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排卵が行われたであろう日を「排卵日」といい、更に、この排卵日付近の期間は俗に「危険日」と呼ばれることもあります。性行為をすることで妊娠する可能性が高い日を「危険日」と呼ぶわけですが、具体的に卵子が受精可能である時間がどれくらいであるのかご存じですか?
妊娠をまだ望んでいないというカップルであれば危険日での性行為を避ける、男女ともに避妊に努めるなど行われますが、一方で、妊活に励まれているカップルであれば「妊娠しやすいタイミング」を知って効果的に取り組みたいことと思います。
また、現代では不妊症に悩まれているカップルも多いですが、不妊症に対する最初の治療としては「タイミング法」が行われています。これは妊娠しやすいタイミングを検査などから推定し、それに合わせて性行為を行うという治療方法であり、妊娠のためには適切なタイミングに性行為を行うということが、いかに重要であるかがお分かりいただけるかと思います。
この記事では排卵された卵子の寿命がどれくらいであるのか、受精可能時間がどれくらいであるのかを見た後に、排卵のサイクルがどのような形で1周しているのか、サイクルの中でも妊娠しやすいのはどのタイミングであるのかをご説明してまいります。ぜひ最後までご覧になってください。
卵子の寿命・受精可能時間
結論をいいますと、卵子の平均寿命は”約12時間~36時間”とされています。この時間を経過すると卵子の受精能力は消滅し、精子と出会ったとしても受精に至るということが起きなくなります。
卵子の寿命に幅が生じるのは、個人差による部分と、老化による部分に大別できます。個人差は女性自身の体質や遺伝などが関係するのですが、老化の方は、一般に女性自身の年齢が若いほど卵子は新鮮であり寿命が比較的長く、加齢によって卵子そのものも老化していき寿命が短くなる傾向にあります。
現代では、卵子の数を調べるAMH検査や、卵巣内で排卵がきちんと行われているかを確認する超音波検査など、ご自身の卵子の状態を知るための検査方法も確立されており、妊活のために活用することが可能です。以下のコラムではAMH検査の詳細をまとめていますので、ぜひそちらもご確認してみてください。
卵子の寿命はもちろんですが、妊娠のためには精子も欠かせないものです。精子に関しても少し見ておきましょう。
精子の寿命は卵子よりも比較的長く、平均寿命は”約48時間~72時間”であるとされています。この時間は精子にとって生存しやすい環境下に置かれた際の平均寿命であり、この時間は射精した際の膣内の状態・環境に大きく依存します。
排卵日付近でない場合には膣内は酸性に傾いており、精子は熱や酸に弱いといった特性があります。そのため、膣内が酸性に傾いている環境下での精子の寿命は約4~8時間であるとされています。
そして、排卵日が近づいてくると膣内が徐々にアルカリ性へと傾いていき、精子が生存しやすい環境に変化していきます。そして、精子の寿命は膣内の環境だけでなく、卵子と同様に、個人差や加齢による影響も受けているということを忘れずにいましょう。
卵子と同様にご自身の精子の状態を調べる検査も確立しています。容易に取り組めるものですと、精子検査キットもあります。ご自身で精子を見て調べるもの、採取した精子をアプリAIで調べるもの、検査機関で調べるものなど種類もさまざまです。使い方なども含めた詳細は以下のコラムにてご紹介していますので、お時間のある方はぜひそちらもご覧になってください。
排卵のサイクル
次に、妊娠しやすいタイミングを知るための予備知識として、卵子がどのようにできているのか排卵のサイクルを追いながら見ていきましょう。
妊娠しやすいタイミングを知る方法には、医療機関の検査を利用したり、体温を継続的に計っておく方法がありますので、月経のサイクルに合わせて女性の身体にはどのような変化が見られるのかも併せてご説明していきます。
排卵のサイクルはおおまかに、
- 1:卵胞・卵子の成熟
- 2:排卵
- 3-1:着床・妊娠
- 3-2:月経
で一周となります。
それぞれに関して詳しく見ていきましょう。
1:卵胞・卵子の成熟
排卵のサイクルは卵胞・卵子が成熟することから始まります。女性の卵巣の中にはたくさんの「原始卵胞」という細胞が存在しており、この卵胞ひとつひとつの中に卵子が存在しています。
脳の視床下部や下垂体からの指令を受けて「卵胞刺激ホルモン」と呼ばれる、卵胞・卵子の成熟開始の合図を出すホルモンが分泌されます。このホルモンの刺激を受けることで、卵巣内の数十個の卵胞が成熟を開始するようになります。
卵胞・卵子は成熟にともなって徐々に大きくなっていき、一次卵胞、二次卵胞、成熟卵胞と成長していきます。
この成熟期間では排卵のサイクルに大きく関係する女性ホルモン(卵胞ホルモンと黄体ホルモン)の中でも卵胞ホルモンが優位な状態にあります。そして、女性の身体は平均体温よりもやや低い・変わらない状態となっており、これを「低温期」と呼びます。
2:排卵
卵胞の成熟期間では、数十個の卵胞が成熟を開始しますが、最終的に排卵する卵胞はひとつです(中には卵子がふたつ排出され双子を妊娠するということもあります)。これは排卵のために十分に成熟した卵胞(この卵胞を主席卵胞とも呼びます)が成熟していく中で、他の卵胞の成長を抑制するからです。
