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双子妊娠でのNIPTの精度:21・18・13トリソミーの検出率と従来検査との比較

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医として遺伝医療に携わっています。

双子妊娠でも、NIPTの21トリソミーの検出率は単胎に近い水準にあります。2019年の更新メタ解析では98.2%、偽陽性率は0.05%でした。一方、18トリソミーと13トリソミーは対象となった罹患例が少なく、精度の評価はまだ定まっていません。この記事では、双子妊娠でのNIPTの性能を研究データに基づいて整理します。数字が時期によってどう変わってきたのか、なぜ双子では単胎より慎重に読む必要があるのか、コンバインド検査など従来の検査と比べてどうなのかを、臨床遺伝専門医の立場から整理します。

⏱ 30秒でわかる要約

Q. 双子でもNIPTは正確ですか?

21トリソミーについては、2019年の更新メタ解析で検出率98.2%、偽陽性率0.05%と、単胎に近い性能が示されています。ただし解析に含まれた罹患例は56例で、単胎の研究と比べると規模はずっと小さいです。

Q. 18・13トリソミーはどうですか?

同じメタ解析で18トリソミーは88.9%(18例)、13トリソミーは66.7%(3例)でした。症例が少なく、精度の評価は定まっていません。

Q. 従来の検査よりNIPTのほうが正確?

双子ではコンバインド検査の検出率が75%前後、偽陽性率が9%前後と報告されており、NIPTはこれを大きく上回ります。

Q. 結果が出ないことは多い?

初回で結果が出ない割合は、単胎3.4%に対して一絨毛膜双胎4.9%、二絨毛膜双胎11.3%という報告があります。

この記事でわかること
📖 読了時間:約13分
🧬 NIPT教科書 第6章(6-2)
★ 臨床遺伝専門医監修

Q. 双子妊娠でのNIPTの精度は、単胎と同じですか?

A. 21トリソミーについては、単胎に近い検出率と偽陽性率が報告されています。ただし双子の研究に含まれる罹患例は数十例規模で、数万例規模の単胎の研究と同じ確かさで「同等」とは言い切れません。18・13トリソミーは症例がさらに少なく、検出率の推定値には大きな幅があります。高リスクの結果が出た場合は、単胎と同じく確定検査で確認します。

  • ➤21トリソミー → 検出率98.2%・偽陽性率0.05%(2019年の更新メタ解析、56例)
  • ➤数字の推移 → 2015年の93.7%から上昇。症例対照研究の除外と検査数の増加が影響
  • ➤18・13トリソミー → 88.9%(18例)、66.7%(3例)で評価は未確定
  • ➤従来検査 → 双子のコンバインド検査は検出率75%前後・偽陽性率9%前後
  • ➤結果が出ない割合 → 二絨毛膜双胎で11.3%と、単胎や一絨毛膜双胎より高い

双子妊娠でのNIPTの精度と、21・18・13トリソミーの検出率を解説するインフォグラフィック

1. 双子妊娠でNIPTの精度が単胎と分けて検討される理由

双子でもNIPTは受けられます。ただ、その精度は単胎のデータをそのまま当てはめず、双子の研究で別に確かめる必要があります。理由は大きく3つあります。2人の胎児のDNAが1本の採血の中で混ざること、2人の染色体が食い違う場合があること、そして双子の研究の規模が単胎よりはるかに小さいことです。双子のNIPTについての一般的な疑問(いつから受けられるか、性別はわかるかなど)は、双子のNIPTのページで扱っています。

1つ目は、DNAが混ざることです。NIPTは母体血中に流れ込んだ胎盤由来のDNA断片を数えて、特定の染色体が多いかどうかを判定します。双子では2人分の胎盤(一絨毛膜双胎では共有の胎盤)からDNAが出ており、検査で得られるのはその合計です。2人とも同じ染色体の構成であれば問題は小さいのですが、一方だけが罹患している場合、罹患している児のDNAはもう一方の児と母体のDNAに薄められます。

2つ目は、2人の染色体が食い違うことがある点です。二卵性双胎は別々の受精卵から育つため、染色体の数の異常は多くの場合、一方の児だけに起こります。一卵性双胎は同じ受精卵から分かれるため原則として2人とも同じ結果になりますが、まれに受精後の細胞分裂の誤りによって2人の染色体が異なる例も知られています。膜性(胎盤や膜の数)と卵性の関係は、前のページの双子の卵性・膜性とNIPTで詳しく説明しています。

