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📍 クイックナビゲーション
破水とおりものは、色・におい・さらさら感・量である程度の見当はつけられます。いちばんの手がかりは「自分の力で止められるか」と「少しずつ出続けるか」です。ただし、卵膜の高い位置が破れる高位破水では流れ出る羊水が少なく、自宅で破水かおりものかを確実に見分ける方法はありません。さらさらした水が止められない、少量でもじわじわ続く、と感じたら、量にかかわらずかかりつけの産院に電話してください。この記事では、破水・おりもの・尿漏れの違い、妊娠時期によるおりものの変化、色の異常、病院での確かめ方、電話の前に確認しておくことを順に解説します。
Q. 水っぽいおりものと破水は、どうやって見分けますか?
A. 目安になるのは、さらさらしているか、力を入れても止められないか、少しずつ出続けるかの3点です。おりものは多少の粘り気があり、尿漏れはせきやくしゃみのときに出てアンモニアのにおいがします。一方、羊水は水のようにさらさらしていて、自分の意思では止められません。ただし高位破水は量が少なく、自宅では区別できないことがあるため、迷ったら産院に電話してください。病院では腟の中の液体を直接見たり、pH(酸性かアルカリ性か)を調べたりして判断します。
- ➤比べるポイント → 色・におい・さらさら感・量・止められるか・出続けるか
- ➤高位破水 → 流れ出る量が少なく、おりものや尿漏れと区別しにくい
- ➤色の異常 → 緑・茶色の水、強いにおいは早めに連絡する
- ➤病院での確認 → 腟鏡での観察・pH検査・超音波などを組み合わせる
1. 破水・おりもの・尿漏れの違い
破水とは、赤ちゃんと羊水を包んでいる卵膜が破れ、羊水が腟から流れ出ることです。おりものは腟や子宮の入口から出る分泌物、尿漏れは膀胱の尿が意図せず出てしまうことで、出どころがまったく違います。妊娠後期になると、おりものが増え、子宮に押されて尿漏れも起こりやすくなるため、下着がぬれたときに「どれなのか」がわかりにくくなります。
羊水は、赤ちゃんの周りを満たしている液体で、成分のほとんどが水です。そのため破れた卵膜から出てくる液体は、粘り気のない水のような状態になります。破水のしかたは人によって違い、少しずつちょろちょろ流れることもあれば、自分では止められない勢いで一気に流れることもあります[1]。
色・におい・さらさら感・量で比べる
3つの違いを表にまとめます。ここに挙げたのはあくまで目安で、妊娠中のおりものは水っぽくなることがあり、羊水に血液が混じることもあるため、1つの項目だけで決めつけないことが大切です。
📋 破水(羊水)・おりもの・尿漏れの見分け方の目安
| 項目 | 破水(羊水) | おりもの | 尿漏れ |
|---|---|---|---|
| 色 | 透明〜淡い色。はじめは少し血が混じり薄いピンクに見えることも | 白〜クリーム色、透明 | 淡い黄色 |
| におい | ほとんどないか、独特のにおい(個人差が大きい) | 少し酸っぱいにおい | アンモニアのにおい |
| さらさら感 | 水のようにさらさら | 粘り気がある(妊娠後期は水っぽいことも) | さらさら |
| 量・出方 | ちょろちょろ続く〜一気に流れる | 少量ずつ、下着に付く程度 | せき・くしゃみ・立ち上がるときに少量 |
| 止められるか | 止められない | 出る感覚そのものが少ない | 力を入れると止まることが多い |
| pH | 7.1〜7.3(中性〜弱アルカリ性) | 3.8〜4.5(酸性) | 個人差がある |
※pHの値は米国産婦人科学会(ACOG)の診療指針[2]による。色・においは一般的な傾向で、例外があります。
