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双子でNIPT陽性だったときの対応:どちらの胎児かを確かめる確定検査と、その後の選択肢

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医として遺伝医療に携わっています。

双子(双胎)の妊娠でNIPTが陽性と出ても、血液の検査だけでは「どちらの胎児の結果なのか」は分かりません。確定検査では、胎盤が1つか2つか(膜性)によって、絨毛検査と羊水検査のどちらを選ぶか、片方の袋だけを調べるか両方を調べるかが変わります。結果が一児だけの異常だった場合、その後の選択肢と週数の制約は、単胎妊娠とは大きく異なります。このページでは、陽性が出てから確定診断、そしてその後の判断までの流れを、膜性ごとに整理します。

この記事でわかること
📖 読了時間:約14分
👶👶 双胎・膜性・確定検査・減胎
★ 臨床遺伝専門医監修

Q. 双子でNIPT陽性だったら、まず何をしますか?

A. 超音波検査で確認した膜性(一絨毛膜か二絨毛膜か)をもとに、確定検査の方法と、どの袋から検体をとるかを決めます。一絨毛膜双胎は原則として一卵性なので両児が同じ結果と考えますが、二絨毛膜双胎では多くの場合どちらか一児だけの異常で、両方の胎児を別々に調べる必要があります。

  • ➤どちらの胎児か → NIPTでは分からない。確定検査で胎児ごとに調べる
  • ➤検査の選び方 → 二絨毛膜は早く結果が出る絨毛検査が優先される
  • ➤検査のリスク → 最新のメタ解析では、24週未満または検査後4週以内の胎児喪失に有意差はない
  • ➤一児だけ異常のとき → 選択肢は膜性・週数・国内の実施体制で大きく変わる

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. 双子でNIPT陽性。どちらの子の結果か分かりますか?

分かりません。母体血中のDNAは2つの胎盤(または共有する1つの胎盤)から混ざって流れ込むためです。胎児ごとの答えは、羊水検査や絨毛検査で別々に検体をとって初めて得られます。

💉 Q. 羊水検査は2回刺すのですか?

二絨毛膜双胎、または膜性がはっきりしない双子では、両方の袋から検体をとります。14週より前に一絨毛膜と確認され、2人の発育と形に差がない場合に限り、1つの袋だけで済ませることが認められています。

⏳ Q. 一人だけ異常だったら?

妊娠をそのまま続ける、選択的減胎、妊娠全体を中断する、という選択肢が理論上はあります。ただし国内では選択的減胎を行う施設が限られ、人工妊娠中絶は妊娠22週未満という期限もあります。NIPTを受ける段階から、時間の見通しを立てておくことが欠かせません。

NIPT教科書シリーズ 双子でNIPT陽性だったときの対応

1. 双子でNIPT陽性と出たら:まず「誰のリスクか」を考える

双子でNIPTが陽性になったとき、最初に整理すべきなのは「陽性という結果が、2人のうちどちらに当てはまるのか」です。単胎妊娠であれば、陽性の結果は1人の胎児についての話です。双子では、同じ「陽性」でも、2人とも異常の可能性があるのか、1人だけなのかで、その後の検査の組み立てがまったく変わります。

NIPTは、母体の血液に流れ込んだ胎盤由来のDNA断片(cell-free DNA)を数えて、特定の染色体が多いか少ないかを推定する検査です。ISUOG(国際産婦人科超音波学会)の2025年のガイドラインは、双子でも21トリソミーの検出率は99.0%、偽陽性率は0.02%と単胎に近い成績を示す一方、18トリソミーは93%、13トリソミーは95%とやや低いことをまとめています[1]。精度の詳細は双子妊娠でのNIPTの精度で扱います。ここで大事なのは、検出率が高くても、陽性の結果が「どちらの胎児か」を示す情報を含んでいないという点です。

NIPTの結果は「どちらの胎児か」を教えてくれない

双子のNIPTで測っているのは、2人分の胎盤由来DNAが混ざった全体です。二絨毛膜双胎では2つの胎盤から、一絨毛膜双胎では2人が共有する1つの胎盤から、DNA断片が母体の血液に入ります。採血した血液の中で、ある断片がどちらの胎盤から来たのかを区別する印は、通常のNIPTの解析にはありません。そのため、21番染色体由来の断片が多いと判定されても、それが1人分の過剰なのか、2人分なのかは分からないのです。

