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妊娠安定期の赤ちゃんの成長や注意点を徹底解説

妊娠安定期に入ると赤ちゃんは急速に成長するため、母子ともに変化が感じられるようになります。安定期はつわり症状がおさまるだけでなく、胎内環境も安定してくるので、流産のリスクが減少する時期です。

安定期は妊娠5か月に入る頃を指すことが多いですが、この時期の赤ちゃんはおなかの中でどうやって成長しているのでしょうか。

本記事では、妊娠安定期とはどのような時期なのか、赤ちゃんの成長や生活をする上での注意点とあわせて詳しく解説します。

妊娠安定期とは妊娠5か月頃からの期間

妊娠安定期とは、妊娠5か月頃(妊娠16週)の、体調が安定してくる時期を指しています。

世間一般ではよく「安定期」という言葉を聞くことが多いかもしれませんが、実は妊娠安定期とは医学的に存在するものではなく、明確な期間や定義がありません。
妊娠5か月あたりになると、妊娠初期から続いていたつわりが落ち着き、心身共に安定した状態になることから、「安定期」と呼ばれるようになったのです。
しかし、実際は安定期であっても流産のリスクはありますので、安心しすぎないよう気を配った生活を続ける必要があります。

妊娠安定期に現れる症状

安定期に入ると、お母さんの身体にはさまざまな変化が現れます。胎盤の完成は安定期の大きな特徴ですが、それに伴いホルモンバランスも安定するため、つわりの症状がおさまってくるでしょう。
また、同時に基礎体温も低下するので、熱っぽさやだるさが軽減され、過ごしやすくなる時期です。

赤ちゃんも急成長し、安定期以降は急におなかの膨らみが目立ち始める人が多く、少しずつ胎動を感じられるようになります。
赤ちゃんの成長は嬉しいですが、体型が急激に変化するため皮膚の伸縮が追いつかなくなり、妊娠線と呼ばれる縞模様がおなかに出てくる人もいるでしょう。
妊娠線を防ぐためには、おなかが大きくなる前から保湿クリームを塗るなどの対策が必要です。

おなかが前に突き出てくると、バランスを取るために反り返った姿勢を取ることが増えてきます。そのため、腰痛になりやすくなるのも安定期の特徴です。
安定期はおなかが張りやすくなるので、つらいときは無理をせず休息を取るようにしましょう。
乳腺の発達も活発になり、バストサイズに変化が出始める人もいます。変化が感じられたら、身体に合ったマタニティーブラジャーの着用がおすすめです。

妊娠安定期に流産することもある

安定期に入ると胎盤が完成するため、流産のリスクが減少します。しかし、安定期を過ぎたからといってリスクが全くなくなるわけではありません。

流産は、妊娠12週未満に起こる早期流産が全体の8割を占めていますが、残りの2割は妊娠12~22週の間に起こる後期流産です。
安定期であっても、いつ何が起こるか分かりませんので、強い痛みや出血があった際は、すぐに病院を受診しましょう。
体調が安定しており、医師から安静の指示が出ていない場合は、軽い運動をしたり出産準備を進めたりして問題ありません。

妊娠安定期の赤ちゃんの成長を3段階に分けて紹介

妊娠安定期の赤ちゃんの成長や注意点を徹底解説

妊娠安定期は妊娠5か月頃からの時期ですが、妊娠8か月以降は妊娠後期となり、母体への負担が増えたり、合併症の発症リスクが上がったりします。
そのため、安定期は概ね妊娠中期の時期にあたり、妊娠5~7か月(妊娠16~27週)前後を指すことが一般的です。
なかには臨月間際までを安定期とする場合もあるようですが、ここでは安定期の時期を妊娠5~7か月として、赤ちゃんの成長を段階別に紹介します。

妊娠5か月(16~19週)の赤ちゃんの成長

妊娠5か月前後の赤ちゃんは、身長約25cm、体重約250~300gほどです。髪の毛・まつげ・眉毛・爪が生えてくるようになります。
「胎毛」と呼ばれる産毛が生え始めるのも、この時期からです。赤ちゃんを保護してくれる「胎脂」という白いクリーム状のものが剥がれないように、胎毛が全身を覆います。

皮膚はまだ透明ですが、指紋ができ始めて骨格はしっかりと確認できるようになるでしょう。
また、運動機能をつかさどる脳の前頭葉と言われる部分が発達するため、手足を元気に動かす姿が見られます。

妊娠6か月(20~23週)の赤ちゃんの成長

妊娠6か月になると、身長約30cm、体重約500~600gに成長します。聴覚が発達し、お母さんの身体の中の音や声が聞こえるようになるので、優しく話しかけてあげましょう。

この時期になると、赤ちゃんがおなかの中で指しゃぶりをしている姿が見られることもあります。おなかのなかにいるときから哺乳の練習をしているのです。
また、腎臓と膀胱が完成するため、羊水を飲んでおしっこをするようになります。
赤ちゃんの性別は、早いケースで妊娠12週頃に判別できることがありますが、多くは妊娠20週頃には分かるでしょう。

