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労働基準法で定められている産休は産前休業が出産予定日の6週間前から、産後休業が出産後8週間までとなっており、育休は出産後子どもが1歳(最長2歳)の誕生日を迎える前日までとなっています。
その間給与を受け取ることができないということから、さまざまな手当金が給付されることになりますが、どれも申請が必要であるため、自動的にもらえるというものではありません。
そのため、産休や育休でもらえる手当の種類を把握し、期限内に漏れなく申請する必要があるのです。
この記事では、産休、育休でもらえる出産育児一時金、出産手当金、育児休業給付金について、対象者や金額、申請方法などを詳しくご紹介していきます。
これから産休に入るという方、産休中で手当の申請方法が知りたいという方は、ぜひ参考にしてみてください。
出産育児一時金
出産時は健康保険の加入者であっても保険が適用されず、本来なら全額自己負担となるところですが、負担の大きい出産費用を補填するために設けられた制度が出産育児一時金となります。
まずは、出産育児一時金について詳しくご紹介します。
出産育児一時金の対象者
出産育児一時金の対象者は以下の方になります。
- 健康保険・国民健康保険に加入している、もしくは配偶者の健康保険や国民健康保険の被扶養者となっている方
- 妊娠4か月(85日)以上で出産する方
出産育児一時金の対象者は、健康保険や国民健康保険に加入している方、またはそれらに加入している方の被扶養者であることが条件となるため、会社員であることや自分自身が健康保険に加入しているなどの制限はありません。
しかし、妊娠4か月以上での出産となることが条件となり、それ以前の流産や死産、中絶などは支給の対象に含まれません。
反対に、4か月以降で流産してしまった、死産してしまったという場合には出産育児一時金の給付対象となります。
出産育児一時金の金額
出産育児一時金は、1人の赤ちゃんにつき42万円と決められています。しかし、産科医療補償制度に加入していない医療機関などで出産した場合の金額は40万4,000円となります。
1人の赤ちゃんごとの金額となるため、双子の場合は84万円の支給ということになります。
出産育児一時金の受け取り方と申請方法
出産育児一時金の受け取り方は2通りあります。
一つは直接支払制度というもので、本人に代わって医療機関などが健康保険組合に請求する制度です。病院の窓口での支払いは出産育児一時金の金額を超えた分のみとなるため、最初に多額の出産費用を用意する必要がありません。
直接支払制度での申請は以下のような流れで行われます。
- 医療機関へ保険証を提示して書類にサインをし、申し込みをする
- 出産後に明細が交付される
- 医療機関が支払期間に出産育児一時金を請求する
- 支払期間が健康保険組合に出産育児一時金を請求する
- 健康保険組合が支払期間へ支払いをする
- 支払い期間が医療機関に支払いをする
もう一つは受取代理制度というもので、直接支払制度が利用できない施設などで、医療機関などが本人に代わって出産育児一時金を受け取ることができる制度です。この場合は事前に加入している健康保険組合に申請が必要となるため、注意が必要です。
受取代理制度での申請は以下のような流れで行われます。
- 申請書に必要事項を記入して健康保険組合に提出する
- 健康保険組合から医療機関に申請受付通知が送付される
- 出産後に医療機関が健康保険組合に費用などの書類を送付する
- 健康保険組合が医療機関に支払う
多くの場合、直接支払制度が利用されることとなりますが、出産する施設がどちらに対応しているかを出産前に確認しておくようにしましょう。
出産手当金
働いている女性が出産するとなると、どうしても仕事を休むことになり、その分のお給料は支払われないことになります。
その間、給与の代わりとして金銭的補助を受けることができる制度を出産手当金といいます。
ここからは、出産手当金の対象者や申請方法について詳しくご紹介します。
出産手当金の対象者
出産手当金を取得できるのは、以下のような条件を満たしている方です。
- 勤務先の健康保険に加入している
- 妊娠4か月以降の出産
- 出産のために休業していて、給与の支払いがない
出産育児一時金との違いとして、出産手当金は妊婦さん自身が健康保険の被保険者であることが条件となるため、パートナーの扶養に入っている方や、国民健康保険に加入している方は対象外となります。
出産期間は出産一時金と同様に妊娠4か月目以降の出産と定められており、85日未満の流産や死産、中絶などは給付の対象となりません。
また、出産のために休業していることが条件となるため、産前休業、産後休業中に給与を受け取っていない方が対象となります。しかし、万が一産休中に給与の支払いがあっても、日額が出産手当金の日額よりも少ないケースでは、差額分が支給されることとなります。
