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2015年に不妊症の定義が「2年間以上妊娠、出産をできない夫婦」から1年間以上に変更されたことからもわかるように、近年の晩婚化などが原因で、赤ちゃんが欲しいのに授からないカップルが増加傾向にあります。それに伴い、不妊治療を受けているカップルも増加しており、人工授精で赤ちゃんを授かったカップルもめずらしくなくなってきています。
人工授精とは、事前に採取した精子を調整し、排卵のタイミングに合わせて子宮内に注入する方法です。
AIH(artificial insemination with husband’s semen)とも呼ばれ、タイミング法では妊娠にいたらなかった場合や、男性の精子に軽度の問題がある場合に行われます。
体外受精や顕微授精よりも成功率が低くなる傾向にありますが、自然妊娠に近い形で赤ちゃんを授かる方法なので、挑戦するカップルも多い方法です。
ただ、年齢を重ねるごとに妊娠力も低下してくるのも事実ですので、人工授精に限らず不妊治療を検討しているカップルは、できるだけ早く不妊治療クリニックの受診をおすすめします。
この記事では、年齢を重ねると人工授精の成功率が下がる理由と、成功率を上げるために大切なことについてご紹介します。
最後にコーヒーが人工授精に与える影響についてもご紹介しているので、人工授精を検討していて成功率をあげたい方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
年齢を重ねると人工授精の成功率が下がる理由
自然妊娠でも年齢を重ねるとともに出産数が下がり、35歳を境に減少は加速、40歳をすぎた頃には急激に減少します。
これは、自然妊娠に限らず人工授精でも同じことです。なぜなら、人工授精は、子宮内へ精子を送り込むこと以外は自然妊娠と同じ過程で妊娠が成立するからです。
ここでは、年齢を重ねると人工授精の成功率が下がる理由についてご紹介します。
人工授精の成功率
人工授精の成功率は、女性の年齢によって低下してきます。
治療を受ける人の年齢や不妊原因にもよりますが、一般的に人工授精を1回行って妊娠にいたる確率は約5〜10%となります。
累積妊娠確率は、以下の通りです。
年齢 | 治療回数 | 妊娠率 |
35歳以下 | 6回 | 50% |
38〜39歳 | 2回 | 12% |
40〜42歳 | 1回 | 4% |
累積妊娠確率とは、治療を積み重ねた事による妊娠率です。
上記の表に記載されている治療回数以上に人工授精を行っても、累積妊娠確率はほとんど変わらないため、この回数治療を行っても妊娠にいたらない場合は、不妊治療のステップアップを検討すべきということになります。
卵子の質の低下
不妊治療について調べると、卵子の質という言葉をよく耳にします。
一般的に卵子の質は女性の年齢が30歳をすぎると低下しはじめ、35歳をすぎると急激に低下するといわれており、とくに40歳以降は一気に下降するため、妊娠成立が困難になってしまうのです。
卵子の質が低下するメカニズムについてはまだ完全に解明されていませんが、卵子のミトコンドリアの機能が低下することにより、減数分裂において不具合が発生し、染色体異常が起こってしまうためだといわれています。
女性は、一生分の卵子のもとが胎児の頃から備わって生まれてくるので、生まれてから新たに卵子のもとを作り出すことはありません。
卵子は、年齢を重ねるごとに体の中でもっとも古い細胞となります。高齢で妊娠を試みると質の低下した卵子と受精することになるため、そもそも着床にいたらない、もしくは染色体に異常が起こるなどの問題が発生してしまうのです。
卵子の質は、人工授精を成功させる重要な要因です。卵子の質が悪いと、せっかく人工授精で精子を子宮内に送り出しても着床できなくなったり、着床しても流産してしまったりします。
卵子の数の減少
上記でもご紹介した通り、女性は生まれたときから一生分の卵子のもとを持って生まれてきます。
その数は100〜200万個といわれていますが、年齢に伴って徐々に数が減少していき思春期に入るころには約30万個、妊娠適齢期には10〜30万個、37〜38歳で2万5千個程度にまで減少。
その後、さらに年齢を重ねると卵子の減少は加速し、その後10年強で1000個以下となり、50歳くらいで閉経を迎えます。
体内にある卵子のうち、実際に排卵される卵子は400〜500個といわれており、これは全体の1%もありません。
排卵を待っている卵子は、排卵の準備がまだ完了していない状態で成長がストップしています。年齢を重ねるごとに、排卵されるまでの停止期間は長くなり、この停止期間が人工授精を行っても受精しにくい状態や、流産してしまう原因になります。