3つ目は、研究の規模です。単胎のNIPTの性能は数十万件規模の検査で検証されているのに対し、双子の研究で解析された21トリソミーの罹患例は、後で見るように数十例規模です。検出率が「100%」と報告されていても、罹患例が少なければ信頼区間(真の値がありそうな範囲)は広くなります。双子で数字を読むときは、割合と同時に、何例の罹患例から計算された値なのかを見ることが欠かせません。性能の数字が集団によってどう意味を変えるかは、高リスク集団と低リスク集団におけるcfDNA NIPTで整理しています。また、一児が妊娠初期に消失したバニシングツインは、見かけ上は単胎でもNIPTの結果に影響することがあります。

2. 21トリソミーの検出率:メタ解析の推移

双子妊娠での21トリソミーの検出率は、2015年のメタ解析で93.7%、2017年の更新で100%、2019年の更新で98.2%と報告されてきました。数字が上下しているように見えますが、これは対象とした研究の選び方と、含まれた罹患例の数が変わったためです。メタアナリシス(メタ解析)は複数の研究を統合して全体の性能を推定する方法で、どの研究を含めるかで結果が変わります。

2015年メタ解析検出率93.7%・5研究430検査
▶
2017年更新検出率100%・5研究1,135検査
▶
2019年更新検出率98.2%・罹患56例
▶
2021年コホート感度95.0%・罹患20例

93.7%から100%へ:数字が上がった3つの理由

2015年のメタ解析では、双子の21トリソミーの検出率は93.7%(95%信頼区間83.6〜99.2%)、偽陽性率は0.23%で、5研究・430検査をまとめたものでした。同じ解析での単胎の検出率は99.2%で、双子のほうがやや低い結果でした[1]。

約1年後の2017年の更新では、双子の検出率は100%(95%信頼区間95.2〜100%)、偽陽性率は0%となり、5研究・1,135検査が解析されました[2]。数字が上がった理由として、3つの要素が重なっています。1つ目は検査数が430件から1,135件に増えたこと、2つ目は、検査技術・解析方法や研究集団が更新されたことです。同じ更新メタ解析では単胎の成績も検出率99.7%、偽陽性率0.04%と報告されています[2]。

3つ目は、研究の選び方が変わったことです。2017年の更新では、症例対照研究を除外し、コホート研究に絞っています[2]。症例対照研究とは、すでに罹患が分かっている検体と非罹患の検体を集めて比べる研究デザインで、罹患例の割合が実際の妊婦さんの集団とかけ離れます。実臨床の対象集団を追跡するコホート研究は、あらかじめ罹患例と非罹患例を選ぶ症例対照研究より、実際の診療での検査性能を評価するのに適しています。数字が「上がった」のは技術の進歩だけでなく、より実態に近い研究を選んだ結果でもあります。

その後のコホート研究とメタ解析

2017年以降も双子のコホート研究が積み重ねられ、2019年の更新メタ解析では、21トリソミーの検出率は98.2%(95%信頼区間83.2〜99.8%)、偽陽性率0.05%で、解析された罹患例は56例でした。18トリソミーは18例で88.9%、13トリソミーは3例で66.7%です[10]。

別のグループによる2017年のメタ解析でも、双子の21トリソミーの感度は0.99(95%信頼区間0.92〜1.00)、特異度は1.00と、単胎に近い値が示されました[4]。ただしこの解析には症例対照研究も含まれており、研究間で対象者が重複している可能性も指摘されています。フランスの多施設研究では、双子の420検査で21トリソミーの罹患例3例をすべて検出し、偽陽性は1例でした[5]。

📊 双子妊娠での21トリソミーのNIPTの性能

報告 規模 検出率(感度) 偽陽性率
2015年メタ解析 5研究・430検査 93.7% 0.23%
2017年更新メタ解析 5研究・1,135検査 100% 0%
2019年更新メタ解析 罹患56例 98.2% 0.05%
2021年コホート研究 罹患20例 95.0% 0.08%
2023年 全ゲノムNIPT 1,244検体・罹患17例 100% 特異度99.9%

※2015年[1]、2017年[2]、2019年[10]、2021年[6]、2023年[7]の報告による。研究ごとに対象集団や検査法が異なるため、数字の単純な比較はできません。

2018年以降のデータ

2021年には、妊娠10〜14週の双子を対象とした大規模なコホート研究と更新メタ解析が発表され、21トリソミーの感度は95.0%(95%信頼区間75.1〜100%)、偽陽性率は0.08%でした。この研究の罹患例は20例です[3][6]。罹患例が20例の場合、1例見逃すだけで感度は5ポイント下がります。95%信頼区間の下限が75.1%と低いのは、そのためです。

