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「つわりが重い=ダウン症」は根拠のない噂!ダウン症の特徴や分かる時期・検査について解説

ダウン症とは妊娠中に発症する可能性が最も高い染色体異常の一つです。妊娠した方なら誰もが一度は「我が子がダウン症ではないか」と心配するでしょう。

そこでこの章では、ダウン症に関する以下の内容を解説します。

  • ・ダウン症とは?
  • ・ダウン症になる原因や妊娠する人の特徴
  • ・ダウン症と分かる時期

この章を読むだけでダウン症について体系的に学べますので、ぜひご活用ください。

 

ダウン症とは?

ダウン症とは、妊娠中に胎児に発症する先天的な染色体異常のことです。

染色体異常の中では最も発症率が高く(700人に1人の割合)、偶然的に発症することが特徴になります。そのため発症を予測が難しく、妊婦健診や出生前検査で発覚することがほとんどです。

妊娠中にダウン症が発覚すると両親は自責の念にかられることがあります。しかし、発症は偶発的であるため、ご自身のことを責めないようにしましょう。

また、ダウン症の程度は重症から極わずかに症状が見られる軽症まで様々であり、出産や実際に育児を進めていくまでは分かりません。

近年、医療の進歩や社会的な理解が進んだことでダウン症の寿命は延びてきています。徐々にですが、ダウン症の児やその家族が生活しやすい社会作りが進んでいると言えるでしょう。

ダウン症になる原因や妊娠する人の特徴

ダウン症の原因は、21番目の染色体が一本多いことです。通常、21番目の染色体は2本ですがダウン症の場合は3本(トリソミー)であることが分かっています。

胎児が成長していく中、何らかが原因で染色体に異常が生じることで偶然的に発症すると言われています。つまり、妊娠する以上どのカップルでもダウン症の胎児が生まれる可能性はあるということです。

一方で、高齢妊娠・出産はダウン症の発症率を高めることも分かっています。以下はNIPT Japanのダウン症の妊娠と年齢の関係性に関する表です。

ダウン症確率

NIPT Japan/新型出生前診断より画像引用)

年齢とともに卵子や精子の劣化や活動性の低下が起こることで、染色体異常が誘発されます。特に35歳以降はダウン症の妊娠率が極端に高まります。

このようにダウン症の妊娠は偶然である一方で、年齢による発症リスクが高まることも知っておきましょう。

※参考資料:NIPT Japan/新型出生前診断

 

ダウン症と分かる時期

ダウン症であると判明するのは、早くとも妊娠11週目以降です。妊婦健診で行うエコー検査で頚部のむくみがあれば、ダウン症が疑われ精密検査を勧められます。

ただし、頸部のむくみは身体的所見に過ぎず、確定診断や検査精度を求めるなら「絨毛検査」や「羊水検査」を受ける必要があります。

  • ・絨毛検査:妊娠11〜13週
  • ・羊水検査:妊娠16週以降

これらの2つの検査は確定診断できる一方で検査可能時期が決められているため、妊娠期に合わせて受検の有無を決めましょう。また検査に伴う合併症として、流産や早産、感染症にかかるなどのリスクもあります。

検査の必要性やリスクについて十分理解した上で、必要時に受けるようにしましょう。

【胎児・新生児】ダウン症の赤ちゃんの特徴

つわりの程度とダウン症には因果関係がないことが分かりました。しかし症状が重たいと、どうしてもダウン症ではないかと心配になりますよね。

ダウン症なら妊婦健診や各種検査で医学的な所見が確認できます。そこでこの章では、胎児・新生児別でダウン症の赤ちゃんの特徴を、医学的な視点を踏まえて解説します。

目視で確認できる特徴を中心にお伝えしますので、ぜひ比較基準として参考にしていただけると幸いです。

 