表の中で数値として示せるのは、pHの違いです。腟の中は乳酸菌の働きで酸性に保たれていて、腟分泌物のpHはおおむね3.8〜4.5です。これに対して羊水のpHは7.1〜7.3で、中性から弱アルカリ性にあたります[2]。病院で行うpH検査は、この差を利用して腟の中に羊水が混じっていないかを調べるものです。ただし後で説明するように、pHにも紛らわしい要素があるため、病院でも1つの検査だけで決めずに複数の所見を組み合わせて判断します。
においについては、表現に個人差が大きく、「無臭だった」「生臭く感じた」「甘いようなにおい」と人によって感じ方が違います。においの特徴や、尿漏れとのにおいの違いは破水のにおいの記事で詳しく扱っています。
いちばんの違いは「止められるか」と「出続けるか」
見た目やにおいよりも頼りになるのが、「自分の力で止められるか」と「時間がたっても出続けるか」です。尿漏れは、腹圧がかかった瞬間に出るもので、骨盤の底の筋肉(骨盤底筋)を締めるように力を入れると止まることが多くあります。一方、破水は卵膜に開いた穴から羊水が出てくるため、どこに力を入れても止めることができません。
もうひとつは時間の経過です。おりものは一度にたくさん出るものではなく、尿漏れも動作のときだけ出ます。これに対して、卵膜が破れた状態は自然に元に戻るとは限らず、横になったあとに立ち上がったときや、赤ちゃんが動いたときに、またじわっと出てくることがあります。「ナプキンを替えたのに、しばらくするとまたぬれている」「立ち上がるたびにちょろちょろ出る」という場合は、量が少なくても破水を疑う理由になります。
逆に、一度だけ少し出て、その後まったく出ないこともあります。この場合でも、破れた穴が小さかったり、赤ちゃんの位置で一時的にふさがったりしている可能性があり、「1回で止まったから破水ではない」とは言い切れません。高位破水が1回で止まることがあるのかどうかは、高位破水とはの記事でまとめています。
水っぽいおりもので下着がぬれるのはなぜ?
妊娠中は、女性ホルモンの影響で腟や子宮頸管からの分泌が増え、おりものの量が増えるのが普通です。特に妊娠後期は量が増え、水っぽく感じることもあるため、「ナプキンがしっとりする」「破水かと思って受診したらおりものだった」ということは珍しくありません。
また、妊娠中は尿漏れも起こりやすくなります。妊娠中の尿漏れをまとめたメタ解析(複数の研究を統合した解析)では、妊娠中に尿漏れがある人の割合は全体で41%、妊娠後期に限ると34%と報告されています。そのうち63%は、せきやくしゃみなどでおなかに力がかかったときに漏れる腹圧性尿失禁でした[3]。妊娠後期の下着のぬれは、おりものの増加と尿漏れの両方が重なっていることも多いのです。
つまり、「水っぽいものが出た」こと自体は、妊娠中にはよくあることです。破水を疑うのは、それが止められず、続いている場合です。区別がつかないまま我慢して様子を見るよりも、電話で状況を伝えて、受診が必要かどうか産院に判断してもらうほうが確実です。
2. 高位破水がおりものと見分けにくい理由
高位破水がおりものと見分けにくいのは、卵膜が子宮口から離れた高い位置で破れるため、流れ出る羊水の量が少ないからです。少量の羊水がちょろちょろ出るだけだと、水っぽいおりものや尿漏れとほとんど同じように感じられます。見た目だけで区別がつかないのは、この量の少なさが理由です。
高位破水とは
高位破水は、卵膜が破れた位置による呼び方です。赤ちゃんの頭の下、子宮口に近いところで卵膜が破れると、羊水がまとまって流れ出て、多くの人がすぐに破水と気づきます。これに対して、子宮口から離れた上のほうで卵膜が破れると、赤ちゃんの体や子宮の壁で穴がふさがれやすく、少しずつしか羊水が出てきません。
