasma DNA in twin pregnancies. Prenat Diagn. 2014;34(4):335-340. [PubMed 24357023]
- [16] Systematic review of screening for trisomy 21 in twin pregnancies in first trimester combining nuchal translucency and biochemical markers: a meta-analysis. Prenat Diagn. 2014;34(11):1077-1083. [PubMed 24916689]
- [17] Cell-free DNA testing of maternal blood in screening for trisomies in twin pregnancy: updated cohort study at 10-14 weeks and meta-analysis. Ultrasound Obstet Gynecol. 2021;58(2):178-189. [PubMed 33838069]
- [18] Diagnostic accuracy of cell-free fetal DNA in maternal blood in detecting chromosomal anomalies in twin pregnancy: systematic review and meta-analysis. Ultrasound Obstet Gynecol. 2025;65(2):147-153. [DOI 10.1002/uog.27698]
- [19] ISPD Position Statement: cell free (cf)DNA screening for Down syndrome in multiple pregnancies. Prenat Diagn. 2021;41(10):1222-1232. [DOI 10.1002/pd.5832]
- [20] 日本医学会 出生前検査認証制度等運営委員会. NIPT等の出生前検査に関する情報提供及び施設(医療機関・検査分析機関)認証の指針. 2022年2月. [厚生労働省 掲載資料]



