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「生理でもないのに出血した」「急にお腹が痛くなった」場合、女性に関連する疾患である「卵巣出血」が原因かもしれません。
卵巣出血とは、排卵後に形成される黄体からの出血や、それに伴う下腹部の痛みのことを指します。
腹痛や貧血などの症状があり、放置すると激痛が起こる可能性もあるため、腹痛がある場合は、早めにクリニックへ足を運んで医師の診察や検査を受けることが大切です。
この記事では、卵巣出血とはどのようなものなのか、原因や治療、その他よくある疑問について解説します。
卵巣出血とは
卵巣出血とは、排卵や性行為などの刺激によって卵巣から出血し、生理以外の出血や腹痛が起こることを指します。
卵巣出血は珍しい症状ではなく、20代〜30代の女性に多く見られます。また、排卵のある女性であれば誰でも起こりうる症状です。
卵巣出血は「子宮外妊娠」と症状が似ていることから、性行為の経験がある人で、卵巣出血をした場合はまずは妊娠しているかどうかを確認します。内診や超音波検査も行い、場合によってはCTやMRI検査も行うことがあります。
卵巣は子宮の両側に1つずつある生殖器官で、卵子の生成や成熟、排卵、女性ホルモンの分泌などを行う大切な臓器です。卵巣出血を繰り返すと卵巣に関連する病気のリスクが高まるともいわれているため、注意が必要です。
卵巣出血の症状
卵巣出血の主な症状は、出血や下腹部痛です。また、どのくらい出血しているかによっても、痛みや症状が変わってきます。
- 下腹部痛
- お腹を押すと痛い
- 排卵時期あたりに腹痛がある
- 痛みはないが、腹部に不快感や違和感がる
- お腹の右下が痛い
- 貧血
- 激痛
- 吐き気、嘔吐、下痢
- 血圧低下 など
卵巣出血に伴う腹痛は、突然起こり、痛みが持続することが特徴です。卵巣出血は60〜80%で右側の卵巣から起こることが多く、お腹の右側に痛みを感じることが多いようです。
なぜ右側の卵巣から出血することが多いのかというと、左側にあるS状結腸がクッションの役目を果たすことで黄体が破裂しにくいためです。
出血量が多いと痛みが広がり、吐き気や嘔吐、下痢などの症状が出るケースもあります。激痛を伴う場合や血圧低下、ショック状態となることもあるため、痛みがある場合は我慢せず、クリニックを受診しましょう。
卵巣出血の原因
卵巣出血の原因は、大きく3つに分けられます。
- 特発性
- 外因性
- 内因性
ここからは、それぞれの原因について解説していきます。
特発性
特発性の卵巣出血で最も多いのが、黄体からの出血です。
卵巣内には卵胞(卵子を包み込む袋)があり、月経直後から少しずつ大きくなっていきます。成熟した卵胞から卵子が放出されることを、排卵と呼びます。
排卵を終えると、卵胞は黄体に変化します。黄体内には細かな血管が多くあるため、刺激を与えることで卵巣出血や卵巣の腫れにつながるのです。
卵胞から黄体へ変化する時期を黄体期といい、卵巣出血のおよそ90%は黄体期に起こります。その次に、排卵時の出血があります。
黄体の中に血液が溜まる「出血性黄体嚢胞」ができることもあり、出血性黄体嚢胞ができただけでも腹痛を生じることがあります。月経1週間前は黄体が最も大きくなるため、この時期に卵巣出血が起こることが多いです。
卵巣出血が起こるきっかけで最も多いのが性行為によるもので、約40%を占めます。また、きっかけがなく起こる場合も30%ほどあります。
外因性
外因性の卵巣出血の場合、不妊治療(体外受精時の採卵)、子宮内膜症や卵巣手術、腹部の外傷、がんなど悪性腫瘍による卵巣への影響が考えられます。
内因性
抗凝固薬を内服している場合や、全身性の血液凝固異常症、血管疾患などが原因となった卵巣出血は内因性と呼ばれます。
卵巣出血の治療について
卵巣出血の治療は、出血量や症状によっても変わってきます。基本的な治療としては、輸液、造血剤を投与して安静にして過ごし、経過観察を行います。
80%ほどは自然に出血が止まり、お腹の中に溜まった血液も自然に吸収され、それに伴って痛みも引いていくことが多いです。しかし、急に貧血が進行する可能性もあるため、多くのケースで入院が必要となります。
痛みを我慢して仕事に出たものの、痛みが強くなり我慢できなくなってクリニックを受診するケースも多く、「おかしいな」と思ったら放置せず、痛みが激しくなる前にかかりつけの婦人科・産婦人科に相談しましょう。
卵巣出血は何日で治る?