全染色体を解析する方式のNIPTでも、双子での成績が報告されています。イタリアの検査室で2年間に解析された双子の1,244検体では、21トリソミーの感度が100%(17例中17例)、特異度が99.9%、陽性的中率が94.4%で、初回に結果が出なかった割合は0.87%でした[7]。検査法や対象の集団が研究ごとに違うため、数字を横に並べて優劣をつけることはできませんが、21トリソミーについては、検査法によらず単胎に近い性能が繰り返し確認されている、と読むのが妥当です。

罹患例が少ないことの意味

双子の研究では、もっとも多い21トリソミーでも、1つの解析に含まれる罹患例は数十例にとどまります。単胎のメタ解析では1,000例を超える罹患例が解析されており、ここに桁違いの差があります。検出率の点推定値(98.2%や100%)が単胎と変わらなく見えても、信頼区間の幅が広く、「単胎と同等である」と統計的に言い切るには、まだ例数が足りないのが現状です。

この点は、NIPTの結果が陰性だったときの受け止め方にも関わります。21トリソミーの見逃しは非常に少ないと考えられますが、双子では単胎ほどの確かさで数字を示せないことを、検査前の説明の段階で共有しておくことが大切だと考えています。検査の性能を研究デザインと例数まで含めて説明できることが、出生前検査を担う専門医の役割の一つです。

💡 用語解説:信頼区間

信頼区間とは、研究で得られた割合(点推定値)に対して、真の値がありそうな範囲を示したものです。95%信頼区間であれば、同じ方法で研究を繰り返したとき、その95%で区間が真の値を含むことを意味します。罹患例が少ないほど区間は広くなります。双子のNIPTで「検出率100%(95%信頼区間95.2〜100%)」と書かれていれば、真の検出率は95%程度である可能性も残る、と読みます。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「100%」の横に何例と書いてあるか】

双子のNIPTの論文を読むとき、まず確かめるのは検出率そのものより、その数字が何例の罹患例から出ているかです。20例のうち20例を見つければ100%ですが、21例目を見逃せば95%台になります。数字がきれいに見えるほど、分母を確認する習慣が大切だと考えています。

それでも、21トリソミーについては研究が増えるたびに単胎に近い成績が確認されてきました。限界を理解したうえで使えば、双子の妊婦さんにとってもNIPTは意味のある選択肢になると考えています。

3. 18トリソミー・13トリソミーの精度

双子での18トリソミーと13トリソミーのNIPTの精度は、21トリソミーよりさらに限られたデータしかありません。2019年の更新メタ解析では、18トリソミーの検出率は88.9%(95%信頼区間64.8〜97.2%)で罹患例18例、13トリソミーは66.7%で罹患例は3例でした。偽陽性率はそれぞれ0.03%、0.19%です[10]。対象疾患の詳しい説明は、18トリソミーと13トリソミーのページをご覧ください。

研究ごとの検出例

2017年の別のメタ解析でも、18トリソミーの感度は0.85(95%信頼区間0.55〜0.98)で5研究・1,167検査・罹患13例、13トリソミーの感度は1.00(95%信頼区間0.30〜1.00)で3研究・605検査・罹患3例でした[4]。13トリソミーの信頼区間は30%から100%まで及んでおり、この数字から双子での13トリソミーの検出率を推定することは、実質的にできません。

🧪 双子妊娠での18・13トリソミーのNIPTの性能

対象 報告 罹患例 検出率(感度)
18トリソミー 2019年更新メタ解析 18例 88.9%
18トリソミー 2017年メタ解析(別グループ) 13例 85%
13トリソミー 2019年更新メタ解析 3例 66.7%
13トリソミー 2017年メタ解析(別グループ) 3例 100%(95%信頼区間30〜100%)

※2019年[10]、2017年[4]の報告による。罹患例が少ないため、同じ13トリソミーでも報告によって66.7%と100%に分かれます。

18トリソミーと13トリソミーでNIPTの成績が21トリソミーより低くなりやすいのは、双子に限った話ではありません。単胎でも、18・13トリソミーの妊娠では胎盤が小さく、母体血中の胎児由来DNAの割合(胎児分画)が低くなる傾向があり、検出が難しくなります。双子ではここに、2人分のDNAが混ざるという条件が加わります。

