InstagramInstagram

卵子の生存能力【存活】|卵子・妊娠の仕組みとタイミングの取り方を解説

女性の社会進出の進展や晩婚化の進行に伴って、妊娠を望んだときに備えて女性が取り組むべきことも多様化してきています。いざ妊娠を望んだときのために今ある卵子を大切にする取り組み全般や、キャリアプラン・ライフプランを鑑みて卵子を凍結保存する「卵活」や、妊娠に向けて健康的な身体づくりを行う取り組み、治療サポートを受ける「妊活」の考えが広まってきている現在ですが、これらの根本にある「卵子」や「妊娠」の仕組みをご存じでしょうか?

この記事では、卵子の基礎知識から始まり、妊娠の仕組み、卵子と精子の生存能力(この能力を”存活”と呼びます)、生存能力から考える妊娠しやすいタイミングに関して説明していきます。ぜひ最後までご覧ください。

卵子の基礎知識

女性医師
まず初めに、卵子の基礎知識として卵子がどのように作られているのか、作られた卵子の生存期間はどれくらいであるのかをご説明していきます。

卵子が作られるまで

卵子は「原始卵胞(げんしらんほう)」と呼ばれる細胞がもととなって作られています。この原始卵胞は女性の卵巣内に存在し、女性が母親のお腹の中にいるときから細胞分裂を通じて作られています。そして、生まれた後に原始卵胞が新しく作り出されることはありません

母親のお腹の中にいる、胎生6か月頃には原始卵胞は卵巣内に約700万個あり、この数をピークに原始卵胞は減少していきます。生まれてくるときには約200万個にまで減少しており、その後も自然と減少し続け、月経が始まる思春期・生殖適齢期を迎える頃には約20~30万個になっています。

その後、1周期の月経で約1000個の原始卵胞が減少していき、妊娠する可能性が著しく小さくなる35歳頃には約2~3万個にまで減少します。

原始卵胞は女性の出生後、新たには作り出されないため「排卵された卵子の年齢=排卵時の女性の年齢」という関係性があり、加齢は卵子が老化する原因となります。卵子の老化によって、妊娠率の低下や、流産率・先天性疾患を持った赤ちゃんの出生率が増大することが報告されています。

卵子の寿命

卵子の平均寿命は約12~36時間とされており、この時間が過ぎると卵子の受精能力は消滅します。

卵子の寿命には、個人差があるものの、女性自身の年齢が若いほど、卵子は新鮮であり寿命も比較的長く、女性の加齢に伴って卵子は老化し寿命も短くなります。

この卵子の寿命の変化には卵子のもととなる原始卵胞が大きく関係しています。女性の加齢に併せて原子卵胞も老いていき、これに伴って卵子の産生機能が衰えていくことが原因にあります。

妊娠の仕組み・流れ

ステップアップのイメージ

次に、妊娠の仕組みに関してご説明します。

妊娠に至るまでには、

  1. 排卵
  2. 射精・受精
  3. 着床

のステップを経ています。

それぞれに関して見ていきましょう。

排卵

「排卵」とは、原始卵胞の成熟に伴って成長した卵子が卵胞を破って、卵管へと放出されることを表しています。

卵子は原始卵胞をもととして作られていると説明しましたが、実際には原始卵胞1つ1つの中に卵子が存在しており、脳の視床下部や下垂体から分泌されるホルモン(卵胞ホルモンや黄体ホルモン)の影響を受け、原子卵胞が成熟していきます。

そして、一次卵胞、二次卵胞、成熟卵胞へと成長を遂げていき、十分に成長した成熟卵胞1つの中の卵子が卵胞を破って外に出ます。そして、卵巣へと飛び出た卵子は卵管采(らんかんさい:卵管の先にある手のひらを広げたような構造をした器官)にキャッチされ卵管へと放出されます。

排卵に至らなかった卵胞・卵子などの組織はその後、黄体と呼ばれるホルモンのもととなる細胞へと変化して卵巣内に残り続けます。

射精・受精

射精された精子は膣から子宮へと移動しますが、通常時は粘度の高い子宮頚管(しきゅうけいかん)粘液によって精子が子宮内へと入り込みにくい環境となっています。しかしながら、排卵が近づくようになると、受精しやすいように粘度の低い子宮頚管粘液が分泌され、精子が子宮内へと入り込みやすい環境へと変化します。