精子の質の低下
精子は、約80日周期で新しく作られています。そのため、女性と比べると年齢を重ねたことによる精子の質の低下は少ないです。
人工授精はタイミング法で妊娠しなかったときだけでなく、男性に軽度の不妊症状がある場合にもすすめられる方法ですが、検査の段階では人工授精が有効であっても、実際に治療を行うとき採精された精子の質がなんらかの原因で低下していることも考えられます。
人工授精の成功率を上げるために大切なこと
年齢を重ねるにつれ、卵子が老化していくのはどうしても逆らえない現象です。
現代は、ストレスの多い生活や食事の多様化などで人工授精の成功を妨げる原因がたくさんあります。
では、人工授精の成功率を少しでも上げるためにはどのようなことが大切なのでしょうか。
ここでは、人工授精の成功率を上げるために大切なことについてご紹介します。
排卵日に合わせて行う
人工授精の成功率を上げるには、排卵日に合わせて治療を行うことが重要です。
そのためには、正確な排卵日をみつけ、卵子が出会えるようにタイミングよく精子を子宮内に送り込まなければいけません。
不妊治療クリニックでは、卵胞の状態と血液検査でわかるホルモンの状態を調べ、卵胞内で卵子が排卵に近いことを確認してから人工授精の治療日を決めます。
排卵日を正しく予測するためには、医師の指示に従い必要な検査をしっかりと受けることが大切です。
また、日頃から毎朝基礎体温を測っておくようにしましょう。
卵子、精子の質を向上させる
人工受精の成功率を上げるには、卵子と精子の質を向上させることがとても大切です。
精子と卵子の質の決定には、ミトコンドリアという細胞が深く関係しています。
ミトコンドリアは、細胞内に蓄積された糖質や脂質などの栄養素を分解し、ATPというエネルギーを放出。細胞の働きを活性させる作用がある細胞内小器官です。
卵子と精子にはもともと他の細胞よりも多くミトコンドリアが存在することもわかっており、ミトコンドリアを元気にすることが卵子や精子の質を向上させることにつながります。
ミトコンドリアを元気にするために、以下のようなことに注意して生活しましょう。
- 早寝早起きをする
- 栄養バランスの取れた食事をする
- 適度な運動を心がける
ミトコンドリアは、細胞がエネルギー不足を感じると増えるようにできています。
ミトコンドリアを活性化させるには、運動によるエネルギー消費やカロリー過多にならない栄養バランスの取れた食事、人間が本来持っている生活リズムを守ることが効果的だといわれています。
子宮内膜を整えておく
個人差はありますが、子宮内膜が薄いと人工授精を何度行っても妊娠できなくなる可能性があるため、 胚盤胞が着床しやすいように子宮内膜を整えておく必要があります。
子宮内膜を厚くするには、ホルモンバランスを整え、血流を改善させるとよいでしょう。
そのためには適度な運動や食生活の見直し、ストレスを溜めないこと、下腹部を触って冷たいと感じる方は、腹巻などを巻いてお腹を冷やさないことが大切です。
コーヒーが人工授精に与える影響
コーヒーと聞くと、妊活にはあまりよい影響を与えないイメージがある方も多いです。
しかしデンマークで行われた研究によると、人工授精の治療を受けている女性で、1日に1〜5杯のコーヒーを飲む女性は、飲まない女性と比べて成功率が1.5倍高いこともわかっています。
これは、コーヒーに含まれるカフェインが卵管の繊毛の働きを活性化し、排卵された卵子を卵管へ取り込む力や輸送機能をスムーズにするからではないかと考えられています。
さらに、カフェインは黄体期のプロゲステロンレベルを上昇させたり、無排卵リスクを低下させたりするという報告などもあるため、適量のコーヒーは人工授精の成功率を上げる可能性があるとされているのです。
ただし、あくまでも適量を飲むことが大切ですし、妊娠後のカフェイン摂取は流産リスクを高める可能性があるので、人工授精を受けたあとは控えた方がよいでしょう。
まとめ
年齢を重ねると人工授精の成功率が下がる理由と、成功率を上げるために大切なことについてご紹介しました。
人工授精で妊活を卒業するためには、卵子と精子の質の向上、そして子宮内膜を整えることが非常に重要です。
実際に人工授精を受けるのは女性の体ですが、精子の質がよくなければ治療の甲斐なく着床しないことも十分考えられます。
そのため、女性はもちろんのこと、男性も一緒に生活習慣の改善に取り組むようにしましょう。
とくにタバコは、男性も健康な精子の数や運動率に悪影響を及ぼす可能性があるため、人工授精を成功させたいのであればやめるべきです。
人工授精の成功率を上げたいカップルは、ぜひ本記事を参考にしてみてくださいね。
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