量が少なくても、卵膜が破れて子宮の中と腟がつながった状態であることに変わりはありません。腟にはもともと細菌がいるため、破水から時間がたつと、細菌が子宮の中に上がっていき、赤ちゃんや卵膜に感染が起こる心配が出てきます。陣痛が来る前に破水することを前期破水といい、高位破水もその多くは陣痛の前に起こります。
💡 用語解説:卵膜(らんまく)
卵膜は、赤ちゃんと羊水を包んでいる薄い膜で、外側の絨毛膜(じゅうもうまく)と内側の羊膜(ようまく)からなります。風船のように羊水をためておき、腟から細菌が入るのを防ぐ役割もあります。この膜が破れて羊水が外に出ることを破水といい、破れた位置が子宮口から離れている場合を高位破水と呼んでいます。
高位破水の原因や頻度、一回で止まることがあるかといった詳しい内容は高位破水とはの記事で解説しています。この記事では、「おりものとどう区別するか」に絞って説明を続けます。
自分で確かめられること・確かめられないこと
自分で確かめられるのは、出ている液体の色・におい・さらさら感と、止められるか・出続けるかという「様子」までです。破水かどうかを確定することは、自宅ではできません。病院では腟の奥を直接見て羊水がたまっていないかを確認し、pH検査などを組み合わせて判断しますが、それでも判断に迷うことがあるほどです。
自宅でできることは、清潔なナプキンを当てて、出てきた液体の色や量を観察することです。英国の国民保健サービス(NHS)も、破水かもしれないときはタンポンではなくナプキンを使い、羊水の色を確かめるよう案内しています[1]。観察するときは、次の点を見ておくと、電話で伝えるときに役立ちます。
- いつごろから出ているか(時刻)
- 色は透明か、ピンク・茶色・緑色か
- におい(いつものおりものと違うか、アンモニア臭か)
- 止めようとして止まるか、立ち上がったときにまた出るか
- おなかの張りや痛み、発熱、胎動の変化があるか
一方で、「量が少ないから大丈夫」「においがしないから破水ではない」と自分で結論を出すことは避けてください。高位破水は量が少ないことがむしろ特徴で、においにも個人差があります。破水に気づかないまま何日も過ごしてしまった場合に何が起こりうるかは、気づかないまま過ごしてしまった場合を扱った記事で解説しています。
🩺 院長コラム【「尿漏れだったら恥ずかしい」は気にしなくていい】
破水かどうか迷って電話をしたら、結果は尿漏れやおりものだった、ということはよくあります。それを恥ずかしいと感じて電話をためらう方もいますが、産院にとって「破水ではなかった」と確認できることも大切な情報です。
高位破水は量が少ないので、本人の感覚だけで判断できないのが当たり前です。迷ったときに電話をすることは、手間をかけさせることではなく、必要な確認の手順だと考えています。
3. 妊娠時期によって変わるおりもの
おりものは妊娠の時期によって量や性状が変わります。自分の時期のおりものの「いつもの状態」を知っておくと、破水や感染症に気づくきっかけになります。日本では、妊娠初期を13週6日まで、妊娠中期を14週0日〜27週6日、妊娠後期(末期)を28週0日以降と区分しています[4]。
おりものの役割は、腟の中を潤し、酸性に保って細菌が増えすぎないようにすることです。妊娠すると女性ホルモンが増え、子宮頸管からの粘液や腟の分泌物が増えるため、多くの人で妊娠前よりおりものの量が増えます。色やにおい、粘り気には個人差が大きく、次の表は一般的な傾向として見てください。
🗓️ 妊娠時期ごとのおりものの一般的な傾向
| 時期 | おりものの傾向 | 破水との関係で気をつけたいこと |
|---|---|---|
| 妊娠初期 (〜13週6日) |
白〜クリーム色。妊娠前より量が増えることが多い | この時期の破水はまれ。出血や下腹部痛を伴うときは早めに連絡 |
| 妊娠中期 (14週0日〜27週6日) |
半透明〜乳白色。量はさらに増えることがある | 頻度は低いが破水は起こりうる。さらさらした水が続くときは連絡 |
