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おなかにいる赤ちゃんが小さめだと医師から言われてしまったら、ママはとても不安な気持ちで過ごすことになってしまいます。
胎児が正常範囲の下限よりも小さめで、成長が遅い、もしくは成長がとまってしまっていることを、胎児発育不全といいます。
胎児発育不全と診断されても無事に生まれてくる赤ちゃんもいれば、順調に育たずに死産となってしまうこともあります。
さまざまな原因で起こる胎児発育不全は、原因となる病気の治療や生活習慣を整えることによって改善するケースもあります。
胎児発育不全の原因を医師からしっかり説明してもらい、生まれてくる赤ちゃんのために、ママができることを行うことが重要です。
この記事では、胎児発育不全の原因や診断の基準、治療法などをご紹介します。
胎児発育不全について理解を深めたいという方は、ぜひ参考にしてみてください。
胎児発育不全とは
妊娠中は病院での妊婦健診で、血圧や体重測定、尿検査を行いますが、そのほかにも超音波検査で赤ちゃんの健康状態のチェックが行われます。
超音波検査で確認される赤ちゃんの推定体重は、週数によって平均値や上限、下限が定められています。
週数ごとの下限値よりも低い場合に胎児発育不全と診断され、赤ちゃんが小さい原因を探り治療が行われます。
胎児発育不全は「fetal growth restriction」の頭文字をとってFGRと呼ばれることもあり、その原因はさまざまです。
ママに自覚症状は一切なく、超音波検査でみつかることが多い疾患です。
胎児発育不全はすべての妊娠の約8~10%で起こると言われていて、注意深く経過観察を行うことが重要となります。
胎児発育不全の原因
胎児発育不全は胎児因子、母体因子、胎盤、臍帯因子などがあり、さまざまな原因が重なり合うことで起こっている可能性もあります。
ここからは、胎児発育不全の原因をご紹介します。
胎児因子
胎児因子として以下のような原因が考えられます。
- 染色体異常
- 奇形症候群
- 先天性心疾患
- 感染症
胎児発育不全の約10~30%を占めるといわれているのが、胎児因子によるものです。
胎児の染色体異常や先天性ウイルス感染などで引き起こされます。
13トリソミー、18トリソミー、21トリソミー(ダウン症候群)などの染色体異常で、胎児の体が小さくなることがあります。
奇形症候群や先天性心疾患などで、赤ちゃんの体に大きな異常がある場合にも、赤ちゃんの成長は妨げられます。
さらに、胎児先天性ウイルス感染(サイトメガロウイルス、トキソプラズマ、風疹など)が胎児発育不全の原因になることもあります。妊娠中の母体ウイルス感染が赤ちゃんにも波及してしまうことが原因となります。
母体因子
母体因子として以下のような原因が考えられます。
- 妊娠高血圧症候群
- 心臓の病気
- 腎臓の病気
- 自己免疫疾患
- 糖尿病
- 喫煙
- アルコールの過剰摂取
ママの生活習慣やもともとの病気、妊娠してからかかった病気によって、赤ちゃんの発育が妨げられてしまう場合があります。
また、妊娠中の喫煙や飲酒も胎児発育不全の原因となるので、妊娠したらタバコやお酒はやめ、生活習慣を改善する必要があります。
胎盤、臍帯因子
酸素や栄養を母体の血液から受け取る胎盤が、腫瘍や出血、胎盤形態異常などによって本来の働きを妨げられてしまうと、胎児発育不全が起こります。
また、胎盤から赤ちゃんに血液を運ぶ臍帯がねじれてしまって、血流が妨げられたり、臍帯になんらかの異常が生じたりしている場合は、赤ちゃんに運ばれる血液が極端に少なくなり赤ちゃんの成長を妨げます。
胎盤機能不全といって、胎盤自体の機能が低下している場合も胎児発育不全が起こります。
胎盤、臍帯因子による胎児発育不全は、全体の約70%を占めるとされています。
胎児発育不全について
胎児発育不全はさまざまな原因によって起こります。ときにはその原因が複合的に重なり合っている場合もありますが、原因を取り除くことで治療できるケースもあります。
ここからは、胎児発育不全についてさらに詳しくご紹介します。
胎児発育不全の3タイプ
胎児発育不全は以下の3タイプに分けられます。
均等型
妊娠初期から発育が妨げられている状態で、全身をみても均等に発育が遅いのが特徴です。