出血量が少なく、血圧なども安定している場合は、数日〜1週間ほど入院して安静にすることで治ります。入院中は、症状が悪化しないか、お腹の中に溜まった血液量が増えないか、血液検査や経腟超音波などの検査を行いながら経過観察を行います。
腹腔内出血が止まらない場合や、出血量が多くショック状態となった場合は、緊急手術(開腹手術か腹腔鏡手術のいずれか)を行うこともあります。
一般的に、卵巣出血の痛みは4日間ほどで自然に治まっていくとされています。痛みが長く続く場合は、卵管炎、骨盤腹膜炎、子宮内膜症、がんなどの悪性腫瘍など他の病気の可能性も考えられるため、いずれにせよ早めの受診や検査が重要です。
卵巣出血を放置するとどうなる?
卵巣出血は自然に症状が軽快することもありますが、悪化して貧血や激痛、ショック状態が起こる可能性もあります。
症状が悪化すれば開腹手術や内視鏡手術をしなければならなくなる可能性もあるため、放置せずクリニックを受診しましょう。
卵巣出血を繰り返す場合は?
人によっては、卵巣出血を繰り返すこともあります。頻繁に卵巣出血を繰り返す場合は、低用量ピルなどを服用し、排卵を抑える治療を行うこともあります。
低用量ピルは高い避妊効果の他にも多くのメリットがあり、その一つが「子宮や卵巣を休ませることができる」というのものです。
卵巣出血の体験談
卵巣出血は排卵のある女性であれば誰にでも起こる可能性がありますが、患者さんの中には「自分で体験するまで卵巣出血なんて聞いたこともなかった」という方も少なくありません。
ここからは、卵巣出血と診断された方の体験談をご紹介します。
体験談1:徐々に痛みが強くなり、病院に駆け込んだ
夕食後にソファでうとうとしていると、かすかな意識の中で下腹部の痛みを感じていました。お腹の痛みが治まらないので、寝たら治るかと思いベッドに入りました。
しかし、治るどころか痛みが悪化。吐き気すら感じるようになり、家族に頼んで深夜に病院に駆け込みました。痛み止めを投与してもらい検査した結果、当初は「盲腸炎」ではないかといわれていましたが、「卵巣出血」であると判明。そのまま緊急入院しました。
体験談2:突然の激痛に見舞われたケース
休日の朝、顔を洗っていると下腹部に痛みを感じました。「なんだろう?」と思っていると、数分後に突然の激痛が…!
あまりの痛みに吐き気がして、冷や汗が止まらなくなりました。髪もボサボサだしパジャマだったので一瞬躊躇いましたが、このままでは命が危ないと思い救急車を呼びました。
卵巣出血に関連するよくある疑問
ここからは、卵巣出血に関連するよくある疑問について解説します。
性行為をしていないのに卵巣出血した
性行為をしていない場合も、卵巣出血である可能性があります。卵巣出血が起こるきっかけで最も多いのは性行為によるものですが、30%ほどは誘因なく発症します。
排卵のある女性であれば誰でも起きる可能性があるため、下腹部痛など気になる症状がある場合は、婦人科・産婦人科を受診しましょう。
卵巣出血すると妊娠できない?
卵巣出血は20代〜30代の女性に多いことから「卵巣が傷ついたことで、妊娠できなくなるのでは?」と不安に感じる方も多いようです。
しかし、卵巣出血した場合でも排卵機能が正常であれば、ほとんどの場合で妊娠・出産に影響することはありません。
卵巣出血の「自宅安静」はどうすればいい?
卵巣出血と診断された場合は、安静にしている必要があります。
仕事などやむを得ず外出する場合も、ハイヒールやパンプスなどはお腹に響くため、スニーカーなど平たい靴を履くようにしましょう。また、運動や性行為は少なくとも2週間から4週間は避けましょう。
出血の程度や症状によっても安静が推奨される期間は異なるため、医師の指示に従うことが大切です。
まとめ
卵巣出血は、20代〜30代の女性に多いものの、珍しい症状ではなく排卵のある女性であれば誰でも起こる可能性があります。
自然に軽快する場合も多いものの、出血量の多い場合や出血が止まらない場合は貧血や激痛、吐き気が起こり、ショック状態になることもあるため、早めに婦人科や産婦人科を受診することが大切です。
卵巣出血を経験したことのある方の体験談には「自分が経験するまで『卵巣出血』を知らなかった」という人も多いです。お腹の痛みが続く場合は我慢せず、早めに医師の診断を受けましょう。