InstagramInstagram

精子の寿命はどれくらい?|受精可能なリミットと適切なタイミングを詳細解説

近年、女性の社会進出の進展や晩婚化の影響を受けて「不妊症」に悩むカップルが増加傾向にあります。不妊症とは、健康な男女が妊娠することを望んで避妊をせずに性行為を行うものの1年以上に亘って妊娠に至らない症状のことを表しています。

更には、WHOが公表するデータによると、不妊症と診断されるカップルのうち、その原因が男性にある(男性のみと男女ともであるものを含む)割合は約50%にも及んでおり、妊娠のためには女性だけでなく、男性も一緒になって妊活や不妊症治療に望むことが必要不可欠であることは明らかです。

妊娠のために男性側が注目すべきことは「精子」に関してです。この記事では特に精子の寿命、受精可能期間に焦点を当ててご説明していきます。

まず始めに、精子の基礎知識として、精子がどのような構造・形状をしているのか、精子の生成過程、精子の寿命に関して見ていき、後に精子の寿命を考慮した妊娠の可能性に関してご紹介していきますので、ぜひ最後までご覧ください。

精子の基礎知識

基礎知識のイメージイラスト
「精子」は妊娠のためには欠かせない生殖細胞の1つです。ここでは、そんな精子の基礎知識に関して押さえていきます。

精子の構造

まず始めに、精子の構造・形状に関して確認していきましょう。

精子は染色体などの遺伝子の情報が詰まった「頭部」と、精子が卵子のもとへと進んでいくためのエネルギーを蓄えている「尾部」から構成されています。

更に詳細に見ていくと、「頭部」は核と先体という器官から構成されています。核は頭部の大部分を構成する器官であり染色体を始めとした遺伝子の情報が詰まっています。先体は核を覆うようにして存在する器官であり、精子が卵子の中へと侵入する際に卵子表面に吸着する機能を有しています。加えて、先体に含まれるタンパク質を分解する酵素群の作用によって透明帯(卵子を覆っている膜)に精子自らが侵入できる狭い通路を形成する効果も持ちます。

一方の「尾部」は、中心体とミトコンドリア、べん毛という3つの器官で構成されています。中心体は卵子と精子が受精卵となった後の細胞分裂に大きく関係している器官です。そして、ミトコンドリアは精子が卵子のもとへとたどり着くためのエネルギーを貯蔵している器官であり、蓄えられているエネルギーを実際に利用して運動する(上下左右に動かして前進する)器官がべん毛となります。

精子は上記にて説明した器官から構成されており、その大きさは約0.06mmです。シャープペンシルの芯のうち特に細いものであっても0.1mmであり、精子はそれよりも更に小さいため肉眼で実際に確認するということは難しいです。

精子の作られ方

次に、精子の作られ方に関して見ていきましょう。

精子は精巣内に無数にある「精子幹細胞(せいしかんさいぼう)」という細胞がもととなって作られています。幹細胞には、自分と同じ細胞を生み出す能力と、全く別の形質をもった細胞に変わる能力が備わっています。

この精子幹細胞が成長と減数分裂(※)を行いながら、①精子幹細胞、②精原細胞、③一次精母細胞、④二次精母細胞、⑤精子と変化していき、精子がつくり出されています。この一連の生成過程は約2か月を要し、精巣内ではこれらさまざまな細胞の働きによって1日あたり数千万~数億個の精子がつくり出されています。つまり、精巣内では、精子幹細胞から精子までさまざまな段階の細胞が詰まっているということがお分かりいただけるかと思います。

※減数分裂とは、細胞の核の中にある染色体を1つにする細胞分裂のことを指します。本来、生物の細胞の核の中には2つで1対となる染色体が存在しています。しかしながら、有性生殖の場合、次の世代の遺伝情報を両親の遺伝情報をもって構成する(両親から1つずつ染色体を受け取り、それをもって2つで1対となる)ために減数分裂が行われます。