頻度は20~30%程度とされていて、妊娠20週頃に発見されますが経過は悪く、最悪の場合は子宮内で胎児が死亡してしまうこともあります。
不均等型
胎児血流障害によって生じる栄養障害が原因となることが多く、比較的妊娠後期で発症することとなります。
頭囲の発育は正常範囲内であるにもかかわらず、躯幹が小さく成長が不均等な状態です。
発生頻度は70~80%程度で、この場合の経過は好調となることが多いとされています。
混合型
均等型と不均等型の中間タイプが混合型で、妊娠高血圧症候群や母体の栄養失調、生活習慣などが原因と考えられています。
発育がどの程度遅れているかによって、経過は異なります。
発生頻度は全体の5%程度とされています。
診断の基準
赤ちゃんの小ささは、標準偏差とよばれるSDを用いて表現されます。胎児発育不全は、推定体重がー1.5SD以下がボーダーラインとなっています。
これは、同じ週数の赤ちゃんを小さい順に並べた時に、100人の中の7番目以下ということになります。
推定体重は赤ちゃんの頭、おなか周り、大腿の長さを計算式に当てはめることで算出されます。
しかし、超音波検査で導き出される推定体重は、誤差が前後10%はあるといわれているため、正確に判断するために臨床診断を行う場合もあります。
100人中の7番目以下が胎児発育不全と診断されるので、約7%の胎児は胎児発育不全と診断されますが、そのなかには体質的に小さめというだけで、疾患もなく健康な赤ちゃんも含まれています。
そのため、胎児発育不全と診断されたら、病気によるものなのか、赤ちゃんの体質なのかを見極める必要があります。
母体や胎児に何らかの異常が発見されたら、原因への治療を行いながら観察を続けますが、どちらにも異常がない場合は経過観察となります。
治療法
胎児発育不全の原因によっては、その原因を排除することで胎児発育不全が改善されることもあります。
しかし、一度胎児発育不全と診断を受けたら、正常な大きさまで大きくするといった治療法は現在ありません。
そのため、赤ちゃんの状態を厳重に管理し、元気な状態でいる限りはママのおなかの中で育てていくことになります。
何らかの生まれつきの疾患が原因の場合には、出産後にすみやかに疾患の治療ができるよう、安全な出産環境を準備することとなります。
場合によっては出産前に入院することで、細かく状態をチェックし管理することもあります。
また、2017年に三重大学医学部の研究結果として、ED薬の一つであるタダラフィルが胎児発育不全に有効である可能性があると発表されています。
バイアグラに含まれるシルデナフィルと同様の薬効を持っているタダラフィルを投与することで、胎児の体重が増えたという臨床試験が行われ、今後の活用に期待が高まっています。
陣痛前に帝王切開することも
胎児発育不全と診断されても、少しずつでも赤ちゃんが成長していることが認められ、十分元気である場合はそのまま妊娠を継続し、ママのおなかの中で体重を正常に近づけていき陣痛を待つこととなります。
しかし、赤ちゃんの成長が認められなかった場合や、赤ちゃんの元気がない場合などは、赤ちゃんの体力なども考慮したうえで帝王切開により分娩を早めることも考えられます。
さらに、胎児発育不全の赤ちゃんは、ママのおなかの中にいる間に十分な酸素や栄養が行き届いていないので、分娩時にストレスとなり胎児機能不全を起こしやすいと言われていることからも、帝王切開で分娩することが多いのです。
低体重のまま生まれた赤ちゃんは、新生児集中治療室(NICU)へ入院し、ある程度成長するまで整備された環境で過ごすことになります。
まとめ
胎児発育不全の原因や診断の基準、治療法などをご紹介しましたが、参考になりましたか?
胎児発育不全は、さまざまな原因が複合的に重なり合って起こっている場合があります。
胎児発育不全と診断を受けたら、焦らずにまずは原因を探り、原因を排除することで回復するケースもあるので医師の判断に従うようにしましょう。
また、胎児発育不全と診断されても、小さめながらもママのおなかの中でゆっくり育ち、通常の分娩で生まれてくる赤ちゃんもたくさんいます。
医師とよく話し合い、赤ちゃんをよりよい状態で迎えられるような準備をすることが大切です。
まずは、赤ちゃんの状態を医師に細かく確認し、安静にする、リラックスして過ごすなどできることを行いましょう。
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