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【医師執筆】化学流産とは?原因や症状・その後の妊娠について解説

化学流産とは?

化学流産は、妊娠検査薬で陽性反応が出たにもかかわらず、その後超音波検査で胎嚢が確認できずに、出血が起こり流産してしまうという状態です。通常の流産は胎嚢が確認されてから起こりますが、化学流産は胎嚢の確認ができない状態なので、通常の妊娠には含まれません。

妊娠検査薬で妊娠を確認する初期の段階で起こる流産で、防ぐことは難しいといわれています。

化学流産の原因

化学流産の原因ははっきりとは解明されておらず、受精卵の染色体異常が影響しているのではないかと考えられています。

妊娠初期の流産は、重い物を持ったから、ストレスを感じすぎたからと母体に原因があるかのように言われがちですが、多くは胎児側の原因であり、防ぎようがありません。

流産は全妊娠の15%の割合で起こるといわれているので、流産によって自分を責めるようなことはないようにしましょう。

予防策もほぼないといわれていて、健康なカップルでも化学流産は起こる可能性があります。

化学流産の症状

化学流産は症状を感じなかったという方が多く、通常の生理と同じくらいの出血なので、生理が少し遅れたと感じる程度です。そのため、妊娠4週目の早い段階で妊娠検査薬による検査を行っていない方は、妊娠していたことに気が付かないケースも多々あります。

生理が予定通り来ない方はとくに、1~2週間遅れても気にしない傾向にあるので、化学流産に気が付きにくいといえます。

化学流産が起こる時期

最終月経の初日を妊娠0週0日とすると、妊娠4週目以降に妊娠検査薬が正しい反応を示します。

妊娠検査薬では、hCG(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン)という妊娠中に分泌されるホルモンを確認します。

妊娠するとhCGは徐々に上昇していき、血液を循環し尿へ排出されるため、血液検査や尿検査で妊娠反応が出るということです。

妊娠検査薬で妊娠4週目に陽性反応を確認した後、胎嚢が妊娠5~6週以降に超音波検査で確認できるのですが、化学流産は、この妊娠4週から妊娠5~6週までの間に妊娠が継続できず、流産してしまいます。

化学流産後すぐ妊娠できる?

化学流産をすると妊娠しやすくなるという噂がありますが、それはただの迷信で、化学流産をしたあとに妊娠しやすくなる、すぐ妊娠できるということは証明されていません。

しかし、化学流産後、生理が1回くれば妊娠できるように体が回復しているということなので、妊活をはじめて大丈夫です。さらに、化学流産をしたら、妊娠しやすくなるという噂は迷信だとお伝えしましたが、妊娠しにくくなるということもありません。

化学流産が起こるということは、排卵や受精に問題がないという証明でもあるので、深刻に考えすぎないようにすることが重要です。

化学流産が起きる確率

化学流産の原因となる染色体異常の受精卵は、一般の受精卵にもかなりの頻度で認められているせいか、健康な20〜30代前半のカップルでも30〜40%の確率で起こっています。

年齢が上がれば上がるほどその確率は上昇してしまいます。特に女性は、加齢をすると流産リスクが高まります。それは女性の体の中にある卵子が減ってしまうからです。

卵子は生まれきたときに持っており、排卵の度に減ってしまいます。どんな対策をしても増加することはありません。

しかも生涯にわたり排卵する卵子は、もともと持っている卵子全体の1%もないといわれていて、ほとんどの卵子が減数分裂の途中で停止しているのです。

加齢によって排卵までの停止期間は長くなるので、受精しにくくなる、妊娠しても流産しやすくなるなどの異常が起こってしまいます。とくに37歳以降に卵子の老化による流産のリスクが高くなるといわれていて、40歳を過ぎると40%の方が流産してしまうというデータもあります

化学流産を繰り返していたら

化学流産時の腹痛

化学流産を繰り返している方は、母体側に何らかの原因があると考えられますが、実はその原因が明らかにならず、原因不明と判断されることもあります。

ただし、以下のような生活をしていると起こりやすくなるので注意してください。

  • ・食事以外に間食をしていてせいか太り気味
  • ・喫煙をしている
  • ・毎日お酒を飲んでおり、量も多い
  • ・普段の生活で過度にストレスが溜っている
  • ・睡眠不足で不規則な生活

場合によっては検査で母体側の不妊原因が判明する可能性もあります。

着床障害の可能性

通常の妊娠では、卵子がしっかり排卵して受精したあとに、受精卵が細胞分裂を繰り返しながら、卵管を通り子宮内膜着床します。

しかし何らかの問題により受精卵が子宮に着床できないと、流産してしまいます。その場合は着床障害と診断され、以下のような原因が挙げられます。

  • 子宮筋腫
  • 子宮腺筋症
  • 子宮内膜ポリープ
  • 子宮奇形
  • 子宮内膜癒着
  • 黄体機能不全

上記のように、子宮自体に異常があるケースと、黄体ホルモンに異常があるケースです。子宮に異常があるからといって必ずしも着床障害が起こるということでもありませんが、これらの異常がある場合は着床障害を起こす可能性があります。

さらに、受精する際に分泌される黄体ホルモンや卵胞ホルモンに異常が生じることで、子宮内膜の発育や増殖が不完全になり、着床が不十分になることがあります。

上記のような異常をしらべるために、以下の検査が行われます。

  • 子宮鏡検査
  • 子宮内フローラ検査
  • EMMA検査
  • ALICE検査
  • ERA検査

これらの検査によって、子宮内にある異常を発見できます。

まとめ

化学流産や繰り返す化学流産について、卵子の質のことを詳しくご紹介しましたが、参考になりましたか?

化学流産は防ぐことのできない流産なので、自分が悪かったと責めるようなことはありません。予防することも難しいので、繰り返し化学流産を経験している方は、辛い思いをしていることでしょう。

化学流産を予防すること自体は難しいことですが、加齢とともに上がる流産のリスクを軽減するためには、卵子の質を高めることも重要です。規則正しい生活を心掛け、お酒やたばこなども控えることでミトコンドリアを増やし、卵子の質を高めることができます。とくに葉酸の摂取は厚生労働省からも積極的に行うよう推奨されています。

化学流産をしてしまった、繰り返して辛いとお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください。

東京の「ミネルバクリニック」は臨床遺伝専門医が在籍するNIPT実施施設であり、たくさんの妊婦さんの悩みや不安と真摯に向き合い、笑顔になれる出産に導いてきました。妊娠初期からの出生前診断を受ける医療機関にお悩みの方は、知識・経験・実績とも「第三者から認証されている」臨床遺伝専門医が診療している「ミネルバクリニック」まで是非、ご相談ください。


 

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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