精子の寿命

精子の寿命は一般的に48時間~72時間であるといわれています。しかしながら、精子の寿命は精子が置かれている環境や精子そのものの状態によって大きく変化します。

例えば、精子は乾燥・熱・酸に弱いという性質があります。

そのため、射精によって体外へと精子が排出され、精液が乾燥してしまうと精子の寿命は短くなる可能性が高いです。また、おたふくかぜなどの高熱を発する病気を生殖適齢期を迎えてから発症してしまった場合や、精巣に熱がこもるような生活習慣(通気性の悪い下着の着用や膝の上でのノートパソコンの利用など)がある場合にも精子の寿命に影響が生じることがあります。

更に、女性の膣内へと射精された際の膣内の環境によっても精子の寿命は大きく変化します。女性の膣内は排卵日付近でない場合には、基本的に酸性に傾いているため精子にとっては過酷な環境となっています。このような環境下にある精子の寿命は数時間にまで短くなり、子宮へと入り込むことなく死滅することが多いです(膣内の環境以外にも膣と子宮を結ぶ入り口も精子が侵入しにくい状態となっています)。

しかしながら、排卵日が近づいてくると膣内はアルカリ性へと傾いていき精子が生存しやすい環境へと変化していきます。加えて、頸管粘液(子宮の入り口から分泌されている粘液であり精子が子宮へと侵入する際の潤滑油のような役割を持つ)の分泌が活発になるため、精子は更に子宮へと侵入しやすくなり、精子本来の寿命を過ごすことができるようになります。

精子の寿命と妊娠

妊娠
ここでは、精子の寿命を考慮したうえで、妊娠を図るための適切な性行為のタイミングに関してご説明していきます。

妊娠のためには女性の排卵がどのように行われているのかを把握する必要もあるので、そこから押さえていきましょう。

女性の排卵周期

女性の排卵の周期は個人差はあるものの、平均して約28日で1周となっており、その周期は更に①月経期、②排卵期、③黄体期の3つから構成されています。

それぞれに関して見ていきましょう。

月経期

以前の排卵時の卵子が受精・着床をすることなく日数が経過すると、妊娠のために活発に分泌されていた女性ホルモンの分泌が緩やかになり、女性ホルモンの作用によって厚くなっていた子宮内膜の一部が剥がれ落ち、体内の血液と混じって体外へと排出されます。これが月経です。

そして、月経のあった初日から再び女性ホルモンの分泌量が少しずつ上昇し、卵子をつくり出す準備を進めていきます。

排卵期

卵子は「原始卵胞」という細胞がもととなって作られています。女性の卵巣の中にはたくさんの原始卵胞が存在しており、その卵胞ひとつひとつの中に卵子が1つある、という構造になっています。

卵胞刺激ホルモンの分泌を合図に数十個の卵胞が成熟を開始します。成熟に伴って、卵胞は一次卵胞、二次卵胞、成熟卵胞と成長していきます。そして、成熟した卵胞の中でも成長が最も良好であった卵胞ひとつ(この卵胞は主席卵胞と呼ばれます)が中にある卵子を排出します。

卵巣内に排出された卵子は、卵管采(らんかんさい:卵管の先端部にあたる器官でイソギンチャクのような見た目をしている)にキャッチされて、卵管膨大部へと運ばれ、その後、子宮に向かって少しずつ卵管内を移動していきます。

排出された卵子の寿命は12時間~24時間といわれており、この数時間の間に精子と受精できるかどうかが妊娠の分かれ道となります。

排卵が行われるのは月経初日から約14日後であり、”排卵が行われたであろう”日を排卵日といいます。そして、排卵日付近の一定の期間を排卵期と呼びます。

黄体期

卵子を排出した後に残った卵胞や、排出せずにいた卵胞が「黄体」という組織へと変化し、黄体ホルモンを分泌するようになります。このホルモンは卵子が受精卵となった後の着床から妊娠までの期間で重要な役割を担っており、女性の体温を高く保ち、受精卵が着床しやすいように子宮内膜を厚くふかふかな状態にするという効果を持っています。