見逃された例から分かること

双子で18トリソミーが見逃された報告を詳しく見ると、2人の染色体が食い違っていた例や、胎盤の組織を調べられず原因を確かめられなかった例が含まれています。NIPTが測っているのは胎盤由来のDNAであるため、胎児と胎盤の染色体構成が異なる胎盤限局性モザイクがあると、結果が胎児の状態と一致しないことがあります。

一卵性双胎でも2人の染色体が異なることがある点は、見逃されやすい論点です。一卵性双胎は同じ受精卵から分かれますが、分かれる前後の細胞分裂で染色体の不分離が起きたり、トリソミーの細胞から1本が失われる「トリソミーレスキュー」が一方の児にだけ起きたりすると、2人の核型が食い違います。このような場合、一方の児の正常なDNAに、罹患した児のDNAが薄められることになり、検出が難しくなります。

見逃しの例は数が少なく、個々の原因をすべて特定することはできていません。ただ、双子のNIPTで陰性だった後に、超音波で一方の児だけに形態の異常が見つかった場合は、NIPTの結果にかかわらず確定検査を検討する、という考え方は単胎と変わりません。

4. 双子のNIPTで分かること・分からないこと

双子のNIPTで高い精度が示されているのは21トリソミーで、18・13トリソミーは参考程度、性染色体の数の異常はデータがごく限られています。加えて、NIPTの結果が高リスクであっても、2人のうちどちらの児が罹患しているのかは、NIPTだけでは分かりません。

性染色体の数の異常(ターナー症候群やクラインフェルター症候群など)について、双子を対象とした評価はごくわずかです。2024年の総説では、性染色体の異常4例を対象とした研究で感度100%、特異度99.8%とされていますが、データはまだ限られているとまとめられています[3]。性染色体の異常そのものについては、NIPTでわかる性染色体異常で解説しています。

性別についても、双子ならではの限界があります。NIPTはY染色体由来のDNAがあるかどうかで性別を判定するため、Y染色体が検出されれば「少なくとも1人は男児」、検出されなければ「2人とも女児」と分かります。しかし、Y染色体が検出されたときに男児が1人なのか2人なのかは、原理的に区別が難しいのです。

卵性(一卵性か二卵性か)は、母体と胎児のDNAの違いを一塩基多型(SNP)で見分ける方式のNIPTで推定できる場合があります。ただし卵性の判定は検査法によって可否が異なり、すべてのNIPTで提供されるものではありません。卵性と膜性の関係は6-1 双子の卵性・膜性とNIPTで扱っています。

💡 用語解説:二卵性双胎と一卵性双胎

二卵性双胎は、2つの卵子がそれぞれ受精してできた双子で、遺伝的にはきょうだいと同じ関係です。染色体の数の異常は多くの場合、一方の児だけに起こります。一卵性双胎は1つの受精卵が2つに分かれてできた双子で、原則として同じ遺伝情報を持ちますが、分かれる時期によって胎盤が1つの場合(一絨毛膜)と2つの場合(二絨毛膜)があります。

5. 従来の検査との比較:コンバインド検査・クアトロテスト

双子妊娠では、従来の血清マーカーを使う検査の性能が単胎より低く、コンバインド検査の検出率は75%、偽陽性率は9%と報告されています。単胎のコンバインド検査は偽陽性率5%で検出率85〜90%とされており、双子では見つけられる割合が下がり、偽陽性は増えます[3]。コンバインド検査は、母体年齢、NT(胎児後頸部の液体の厚さ)、母体血中のhCGとPAPP-Aを組み合わせてリスクを計算する検査です。

双子で血清マーカーが働きにくい理由は、母体血中のホルモンやタンパク質の値が、2人分の胎盤から出た量の合計になるためです。一方の児だけが罹患している二卵性双胎では、罹患した児の胎盤から出る異常な値が、もう一方の正常な胎盤から出る値と混ざって目立たなくなります。NTは胎児ごとに測れるため、2人それぞれのリスクを計算する手がかりになりますが、血清マーカーの部分はどうしても平均化されてしまいます。

妊娠中期のクアトロテスト(母体血清マーカー検査)も同じ理由で双子では性能が下がり、二絨毛膜双胎では特に影響が大きいと考えられます。NIPTも2人分のDNAが混ざるという点では同じ制約を受けますが、21トリソミーの検出率が90%台後半、偽陽性率が0.1%未満という双子での成績は、従来の検査を大きく上回っています[3]。

⚖️ 双子妊娠での21トリソミーの検査の比較

検査 検出率 偽陽性率 双子での弱点
コンバインド検査 75% 9% 血清マーカーが2人分の合計になる
NIPT 98.2% 0.05% 罹患した児のDNAが薄められる場合がある