さらに、二卵性の双子では、2人の胎盤がDNAを出す量が同じとは限りません。正常な胎児の寄与が大きく、異常のある胎児の寄与が小さいと、異常のシグナルが薄まってしまいます。こうした技術的な事情は双子でNIPTが難しくなる理由で詳しく説明しています。陽性の場面で押さえておきたいのは、「陽性」は2人のどちらか、または2人ともに異常の可能性がある、という意味にとどまるということです。

一絨毛膜なら両児、二絨毛膜なら多くは一児。ただし例外がある

誰のリスクかを考える手がかりは、妊娠初期の超音波検査で決めた膜性(まくせい)です。膜性とは、双子が胎盤(絨毛膜)を共有しているかどうか、羊膜の袋が分かれているかどうかを表す分類です。一絨毛膜双胎(胎盤が1つ)は、1つの受精卵が分かれてできた一卵性双胎なので、2人は原則として同じ染色体の構成を持ちます。この場合、NIPTが陽性なら、高いリスクは2人の両方にかかっていると考えます。

一方、二絨毛膜双胎(胎盤が2つ)の多くは二卵性で、2人は別々の受精卵から育っています。染色体の数の異常は受精卵ごとに起こるため、異常があっても多くは一児だけです。ただし、二絨毛膜でも、受精後ごく早い時期に分かれた一卵性のことがあり、性別が同じ二絨毛膜双胎では、超音波だけでは一卵性か二卵性かを決められません。また、一卵性であっても、受精後の細胞分裂で染色体の変化が片方にだけ生じ、2人の染色体の構成が異なることがまれにあります[1]。こうした例外があるため、膜性は「誰のリスクか」の見当をつける材料にはなっても、確定検査を省く理由にはなりません。

💡 用語解説:膜性(絨毛膜性・羊膜性)

膜性は、双子が胎盤(絨毛膜)を共有しているかと、羊膜の袋が分かれているかの組み合わせです。二絨毛膜二羊膜(DD)、一絨毛膜二羊膜(MD)、一絨毛膜一羊膜(MM)の3種類があります。妊娠初期の超音波で、胎盤の数や隔膜の付け根の形(λサイン・Tサイン)を見て判定し、14週ごろまでが最も正確に判定できる時期とされています。膜性は卵性(一卵性か二卵性か)と同じではありません。

👶 膜性ごとの「陽性が意味すること」

膜性 卵性 陽性のときの考え方 注意する例外
一絨毛膜(MD・MM) 一卵性 2人とも同じ結果である可能性が高い 受精後の変化で2人の染色体が異なる例がまれにある
二絨毛膜(DD)・性別が異なる 二卵性 多くは一児だけの異常 2人とも異常のこともある
二絨毛膜(DD)・性別が同じ 一卵性か二卵性かは不明 多くは一児だけの異常と考えて両児を調べる 一卵性なら2人とも同じ結果になりうる

※膜性と卵性の関係は双子の卵性・膜性とNIPTで詳しく扱っています。

2. 確定検査の選び方:絨毛検査か羊水検査か

NIPTは確定診断ではないため、陽性のときは絨毛検査か羊水検査で胎児の染色体を直接調べます。これは単胎と同じ原則です。双子で違うのは、2人分の検体を、取り違えずに、できるだけ早い時期に得る必要があることです。確定検査の一般的な考え方はNIPTで陽性の結果がでたときの確定診断にまとめています。

ISUOGのガイドラインは、双子の確定検査は胎児医学(fetal medicine)の専門家が行うべきだとしています[1]。2人の胎児と2つの袋、場合によっては2つの胎盤の位置関係を正確に把握しながら針を進める必要があり、単胎の検査とは難しさが違うためです。

NIPT陽性どちらの胎児かは不明
▶
膜性と2人の位置を確認マッピング
▶
絨毛検査か羊水検査袋ごとに検体
▶
胎児ごとの結果その後の選択へ

二絨毛膜双胎では絨毛検査が優先される理由

ISUOGは、二絨毛膜双胎では、より早く診断できる絨毛検査を羊水検査より優先するよう推奨しています(推奨グレードD)[1]。絨毛検査はおおむね妊娠11週から、羊水検査は15〜16週以降に行うのが一般的で、結果が出るまでの日数も加えると、両者の差は数週間になります。

