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せっかく妊娠の兆しが出てきたのに、時として「流産」してしまうという悲しい現実が起きます。特に妊娠初期に起きる出血は「流産したかも?」とドギマギすることでしょう。
流産のことなんて考えたくないかもしれませんが、妊婦さんは知識として知っておかないといけないのが現実です。そこで今回は妊娠初期に流産しやすい人を中心に原因や症状について詳しく解説をします。
妊娠初期に流産しやすい理由
流産とは、妊娠22週目まで何かしらの理由によって妊娠が継続できない状態を指します。22~37週未満で出産を迎える場合は“早産” として扱われ、流産とは区別されます。
同じ流産でも妊娠初期の12週目までの流産と13週目以降は主な理由が変わります。12週目までに流産してしまう理由のほとんどは受精卵の染色体異常です。流産した子宮内容物を調べると3分の2が染色体異常だったという報告もあるくらいです。つまり、母体が原因ではなく受精した段階で流産する運命だったのです。
一方、13週目以降の流産は母体が原因で起きるケースが増えていきます。子宮発育不全や子宮奇形、子宮筋腫、子宮内の癒着、頸管無力症といった性器の異常、高血圧、糖尿病といった病気が原因で流産するケースが多いのです。絨毛膜羊膜炎など、細菌などの感染が原因で流産するケースもあります。
流産の症状は?
主な症状は出血と下腹部の痛みです。性器からの出血は人によって量や色も違うので一概には言えませんが、流産となると血液と一緒に胎芽あるいは胎児とその付属物など子宮内容物が排出されます。流産が急速に進行すると出血量が増えてしまい、出血性ショックに陥ることもありますので注意が必要です。また、腹痛は流産が進行すると強まります。子宮内容物がすべて排出されると収まりますが、残っていると痛みが続きますので、こちらも注意が必要になります。
他にも自覚症状がないまま流産するケースもあります。特に多いのが妊娠3週目あたりに起きる化学流産です。この時期は尿や血液による妊娠反応はありますが、超音波検査での確認ができません。痛みもないため生理と間違えてしまう妊婦さんも多くいらっしゃいます。
以前は、特に気にされなかったですが、ドラッグストアや薬局で妊娠検査薬を購入できるようになってからピックアップされるようになりました。
流産になりやすいのはどんな人?
流産は妊娠した40%の女性が経験したという報告が上がるほどよくある疾患です。妊娠初期の12週目までの流産は不幸な運命だったといえますが、13週目から22週目までに起きる流産は遭う確率を下げることが可能です。そのためにどんな人が流産しやすいのかを知っておくといいかもしれません。
すでにご存じの妊婦さんも多いとは思いますが、改めて理由も含めて知っておくとご自分のマタニティライフに役立ちますのでぜひご覧ください。
35歳以上の高齢出産
出産年齢が35歳以上の妊婦さんは高齢出産になります。現代は女性の社会進出に伴い、晩婚化が進んで35歳以上で初産というのも珍しくなくなりました。もしかしたらこのコラムを読んでいる妊婦さんの中にも35歳以上の方がいるかもしれません。
ご存じの方も多いとは思いますが、年齢が高くなればなるほど流産するリスクは上昇します。特に35歳を超えると卵子の質が下がってきてしまい、受精卵の染色体異常が起きる確率が高まってしまうからです。下に年代別で表にしていますのでご確認ください。
妊婦の年齢 | 流産率 |
---|---|
35歳〜39歳 | 約20% |
40歳〜41歳 | 約40% |
42歳〜 | 約48% |
近年では、女性だけではなく、男性も年齢が上がると精子の質が落ちてしまうことがわかっています。ご自身だけではなくパートナーの年齢も気にするようにしましょう。
過去に流産経験がある
一度流産した女性が再び流産する確率は20%です。また、二度以上流産することを不育症と診断されます。流産の頻度は歳を重ねるごとに増加するため、高齢出産になると流産を繰り返す可能性が高いといえます。日本では、約100万人の不育症の患者がいると言われており、決して無視できる状況ではありません。ただし、妊娠12週目までに流産を乗り越えれば、妊婦さんの生活次第で無事出産まで辿り着ける可能性が高まりますので決して諦めないでください。
もし、高齢出産でもないのに不育症と診断された場合は、以下の病気の可能性がありますので早めに主治医に相談をして検査を受けてください。
・黄体機能不全
プロゲステロン分泌量が減少する症状です。プロゲステロン(黄体ホルモン)と呼ばれる女性ホルモンは、受精卵を着床しやすくするだけでなく、妊娠を継続させるのに欠かせません。黄体機能が不全ならば流産しやすくなります。