出産手当金の金額
出産手当金は以下のような式で計算されます。
- 支給開始日の以前12か月分の各標準報酬月額を平均した額÷30日×2/3
標準報酬月額とは、基本給や能力給、通勤手当、住宅手当などの総額をもとに社会保険が定めている金額のことで、健康保険組合のホームページで確認することができます。
たとえば、標準報酬月額が30万円、産前休暇が42日、産後休暇が56日だった場合、以下の金額を受け取れます。
- 30万円÷30日×2/3=6,667円(日額)
- 6,667×98日=65万3,366円
出産手当金は申請が受理されてから1~2か月後に振り込まれることになるため、全額が一気に振り込まれますが、日数がかかるということを覚えておきましょう。
出産手当金の申請方法
出産手当金は以下のような方法で申請します。
- 「健康保険出産手当金申請書」を会社から取り寄せる
- 必要書類を確認して準備する(健康保険出産手当金申請書+健康保険証の写し)
- 産後に必要書類を提出する
健康保険出産手当金申請書は、会社の総務部や人事部で担当していることが多いため、どの部署に申請すべきか事前に確認しておきましょう。
また、会社側に証明書類を用意してもらう必要があるため、健康保険組合に直接送付するのではなく、産後、会社に依頼することがほとんどです。
出産後の申請となるため後回しにしてしまいがちですが、出産手当金の申請期限は産休開始の翌日から2年以内となっているため、期限内の申請を忘れないようにしましょう。
育児休業給付金
出産手当金や出産育児一時金は健康保険から支払われるのに対して、育児休業給付金は雇用保険から支払われる制度です。
育休中の給与の補填として役立つ制度なので、いくらもらえるのか?いつからもらえるのか?といった基本情報を把握しておきましょう。
ここからは、育児休業給付金について詳しくご紹介します。
育児休業給付金の対象者
育児休業給付金を受け取るためには、以下の条件を満たしている必要があります。
【育休前】
- 雇用保険の被保険者
- 休業前の2年間に就業日数が11日以上ある月が12か月以上ある
【育休中】
- 育休中に支払われる賃金は休業前の8割未満
- 育休中の就業日数が月10日以下
育児休業給付金の受給資格は、育休前と育休中両方の条件を満たしている方となるため、それぞれしっかり確認しておきましょう。
育休中については、会社によって賃金が支払われることがあるためこのような条件が設定されています。また、育休中に労働をすることは可能ですが、労働日数が10日を超えると育児休業給付金は支給されません。
育児休業給付金の支給期間
育児休業給付金は、ママだけではなくパパも受け取れる制度ですが、支給期間が異なります。
- 母親…産後休業期間終了後、その翌日から子どもが1歳となる前日までの期間
- 父親…子どもの出生当日から1歳のとなる前日までの期間
ママは産後休業があるため、パパとの育休期間はこのように違ってきます。
また、育休は基本的に子どもが1歳となる前日までとなりますが、保育園が決まらないなどの理由から1歳6か月~2歳まで延長することも可能です。
会社によっては、その後も支援制度として時短勤務や中抜けなどができる場合もあるため、会社と相談のうえ利用できる制度を確認するようにしましょう。
育児休業給付金の金額
育児休業給付金の支給額は、開始日から6か月までは賃金の67%、7か月目からは賃金の50%が支給されます。
ただし、支給額には上限額、下限額が設定されており、毎年8月に改定されるため変動することを覚えておきましょう。
賃金月額は、育児休業前の給与6か月分の合計(ボーナスは含まない)を180で割って、1か月の支給日数(30日)をかけた金額です。
振り込みは原則2か月ごとに決められた金額が支給されることになり、初回の育児休業給付金は出産後4か月以降に振り込まれることになります。
育児休業給付金の申請方法
育児休業給付金の申請は「育児休業基本給付金の申請書」「受給資格確認票」の2種類書類が必要となり、会社を通じて手続きが行われます。
通常は、会社から本人が記入すべき書類の提出を求められるため、会社の指示に従って書類を提出するようにしましょう。
まとめ
産休、育休でもらえる出産育児一時金、出産手当金、育児休業給付金について、対象者や金額、申請方法などを詳しくご紹介しましたが、参考になりましたか?
産休中や育休中は給与としての賃金は支払われないことが大半ですが、今回ご紹介したような手当を受け取ることができます。
しかし、支給日までに思ったより時間がかかるということも事実。
出産に向けてさまざまな準備が必要ななかで、受け取れる手当は必ず申請しておきたいものです。
この記事を参考に、できる限り出産前に必要な書類を揃えたり、準備するべきものを把握したりして、赤ちゃんを迎える準備をしてくださいね。