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自閉スペクトラム症(自閉症・ASD)はすぐにわかるのか?
自閉スペクトラム症(自閉症・ASD)の兆候は2歳前後になって出てくることが多く、産まれてすぐにはわかりません。ただ、成長していくと他の子との違いが出てくるので違和感を覚えることが出てきます。
自閉スペクトラム症(自閉症・ASD)の赤ちゃんの頃のサイン
自閉スペクトラム症(自閉症・ASD)の子どもは、その場にふさわしい社会的行動がとれないことが特徴です。乳幼児期から行動特性が顕著になり始め、特に早い段階から保護者や周囲の人たちが気づきやすいサインを発しています。
主なサインとして以下の行動があります。
- ・ほとんど泣かない
- ・些細な事でも激しく泣く
- ・夜中ちょっとした物音ですぐ起きる
- ・独りで寝ていても起床時に泣かない
- ・指さしした方向を見ない
- ・あやしたりくすぐったりしても笑わない
- ・表情が乏しい
- ・初語がかなり遅い
- ・名前を呼んでも振り返らない
- ・抱っこをするのを嫌がったり、暴れたりする
なお、自閉症全体の8割には知的障害(IQ70未満)が伴いますが、残りの2割は知的な遅れがありません。知的な機能が高い自閉症は「高機能自閉症」と呼ばれています。また、一般的に自閉スペクトラム症の赤ちゃんは手がかからないことが多いと言われています。
自閉スペクトラム症(自閉症・ASD)の子どもの特徴・成長すると現われる行動
自閉スペクトラム症(自閉症・ASD)の子どもは成長をすると他の子と違う特性が現れます。より顕著でわかりやすい行動をする場合も出てくるほどです。ただし、すべての子どもに同じような行動特性が現れるわけではありません。また、いくつかの特性に当てはまるからといって自閉スペクトラム症と判断しないでください。もし気になる点があれば小児精神科の医師に相談をしましょう。
- ・1人遊びを好む
- ・視線が合いにくい
- ・目が合ってもすぐに目をそらしてしまう
- ・人とコミュニケーションを取ろうとしない
- ・人や状況に対して自然にかかわれない
- ・人の気持ちを察するのが苦手
- ・言葉を覚えるのが遅い
定型成長している子どもの特徴
定型成長している子どもと自閉スペクトラム症(自閉症・ASD)の子どもの特徴には違いがあります。この項では定型成長している子どもの主な特徴をご紹介します。
- ・取ってほしいおもちゃなどを指さす
- ・言葉は喋れないが表情でしてほしいことを訴えてくる
- ・正しい方法でバイバイをする
- ・親が迎えにきたら、嬉しそうに近寄る
- ・名前を呼ぶと反応する
- ・大人が手を広げると「抱っこしてほしい」のポーズをとる
- ・抱っこすると大人に身体を預けてくる
- ・手をつなぐことができる
- ・オムツ替えや靴を履くときに足を出すなどして協力してくれる
- ・テレビで映った動作の真似する
- ・大人の真似をする
- ・知らない人を警戒する
- ・人見知りをする
- ・知っている人に笑いかける
- ・名前を呼ぶと振り向く
- ・近くによその子がいると喜んだり、怖がったりと何かしらの反応をする
- ・他の子が使っているおもちゃに興味を示す
- ・大人から離れると不安な表情になる
上記の行動をしないからといって自閉スペクトラム症と決まったわけではありません。0歳だと医師も診断できない可能性があります。
自閉症スペクトラム(自閉症・ASD)の原因は?
以前は、「親の教育が悪い」といわれていましたが、現在では親の教育とは関係ないと証明されています。原因の9割が遺伝子によるものといわれています。ただし、遺伝子がどのように関わっているのかは研究をしているところで、まだはっきりとはしていません。
子どもが自閉スペクトラム症(自閉症・ASD)と診断されてもご自分を責めないでください。
自閉症スペクトラム(自閉症・ASD)の診断方法は?
他の子と比べて違いを感じることで小児精神科の診察を受けて判明したり、定期健診で医師が気つくケースがあったりします。どんなケースであっても一つの症状だけで診断することはせず、さまざまな方法で調べてから判断をしています。
「DSM-5」の基準を満たしていることが必須となります。以下のA、B、C、Dになりますのでご確認ください。
A:社会的コミュニケーションおよび相互関係における持続的障害(以下の3点で示される)
・社会的・情緒的な相互関係の障害。
・他者との交流に用いられる非言語的コミュニケーション(ノンバーバル・コミュニケーション)の障害。
・年齢相応の対人関係性の発達や維持の障害。B:限定された反復する様式の行動、興味、活動(以下の2点以上の特徴で示される)
・常同的で反復的な運動動作や物体の使用、あるいは話し方。
・同一性へのこだわり、日常動作への融通の効かない執着、言語・非言語上の儀式的な行動パターン。
・集中度・焦点づけが異常に強くて限定的であり、固定された興味がある。
・感覚入力に対する敏感性あるいは鈍感性、あるいは感覚に関する環境に対する普通以上の関心。C:症状は発達早期の段階で必ず出現するが、後になって明らかになるものもある。
D:症状は社会や職業その他の重要な機能に重大な障害を引き起こしている。
(参照:DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル)
自閉症スペクトラム(自閉症・ASD)の子どもとの接し方は?
もし自閉スペクトラム症(自閉症・ASD)と診断をされたら、まずはお子さんの特性を知ることから初めてください。自閉スペクトラム症は人によって特性が違ってきます。ご自分のお子さんがどういった特性や症状があるかを知ることで接し方も変わってきます。
また、自閉スペクトラム症(自閉症・ASD)は治療法が確立されていません。診断されたら療育がスタートさせましょう。
療育とは、日常生活で本人が困り感を感じるようになったときに周りの接し方の工夫や本人の社会的技能を高めるトレーニングです。主に以下のような訓練を実施します。
・行動療法
かんしゃくやパニックなど、その場において好ましくない行動に対しては静かに見守り(叱責や罰を与えたりせずに無視する)、問題行動が収まって好ましい行動がとれたときにはほめたり、ごほうびを与えたりする。
・構造化
1日のスケジュール(時間割)を表にまとめてわかりやすくしたり、作業の手順を細かいステップに分けて文字や絵を交えて説明したりするなど、今は何をすればいいのか、なにをやらなくてよいかを明らかにして、情報の取捨選択をしやすくする。
・感覚統合訓練
脳が音や光、匂い、触感など五感で受けた刺激をどのように認識・反応し、行動すればよいかを指示する働きが感覚統合です。コマ回しやあやとり、折り紙などで手指の細かな動きと目や手の協調運動を促したり、三輪車やボール遊びで身体の複数の部分を同時に使う動きを行い、感覚統合を養います。
これらの療育は一部です。お子さんの特性によっては別のトレーニングを受ける場合があります。療育は、地域の療育センターなどの公的な施設のほか、病院やクリニックなどに併設された施設、民間の施設などで行っていますので、どんなことを学ぶのかお子さんと一緒に確認をしてください。
まとめ|赤ちゃんに自閉症の兆候がみられたら専門機関へ相談を
自閉症スペクトラムの赤ちゃんと定型発達の赤ちゃんの様子に違いはあります。しかしながら、それだけで判断するのは早計です。
もし記事を読んでみて「周りの子と違う」、「行動に心当たりがある」といった場合は、早めに近くの専門機関やお住まいの自治体の子ども発達センターや児童発達支援センターに相談したりの、小児科医に受診したりしてみてください。早く検査を受けて診断をしてくれるかもしれません。