※2024年の総説[3]にまとめられた数値による。コンバインド検査と NIPT の数値は別々の研究から得られたもので、同じ妊婦さんで比べた値ではありません。

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6. 一絨毛膜と二絨毛膜で精度は違うか

理論上は、胎盤を共有する一絨毛膜双胎のほうが、NIPTの判定は単胎に近い条件になります。一方、二絨毛膜双胎では結果が出ない割合が高いことが報告されています。一絨毛膜双胎のほとんどは一卵性で、原則として2人の染色体は同じです。2人が同じように罹患していれば、両方の児の胎盤からトリソミーのDNAが出るため、検出しやすくなります。

これに対して二絨毛膜双胎の多くは二卵性で、罹患は一方の児だけのことが多くなります。妊娠初期の双子を対象とした研究では、初回の検査で結果が出なかった割合は、単胎3.4%、一絨毛膜双胎4.9%、二絨毛膜双胎11.3%でした[8]。双子では母体血中の胎児由来DNAの総量は単胎より多いものの、1人あたりの寄与は単胎の3分の2程度にとどまるという報告もあります[3]。二卵性双胎で罹患した児のDNAが少ないと見逃しが起こる仕組みや、それを補う判定の工夫については、次のページの双子でNIPTが難しくなる理由で詳しく扱います。

ただし、膜性ごとに検出率を比べた研究は、罹患例がさらに少なくなるため、「一絨毛膜なら何%、二絨毛膜なら何%」と示せるだけのデータはありません。膜性は妊娠初期の超音波でほぼ確実に判定できるため、NIPTを受ける前に膜性を確認しておくことが、結果を読むうえでの前提になります。胎児分画の考え方そのものは胎児ゲノム率(胎児分画)で説明しています。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【膜性を知ってから結果を読む】

双子のNIPTの結果は、膜性がわかっていて初めて意味がはっきりします。一絨毛膜双胎で高リスクと出れば、原則として2人ともに当てはまる可能性を考えます。二絨毛膜双胎では、多くの場合どちらか一方の可能性を考えますが、どちらなのかはNIPTでは分かりません。

同じ「高リスク」でも、その後に必要な確認の方法が膜性によって変わります。双子のNIPTは、妊娠初期の超音波で膜性を確認することとセットで考えるべき検査だと考えています。

7. 日本で双子がNIPTを受けるとき

日本医学会の出生前検査認証制度では、認証施設で扱うNIPTの標準的な対象疾患は13・18・21トリソミーです。双胎への対応可否や実施条件は医療機関によって異なるため、受検前に各施設で確認する必要があります[9]。

海外では、米国産科婦人科学会(ACOG)、国際出生前診断学会(ISPD)、米国臨床遺伝・ゲノム学会(ACMG)が、双子妊娠でも一般的な染色体の数の異常のスクリーニングとしてNIPTを用いることを支持する立場をとるようになっています[3]。かつては「データが足りないため多胎には勧めない」とする見解もありましたが、研究の蓄積とともに位置づけが変わってきました。各学会の推奨の変遷は双子妊娠のNIPT:学会の推奨とそのほかの検査で整理します。

双子でNIPTを受ける際には、受ける前に膜性を確認しておくこと、21トリソミー以外の精度は確立していないこと、高リスクの場合にどちらの児かが分からないことを理解しておく必要があります。高リスクの結果が出た場合の確定検査の進め方は、双子でNIPT陽性だったときの対応で解説します。ミネルバクリニックで双子の妊婦さんが受けられるNIPTのプランは、双子(双胎)で受けられるNIPTにまとめています。

よくある質問(FAQ)

Q1. 双子でもNIPTの精度は単胎と同じですか?

21トリソミーについては、2019年の更新メタ解析で検出率98.2%、偽陽性率0.05%と、単胎に近い成績が報告されています。ただし解析された罹患例は56例で、単胎の研究より規模がずっと小さいため、単胎と同じ確かさで「同等」とまでは言えません。18・13トリソミーは症例が少なく、精度は確立していません。

Q2. 二卵性の双子だとNIPTで見逃されやすいのですか?

二卵性双胎では多くの場合、罹患するのは一方の児だけで、罹患した児のDNAがもう一方の児のDNAに薄められるため、理論上は検出が難しくなります。また、二絨毛膜双胎では初回に結果が出ない割合が11.3%と、単胎の3.4%より高いと報告されています。仕組みの詳細は6-3のページで解説しています。

Q3. 18・13トリソミーも双子で分かりますか?