| 妊娠後期 (28週0日〜) |
量が増え、水っぽく感じることも。出産が近づくと粘液栓が出ることがある | 破水・尿漏れ・おりものが最も紛らわしい時期 |
※時期の区分は産科婦人科用語集に基づく[4]。おりものの性状は個人差が大きく、表は目安です。
妊娠初期のおりもの
妊娠初期は、ホルモンの変化でおりものが増え始める時期です。色は白から薄いクリーム色で、少しさらっとしていると感じる人もいます。この時期は子宮がまだ小さく、羊水の量も少ないため、破水を心配する場面は多くありません。
妊娠初期に気をつけたいのは、おりものに出血が混じる場合や、下腹部の痛みを伴う場合です。少量の出血は内診のあとなどにも起こりますが、量が多い、痛みが強い、出血が続くといったときは、破水よりも別の理由を考えて早めに産院に連絡します。妊娠に気づくころのおりものの変化については妊娠超初期のおりものの記事で詳しく解説しています。
妊娠中期のおりもの(中期にも破水は起こりうる)
妊娠中期は、おりものの量がさらに増えることがあり、半透明から乳白色で、少しとろみがあるのが一般的です。体調が比較的安定する時期ですが、破水が絶対に起こらない時期ではありません。
米国産婦人科学会の診療指針によると、妊娠37週より前に陣痛より先に破水する早産期の前期破水は妊娠の2〜3%、赤ちゃんが子宮の外で生きられる時期より前に起こる破水は1%未満とされています[2]。頻度は高くありませんが、早い時期の破水ほど赤ちゃんへの影響が大きくなるため、妊娠中期でも「さらさらした水が止まらない」と感じたら、すぐに連絡してください。早い時期の破水の背景には子宮頸管が短いことなどが関係することがあり、子宮頸管の働きを知っておくと理解しやすくなります。
妊娠後期・臨月のおりもの(粘液栓とおしるし)
妊娠後期から臨月にかけては、おりものの量が一段と増え、水っぽく感じることもあります。破水と最も紛らわしいのがこの時期です。正期産(37週以降)では、陣痛より先に破水する前期破水が妊娠の約8%にみられます[2]。
出産が近づくと、子宮頸管をふさいでいた粘液のかたまり(粘液栓)がはがれて出てくることがあります。これがいわゆる「おしるし」で、少量の血液を含むため、ピンク色のゼリー状の粘液として見えます。おしるしのあと、陣痛がすぐに始まることもあれば、数日かかることもあり、おしるしがないまま陣痛が来る人もいます[1]。
おしるしは粘り気があり、量も限られていることが、さらさらと続く羊水との違いです。ただし、おしるしと破水が同じころに起こることもあるため、粘液に続いて水っぽいものが出てくる場合は破水の可能性も考えます。陣痛が近づいているサインについては陣痛の前兆の記事をご覧ください。
💡 用語解説:粘液栓(ねんえきせん)
粘液栓は、妊娠中に子宮頸管(子宮の入口の細い部分)を内側からふさいでいる粘液のかたまりです。腟から細菌が子宮の中へ入るのを防ぐ「ふた」の役割をしています。出産が近づいて子宮頸管がやわらかくなり開き始めると、はがれて腟から出てきます。「粘着栓」と書かれることがありますが、正しくは粘液栓です。
4. 色がいつもと違うときに考えること
ピンク色は、おしるしや内診のあとの出血が混じったものであることが多く、それだけで危険とは限りません。一方、緑色や茶色の水、強いにおいのする液体は、早めに産院に連絡が必要なサインです。英国の国民保健サービスも、破水した液体ににおいや色がある場合は、すぐに産院に連絡するよう案内しています[1]。
ピンク・茶色:おしるしや内診のあとの出血
ピンク色のおりものの多くは、おしるしや、妊婦健診の内診で子宮の入口に触れたあとの少量の出血が混じったものです。妊娠後期の子宮頸管は血管が多くやわらかいため、わずかな刺激でも出血しやすくなっています。粘り気があり、量が少なく、時間とともに減っていくなら、慌てる必要はないことがほとんどです。