双子でこの数週間が重く扱われるのは、一児だけに異常が見つかった場合の選択肢が、週数によって大きく変わるからです。後の章で触れるように、二絨毛膜双胎で一児を減胎する処置は、早い時期に行うほど、残る胎児の流産や早産のリスクが小さいことが分かっています[1][4]。早く確定できることには、時間の余裕以上の意味があります。

一方で、絨毛検査は胎盤の組織を調べるため、胎盤だけに染色体の変化がある胎盤限局性モザイクの影響を受けることがあります。双子では、2つの胎盤が隣り合っていると、片方の検体にもう片方の組織が混ざるおそれもあります。絨毛検査の結果がモザイクだった場合や、混入が疑われる場合は、羊水検査で胎児自身の染色体を確かめることになります。絨毛検査と羊水検査の違いも参考にしてください。

💡 用語解説:胎盤限局性モザイク(CPM)

胎盤限局性モザイクは、染色体の変化が胎盤の細胞だけにあり、胎児の体の細胞は正常である状態です。NIPTが調べるDNAも絨毛検査が調べる組織も胎盤に由来するため、どちらも胎児とは異なる結果を示すことがあります。羊水には胎児自身の細胞が含まれるので、モザイクが疑われるときは羊水検査で確認します。

一絨毛膜双胎で、片方の袋だけ調べてよい条件

一絨毛膜双胎は一卵性なので、1つの袋の羊水だけを調べれば足りるように思えますが、それが認められるのは条件がそろったときだけです。ISUOGのガイドラインは、妊娠14週より前に一絨毛膜であることが確認されていて、2人の発育と形態に差がない場合に限って、1つの袋だけの検査でよいとしています。それ以外の場合は、両方の袋を検査するべきとしています[1]。

条件が厳しいのは、先に述べた「一卵性なのに2人の染色体が異なる」例があるためです。2人の大きさが大きく違う、片方にだけ形の異常がある、という所見は、2人の染色体の構成が異なる可能性を示すサインになります。また、14週を過ぎてから膜性を判定した場合は、判定そのものの確かさが下がります。膜性が不確かな双子は、二絨毛膜と同じ扱いで両方の袋を調べます。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「同じ遺伝子」でも、同じ核型とは限らない】

一卵性の双子は「遺伝的に同じ」と説明されることが多いのですが、染色体の数に関しては、受精後の分裂の途中で片方の細胞系列だけに変化が起こることがあります。一卵性という言葉から「1人を調べれば2人分わかる」と考えるのは自然ですが、医学的には条件付きの話です。

膜性の判定が早い時期に確実に行われていたかどうかは、陽性の後の検査の組み立てを左右します。双子のNIPTを考える段階で、膜性がいつ・どこで判定されたのかを確認しておくことが大切だと考えています。

3. 双子の確定検査で取り違えを防ぐ:胎児のマッピング

双子の確定検査で最も避けたいのは、「Aちゃんの結果」と思っていたものが実はBちゃんの結果だった、という取り違えです。一児だけに異常があるとき、取り違えは、異常のある胎児を正常と判断し、正常な胎児に処置を行うことにつながりかねません。そのため、検体を採る前に、2人を区別する情報を記録しておく作業(マッピング)が欠かせません。

ISUOGのガイドラインは、2人の位置を「左右」または「上下」の向きで記録し、複数の特徴を組み合わせて、どの時点でも同じ胎児を同じ名前で呼べるようにすることを求めています[1]。記録に使う特徴には、子宮の中での位置、胎盤の付着部位、へその緒が胎盤につく位置、性別、超音波で見える形の特徴などがあります。妊娠が進むと胎児は動き、位置の上下は入れ替わることがあるため、位置だけでなく胎盤やへその緒のような動かない目印を合わせて記録します。

取り違えには、もう一つの形があります。両方の袋から羊水をとるつもりが、同じ袋を2回刺してしまう事故です。ISUOGは、針を2回刺す方法でのこの頻度を1.8%と示しています[1]。2つの検体が同じ結果を示した場合、本当に2人とも同じなのか、同じ袋を2回調べたのかを区別できなくなります。性別の違う二卵性の双子なら、検体の性染色体で確かめることができますが、性別が同じ双子ではこの確認ができないため、検査を行う側の手順がより重要になります。

📋 マッピングで記録する主な項目

項目 記録の内容 役割
位置 左右または上下のどちらにいるか 検査時の呼び名を決める基準
胎盤 付着部位(前壁・後壁など)、胎盤の数 動かない目印として後日も照合できる
へその緒 胎盤へのつく位置 二絨毛膜で胎児と胎盤を対応させる
性別・形態 性別、大きさ、形の特徴 検体の結果と胎児を照合する手がかり

