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最近は若い人の中にも増えている子宮がんは、胎児を育てる場所である子宮体部から発生する「子宮体がん」と、出産の際の胎児の通り道である子宮頸部で発生する「子宮頸がん」に分けられます。
がんは遺伝子に傷がついて発症する病気と言われていますが、傷がつく確定的な原因が分からない病気という印象があります。
しかし子宮頸がんに関しては原因が特定されているため、予防もできるとされていて、早期発見できれば90%以上が完治すると言われています。
今回はその子宮頸がんについて詳しく解説します。
子宮頸がんとは?
子宮頸がんは検査や観察がしやすい子宮頸部、つまり子宮の入り口や膣付近に発生する、発見されやすい悪性腫瘍で、子宮がんのうちの約7割を占めるとされています。
最近は20歳~30歳代の若い世代にも増えており、ピークは30歳代後半~40歳代と若年化してきている中、毎年約1万人ほどが罹患し、そのうち3000人もの患者さんが命を落としていて、さらに年々増加傾向にあります。
そんな子宮頸がんは経過が特徴的で、がん化する前に異形成(子宮頸部上皮内病変)という、がんになる可能性のある細胞が増えるという前段階を経て、数年から10年程度の時間をかけ、ゆっくりとがん化していきます。
軽度の異形成の場合は自然と消滅する可能性があるので様子を見ますが、高度の異形成やがん化した場合、治療を行います。
扁平上皮がんと浸潤腺がん
子宮頸がんは、扁平上皮がんと浸潤腺がんとの2つに分けられます。
扁平上皮がんは別名「有棘(ゆうきょく)細胞がん」とも呼ばれる、できたてのがんのことで、上皮内新生物とも呼ばれます。
子宮頸部を覆う上皮が、異形成を経てがんになったもので、まだ周辺に転移するほど力が強くない状態のものです。
そして、扁平上皮がんを前がん病変として、浸潤腺がんへ悪化します。
浸潤腺がんは、周辺の血管やリンパ腺に入り込み全身を巡る、いわゆる「転移」するがんのことで、そうなると患部のみの摘出だけでなく、他に散らばってしまった大小のがん細胞に対しても治療を行う必要が出てきます。
子宮頸がんの原因と予防法
がんに罹患する理由については明確ではないものがほとんどですが、子宮頸がんについては原因が明確であり、一定の確率で予防も可能です。
ヒトパピローマウイルス(HPV)
子宮頸がんの原因は、男性も女性も接触で感染する「ヒトパピローマウイルス」です。
ヒトパピローマウイルスは遺伝子型が150種類以上あり、そのうちの数種ががんになりやすいと言われています。
どこにでも当たり前にいるウイルスで、性行為によって感染しますが、一生涯で誰でも1度は感染すると言われています。
感染すると子宮頸部表面の粘膜にいぼを作りますが、大抵の場合、免疫に攻撃されて2年以内に90%が自然に治癒します。
しかし残り10%の割合で、自然治癒できず長期的に感染が持続し異形成に発展し、ゆっくりと数年かけてがん化します。
子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)
性行為が未経験の時点で接種すると子宮頸がんが予防できるといわれているのが「子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)」です。
上述した150種類以上あるヒトパピローマウイルスの中の、特に子宮頸がんを発症しやすいHPV16型と18型の2つに感染する前の接種が有効とされていますが、性行為経験後でも26歳までは有効とされています。
ワクチンを受ける際、1997年4月2日~2006年4月1日生まれの女子については、2022年4月~2025年3月までの3年間について定期接種となり、無料で受けることができますが、これを逃した人についても、キャッチアップ摂取という機会が厚生労働省で儲けられています。
キャッチアップ接種についてはこちらもご参考ください。
「ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの接種を逃した方へ~キャッチアップ接種のご案内~」
決められた期間をあけて3回接種するとされるHPVワクチンですが、費用については小学校6年生~高校1年生までの接種が無料で、それ以外は医療機関によって金額設定が様々違う自費となり、1回1万5千円からが一般的となっています。
子宮頸がんの自覚症状
子宮頸がんは、
軽度異形成→高度異形成→扁平上皮がん→浸潤腺がん
という順序で悪化していき、異形成の段階では自覚症状はありませんが、がん化後は進行するに従って、以下のような症状が現われてきます。
- 月経以外・性行為の際などの不正出血
- 茶色い膿のような、粘液質・水っぽいなどのおりものの異常
- 月経期間が長引いたり経血が増えるなどの異常
- 下腹部痛・腰痛
- 血便や血尿
