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卵巣摘出手術って?気になる手術内容や術後の生活について徹底解説

女性特有の病気は生きていくうえでどうしても気にかけていかなければいけません。定期的な検診を受けているという方もいれば、なかなか検診に行けていないという方もいるのではないでしょうか。

しかし、どんなに検診をきちんと受けていようと、病気になってしまうこともあります。そんな中でも特に怖いのが卵巣の病気です。しかし、卵巣の病気はほとんど自覚症状がないため、進行した状態で初めて病気であったことを知るということも多いです。

そうなると、卵巣の摘出手術をすることになる場合があります。卵巣を摘出すると聞くと、とても不安ですよね。本記事では、卵巣の摘出手術について説明します。手術方法や手術後の生活、気になる費用などを知っておくだけでも不安は軽減されるものです。

今卵巣の摘出手術に悩んでいる方だけではなく、今はその心配が無い方もぜひ最後までお読みください。

卵巣摘出手術とは

手術道具

では、実際に卵巣摘出手術はどのような手術なのでしょうか。卵巣の摘出手術というと開腹手術を思い浮かべる方も多いと思います。実は、手術方法は開腹手術だけではありません。順番にご紹介します。

腟式手術

腟式手術では、腹部にはまったくメスを入れません。腟から手術器械を入れることにより摘出をする手術です。この腟式手術が最も身体に負担をかけない手術と言えます。

しかし、出産経験がない方や膣での性交渉経験がない方の場合は手術の難易度が上がります。そのため、事前に検査をおこない腟式手術ができるかどうかを判断します。

手術時間は30分から1時間半程度で、手術中は麻酔を行います。手術後は痛みがほとんどなく、鎮痛剤の内服薬も処方されないことが多いです。

開腹手術

開腹手術は、腹部を約10センチ切り、摘出をする手術です。先に紹介した腟式手術や後述する腹腔鏡手術と比較すると身体に対する負担は大きいですが、腟式手術や腹腔鏡手術では対応ができない場合に選択されます。

手術時間は1時間から1時間半程度で、手術中は全身麻酔を行います。手術後すぐは痛みがありませんが、麻酔が切れると痛みがでてくるため注射によって痛みをやわらげます。また、入院中は点滴や内服薬で痛みをコントロールします。

退院後の痛みは内服薬で対処できますが、お腹に力が入ると痛みが出ます。

腹腔鏡手術

腹腔鏡手術では、腟式手術とは違い腹部にメスを入れます。腹部を4か所程度切開し、そこからカメラなど手術に必要な器具を入れることにより摘出をする手術です。

切開するといっても範囲は小さいため、腹部に残る手術跡も小さいです。術後は多少痛みがありますが、開腹手術と比較するとさほど大きい痛みではありません。

手術時間は1時間から1時間半程度で、手術中は全身麻酔を行います。術後はほとんど痛みを感じませんが、手術翌日は多少腹部が痛みます。しかし、鎮痛剤を服用することで対処することができます。

開腹手術は身体への負担が大きいため、卵巣の摘出手術ではこの腹腔鏡手術がメジャーになっています。そのため、腹腔鏡手術についてもう少し詳しく解説します。

腹腔鏡手術の費用や入院期間

腹腔鏡手術の入院期間は5日間程度です。手術前に入院を行い、問診や点滴、浣腸、麻酔などを済ませておきます。その後手術を行い、手術翌日には採血など経過の観察を行います。食事やシャワーも翌日からできます。

手術後2日目も経過観察とし、症状によって採血やレントゲンを取ることもあります。手術後3日目に何も問題がなければ退院することができますが、場合によっては入院が延長することもあります。

費用は、だいたい40万円〜80万円となりますが、健康保険が適応されるため自己負担は3割の12万円〜24万円ほどです。また、加入している保険によっては支払った費用が戻ってくるため、しっかり確認しておきましょう。

腹腔鏡手術による入院中の生活

つづいて、腹腔鏡手術の入院中に関する食事や検査について詳しくご説明します。入院期間について述べた際に簡単に伝えましたが、より具体的なイメージをここでつかみましょう。

手術後1日目

手術後1日目は診察やフットポンプの装着、抗生剤の点滴を行い、場合によっては鎮痛剤の点滴も行います。検査としては採血のみです。

食事はすぐにとることができず、腸の状態を確認し、水分の摂取から開始していきます。入浴はできないため、身体の拭き上げを行います。排泄に関しては、手術中に入れた管を使って行いますが、トイレまでの歩行があれば管を使わずに通常通りすることができます。

手術後は安静にする必要がありますが、歩行が可能であれば問題なく歩くことができるのが手術後1日目です。

手術後2日目

手術後2日目は、食事の摂取状況次第で点滴を抜くことができますが、抗生剤の点滴は引き続き行います。1日目は採血を行いましたが、2日目は検査がありません。経過観察をおこないます。

