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「妊娠したのにつわりがない!これって異常なの?」
妊娠すると必ずつわりに悩まされると思っている人は多いのではないでしょうか。そのため、いざ自分が妊娠したときにつわりがないと、お腹の赤ちゃんや自分に異常があるのではないかと不安に思う人もいます。しかし、実際は、つわりがないことは決してめずらしいことではなく、心配する必要はありません。
またつわりに関しては、さまざまなエピソードや憶測が飛び交っており、それらが不安を助長しているのも事実です。そこで今回は、つわりが起こる原因やつわりがない人の割合と特徴、先天性疾患や流産との関係について解説します。つわりがないことに不安を感じている人は、ぜひ最後まで目を通してみてくださいね。
つわりがないケースもある
つわりは必ずしも起こるものではなく、妊娠中であってもつわりを経験しない妊婦もいます。一般的に、つわりは妊娠5週頃に始まり、9週頃をピークとして16〜18週頃におさまることが多いとされています。
しかし、つわりの重さや期間はかなり個人差が大きく、なかには妊娠中18週を過ぎた後もずっとつわりがある人もいます。反対に、妊娠期間を通してまったくつわりがないということも十分にあり得ることです。
つわりが起こるのはなぜ?
つわりが起こる理由については諸説ありますが、その明確な原因は未だに解明されていません。これまで、つわりの原因として考えられてきたものとして、ホルモンの上昇やストレスなどが挙げられます。
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・胎盤から分泌されるホルモンの上昇によるもの
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つわりが始まる妊娠初期にはhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンが分泌され、その量は妊娠10週頃にピークを迎えた後、徐々に落ち着いていきます。これはちょうどつわりの症状が現れる時期と重なっているため、つわりの原因はホルモンバランスの変化ではないかと考えられています。
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・妊婦自身の心理的、または社会的ストレス、夫婦間の問題など心的な要因によるもの
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たとえば、つわりのひどい妊婦が実家へ帰るとつわりがマシになり、夫婦間でトラブルが起こるとつわりがひどくなったなど、妊婦からの体験談を分析した結果、心的な要素もつわりの重さに関係があるのではないかと考えられています。
つわりの原因については、さまざまな研究が行われていますが、いずれも明確な根拠が見つかっていないのが現状です。
つわりがない人の割合
一般的に、妊婦の50〜80%に吐き気や嘔吐といったつわりの症状が見られるとされていますが、裏を返せば、20〜50%の妊婦はつわりがないということです。
2人以上出産経験がある女性500人を対象に雪印が行った調査では、1人目、2人目に関係なく、つわりを経験した人は約8割であるという結果もあります。
つまり、妊婦の2〜5人に1人はつわりを経験しないということです。
つわりがない人の特徴
つわりがなかった人に見られる特徴としては、以下のような項目が挙げられます。
- ・ストレスに強い
- ・順応力が高い
つわりの原因は明確になっていませんが、ホルモンバランスの急激な変化に体がついていけないためだとする説が主流です。つまり、つわりがない人は、体がホルモン分泌の増加に順応している、ストレスに強い体質であるとも考えられます。
しかしながら、これらはあくまで一例であり、この特徴に当てはまっていてもつわりが起こることもあり得ます。
つわりがないけど問題ないの?
つわりがないことは珍しいことではなく、何か問題があるわけではありません。妊娠中のつらいことの一つに、つわりのエピソードが語られるため、つわりがないと心配になる人もいるでしょう。
しかし、これまでに説明したように、つわりの重さや有無は個人差が大きく、2〜5人に1人はつわりを経験しないまま出産を終えています。つわりがない人は、「つわりがなくて恵まれているな」程度に考えて、ストレスを感じないようにすることが大切です。
つわりがないとダウン症など障害児になる?
つわりと胎児の先天性疾患には、特に相関はありません。
「つわりがないとダウン症や先天性の病気を患いやすい」という話を聞いたことがある人もいるかもしれませんが、医学的根拠はなく、単なる噂に過ぎません。
ダウン症は600〜700人に1人の確率で起きる染色体異常が原因であるため、誰にでも起こりうるものです。また、つわりが起こるメカニズム自体が解明されていないため、因果関係も証明されていません。そのため「つわりがないから、お腹の赤ちゃんは何か病気を患っているかもしれない…」と不安を感じる必要はないのです。
つわりが重いとダウン症などの障害児が生まれてくる?
反対につわりが重たいとダウン症などの障害児が生まれてくるという噂がありますが、根拠のない噂です。つわりの重い・軽いによって、ダウン症などの障害児が生まれてくる因果関係が証明されていませんのでご注意ください。
もし気になるならば、NIPT(新型出生前診断)や羊水検査、絨毛検査といった出生前診断を受けるのをおすすめします。ただし、結果によってご家族の人生やお腹の中の赤ちゃんに大きな影響を及ぼしますので安易な気持ちで受けると後悔をするかもしれません。きちんとご夫婦やカップルで十分に話し合った上で受検をしてください。
つわりが軽いと難産になる?
これも妊婦さんの間でよく流れる噂です。つわりの重さによって難産になることはありません。医学的な根拠は全くありませんので気にしないでください。
難産になるかどうかは子宮口の柔らかさや皮下脂肪の量、出産回数などで変わると言われています。つわりが軽くて食事を摂り過ぎによって太ってしまい難産になる方がいます。つわりが軽いからといって食事の摂り過ぎには注意しましょう。
つわりが急になくなったら稽留流産のサイン?
つわりが早い段階で急になくなったからといって、稽留(けいりゅう)流産の前兆だと心配する必要はありません。
稽留流産とは、赤ちゃんが死んでしまっているのに、子宮の中に留まっている状態をいいます。日本産婦人科医会が定める稽留流産の診断基準に、つわりの有無は記載されていません。実際に、流産前につわりがなくなったという声もあれば、稽留流産していても胎児が排出されるまではつわりが続いたという声もあります。
そのため、急につわりがなくなったことが流産の前兆であるとはいえず、心配する必要はありません。どうしても不安であれば、担当の医師に相談し、確認してもらいましょう。
妊娠つわりによって起きるリスク
アメリカの産婦人科学会では、妊娠つわりによって以下の5つがリスクとして考えられると発表しています。
- ・複数の胎児を妊娠している(多胎妊娠)
- ・軽度または重度の吐き気と嘔吐を伴う以前の妊娠
- ・あなたのお母さんまたはお姉さんは、ひどいつわりと妊娠の嘔吐がありました
- ・乗り物酔いや片頭痛の病歴
- ・女性の胎児を妊娠している
一方でつわりが軽い・ないという妊婦さんのリスクについては特に大きな発表はされていません。医師によってまちまちですが、つわりは約80%の妊婦さんが経験者です。つまり5人に1人はつわりがない方もいるということです。つわりがないのは珍しくありませんので気にせずにマタニティライフを過ごしてください。
まとめ
つわりがないことについて、「ダウン症の可能性があるのか」、「先天性の病気があるのか」、「流産の前兆なのか」など、よく耳にする話について、医学的な根拠の有無とともに解説しました。
そもそも、つわりがなぜ起こるのかというメカニズム自体が解明されておらず、つわりに関するさまざまな通説も根拠がないものがほとんどです。
そのため、つわりがないからといって不安になる必要はありません。胎児や妊婦にとってマタニティライフを過ごすためには、「つわりがなくてラッキーだな」とポジティブに考えて、ストレスを溜めないように過ごすことが大切です。