以上のような症状が見られたら、なるべく早めに受診することが早期発見に繋がります。
子宮頸がんの発見方法
子宮頸がんを発見する方法は、婦人科の受診と子宮頸がん検診です。
子宮がんを診断する検査
婦人科を受診すると、普段の生理の状態を知るための問診や、妊娠の診断にも欠かせない内診などが必ず行われますが、異常があって受診する場合、例えば生理中の異常であれば生理中に、おりものの異常であればおりものが分泌されている時に受診してください。
そして問診や内診の結果、子宮頸がんを疑う場合に行われる検査は次の通りです。
細胞診
細胞診と呼ばれる、スクリーニング検査を行います。
スクリーニング検査とは、症状がない場合に、疑われる疾患が無いかどうかを調べるための検査です。
膣を広げる為の器具を入れ、ヘラやブラシを使って子宮頸部を擦るようにして細胞を採取します。
器具を入れたり頸部を擦る際、違和感が生じることはありますが、痛みを感じることはほとんどありません。
コルポスコピー診(膣拡大鏡診)
子宮頸部に薬液である酢酸を塗り、コルポスコープと呼ばれる拡大鏡を使って、薬液に反応して変化する様子を診るという、細胞診で異常が見つかった場合に行われる検査です。
内診や細胞診同様、足を開いた体勢で行われ、膣内を広げる為に器具を入れるので不快感はありますが、15分ほどで終わる、体に負担の少ない検査方法です。
組織診
上記のコルポスコピー診の際に行われることもある、膣拡大鏡を用いて疑わしいと思われる病変部分を鉗子で摘まんで採取する検査方法が組織診です。
若干痛みを感じますが、麻酔などを使うほどのものではなく、検査後、痛みが続くようなら痛み止めの処方がある場合もあります。
出血がある場合もあるので、検査の際はナプキンを持参するとよいでしょう。
検査後に出血が続いても、2~3日もすれば止まります。
子宮頸がん検診
20歳になったら、HPVワクチンを接種した人も含めて、2年に1回の子宮頸がん検診をおすすめします。
子宮頸がん検診では、問診・内診と、上述した細胞診が行われます。
検査結果は「精密検査不要」と「要精密検査」のどちらかで、要精密検査と言われた場合、その結果を持って必ず子宮頸がんの検査ができる医療機関を受診しましょう。
必ずしも「要精密検査=子宮頸がん」ではありません。
子宮頸がんの治療法
子宮頸がんの治療法には、手術によって病巣を摘出する手術療法、抗がん剤を使用する化学療法、放射線を照射する放射線療法の3つがあります。
子宮頸がんの、ステージ別の治療法
子宮頸がんの治療は、病気の進行度(ステージ)と、妊娠を希望するのか、年齢や持病などにより、最適な治療法を選択します。
ステージ | 妊娠の希望の有無 | 治療法 | 副作用・後遺症など |
高度異形成上皮内がん微小浸潤がんの1A1期 | 妊娠希望 | 子宮頸部円錐切除術(子宮の入り口を切除) | 月経時に排血しにくい・流産・不妊 |
温存しない | 単純子宮全摘術(子宮のみ摘出) | ||
1A2期~2B期浸潤手前または周辺に若干の浸潤がみられる | 妊娠希望 | 広汎子宮頸部切除術子宮頸部と卵巣やリンパ節も含めその周辺を広範囲に切除し子宮体部を残す | 排尿障害・リンパ浮腫・ホルモン減少による更年期障害など |
温存しない | 広汎子宮全摘出術 | 排尿障害 | |
手術を希望しない | 放射線治療 | 放射線治療は胃腸障害や下痢、皮膚炎や腸閉塞など 抗がん剤治療は吐き気や血液毒性、腎毒性など |
|
抗がん剤 | |||
3A期~4A期がんが子宮外の臓器や組織に広範囲に転移しているまたは再発の場合 | 妊娠希望の選択は不可 手術療法は一般的に選択しない |
根治を目指して放射能療法または抗がん剤治療などを単独または組み合わせて行う | |
4期B期肝臓や肺・骨まで浸潤(末期) | 症状緩和の治療を行う |
子宮頸がん治療後の性行為について
妊娠を希望している場合、どのような治療をしたか、どんな術式だったかで、性行為を再開するタイミングは変わってくるので、治療後の性交渉についての相談も大切です。
目安としては、子宮頸部円錐切除術の場合、性交渉は術後1ヶ月後ですが、妊娠可能な時期は半年後です。
再発の可能性
治療法によっては再発の可能性もある子宮頸がんですが、再発率が高いのは75%で、治療後2~3年後です。
他には5年後というケースも少なくないので、一般的な再発時期に限らず、治療後は定期的な観察が必要となります。
まとめ
子宮頸がんについて解説しましたが、いかがでしたか?
早期がんのうちに治療すれば治癒率も高く、妊娠の希望を叶えられる可能性も十分ありますが、進行がんまで悪化してしまうと再発率や死亡率も高くなります。
子宮頸がんは予防が可能で、まずはHPVワクチンによる一次予防、次に子宮頸がん検診や婦人科受診で早期発見し、早期治療をうける二次予防という流れで、完治に繋げることも可能です。
この記事で、症状に心当たりのある方がいたら、是非早めの受診をお願い致します。