※記録の考え方はISUOGのガイドライン[1]による。

4. 双子の確定検査のリスク:最新のデータ

双子の確定検査は、単胎よりも流産のリスクが高いと長く説明されてきましたが、最近のデータはそれよりも低いリスクを示しています。2020年に発表された16研究のメタ解析では、羊水検査を受けた双子の胎児喪失率のプール値は2.4%で、検査を受けなかった双子も2.4%でした。絨毛検査では2.0%対1.8%でした。直接比較では、羊水検査群で全期間を通じた胎児喪失がわずかに多かった一方、24週未満の胎児喪失と検査後4週以内の胎児喪失には有意差がありませんでした。絨毛検査では全胎児喪失および24週未満の胎児喪失に有意差は認められませんでした[2]。

このメタ解析では、羊水検査を受けた双子と受けなかった双子を直接比べた研究に限ると、全体の胎児喪失はわずかに多い結果でした。ただし、24週より前の喪失や、検査後4週以内の喪失には差がありませんでした[2]。2022年には、絨毛検査を受けた双子と、背景をそろえた検査を受けなかった双子を比べた研究も発表されました。傾向スコアでマッチさせた全体では、少なくとも一児の胎児喪失は11.2%と13.6%で有意差がありませんでしたが、背景の胎児喪失リスクが低い妊娠に限ると、絨毛検査による上乗せリスクが約3.5%と推定されました[3]。ISUOGの2025年ガイドラインは、これらを総合し、双子妊娠における羊水検査または絨毛検査による胎児喪失への上乗せは小さく、手技関連喪失率は1%未満と考えられる一方、背景リスクが低い妊娠ではやや高くなる可能性があるとしています[1]。

数字を読むときには、双子妊娠そのものの流産率が単胎より高いことに注意が必要です。検査を受けた双子で起きた流産を、すべて検査のせいにはできません。また、ここで示した数字は、経験のある施設での成績です。双子の確定検査が専門家の手に委ねるべきものとされているのは、このためでもあります。単胎の羊水検査のリスクについては羊水検査のリスクで解説しています。

📊 双子の確定検査と胎児喪失

研究 検査を受けた双子 受けなかった双子 結論
メタ解析・羊水検査(2020年) 2.4% 2.4% 24週前・検査後4週以内の喪失に差なし
メタ解析・絨毛検査(2020年) 2.0% 1.8% 差なし
絨毛検査・背景をそろえた比較(2022年) 11.2% 13.6% マッチ後全体では有意差なし。背景リスクが低い群では上乗せリスクを示唆

※出典:Di Mascio 2020[2]、Gil 2022[3]。研究ごとに対象や期間の定義が異なるため、数字どうしを直接比べることはできません。

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5. 確定検査の結果が出たあとの選択肢

確定検査で異常が確認された場合、その後の選択肢は「2人とも異常か、1人だけか」と「膜性」の組み合わせで決まります。どの道を選ぶかは、ご夫婦が十分な情報をもとに決めることで、医療者が答えを決めるものではありません。ここでは、それぞれの選択肢の医学的な中身とリスクを整理します。

2人とも異常が確認された場合

2人とも同じ染色体の異常が確認された場合、選択肢は単胎の場合と同じく、妊娠を続けるか、妊娠全体を中断するかになります。一絨毛膜双胎で両児に異常が確認された場合がこれにあたることが多く、二絨毛膜双胎でも一卵性であれば同じ状況になります。妊娠を続ける場合は、染色体の異常に伴う合併症に加えて、双子妊娠に特有の早産や発育の問題も考えて、周産期の管理体制を整えることになります。

日本では、人工妊娠中絶ができるのは母体保護法のもとで妊娠22週未満と定められています[7]。確定検査の時期と結果が出るまでの日数によっては、考える時間がほとんど残らないこともあります。双子では2人分の検体を扱い、検査が単胎より複雑になる分、時間の見通しを早めに立てておく必要があります。

一児だけ異常だった場合:二絨毛膜双胎

二絨毛膜双胎で一児だけに異常があった場合、理論上の選択肢は、2人とも妊娠を続ける、異常のある一児を選択的に減胎する、妊娠全体を中断する、の3つです。二絨毛膜双胎では2人の胎盤の血管がつながっていないため、減胎は、超音波で見ながら異常のある胎児の心臓または臍帯の血管に塩化カリウムなどの薬を注入する方法で行われます[1]。