注意が必要なのは、生理のような量の出血、さらさらした出血が続く、かたまりが出る、強い腹痛を伴う、おなかが板のように硬く張る、といった場合です。こうしたときは、陣痛を待たずにすぐ産院に連絡してください。破水した液体に血液が混じってピンク色に見えることもあるため、「ピンク=おしるし」と決めつけず、さらさらと続いていないかもあわせて確認します。
緑・茶色の水:羊水混濁の可能性
羊水は通常、透明か淡い色をしています。緑色や茶色を帯びている場合は、赤ちゃんが子宮の中で胎便(初めてのうんち)を出し、羊水に混じっている「羊水混濁」の可能性があります。羊水混濁は出生の8〜20%にみられ[5]、予定日を過ぎた妊娠などで多くなります。
羊水混濁があるからといって、必ず赤ちゃんに問題があるわけではありません。ただ、赤ちゃんに負担がかかっているサインのことがあり、生まれるときに呼吸の準備が必要になる場合もあるため、産院は早めに状態を確認したいと考えます。緑色や茶色の水が出たら、量が少なくても様子を見ずに連絡してください。
💡 用語解説:羊水混濁(ようすいこんだく)
羊水混濁は、赤ちゃんが子宮の中で胎便を出し、羊水が緑色や茶色に濁った状態です。胎便は、赤ちゃんの腸にたまっている最初の便のことです。予定日を過ぎるなど妊娠週数が進むと起こりやすくなります。混濁があること自体は珍しくありませんが、分娩の進め方や生まれたあとの対応に関わるため、産院が把握しておく必要があります。
黄緑・灰色、においが強い、かゆい:腟の感染症
おりものが黄緑色や灰色になった、魚のような強いにおいがする、かゆみや痛みがある、といった変化は、破水よりも腟の感染症を考える手がかりです。妊娠中に起こりやすい代表的なものを挙げます。
- 細菌性腟症(さいきんせいちつしょう):腟の中の乳酸菌が減り、ほかの細菌が増えた状態。うすく均一な白〜灰色のおりもの、魚のようなにおいが特徴で、腟のpHは4.5を超えます[6]。症状がないことも多くあります。
- 腟トリコモナス症:トリコモナスという原虫による感染症。70〜85%は症状がなく、症状がある場合は、においのある黄緑色のおりものや外陰部の刺激感が出ます[7]。
- 外陰腟カンジダ症:カビの一種カンジダによるもの。かゆみ、ひりひりした痛み、性交時の痛み、おりものの変化が出ます。腟のpHは正常(4.5未満)のままで、妊娠中によく起こります[8]。
- クラミジア感染症:子宮頸管に感染する性感染症で、症状が出ないことが多いのが特徴です。そのため米国では、25歳未満などの妊婦に初回の妊婦健診での検査が推奨されています[9]。
こうした感染症は症状が出ないことも多く、おりものの変化だけで種類を見分けることはできません。おりものの異常は、破水かどうかとは別に、それだけで受診の理由になります。妊婦健診のときに伝えるか、症状が強い場合は早めに相談してください。
5. 腟の感染症と破水の関係
腟の感染症は、おりものの異常として現れるだけでなく、卵膜を弱くして前期破水や早産の原因の一つになることがあります。おりものの変化と破水を一緒に知っておく理由はここにあります。
感染が卵膜に広がると前期破水・早産の原因になる(絨毛膜羊膜炎)
腟の細菌が子宮頸管を通って上に広がり、卵膜や羊水に炎症が起こった状態を絨毛膜羊膜炎(子宮内感染)といいます。炎症が起こると卵膜がもろくなって破れやすくなり、子宮の収縮も起こりやすくなるため、前期破水や早産につながります。逆に、先に破水が起こった場合も、腟と子宮の中がつながることで細菌が上がりやすくなり、子宮内感染の原因になります。早産期に前期破水が起こった場合、15〜35%で子宮内感染が明らかになると報告されています[2]。