子宮頚管を通過して子宮へと移動した精子は更に奥へと進んでいき、排卵後、卵管を通っている卵子と出会います。そして、卵子と精子が結びつくことで受精に至ります。受精によって誕生した受精卵はその後、細胞分裂を繰り返しながら子宮へと移動していきます。

着床

受精卵は細胞分裂をすることで「胚」となります。胚は子宮に向かって卵管内を移動しながら成長を続けていき、子宮へとたどり着く頃(約5日)には胚盤胞(はいばんほう:着床のための準備が十分に整った状態の受精卵)へと成長します。

受精卵が成長を続ける間、子宮は内膜を厚く、ふかふかにして受精卵が着床しやすい環境を作っていきます。この子宮内膜に受精卵が結びつくことで「着床」に至ります。

つまり、着床のためには「受精卵の成長具合・質」「子宮内膜」の状態が良好であることが必要条件であり、この条件が満たされないことで着床に至らないという場合もあります。

受精卵が胚盤胞まで成長しなかった、胚盤胞になったものの着床のための準備が十分にできている成長ではなかった、子宮内膜が十分に厚くならなかったなどが原因として挙げられ、この原因には女性それぞれの体質なども関係しますが、「加齢」も大きく影響しています。

妊娠に向けたタイミングの取り方

卵子が作られるメカニズム、妊娠の仕組みが分かったところで、次に、妊娠を望んだ際の妊娠しやすいタイミングに関してご説明していきます。

女性の排卵の周期と、受精のために欠かせない精子、特に精子の寿命に関して説明を加えた後に、妊娠しやすいタイミング、妊娠を希望するか否かの検討・それに合わせた取り組みの順で見ていきましょう。

排卵の周期

排卵が起こるメカニズムにはホルモン(卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン))が関係していますが、この2つのホルモンバランスが変化することによって排卵・月経は生じており、ホルモンバランスの変化は約1か月(28~30日)を1周期として繰り返されています。

そして1周期の中でのホルモンの変化、子宮内・女性の身体の状態の変化に合わせて、①卵胞期、②排卵期、③黄体期と区分されています。それぞれに関して見ていきましょう。

卵胞期

月経が始まった日から、排卵までの期間が「卵胞期」として区分されます。この期間に、卵子を作り出すもととなる原始卵胞が脳の視床下部や下垂体の指令によって分泌されたホルモンの影響を受けて、成熟卵胞へと成長していきます。

加えて、卵胞から分泌されるエストロゲンによって、子宮内膜は受精卵が着床するときの準備に向けて少しずつ厚くなっていきます。

この期間にはエストロゲンがプロゲステロンよりも優位な状態にあります。

排卵期

排卵が実際に行われた日を「排卵日」として、排卵日前後の”排卵が行われたであろう”と推定可能な期間を「排卵期」と区分します。このとき、脳の視床下部が成熟した卵子が存在することを察知して、脳の下垂体からホルモン分泌が行われ、卵子は卵巣から卵管へと排出されます。

この期間ではエストロゲンの分泌が活発となり、卵胞期と比較して更に優位に立ちます(プロゲステロンの分泌もわずかに上昇します)。そして、女性の身体の変化として、平均体温よりも体温が上昇してくるようになります。

黄体期

排卵後、卵子が飛び出た後に残った卵胞・十分な成熟に至らなかった卵胞などの細胞組織が「黄体」へと変化し、黄体ホルモンを分泌するようになる期間を「黄体期」と呼びます。黄体ホルモンの影響によって、子宮内膜は受精卵が着床しやすい状態(厚く、ふかふかな状態)へと変化していきます。

この期間ではプロゲステロンの分泌が急激に活発化するため、プロゲステロンが優位に立ちます。女性の体温も「高温期」と呼ばれるように、平均体温よりも高い状態が続くようになります。