もし、受精することがなかった場合には2週間ほどの時間をかけてホルモンの分泌が緩やかになっていき、再度、月経期を迎えることとなります。

妊娠のための性行為のタイミング

前述した説明から明らかなように、精子の方が卵子よりも寿命が長いです。また、精子は膣から子宮内へと侵入してきますが、卵子は子宮の更に奥にある卵管から子宮へと移動してきます。

これらのことを踏まえると、”卵子が排出される頃には、精子が子宮や卵管内にまで進んできていること”が妊娠しやすい状態であるといえます。これを性行為のタイミングとして考えると、排卵日の1日~2日前から性行為を重ねることで上記の状態を実現しやすくなり、妊娠の成功率が高まることとなります。

前述したように排卵日は月経開始日から約14日後であるため、それらの日数を考慮して性行為のタイミングを図ってみてもいいかと思います。また、女性の排卵に関わる各種のホルモンは女性の体温に影響を及ぼし、排卵日付近となると黄体ホルモンの作用を受けて基礎体温が高くなります。日頃から体温を計測しておき、体温が高くなり始めているのを合図にタイミングを図ってみるのも、妊娠の成功率を高める一手となります。

まとめ

幼児のいる幸せな家族
ここまで、精子の基礎知識として、精子がどのような構造・形状をしているのか、精子の生成過程、精子の寿命はどのくらいであるのか、また、精子の寿命を踏まえた妊娠のためのタイミングに関してご説明してきましたがご理解いただけたでしょうか?

精子と卵子の寿命を考慮して性行為のタイミングを図ることも妊娠成功のために大切ですが、タイミングだけでなく、精子と卵子の質に目を向けることも成功率の向上には欠かせません。以下のコラムでは精子・卵子の質を向上させるための方法や、質の向上と妊娠がどのように関係しているのかをまとめていますので、ぜひそちらもご覧になってみてください。

男性不妊の改善につながるサプリ利用|必要な栄養素と食生活の見直し【ミネルバクリニック公式】

卵子の質を上げる運動習慣|大切な要素と話題のマタニティヨガを紹介【ミネルバクリニック公式】

また男性への更なるアドバイスとして、妊娠に向けた性行為(タイミングを図った性行為)を行う前の数日間、禁欲をすることも効果的です。精子は日々新しいものが作られていますが、その生成量には限度があるため頻繁に射精すると1度に排出される精子量も頭打ちとなります。しかしながら、精巣内では約2~3日分の精子を貯蔵することが可能であり、少しの禁欲期間を設けた方が射精における1度の精子の排出量は多くなります。

このように、妊娠に向けた取り組みでは男性にも大切な役割が多くあり、男女が一体となって取り組みに励むことが何よりも大切となります。この記事をきっかけに、男性の妊活を始めとした妊活全体へのご興味を持っていただければ幸いです。

東京の「ミネルバクリニック」は臨床遺伝専門医が在籍するNIPT実施施設であり、たくさんの妊婦さんの悩みや不安と真摯に向き合い、笑顔になれる出産に導いてきました。ミネルバクリニックでは、妊娠9週から受けられる赤ちゃんの健康診断である「NIPT」を業界最新の技術と業界随一の対象疾患の広さで行っております。遺伝のエキスパートである臨床遺伝専門医が出生前診断を提供しておりますので、是非、お気軽にご相談ください。妊娠初期からの出生前診断を受ける医療機関にお悩みの方は、知識・経験・実績とも「第三者から認証されている」臨床遺伝専門医が診療している「ミネルバクリニック」まで是非、ご相談ください。

ミネルバクリニックでご提供している不妊症遺伝子検査では、不妊症や性染色体異常に関連する遺伝子変異を特定することで正確な予後判定を行い、患者さんに最も適した治療法を特定することができるため、子供を持ちたいと願うすべてのカップルや個人に対して、最適な治療計画を導くことができます。是非ご検討ください。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

関連記事