米国疾病対策センター(CDC)の治療指針は、症状のある細菌性腟症が、前期破水、早産、子宮内感染、産後の子宮内膜炎と関連しているとして、症状のある妊婦は治療するよう勧めています[6]。腟トリコモナス症も、前期破水、早産、低出生体重と関連するとされています[7]。
ただし、「感染症があると必ず破水する」わけではありません。米国予防医学専門委員会(USPSTF)によると、米国の妊婦で細菌性腟症がみられる割合は5.8〜19.3%で、細菌性腟症があると早産のオッズ(起こりやすさを比べる指標)はおよそ2倍とされています。しかし早産のリスクが高くない妊婦に、症状がないのに検査をして治療しても早産を減らす効果は示されておらず、そうした検査は勧められていません[10]。関連があることと、治療すれば防げることは別の問題です。大切なのは、おりものの異常に気づいたら放置せず、健診で伝えることです。
💡 用語解説:絨毛膜羊膜炎(じゅうもうまくようまくえん)
絨毛膜羊膜炎は、卵膜(絨毛膜と羊膜)や羊水に細菌感染による炎症が起こった状態で、子宮内感染とも呼ばれます。多くは腟の細菌が子宮頸管を上がっていくことで起こります。母体の発熱、子宮の痛み、赤ちゃんの心拍が速くなる、においのあるおりものなどがみられることがありますが、はっきりした症状が出ないこともあります。
早産期の前期破水が起こりやすい背景としては、子宮頸管が短いこと、妊娠中期・後期の出血、やせ、喫煙などが挙げられ、前の妊娠で早産期の前期破水があったことは、次の妊娠での大きなリスク因子とされています[2]。前期破水の原因や管理は前期破水とはの記事で詳しく扱っています。
6. 病院での破水の確かめ方
病院では、腟鏡で腟の奥を直接見て羊水がたまっていないかを確認し、pH検査や顕微鏡での観察、羊水に含まれる成分の検査、超音波検査などを組み合わせて破水かどうかを判断します。どの検査も痛みはほとんどなく、腟鏡を入れるときに少し圧迫感がある程度です。
腟鏡診・pH検査・羊水成分の検査・超音波
米国産婦人科学会の診療指針では、破水の診断は、子宮頸管から羊水が流れ出て腟の奥にたまっているのを目で確認すること、腟の液体のpHを調べること、液体を乾かして顕微鏡で見たときに羊水特有のシダの葉のような結晶(シダ状結晶)が出るかを見ることの組み合わせで行うとされています[2]。腟鏡は、腟を広げて奥を見るための器具で、消毒したものを使います。
pH検査は、BTB(ブロモチモールブルー)などの試薬をしみこませた試験紙に腟の液体をつけ、色の変化で酸性かアルカリ性かを見る方法です。羊水が混じると、本来は酸性の腟内がアルカリ性に傾くため、色が変わります。ただし、血液や精液、アルカリ性の消毒薬、一部の潤滑剤、トリコモナス症や細菌性腟症でもpHが上がり、破水していないのに陽性と出ることがあります[2]。おしるしの出血が混じっているときや、腟の感染症があるときは、pH検査だけでは判断できないということです。
これらで判断がつかない場合には、羊水に多く含まれるタンパク質を検出する検査キットが使われることがあります。便利な検査ですが、米国食品医薬品局(FDA)は2018年、これらの検査を単独で破水の診断に使わず、ほかの診察所見と組み合わせて使うよう医療者に注意を呼びかけました。検査結果だけに頼った誤った使い方に関連して、胎児の死亡13件と、妊婦の健康被害の報告が複数寄せられていたためです[11]。
超音波検査では、子宮の中の羊水の量を測ります。羊水が少なくなっていれば破水を裏づける材料になりますが、羊水の量はほかの理由でも変わるため、超音波だけで破水と診断することはできません[2]。また、指で子宮口を調べる内診は、細菌を子宮の中に押し込むおそれがあり、得られる情報も腟鏡診に比べて少ないため、破水が疑われるときには、陣痛が進んでいる場合などを除いて原則として避けるとされています[2]。検査の種類や流れは破水かどうかの検査の記事でも紹介しています。