ダウン症の胎児の特徴

ダウン症の胎児の特徴は、以下の通りです。

  • ・頚部のむくみ
  • ・心臓の血液の逆流
  • ・頭が大きい

胎児だとエコー画像を通して見ることしかできないため、ダウン症の有無を診断するのが難しいこともあります。

その上で、一般的には後頭部から首にかけてむくみ(膨らみ)があったり、通常よりも頭が大きかったりすると言われています。顔の大きさは通常の胎児よりも大きく、縦幅が横幅よりも短いのが特徴です。

また、ダウン症の胎児のおよそ30〜40%が心臓の病気(心室中隔欠損、心内膜欠損、動脈管開存など)を合併しており、兆候としてエコー検査で心臓の血液の逆流が確認できる場合もあります。

このように胎児の時期からダウン症の特徴が徐々に現れ始めるのです。

※参考資料:小児慢性特定疾病情報センターダウン(Down)症候群

 

ダウン症の新生児の特徴

ダウン症の新生児の特徴は、以下の通りです。

  • ・顔が小さく扁平
  • ・つり目
  • ・斜視
  • ・鼻が低い
  • ・耳の位置が低い
  • ・舌が大きい

ダウン症の赤ちゃんは特徴様顔貌と言われ、顔の作りが特徴的です。

例えば、顔全体が扁平であり鼻や耳が低いこと、全ての赤ちゃんに当てはまるわけではありませんが、斜視(寄り目)や舌が大きいこともあります。

一方でダウン症と言っても両親の遺伝子を引き継いでいることに変わりはありません。そのため、お父さんやお母さんの特徴を引き継いでいると感じる部位もあるでしょう。

【妊娠中】ダウン症を確認する4つの検査と受けられる時期・費用

ダウン症を確認する検査には、以下の4つがあります。

  • ・超音波検査(エコー検査)
  • ・新型出生前診断(NIPT検査)
  • ・絨毛検査
  • ・羊水検査

検査を受けられる時期や費用、判定精度など検査の種類によって異なります。あなたに必要な検査を選ぶ参考にしていただけると幸いです。

 

1. 超音波検査(エコー検査)

ダウン症を見つける最初の検査として超音波検査(エコー検査)があります。超音波検査は妊婦健診で行われる一般的な検査であり、お腹にプルーブと言われる機械を当てて胎児の状態を確認します。

後頭部から首の付け根にかけてむくみや膨らみがあるとダウン症の可能性が指摘されます。また、顔の大きさや心臓の血液の逆流などの所見も合わせて確認します。

ダウン症が疑われたら胎児ドック(精密検査)が進められるでしょう。早めに検査を受けることで、ダウン症の有無や今後の出産・育児など今後のライフスタイルについても考える機会になります。

 

2. 新型出生前診断(NIPT検査)

新型出生前診断(NIPT検査)とはお母さんの採血結果から胎児のDNAを分析し、染色体・遺伝子異常を特定する検査のことです。採血だけなので侵襲が少ないため、比較的受けやすい検査になります。

検査から10 日程度で結果が分かる上に、精度も99%と非常に高いことから希望する妊婦も多いようです。ただし、非確定的診断であるため陽性反応だからと言って、確実にダウン症であるとは限らないことを理解しておきましょう。

確定診断を受けたいなら、次に紹介する絨毛・羊水検査(確定的検査)を行う必要があります。

新型出生前診断の費用は施設により異なりますが、およそ15〜20万円前後であり、検査時間は採血のみなので10分程度です。

※参考資料:日本産科婦人科学会/「母体血を用いた出生前遺伝学的検査(NIPT)」指針改訂についての経緯・現状について

 

3. 絨毛検査

胎盤の一部である絨毛を採取して染色体・遺伝子の分析をする絨毛検査なら、ダウン症の確定診断ができます。

絨毛検査のメリットは、以下の通りです。

  • ・確定診断を受けられる
  • ・羊水検査(確定診断)よりも2〜5週間早く結果が分かる
  • ・胎児の細胞数をしっかりと採取できるため遺伝検査に強い

妊娠10〜13週と妊娠早期から受けられるメリットもあります。早期に胎児の情報を知ることで、出産後の育児や生活のイメージを持ったり、準備すべきものを考えたりするのに有効と言えるでしょう。