この処置は、行う時期によって残る胎児への影響が大きく変わります。ISUOGのガイドラインが引用するメタ解析では、18週より前に行った場合の24週未満の妊娠喪失は1%、32週未満の早産は4%だったのに対し、18週以降では妊娠喪失8%、32週未満の早産20%でした[1][4]。二絨毛膜双胎で絨毛検査が優先されるのは、この差があるためです。

2人とも妊娠を続ける選択をした場合、異常のある胎児の状態が、もう1人の胎児や妊娠全体に影響することがあります。たとえば、羊水過多や胎児の死亡が起こった場合の早産のリスクです。どの選択にも、それぞれのリスクと負担があります。

一児だけ異常だった場合:一絨毛膜双胎

一絨毛膜双胎で2人の染色体が異なる場合は、まれですが、減胎の方法とリスクが二絨毛膜とは根本的に違います。一絨毛膜双胎では、共有する胎盤の中で2人の血管がつながっています。そのため、薬を注入すると、もう1人にも流れ込んでしまいます。ISUOGは一絨毛膜双胎で塩化カリウムを使うことを禁じ、臍帯の血流を止める方法(臍帯の凝固、ラジオ波焼灼術、胎児内レーザー、マイクロ波焼灼)で行うとしています[1]。

ISUOGによれば、一絨毛膜双胎の減胎後に残る胎児が生存する割合は約80%で、32週未満の早産は20%、生存した胎児の最大20%に神経学的な障害が伴います[1]。方法による違いを比べたメタ解析では、ラジオ波焼灼術と双極凝固の生存率は同等で、ラジオ波焼灼術のほうが早産と前期破水が少ない結果でした[5]。二絨毛膜の場合と比べて、残る胎児へのリスクがはるかに大きい処置です。

⚖️ 膜性ごとの選択的減胎の違い

項目 二絨毛膜双胎 一絨毛膜双胎
方法 心臓・臍帯血管への薬の注入 臍帯の血流を止める(凝固・焼灼)
薬の注入は禁忌
理由 胎盤の血管がつながっていない 胎盤の中で2人の血管がつながっている
残る胎児への影響 18週前:24週未満の妊娠喪失1%・32週未満の早産4%
18週以降:8%・20%
生存約80%・32週未満の早産20%・神経学的障害最大20%

※出典:ISUOG 2025[1]、Sorrenti 2023[4]、Donepudi 2022[5]。

日本での現状:実施できる施設と時間の制約

海外のガイドラインに書かれている選択肢が、日本ではそのまま選べるとは限りません。国内では、減胎手術は公的な医療として位置づけられておらず、関連するガイドラインもないと説明する大学病院があります。その病院は、品胎(三つ子)以上の多胎や母体に重い合併症がある場合を対象とし、胎児の異常を理由とした一児の減胎は原則として行わない方針を示しています。例外は、胎児水腫や無脳症など、その胎児の状態が母体の合併症の原因になる場合です。また、処置は妊娠11週0日から13週6日に行うとしています[6]。

このように、二絨毛膜双胎で一児だけに染色体の異常が見つかった場合でも、国内で選択的減胎を受けられる施設は限られ、実施の条件も施設によって異なります。加えて、人工妊娠中絶ができるのは妊娠22週未満です[7]。NIPTを受けてから陽性が出て、確定検査を予約し、2人分の結果が出るまでには、それなりの日数がかかります。双子のNIPTは、陽性が出たときにどこで確定検査を受け、その後どこに相談するのかまで含めて考えておくことが欠かせない検査です。片方だけ陽性となったご夫婦の決断の経緯は双子の出生前診断で片方が陽性となった決断で紹介しています。

⚠️ ミネルバクリニックで行っていないこと

ミネルバクリニックでは、分娩、選択的減胎、人工妊娠中絶は行っていません。確定検査の結果を踏まえた処置については、周産期医療を行う医療機関で相談することになります。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【双子のNIPTは「陽性の後」から逆算する】

単胎のNIPTでは、陽性が出てから確定検査を考えても、多くの場合は時間に余裕があります。双子では、二絨毛膜なら絨毛検査を選ぶか、減胎を考える可能性があるならどの週数までに結果が必要か、国内のどこで処置が可能か、といった問いが、陽性の時点で一度に押し寄せてきます。