🩺 院長コラム【検査は「組み合わせ」で判断するもの】
破水の診断で、腟鏡で見る、pHを調べる、結晶を見る、羊水の量を測る、と複数の方法を重ねるのは、どの検査にも見落としや思い違いがあるからです。FDAが検査キット単独での判断に注意を呼びかけたのも、同じ理由です。
遺伝学的検査でも、1つの結果だけで結論を出さず、ほかの情報と照らし合わせて判断するのが基本です。病院でさえ組み合わせて判断するものを、自宅で見た目だけで決めることはできない、と考えておくのが現実的だと考えています。
7. 破水かもしれないと思ったら
破水かもしれないと思ったら、清潔なナプキンを当てて時刻を確認し、かかりつけの産院に電話してください。受診するかどうかは、産院の指示に従います。陣痛が来ていなくても、量が少なくても、電話をしてよい場面です。破水したときの対応全体は破水したときの対応の記事でもまとめています。
電話の前に確認しておくこと
電話では、産院が状況を判断できるように、次のことを伝えられるようにしておくとスムーズです。メモにしておくと、慌てていても伝え漏れが減ります。
- 妊娠週数と、出産予定日
- 水っぽいものが出始めた時刻と、その後も出ているか
- 色(透明・ピンク・茶色・緑色)とにおい
- 量(下着がぬれる程度か、足を伝うほどか)
- おなかの張りや痛みの有無と間隔、出血の有無
- 発熱の有無と、胎動がいつもと比べてどうか
- 過去の妊娠で早産や破水があったか、健診で指摘されていることがあるか
特に色とにおいは、ナプキンに付いたものを見ると判断しやすくなります。前の項目で説明したように、緑色や茶色の水、強いにおい、発熱、胎動が少ないといった場合は、急いで受診が必要になることがあるので、最初に伝えてください。
しないほうがよいこと
破水の可能性があるときは、腟に物を入れないようにします。タンポンは使わずナプキンを使い、性交も避けてください[1]。自分で腟の中を指で確かめることも、細菌を押し込むおそれがあるため避けます。
入浴については、国や施設によって案内が分かれます。英国の国民保健サービスは、破水後の入浴で感染のリスクが上がることはないとしています[1]。一方、日本では湯船につかることやシャワーを控えるよう案内する産院も多く、施設の方針によって対応が異なります。電話をしたときに、入浴してよいかどうかもあわせて確認してください。
受診するときは、自分で車を運転せず、家族の運転や陣痛タクシーなどを利用します。陣痛が急に強くなったり、破水の量が増えたりすると、運転に集中できなくなるためです。歩いて長い距離を移動することも、羊水の流出が増えることがあるので、なるべく避けます。
「尿漏れだったら恥ずかしい」と遠慮しなくてよい
受診した結果が尿漏れやおりものだったとしても、それは「破水ではないと確認できた」という意味のある結果です。産院では、破水かどうか迷って連絡してくる妊婦はめずらしくなく、確認のための受診は通常の対応の範囲です。
高位破水は自宅では見分けられないことがある以上、迷ったときに確認するのは自然なことです。反対に、遠慮して連絡をためらい、破水したまま時間がたってしまうほうが、感染などの心配が大きくなります。夜間や休日でも、産院の指示された連絡先に電話してかまいません。分娩を予定している産院の連絡先は、妊娠後期に入る前に確認しておくと、いざというときに慌てずにすみます。妊娠後期全体の過ごし方は妊娠後期に気をつけることでまとめています。
⚠️ すぐに産院へ連絡してほしいサイン
・さらさらした水が止められない、少量でもじわじわ続く
・緑色や茶色の水が出た、強いにおいがする
・生理のような量の出血、かたまりが出る、強い腹痛がある
・発熱がある、胎動がいつもより明らかに少ない
・妊娠37週より前に、水っぽいものが続いている
よくある質問(FAQ)
Q1. 水っぽいおりものが続くのは破水ですか?