もし、妊娠に至らなかった場合には、2週間ほどかけて、エストロゲンとプロゲステロンの分泌が穏やかになって(卵胞期の状態へと戻って)いきます。この分泌量の減少によって、妊娠の準備を整えていた子宮内膜は必要なくなり、表面の一部が剥がれ落ち、血液と一緒に子宮口から排出されます。これが、いわゆる月経です。月経が再び訪れる頃には女性の基礎体温も下がり、「低温期」を迎えます。

精子の寿命

卵子の寿命は既に確認しましたが、精子がどのくらいの期間生存できるのかも受精・妊娠のためには知っておく必要があります。

結論をいうと、精子の寿命は卵子よりも長く、約2~3日とされています。一般に、精子は熱や酸(普段の女性の膣内は酸性に傾いています)に弱いため、膣内では4~8時間ほどで死滅します。

しかしながら、女性の排卵日が近づくと膣内はアルカリ性へと傾いていき、精子はより長く生存できるようになります。これに加えて、排卵日付近では粘度の低い子宮頚管粘液が多く分泌され、精子は子宮へと入り込みやすくなります。

そして、子宮へ入った精子は本来生存可能な期間(2~3日)、子宮の奥へと進み続けます。

妊娠しやすいタイミング

卵子は約12~36時間、一方の精子は約48~72時間生存可能であるということは、「卵子が排出されるタイミングよりも少し早く、精子が子宮内にいる状態」が妊娠のためには望ましいといえます。日数として考えると、妊娠しやすいための性行為のタイミングは排卵日の1~2日前となります。

このように考えると単純なものですが、月経の周期や排卵のタイミングは常に同じであるとは限りません。体調に大きく影響を受けるため、毎月タイミングがずれることの方がむしろ普通といえます。

排卵日を正確に特定することは難しいですが、排卵期を推定する方法として「月経開始日から遡って特定する方法」と「体温の変化から特定する方法」があります。継続的にチェックしていき、おおまかな排卵日を把握することが妊娠のためには大切だといえます。

妊娠を希望するかどうかを考える

卵子と精子の生存期間を考えると、排卵日から前後3日以上の期間があれば妊娠する可能性はほとんどないということですが、前述したように排卵のタイミングは一定ではありません。

妊娠を望む場合にはタイミングを見計らって性行為をすればよいのですが、妊娠を望まない場合にはタイミングに注意を払うことはもちろん、コンドームの着用や低用量ピルを服用するなど、避妊のための取り組みも大切です。

妊娠しにくいタイミング(安全日)だと思っていたのに、実は危険日だった、妊娠してしまったという不測の事態を避けるためにも、ご自身・パートナーが妊娠を希望するのかどうかを十分に検討するようにしましょう。

まとめ

仲の良い夫婦
ここまで、卵子が作られる仕組み、卵子の寿命、妊娠の仕組み、妊娠しやすいタイミングに関してご説明してきましたが、ご理解いただけたでしょうか?

晩婚化の進行に伴って不妊治療も随分と普及してきていますが、治療の初めには妊娠しやすいタイミングに性行為を行うタイミング法が採られるように、不妊症に悩まれているカップル・悩まれていないカップルともに、卵子や精子の生存期間、排卵の仕組みを理解することが妊娠に向けた取り組みへの第一歩となります。

この記事が妊娠に向けて励まれているカップルのお力になれば幸いです。

東京の「ミネルバクリニック」は臨床遺伝専門医が在籍するNIPT実施施設であり、たくさんの妊婦さんの悩みや不安と真摯に向き合い、笑顔になれる出産に導いてきました。ミネルバクリニックでは、妊娠9週から受けられる赤ちゃんの健康診断である「NIPT」を業界最新の技術と業界随一の対象疾患の広さで行っております。遺伝のエキスパートである臨床遺伝専門医が出生前診断を提供しておりますので、是非、お気軽にご相談ください。妊娠初期からの出生前診断を受ける医療機関にお悩みの方は、知識・経験・実績とも「第三者から認証されている」臨床遺伝専門医が診療している「ミネルバクリニック」まで是非、ご相談ください。

また、不妊にお悩みの方には、不妊の原因を遺伝子から特定し、最適な治療を考えることができる不妊治療遺伝子検査も実施しています。お気軽にご相談ください。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

関連記事