だからこそ、双子のNIPTは「受けるかどうか」と同じくらい「陽性だったら次に何をするか」を先に決めておく検査だと考えています。膜性の情報と、確定検査を受ける場所の見通しを持ってから採血に臨むことが、時間に追われない判断につながります。

6. 確定検査で2人とも正常だったとき

NIPTが陽性でも、確定検査で2人とも正常な染色体だったという結果は起こりえます。この場合のNIPTの結果は偽陽性ということになりますが、その理由が分かっているわけではありません。双子に特有の原因と、単胎と共通の原因の両方を考えます。

双子に特有の原因として重要なのが、妊娠初期に3人目の胎児がいて途中で育たなくなったバニシングツインです。消失した胎児の胎盤組織からDNAが出続け、その胎児に染色体の異常があると、生きている2人が正常でもNIPTが陽性になることがあります。詳しくはNIPTの偽陽性の原因:バニシングツインで扱っています。ISUOGも、一児が子宮内で亡くなった後のNIPTの結果は信頼できないとしています[1]。

単胎と共通の原因としては、胎盤だけに染色体の変化がある胎盤限局性モザイクと、母体自身の染色体の変化や母体の病気があります。二絨毛膜双胎では、2つの胎盤のどちらか一方にだけモザイクがあることもあります。それぞれの仕組みはNIPTの偽陽性の原因:モザイクと母体側の要因で解説しています。

胎盤限局性モザイクが疑われる場合、染色体の数の変化が胎盤の働きに影響し、胎児の発育が遅れることがあります。また、モザイクの成り立ちによっては、2本の染色体を両親の一方からだけ受け継ぐ片親性ダイソミーが胎児に生じていることもあります。確定検査が正常でも、その後の超音波検査で2人の発育を見ていくことが勧められるのはこのためです。

7. 双子だからこそ、NIPTの前に話し合っておくこと

双子のNIPTでは、検査前の説明と意思決定の支援が、単胎以上に重要になります。理由は3つあります。1つ目は、双子のNIPTの精度に関するデータが単胎よりも少なく、とくに18トリソミーと13トリソミーでは確かさが劣ることです[1]。2つ目は、陽性になった場合、確定検査で2人分の検体が必要になり、正常な胎児も検査の対象になることです。3つ目は、一児だけ異常だった場合の選択肢が、単胎にはない種類の重い判断を含むことです。

NIPTを受ける前に整理しておきたい点は、膜性がいつ、どこで判定されたか、陽性だった場合にどの施設で確定検査を受けるか、その施設は双子の確定検査に対応しているか、一児だけ異常だった場合にどうしたいと考えているか、です。最後の問いに、検査前に答えを出しておく必要はありません。ただ、その場面が起こりうることを知ったうえで検査を受けるかどうかを決めることが、意思決定の出発点になります。

一般的な遺伝カウンセリングの流れは遺伝カウンセリングとはで紹介しています。双子のNIPTに関するガイドラインや学会の推奨は双子妊娠のNIPT:学会の推奨とそのほかの検査で扱います。

💡 用語解説:選択的減胎(selective termination)

選択的減胎は、多胎妊娠のうち特定の胎児だけの妊娠を中断し、残りの胎児の妊娠を続ける処置です。胎児の異常を理由に行う場合と、三つ子以上の多胎で母体と胎児のリスクを下げるために行う場合(減数手術)があります。方法とリスクは膜性によって大きく異なり、日本では公的なガイドラインがなく、実施できる施設は限られています。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 双子でNIPT陽性の場合、どちらの胎児か分かりますか?

NIPTの結果だけでは分かりません。母体の血液には2人分の胎盤由来のDNAが混ざって流れ込んでおり、どちらの胎盤から来たDNAかを区別できないためです。胎児ごとの結果は、羊水検査や絨毛検査で別々に検体をとって確かめます。

Q2. 双子の羊水検査は、両方の袋を検査しますか?

二絨毛膜双胎や膜性がはっきりしない場合は、両方の袋を検査します。妊娠14週より前に一絨毛膜と確認され、2人の発育と形に差がない場合に限り、1つの袋だけの検査でよいとされています。

Q3. 双子の羊水検査や絨毛検査で流産するリスクは高いですか?