一方のデメリットは、以下の通りです。

  • ・羊水検査よりも手技が難しく受けられる施設が少ない
  • ・流産や死産などの合併症がある
  • ・胎盤と胎児の細胞が全て一致しているわけではない

絨毛検査では、エコーを見ながらお母さんのお腹に針を刺して絨毛を採取します。そのため、痛みや不快感、気分不良などの侵襲や苦痛が伴います。また、検査手技より誤って胎児を傷つけてしまうと流産や死産の原因(検査全体のおよそ1%)になりかねません。

検査費用は保険適応外のため全額負担でおよそ10〜20万円と高額になります。

※参考資料:兵庫医科大学 産婦人科/絨毛検査とは

 

4. 羊水検査

羊水検査とは胎児の浮かぶ羊水を採取して、染色体異常の分析を行う検査のことです。

【補足情報】
▶︎羊水とは胎児と羊膜の間にある水のことで、胎児を衝撃や感染症から守る役割があります。胎児の細胞が混ざっていることから、羊水は染色体や遺伝情報を分析するのに優れています。

羊水検査のメリットは、以下の通りです。

  • ・確定診断を受けられる
  • ・検査時間が15分程度と短い

一方のデメリットは、以下の通りです。

  • ・流産のリスクがある(300人に1人)
  • ・全ての染色体・遺伝子異常が分かるわけではない
  • ・受検可能な時期が遅く、結果次第で次の選択をすぐに迫られる

検査費用は保険適応外であるため全額負担で10〜20万円と高額になります。

検査結果は10日〜2週間前後で分かる一方、もし陽性反応(ダウン症やその他染色体異常の可能性がある)だった場合、短期間で今後の方針を決めなければいけません。

例えば、人工妊娠中絶は21週6日までしか行えません。妊娠継続をするなら出産後の育児や経済的な負担についてもイメージしておく必要があるでしょう。そのため、検査結果によってどのように対応するか事前に家族で話し合っておくことをお勧めします。

※参考資料:日本産科婦人科学会/「出生前に行われる検査および診断に関する見解」改定案

検査でダウン症の可能性を指摘されたらどうする?

検査結果でダウン症の可能性を指摘されたら、どのように対応するかも考えておくことが重要です。

例えば、妊婦健診の超音波検査でダウン症の可能性を指摘されたら、胎児ドックや羊水検査などの精密検査を受けて確定診断を受ける選択肢があります。

精密検査を受けるメリットは、より詳しい情報を早い時期から手に入れられることです。そして出産後の育児や生活のイメージをしたり、悲しいですが人工妊娠中絶をしたりする選択肢も持てるでしょう。

一方で精密検査は受けず、出産を迎える方もいます。その場合、パートナーやご家族と十分話し合い、先天性疾患があってもなくても育児できるような心構えをしておく必要があります。

まとめ: つわりが重いならまずは産婦人科で相談すること

つわりが重いとダウン症であるという噂は医学的根拠のない嘘であると解説してきました。ダウン症の発症は偶発的であり、誰にも予測できません。妊婦健診の超音波検査(エコー検査)で指摘されて初めて発覚するのです。

ダウン症の可能性を指摘されたら、以下の検査でより詳細な情報が分かります。

  • ・新型出生前診断(NIPT検査)
  • ・絨毛検査
  • ・羊水検査

検査を受けると早い時期から胎児の情報が手に入り、妊娠続行の有無や出産後の育児のイメージを持つことができます。

また、つわりは女性ホルモンの分泌量やバランスにより左右されることも分かりましたね。現在妊娠中でつわり症状が重い場合、まずは産婦人科に相談しましょう。合わせて胎児の状態の黙認してもらえるため、不安の解消になります。

この記事が妊娠中のあなたの不安解消に少しでも役立てば幸いです。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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