・抗リン脂質抗体症候群
抗リン脂質抗体が原因の自己免疫疾患です。全国に4万人の患者がいると考えられています。抗リン脂質抗体症候群は血栓症を起こしやすいという特徴がありますが、胎盤形成後の流産だけでなく、胎盤発育不全や胎児発育不全などを起こすリスクも高い病気です。不育症と診断されたら検査が実施されます。
・子宮奇形(子宮形成不全)
、卵管や子宮などのもとになるミュラー管と呼ばれる管が胎児のときにうまく癒合しなかったことによって起きる病気です。子宮奇形の方でも妊娠出産が問題なく行える場合も珍しくありませんが、形や程度によっては流産の原因となることもあります。
・甲状腺機能のトラブル
喉仏の下にある甲状腺は甲状腺ホルモンが分泌されています。人体の維持に大変重要な役割を果たすホルモンですが、多すぎたり少なすぎたりすると流産の原因となるのです。メカニズムはまだ明らかにされていませんが、甲状腺ホルモンが妊娠を維持するのに必要な黄体の機能を促し、胎児の成長にも関与すると考えられています。
太りすぎ・痩せすぎ
太りすぎは流産の原因です。なぜなら軽度肥満(この場合BMI 25〜29)で11.8%、高度肥満(BMI 28以上)で13.6%と標準体型(BMI 18~25以内)の妊婦さんよりも流産率が高いからです。また、肥満症は、妊娠糖尿病と妊娠高血圧症候群の原因となり、お腹の赤ちゃんが高血糖となったり、母子ともに生命の危険が及ぶ可能性があったりと悪いことづくめです。そのためご自分のBMIが25以上ならばダイエットをおすすめします。ただし、無理なダイエットは胎児に悪い影響が出てしまうため、食材を油で炒めるのではなく、蒸したりゆでたり、散歩やストレッチなどの軽い運動を週3日程度実施したりして体重を落としていきましょう。
一方、BMI18.5以下の痩せすぎも流産しやすいといえます。痩せすぎの女性は元々妊娠しづらい上に、妊娠中の貧血、早産・早産、低出生体重児の出産のリスクが高くなります。しかも2,500グラム以下の低出生体重児が生まれる恐れもあるくらいです。低体重児は、将来生活習慣病になる恐れがあるという報告もあります。そのためBMI18.5以下の女性は妊娠したら栄養バランスを整った食事を一日3回摂るようにしてください。必要な栄養素を毎日摂取することで流産のリスクが下がります。
タバコを吸っている
1日あたり10本以上喫煙している女性は、吸わない方よりも1.7倍流産するリスクがあります。1.4~1.5倍ほど早産しやすくなり、本数が増えれば増えるほどその傾向が強くなります。タバコは、血流を悪くし、血管の老化を早める「ニコチン」、酸素運搬を妨げる「一酸化炭素」のほか、約40種類の発ガン物質が含まれており、流産や早産の原因となっているのです。
他にもたばこを吸っている妊婦さんから生まれた子どもの出生時の体重は、たばこを吸わない妊婦から生まれた子どもに比べて平均200g軽く、また、出生時の体重が2500g以下の低出生体重児が生まれる頻度が2倍ほど高くなっています。他にも卵巣機能を低下させ、女性ホルモンの分泌が減少し、卵巣年齢が5~10歳老化してしまいます。そのため閉経が5年から10年ほど早くなってしまうのです。
しかも、無事生まれてきた子どもも奇形(先天異常)だったり、脳の異常(知能低下、発達障害など)、その他の病気の発生(喘息、糖尿病、アトピー性皮膚炎など)が起きたりします。副流煙や受動喫煙でも喫煙時と同じ症状が現われますので、周りの方も含めてすぐに禁煙をしてください。
お酒が好き
妊娠初期から出産、授乳が終わるまでお酒を飲むのはやめましょう。僅かなアルコール量でも流産や早産のリスクが高くなったり、胎児に悪影響を及ぼしたりするからです。週3回以上飲酒機会がある女性は、飲まない女性よりも流産しやすいという報告があります。
また、妊娠中の飲酒によって生まれてくる赤ちゃんには体重の減少、顔面などの奇形、脳の障害などを特徴とする「胎児性アルコール症候群」にかかる恐れがあります。大量飲酒者の女性アルコール依存症の子どもを対象とした調査では、30%に胎児性アルコール症候群が確認されたと報告されるくらいです。
ただし、妊娠0~4週未満の妊娠超初期段階では、赤ちゃんへの影響はほとんどないとされています。それは、この時期はまだ子宮に胎盤ができていないからです。しかしながら、妊娠に気づく時期が遅れれば胎盤から赤ちゃんへアルコールが送られてしまうので早めに禁酒をしましょう。
コーヒーや紅茶をよく飲む