2020年のメタ解析では、羊水検査群と非検査群の胎児喪失率のプール値はいずれも2.4%で、絨毛検査では2.0%対1.8%でした。直接比較では、24週未満または検査後4週以内の胎児喪失に有意差はありませんでした。ISUOGは、検査による上乗せの胎児喪失リスクは小さく、手技関連喪失率は1%未満と考えられる一方、背景リスクが低い妊娠ではやや高くなる可能性があるとしています。経験のある専門家が行うことが前提です。

Q4. 二絨毛膜双胎では、なぜ絨毛検査が勧められるのですか?

羊水検査より数週間早く結果が出るためです。一児だけに異常があり選択的減胎を考える場合、18週より前に行うほうが残る胎児の流産や早産のリスクが小さいことが分かっています。

Q5. 一児だけ異常だった場合、日本で減胎はできますか?

国内では減胎手術に公的なガイドラインがなく、実施できる施設は限られます。胎児の異常を理由とした一児の減胎は原則として行わない方針の大学病院もあります。ミネルバクリニックでは減胎や人工妊娠中絶は行っていません。

Q6. NIPT陽性で確定検査が2人とも正常なら、安心してよいですか?

2人とも染色体の数の異常はないと判断できます。ただし、NIPTが陽性になった理由として胎盤限局性モザイクやバニシングツインが考えられる場合は、胎児の発育に影響することがあるため、その後も超音波検査で経過を見ていきます。

まとめ

双子でNIPTが陽性になっても、結果は「2人のどちらか、または両方に異常の可能性がある」ことを示すだけで、どちらの胎児かは分かりません。一絨毛膜双胎は原則として両児、二絨毛膜双胎は多くの場合一児のリスクと考えますが、例外があるため、確定検査で胎児ごとに確かめます[1]。

確定検査は、二絨毛膜双胎では早く結果が出る絨毛検査が優先され、一絨毛膜双胎で1つの袋だけを調べてよいのは条件がそろった場合に限られます[1]。双子の確定検査による胎児喪失への上乗せリスクは小さく、2020年のメタ解析では24週未満または検査後4週以内の胎児喪失に有意差は認められませんでした[2]。一児だけ異常だった場合の選択肢は、膜性と週数によって大きく変わり、国内では実施できる施設と時間の制約もあります[6][7]。双子のNIPTは、陽性だった場合の流れを見通してから受けることが大切です。

👶👶 双子のNIPTをお考えの方へ

ミネルバクリニックでは、臨床遺伝専門医が常駐し、双子の妊娠でのNIPTについて、膜性に応じた結果の意味と、陽性だった場合の確定検査の流れを含めてご説明しています。双子で受けられるNIPTのプランはこちらをご覧ください。

参考文献

  • [1] Khalil A, Sotiriadis A, Baschat A, et al. ISUOG Practice Guidelines (updated): role of ultrasound in twin pregnancy. Ultrasound Obstet Gynecol. 2025;65(2):253-276. [PubMed 39815396]
  • [2] Di Mascio D, Khalil A, Rizzo G, et al. Risk of fetal loss following amniocentesis or chorionic villus sampling in twin pregnancy: systematic review and meta-analysis. Ultrasound Obstet Gynecol. 2020;56(5):647-655. [PubMed 32632979]
  • [3] Gil MM, Rodríguez-Fernández M, Elger T, et al. Risk of fetal loss after chorionic villus sampling in twin pregnancy derived from propensity score matching analysis. Ultrasound Obstet Gynecol. 2022;59(2):162-168. [PubMed 34845786]
  • [4] Sorrenti S, et al. Pregnancy and perinatal outcomes of early vs late selective termination in dichorionic twin pregnancy: systematic review and meta-analysis. Ultrasound Obstet Gynecol. 2023. [DOI 10.1002/uog.26126]
  • [5] Donepudi R, Hessami K, Nassr AA, et al. Selective reduction in complicated monochorionic pregnancies: a systematic review and meta-analysis of different techniques. Am J Obstet Gynecol. 2022;226(5):646-655.e3. doi:10.1016/j.ajog.2021.10.018. PMID:34678178. [PubMed 34678178]
  • [6] 大阪大学医学部附属病院 産科婦人科. 多胎妊娠に対する減胎手術のご相談について(2025年11月5日). [大阪大学]
  • [7] 厚生省保健医療局精神保健課長通知. 優生保護法により人工妊娠中絶を実施する時期の基準の変更について(平成2年3月20日 健医精発第12号). [厚生労働省]

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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