妊娠中はおりものが増え、水っぽく感じることもよくあるため、それだけで破水とは言えません。ただ、さらさらした水が自分で止められず、ナプキンを替えてもまたぬれるように続いている場合は、量が少なくても破水の可能性があります。自宅では確実に見分けられないので、かかりつけの産院に電話して判断を仰いでください。
Q2. 高位破水は1回で止まることがありますか?
破れた穴が小さかったり、赤ちゃんの体で一時的にふさがったりして、しばらく出なくなることがあります。そのため「1回で止まったから破水ではない」とは言い切れません。一度でもさらさらした水が出て気になる場合は、産院に連絡してください。詳しくは高位破水とはの記事で解説しています。
Q3. 破水かどうかの検査は痛いですか?
痛みはほとんどありません。腟鏡で腟の奥を見たり、腟の液体を綿棒や試験紙で取ってpHを調べたりする検査で、腟鏡を入れるときに圧迫感がある程度です。超音波検査はおなかの上から行います。
Q4. 妊娠中期でも破水しますか?
頻度は低いものの、起こりえます。米国産婦人科学会によると、妊娠37週より前に陣痛より先に破水する早産期の前期破水は妊娠の2〜3%とされています。時期が早いほど赤ちゃんへの影響が大きいため、妊娠中期でもさらさらした水が続くときはすぐに連絡してください。
Q5. おりものでナプキンがびしょびしょになるのは普通ですか?
妊娠後期はおりものが増え、尿漏れも起こりやすくなるため、下着やナプキンがぬれることはよくあります。ただ、短時間でナプキンがびしょびしょになるほどの量が出る、水のようにさらさらしている、止められないという場合は、おりものではなく破水の可能性があるので、産院に連絡してください。
Q6. 破水はどんなにおいですか?
羊水はほとんどにおわないか、独特のにおいがすると表現されることが多いものの、感じ方には個人差があります。アンモニアのにおいなら尿、少し酸っぱいにおいならおりものであることが多いですが、においだけで判断するのは難しいため、量や止められるかもあわせて確認してください。強い悪臭がある場合は感染の可能性もあるので早めに連絡します。
Q7. ミネルバクリニックで破水かどうか診てもらえますか?
ミネルバクリニックは分娩を扱っていないため、破水が疑われるときは、分娩を予定しているかかりつけの産院に連絡してください。破水の確認や、その後の分娩の管理は、かかりつけの産院で行います。
まとめ
破水とおりもの、尿漏れは、色・におい・さらさら感・量である程度見当をつけることができ、いちばんの手がかりは「自分の力で止められるか」と「少しずつ出続けるか」です。羊水はさらさらしていて止められず、pHは7.1〜7.3と、酸性の腟分泌物とは性質が違います[2]。
ただし、高位破水は流れ出る量が少なく、自宅では確実に見分けられないことがあります。病院でさえ、腟鏡での観察、pH検査、羊水の量などを組み合わせて判断しています。緑色や茶色の水、強いにおい、発熱、胎動の減少、妊娠37週より前の水っぽいものの持続は、すぐに連絡が必要なサインです。おりものの異常は腟の感染症のサインでもあり、前期破水や早産と関係することがあるため、健診で伝えるようにしてください。迷ったときは、量にかかわらずかかりつけの産院に電話することが、いちばん確実な見分け方です。
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※破水かもしれない場合や妊娠経過についてのご心配は、かかりつけの産院へご連絡ください。
参考文献
- [1] Signs that labour has begun. NHS (National Health Service, UK). Page last reviewed: 9 November 2023. [NHS]
- [2] Prelabor Rupture of Membranes: ACOG Practice Bulletin, Number 217. American College of Obstetricians and Gynecologists. Obstet Gynecol. 2020;135(3):e80-e97. [ACOG]
- [3] Prevalence, incidence and bothersomeness of urinary incontinence in pregnancy: a systematic review and meta-analysis. Int Urogynecol J. 2021. [PubMed 33439277]
- [4] 厚生労働省. 日本人の食事摂取基準(2020年版)各論 2 対象特性 2-1 妊婦・授乳婦. [厚生労働省]
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