主席卵胞から排出された卵子は卵巣内に飛び出し、卵管の先端部にあるイソギンチャクのような構造をした卵管采(らんかんさい)という器官にキャッチされ、卵管へと移動していきます。
卵胞から卵子が排出され卵管へと移動する一連の過程が「排卵」にあたります。
3-1:着床・妊娠
排卵された卵子が卵管で精子と出会い受精することで受精卵となります。その後、受精卵は細胞分裂を繰り返し、着床のための準備を進めていきながら(着床のためには受精卵が胚盤胞という段階にまで成長する必要があります)、子宮に向かって移動していきます。
そして、子宮にたどり着く(卵管にて受精し約5日後といわれています)と、受精卵は子宮内膜に潜り込む(着床する)ことで妊娠となります。
着床のためには受精卵が胚盤胞まで成長している必要性があるとお伝えしましたが、これだけでなく、子宮内膜が厚くふかふかした状態になっていることも条件となります。この子宮内膜を厚くするために作用するホルモンが「黄体ホルモン」です。
このホルモンは卵胞の成熟期間・排卵の過程で出てくる、主席卵胞とならなかった卵胞や、卵子が飛び出した後に残った主席卵胞が変化して作られる「黄体」という組織から分泌されます。
そのため、排卵から卵子が受精能力を有している期間の間は、(卵胞ホルモンと比較して)黄体ホルモンが優位となります。黄体ホルモンが優位となっている期間には、黄体ホルモンの作用によって普段の体温が平均体温と比較して高くなるようになります。この期間を「高温期」と呼びます。
3-2:月経
排卵された卵子が受精せずに寿命を迎えた場合には、妊娠に向けて分泌量を増加させていた卵胞ホルモンと黄体ホルモンの分泌が2週間ほどかけて緩やかになっていきます。
黄体ホルモンの減少に伴って、厚くなっていた子宮内膜はその一部が剥がれ落ち、体内の血液と混ざって体外へと排出されます。これが「月経」にあたります。
加えて、黄体ホルモンの作用が緩やかになっていくため、女性の体温は徐々に低くなっていき、再び「低温期」を迎えるようになります。
妊娠のためのタイミング
卵子の寿命は約12時間~36時間、そして精子の寿命は約48時間~72時間であることから、「卵子が排出されるタイミングよりも少し早く、精子が子宮内にいる状態」が妊娠のために適した状態・タイミングであるといえます。日数として考えると、妊娠しやすいための性行為のタイミングは排卵日の1~2日前となります。
このように考えると、性行為のタイミングを合わせることが簡単であるように感じますが、月経の周期や排卵のタイミングは常に同じであるとは限りません。日常の生活習慣や体調などに大きく影響を受けるため、毎月タイミングがわずかにずれることの方が普通であるといえます。
「排卵」が行われる日を正確に測定することは困難ですが、排卵のサイクルの中では体温に変化が現れます。加えて、排卵サイクルの中の各ステップにはある程度、日数の目安をつけることができます。
そのため、継続的に体温を測定したり、月経が開始された日へと遡って何日が経過しているのかを把握することで、おおまかに「排卵」が行われるであろう日を推定することができます。このようにして、おおまかな排卵日を継続的に把握することが妊娠のための大切な一歩となります。
卵子の寿命を縮めないために
卵子の寿命には女性自身の体質といった個人差と、老化が関係していると説明しましたが、更に、老化は加齢によってもたらされる場合と、生活習慣によってもたらされる場合とに分類できます。
加齢による卵子の老化を防ぐことはできませんが、生活習慣を整えることによって卵子の老化を抑えることは可能です。老化を抑えることは、結果的に卵子の寿命が縮むのを防ぐことにもつながり、妊娠のチャンスを増やすことができるようにもなります。
卵子の老化防止のための取り組みは、健康的な身体づくりに向けた取り組みと変わりなく、「バランスのとれた食事」「適度な運動」「十分な睡眠」が基本となります。ぜひ一度、ご自身の生活習慣に卵子の老化を加速させるリスクが存在していないかを確認なさってください。
以下のコラムでは食生活・運動習慣という観点から卵子の質を向上させる(老化を防ぐ)取り組みの詳細をご説明していますので、ぜひそちらもご覧になってください。
まとめ
ここまで卵子の受精可能な時間、卵子がどのように作られているのか、排卵のサイクルの中でどのように女性の身体に変化が表れるのか、妊娠しやすいタイミング、卵子の老化を防止する取り組みに関してご説明してきましたが、ご理解いただけたでしょうか?
妊娠に向けて励むべき取り組みは、継続的に体温を測定する、生活習慣を見直すなど、どれも一定の時間を要するものです。すぐに結果が出るものではないということを理解し、無理のない範囲で日々の生活を妊娠に向けて価値あるものにして頂ければ十分かと思います。
この記事が妊活に励まれているカップルや、将来的に妊娠を考えている女性など、さまざまな方にとって価値を提供できるものとなれば幸いです。
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