妊婦さんとカフェインの有害性は広く知られており、コーヒーを飲むことによって、妊孕性(妊娠する力)が低下して、コーヒーを飲まない人と比べると妊娠率が低下すると言われています。2008年には、「1日に2杯以上コーヒーを飲む妊婦は飲まない人と比べ、流産の危険が2倍になる」という調査結果が、アメリカの「カイザー・パーマネント」(カリフォルニア州オークランド)の研究チームによって明らかにされています。
そして毎日8杯以上コーヒーを摂取していると、流産するリスクが約2倍以上に増えるそうです。そのためコーヒーは1日2杯までにしておきましょう。
運動をするのが好き
適度な運動は血行をよくして妊婦さんの健康促進や冷え性の予防につながりますが、息が切れるほどの激しい運動はかえって逆効果です。毎週1〜2時間の運動をしている人は、していない人よりも1.83倍流産のリスクが高く、毎週5時間以上の場合は1.83倍もリスクが上がってしまいます。
スケート、スキー、サイクリング、登山やハードなハイキング(傾斜が激しく未舗装ででこぼこの多い道)、バレーボール、バスケットボール、短距離走、バレエ、テニス、ゴルフ、ホットヨガ、筋トレ(無呼吸になりがちな激しいもの)は避けるようにしてください。
重たい荷物を持つ
妊娠12週目までの流産は繰り返すように胎児側が原因です。仮にこの時期に重たい荷物を持っても流産の原因になる可能性は低いといえます。しかしながら、13週目以降であれば、重たい荷物を持つことで子宮が圧迫されてしまい、お腹が張り、出血が起こる恐れがあるので持たないほうが無難です。
妊娠初期は、まだ赤ちゃんも小さく、母体のお腹も出てきておらず、お腹の中で守られています。立ち仕事をしている妊婦さんならば、健康体で、元気に動けているときであれば通常通りの仕事をして問題ありません。ただし、少しでも疲れが出た場合は休憩を取るようにしましょう。
子宮筋腫がある
すべての子宮筋腫が当てはまるわけではありませんが、子宮筋腫が原因で不妊や流産、早産になる可能性があります。なぜなら子宮筋腫が子宮ー胎盤の血流障害を引き起こしてしまうからです。また、赤ちゃんが大きく育ちにくい恐れもあります。
出産時は帝王切開になるリスクも高まるので注意が必要です。もし妊娠中に子宮筋腫が見つかったら産婦人科医と相談の上で症状をコントロールする程度の対症療法が行われます。
流産と診断されたらどうなる?
もし流産と診断されたならば、完全流産なのか不全流産なのか確認しないといけません。完全流産ならば子宮内容物がすべて排出されたので、次の生理がくれば再び妊娠できる可能性があります。しかし不全流産の場合、子宮内容物をすべて排出させないと次の妊娠ができなくなるので処置をするかどうか判断をする必要があるのです。
近年増えてきている稽留流産(けいりゅうりゅうざん)だった場合も同様です。次の生理が来ない限り妊娠はできませんので子宮内容物を手術で取り除くか自然に流れるのを待つか妊婦さんが選ぶ形になります。
自然に流れるのを待つ
自然排出を待つのメリットとして挙げられるのが手術を受けなくてもいい点です。ただし、いつ流れるのかわからないので確認のために定期的に医師の診察を受けなければいけません。
場合によっては排出時に大量の出血があったら緊急手術になるケースもあるので注意してください。ちなみにある研究では、診断から2週間待機した場合の排出率は、不完全流産は71%、稽留流産は35%という報告が上がっています。
医師の処置を受ける
医師の処置を受けるメリットは確実に子宮内容物が排出されることです。デメリットは費用負担が発生することと日帰り可能とはいえ手術を受けることです。
ごくまれに稽留流産や一部子宮内に妊娠組織が残ってしまう恐れがあるのもデメリットといえます。
流産を予防する方法はあるの?
早期流産の多くは胎児の染色体異常によるものです。これに関しては防ぎようがないため流産は避けられないものだったことを妊婦さんも周りの方も深く認識するしかありません。
しかし、妊娠13週目以降の流産であれば、母体が原因の流産は止めることが可能です。流産の予兆でもある下腹部の痛みと性器からの出血があった場合は、主治医に連絡をしてください。夜間や診療時間外だったら翌日に連絡をして指示を仰ぎましょう。
他の方法としては、飲酒、喫煙はしないで栄養バランスが取れた食事をし、たっぷりと睡眠を取り、リラックスして過ごすようにしましょう。
まとめ
ここまで流産しやすい人の特徴を中心に流産の原因や兆候についても詳しく解説をしてきました。妊娠初期である12週目までと13週目以降では対応の仕方が違うのがおわかりいただけたかと思います。もし流産しやすい人の条件に当てはまるものがあれば、早めに対応して少しでもリスクを下げるようにしてください。そうすることで健康的なマタニティライフが過ごせるでしょう。
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