2日目からの食事では粥食が可能になりますが、入浴は1日目に続きできないため身体を拭き上げるのと同時に陰部の洗浄を行います。排泄に関しては、1日目と同様トイレまで歩くことができれば管を使わずに通常通りすることができます。

手術後3日目

手術後3日目は、引き続き抗生剤の点滴を行います。食事に関しては、問題が無ければ普通食に切り替わります。

入浴については、湯船に浸かることはできませんがシャワーを浴びることができるようになります。排泄は問題なく行うことができます。

手術後4日目~8日目

だいたい手術後4日目~8日目くらいの間で退院をすることができます。退院前にもう一度採血を行いますが、抗生剤の点滴をすることもなく、食事も普通食を摂ることができます。入浴はシャワー程度であれば問題なくすることができます。

最後に医師から退院後の生活について説明を受けて退院となります。

卵巣摘出手術になる病気

ここまで卵巣摘出手術の種類についてご説明しましたが、卵巣を摘出することで治療できる病気にはどんなものがあるのかご存知でしょうか。一般的には卵巣がんのイメージが強いかもしれません。

実際に、卵巣摘出手術で治療できる病気は下記が挙げられます。

  • 良性卵巣腫瘍
  • 子宮内膜症
  • 子宮筋腫
  • 子宮腺筋症
  • 異所性妊娠
  • 子宮内膜増殖症
  • 初期の子宮体がん

卵巣摘出手術後の変化は?

個室の入院部屋

卵巣を摘出した後の生活について気になる方も多いのではないでしょうか。ここからは、卵巣摘出手術後の生活についてご説明します。

卵巣の役割

卵巣摘出手術後の生活について説明する前に、そもそも卵巣にはどういった役割があるのかをご説明します。

卵巣の役割として挙げられるのは大きく二つです。卵子のもととなる原始卵胞をストックすることと、女性ホルモンを分泌することです。

女性の身体は思春期になると1カ月に1個ずつ、もしくは複数個の卵子が排出されます。この卵子が排出されることを排卵と呼びます。この排卵は二つある卵巣のうち、どちらか一方から行われるのです。そして、この卵子が精子と出会うことで妊娠をすることができます。

そのため、妊娠するには卵巣が必要となります。

もう一つの大切な役割である女性ホルモンの分泌も、思春期に始まります。この女性ホルモンは女性らしい体をつくるために欠かせないものとなります。また、それだけではなく血管や骨、肌などの健康を守る役割や、妊娠機能にも影響を与えます。

卵巣を摘出したあとは妊娠できるの?

今後の人生で妊娠・出産を望む方にとって最も気になるポイントは「妊娠することができるのか」ということではないでしょうか。

卵巣は子宮の左右に位置しており、身体の中に二つある状態です。そのため、片方の卵巣のみを摘出した場合は問題なく妊娠することができます。

中には「卵巣の数が半分になったのだから、妊娠できる可能性も半分になったのでは」と心配する方もいますが、その心配は必要ありません。

卵巣が一つになったとしても、二つあった時と変わらず今まで通りきちんと機能します。また、残った一つの卵巣を摘出することになった場合でも、病巣がある部分だけ取り除き卵巣の一部を残す場合でも妊娠は可能です。

しかし、卵巣を二つともすべて摘出してしまった場合は妊娠することができなくなります。

卵巣を摘出した際の身体の変化は?

前述した通り、卵巣を一つ摘出したとしても、残ったもう一つの卵巣がしっかり役割を果たしてくれるため身体の変化はあまりありません。

しかし、卵巣を二つとも摘出した場合は身体に変化が起こります。卵巣ではそもそも女性ホルモンを分泌する役割があることは先に述べました。この役割を担っていた卵巣を二つとも摘出してしまえば、女性ホルモンの分泌はストップします。

つまり、体内で分泌されるホルモンのバランスが崩れ、イライラすることが増えたりうつ状態に陥ったりすることがあります。そのほかにも動悸や発汗、のぼせたような感覚など症状は人によってさまざまです。

まとめ

卵巣の摘出手術についてご紹介しましたがいかがでしたでしょうか。卵巣を摘出するといっても、病気の進行具合や今後のライフプランなどによって手術方法はさまざまです。

腹腔鏡手術が主流となりつつありますが、それぞれメリットやデメリットは存在します。自分が今後どういうライフプランを歩んでいきたいのか、希望をしっかり先生に伝えたうえで納得のいく方法を取ることがベストです。

また、卵巣摘出手術をすることで身体だけではなく、金銭面の負担もかかります。手術や入院費用は加入している保険次第で異なりますので、事前に情報を整理しておくことで負担が減るでしょう。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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