妊娠7か月(24~27週)の赤ちゃんの成長

妊娠7か月の赤ちゃんは、身長約35cm、体重約800~1,000gです。重さを例えると、メロン1個分ほどにもなるので、たった1か月でここまで大きくなることに驚くお母さんも多いかもしれません。しかし、これから臨月に向かってまだまだ大きく成長していきます。
徐々に顔がはっきりしてきて、パーツもほとんど完成してくる時期です。目を覆っていたまぶたは上下に分かれて開くようになり、鼻の穴も開通します。

自分の意思で体を動かせるようになるため、羊水の中で活発に動き回ることが増えるでしょう。逆子になりやすい時期でもありますが、クルクル動けるスペースがまだあるので、自然と戻ることがほとんどです。

妊娠安定期の生活で気を付けたい4つの注意点

安定期に入っても、妊娠前と同じような生活をして良いわけではありません。ここで紹介する4つの注意点を把握して、気を付けて過ごしましょう。

体重管理をして適正体重を保とう

つわりが落ち着いたことで食事が美味しく感じられ、ついたくさん食べてしまうこともあるかもしれません。
しかし、安定期以降の体重管理は重要です。体重が増え過ぎてしまうと、妊娠高血圧症候群妊娠糖尿病などのリスクや、出産のトラブルにつながる可能性があります。
だからといって、体重を気にしすぎて痩せすぎの状態もよくありません。適正体重を知って維持することが大切です。

妊娠時の推奨体重増加量は厚生労働省が示しており、BMIによって異なります。BMI計算式と、推奨体重は以下の通りです。

■BMI計算式
 BMI = 体重(kg) ÷ 身長(m) ÷ 身長(m)

妊娠前のBMI 推奨体重増加量
18.5未満 9~12kg
18.5~25.0未満 7~12kg
25.0以上 個別対応

参考:厚生労働省 | 「妊娠期の至適体重増加チャート」について

たんぱく質・カルシウム・ビタミン類・食物繊維など、妊婦さんに必要な栄養素がバランスよく摂取できる食事を心掛けて、適正体重を保ちましょう。

無理をしすぎず休養しよう

安定期はおなかが大きくなるとともに循環血液量が増加し、心臓への負担がかかりやすくなります。心拍数が増えることにより、動悸や息切れを感じやすくなる人もいるでしょう。

また、女性ホルモンの影響によってめまいや立ちくらみが起こることもあるため、ふらっとしたり息切れするときは、なるべく横になって休むことが大切です。
職場へ妊娠報告を済ませている場合は、立ち仕事を減らしてもらったり、ペースを落として仕事をしたりなど、周りに協力してもらう必要もあるでしょう。

安定期に起こるトラブルの多くは、切迫早産です。切迫早産の原因はいくつかありますが、ストレスもひとつの原因として考えられています。
出血を伴ったおなかの痛みや張りがある場合は、すぐに病院にかかりましょう。切迫早産になった場合でも、医師の指示を守り、安静にしていれば無事に出産を迎えられる可能性があります。

性生活は体調に問題なければ可能

安定期での性生活は、おなかに負担がかからないよう配慮して行う必要があります。夫婦間のスキンシップは大切なので、体調が安定していれば問題ありません。

ただし、妊娠中は免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなっているためコンドームの装着は必須です。
クラミジアや淋病などの性感染症は、早産の原因になったり、赤ちゃんに感染したりする可能性があります。

なお、切迫早産と診断されている場合や医師から安静を指示されているときは、性生活は禁止です。そうでない場合でも、体調がすぐれないときやおなかの張りが強いときは、控えるようにしましょう。

便秘や腰痛対策を行おう

妊娠初期から便秘に悩まされている妊婦さんは多いかもしれませんが、安定期に入っても大きくなった子宮が大腸を圧迫するため、便秘症状が続くことがあります。
安定期は比較的動きやすい時期なので、便秘対策として身体に負担がかからない運動を毎日取り入れるようにしましょう。
また、バランスの良い食事は体重管理のためだけでなく、便秘にも有効です。便秘改善に効果的な食べ物は、ヨーグルト・プルーン・バナナなどが挙げられます。

腰痛があるときは正しい姿勢を保つことが大切です。ストレッチや骨盤ベルトも効果がありますが、試す前に一度病院で相談してみた方が良いでしょう。
湿布も自己判断での使用は避け、妊娠中でも使えるものを病院で処方してもらう必要があります。

【まとめ】妊娠安定期は無理のない範囲で生活し休息を大切に

一般的に言われている妊娠安定期は、妊娠中期と重なる時期です。胎盤の完成によりホルモンバランスが整うため、つわりがおさまったり、赤ちゃんの成長速度が増してきたりします。
安定期に入ると、流産のリスクは妊娠初期と比べてぐっと減ってきますが、100%安全な時期という意味ではありません。

今回、生活上での注意点をいくつか紹介しましたが、大切なことはお母さんが無理をしすぎないことです。栄養バランスの良い食事や運動を取り入れ、ストレスを溜めずに安定期を過ごすようにしてください。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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