NIPTの対象にはなっていますが、双子での精度は確立していません。2019年の更新メタ解析では、18トリソミーの検出率が88.9%(罹患18例)、13トリソミーは66.7%(罹患3例)で、21トリソミーより低く、推定値の幅も大きい状況です。

Q4. NIPTで双子の性別は分かりますか?

Y染色体由来のDNAが検出されれば「少なくとも1人は男児」、検出されなければ「2人とも女児」と分かります。ただし、男児が1人なのか2人なのかを区別することは、原理的に難しいのが現状です。

Q5. 双子ではクアトロテストよりNIPTのほうが正確ですか?

はい、21トリソミーについてはNIPTのほうが大きく上回ります。双子では血清マーカーの値が2人分の合計になるため従来の検査の性能が下がり、コンバインド検査で検出率75%、偽陽性率9%と報告されています。NIPTは双子でも検出率90%台後半、偽陽性率0.1%未満の成績が報告されています。

8. まとめ

双子妊娠でのNIPTは、21トリソミーについて単胎に近い性能を持つことが、2015年以降のメタ解析とコホート研究で繰り返し示されてきました。検出率は93.7%から100%、98.2%と報告されており、研究の選択基準や対象例数が異なるため、各推定値は信頼区間と症例数を併せて解釈する必要があります[1][2][10]。

一方で、解析された罹患例は数十例規模にとどまり、18・13トリソミーや性染色体については精度が確立していません。二絨毛膜双胎では結果が出ない割合が高く[8]、高リスクの結果が出てもどちらの児かは分かりません。それでも、双子では従来の血清マーカー検査の性能が大きく下がるため、21トリソミーについて、NIPTは双子妊娠でも従来の血清マーカー検査より高い検出率と低い偽陽性率が報告されているスクリーニング検査です。膜性の確認とセットで受け、高リスクの結果は確定検査で確かめる、という使い方が前提になります。

🧬 双子妊娠でNIPTをお考えの方へ

ミネルバクリニックでは、常駐する臨床遺伝専門医が、双子妊娠でのNIPTの精度と限界、膜性による結果の読み方を含めて検査前の遺伝カウンセリングを行い、NIPTを実施しています。高リスクの結果が出た場合の確定検査の流れも、事前にご説明しています。

参考文献

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  • [2] Analysis of cell-free DNA in maternal blood in screening for aneuploidies: updated meta-analysis. Ultrasound Obstet Gynecol. 2017;50(3):302-314. [DOI 10.1002/uog.17484]
  • [3] Boo HY, Han YJ. Cell-free DNA screening in twin pregnancies. Obstet Gynecol Sci. 2024;67(2):160-168. [PubMed 38268143 / DOI 10.5468/ogs.23135]
  • [4] Performance of non-invasive prenatal screening for fetal aneuploidy in twin pregnancies: a meta-analysis. Prenat Diagn. 2017. [DOI 10.1002/pd.5118]
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  • [6] Cell-free DNA testing of maternal blood in screening for trisomies in twin pregnancy: updated cohort study at 10-14 weeks and meta-analysis. Ultrasound Obstet Gynecol. 2021;58:178-189. [DOI 10.1002/uog.23648]
  • [7] Clinical Experience with Genome-Wide Noninvasive Prenatal Screening in a Large Cohort of Twin Pregnancies. Genes. 2023;14(5):982. [DOI 10.3390/genes14050982]
  • [8] First-trimester screening for trisomies by cfDNA testing of maternal blood in singleton and twin pregnancies: factors affecting test failure. Ultrasound Obstet Gynecol. 2019. [DOI 10.1002/uog.20290]
  • [9] 日本医学会 出生前検査認証制度等運営委員会. NIPT等の出生前検査に関する情報提供及び施設(医療機関・検査分析機関)認証の指針(令和4年2月). 第7回NIPT等の出生前検査に関する専門委員会 資料1. [厚生労働省]
  • [10] Gil MM, Galeva S, Jani J, Konstantinidou L, Akolekar R, Plana MN, Nicolaides KH. Screening for trisomies by cfDNA testing of maternal blood in twin pregnancy: update of The Fetal Medicine Foundation results and meta-analysis. Ultrasound Obstet Gynecol. 2019;53(6):734-742. [DOI 10.1002/uog.20284]

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 当サイトの記事は、院長が自ら執筆し、医学的な内容を確認してから公開しています。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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