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妊娠初期に起きる流産の原因、サインについて|気をつけることは?

妊娠初期は流産しやすいと聞いて不安になっている妊婦のかたも多いのではないでしょうか。

実際、日本産科婦人科学会によると、流産する妊婦の「約80%」が妊娠初期(妊娠12週未満)であることもわかっています。

そこでこの記事では、妊娠初期の流産について、以下の内容を詳しく解説します。

  • ・妊娠初期の流産の原因や頻度・年齢による影響
  • ・なりやすい人の特徴
  • ・診断と治療
  • ・よくある質問

安心して妊娠生活を過ごすためにも、妊娠初期の流産について一緒に学んでいきましょう。

妊娠初期の流産とは?

流産とは妊娠22週0日未満に胎児がお腹の中で亡くなることです。

流産には、以下の2パターンがあります。

  • ・自然流産
  • ・人工流産

自然流産とは妊娠中に何らかの原因で胎児が亡くなることです。妊婦健診で指摘されるまで流産したことに気づいていないケースもあり、原因も人それぞれ違いますが、多くは染色体異常であることもわかっています。

多くの場合はなくなった胎児は自然に体外に排出されるため、経過観察となることがほとんどです。しかし、中には自然排出されないこともあり、その場合は手術にて人工的に取り除かなければいけません。

一方の人工流産とは、お母さんの体を守ることを目的に、手術(人工妊娠中絶)で胎児を取り除くことです。手術ができる時期や対象者については、母体保護法により決められています。適切な手続きを踏み人工流産を行わないと違法になるため、注意が必要です。

では、流産についてより詳しく見ていきましょう。

流産と死産の違い

胎児がなくなる時期によって「流産」か「死産」かが決まります。

妊娠週数
NIPT Japan/流産の確率はどれくらい?原因と流産しやすい行動についてより画像引用)

参考資料:NIPT Japan/流産の確率はどれくらい?原因と流産しやすい行動について

流産の原因

妊娠初期の流産の原因は、ほとんどが染色体異常(遺伝子異常)です。そして、受精した時点で流産するかどうかの運命が決まっています。

この他にも可能性は低いものの、性感染症により子宮・膣に炎症が生じたり、下腹部への強い刺激で子宮収縮が誘発されたりした結果、流産になるケースもあります。

一方で妊娠初期に無理をすると流産になる確率が高いと言われます。しかし、これは医学的な根拠のない噂にすぎません。というのも、お母さんの行動が直接影響するのは、胎盤ができる妊娠15週以降だからです。

胎盤ができると母子の循環が共有され、お母さんのあらゆる行動が胎児に影響するため、注意しましょう。

このことからも妊娠初期の流産については、安静や行動制限でどうにかなるものでもないことがわかります。妊娠初期は染色体異常が原因であるため、自分を責めないようにしましょう。

流産の頻度と年齢別の流産率

流産の頻度は医療機関で確認されている妊娠のうちの「約15%」です。また、妊娠経験がある女性の「約40%」が流産をした経験があるというデータもあります。

流産が起こりやすい時期は妊娠12週未満、つまり妊娠初期であり流産全体の「約80%」を占めています。

また、年齢別に見た流産率については、以下の表をご覧ください。

妊娠率ART2018
JSOG 公益社団法人 日本産科婦人科学会ARTデータブック 2018より画像引用)

年齢別に見ると、以下のとおりです。

  • ・20代:20%未満
  • ・30代:20〜30%程度
  • ・40代:35〜65%程度

年齢が高くなるにつれて、流産率が高くなります。理由は、年齢とともに生殖機能が衰え、精子卵子が劣化するからです。つまり、流産になる確率を少しでも減らしたいなら、早めに妊活を始めることが重要になります。

参考資料
公益社団法人 日本産科婦人科学会/流産・切迫流産
JSOG 公益社団法人 日本産科婦人科学会/ARTデータブック 2018

流産になる前の兆候

流産前の兆候として、以下の症状が現れることがあります。

  • ・不正出血
  • ・下腹部の痛みや張り・冷え
  • ・妊娠初期症状が急になくなる
  • 基礎体温が下がる
  • ・破水する(水っぽいおりものが出る)

ただし無症状の方や症状の種類・程度が違うこともあるため、絶対的な指標ではありません。流産を予防することは難しいため、定期的に妊婦健診に通い、異常の早期発見・早期治療ができるようにしましょう。

流産でよくある症状として不正出血と下腹部の痛みがあげられます。出血だけに注目すると「流産?」「着床出血?」あるいは「妊娠月経?」と判断に困ることもあるため、必ず下腹部の痛みと合わせて観察しましょう。

下腹部の痛みが強く続くなら婦人科疾患などその他のリスクも考慮して、早めに産婦人科に相談するべきです。

流産になりやすい人の特徴

妊娠初期に流産になりやすい人の特徴は、以下のとおりです。

  • ・飲酒・喫煙習慣がある
  • ・放射線の被曝
  • ・性感染症にかかっている
  • ・過去に流産したことがある

タバコに含まれるニコチンや一酸化炭素は血管を収縮させます。 胎盤が形成される妊娠初期から中期(妊娠12〜15週あたり)にかけて喫煙習慣があると、十分な酸素や栄養素を送ることができず、流産や胎児発育不全の原因になるのです。

飲酒も母子で血液循環を共有する(妊娠15週目あたり)ため、肝機能が成熟していない胎児循環にアセトアルデヒド(アルコールの代謝産物)が流れると胎児性アルコール症候群や流産のリスクを高めます。

また、環境省は妊娠初期の「0.1グレイ以上の放射線被曝」で流産のリスクが高まることを示しています。その他に、「治療上の必要性」と「胎児への健康被害」を天秤にかけて、優先順位を決めなければいけないでしょう。

しきい線量
環境省/第3章 放射線による健康被害 3.5 胎児への影響より画像引用)

また、医療機関を受診した際、治療前に「妊娠中もしくは妊娠の可能性がある」と医師に伝えることが大切です。

性感染症は子宮収縮を誘発したり、過去に流産した際に残留物が子宮内にあると流産を誘発したりすることもわかっています。

このように流産を誘発する危険因子は日常生活のさまざまな場所に隠れているのです。

参考資料:環境省/第3章 放射線による健康被害 3.5 胎児への影響

流産の種類と特徴

流産の種類と特徴については、以下の表をご覧ください。

流産の分類 流産の名称 特徴
原因 自然流産 自然に起こる流産のことで、多くのケースで自覚症状なく、自然排出したことすら気づかないケースもある
原因 人工流産 人工妊娠中絶のように、強制的に妊娠を中断させる流産のこと
症状 稽留流産 すでに胎児は死亡しているが、自覚症状がないため本人も気づいていない状態のこと。妊婦検診で発覚して、胎児や付属物は自然排出もしくは手術で取り除く
症状 進行流産(完全・不全) 子宮内容物(胎児や付属物)が完全に自然排出された状態を「完全流産」、一部子宮内に残っている状態を「不全流産」と言う
その他 感染流産 細菌感染が原因で引き起こされる流産のこと。適切な治療をしないとお母さんの命の危険に晒すこともあるため、慎重な治療が必要になる
その他 反復流産 2回以上流産になる状態のこと
その他 習慣流産 3回以上流産を繰り返す状態のこと。基本的には流産は偶発的に起こるものですが、3回以上繰り返した場合は両親のどちらかに何らかの病気が隠れている可能性がある
その他 化学(的)流産 妊娠検査で陽性反応があるものの、胎児が確認されない状態のこと。 妊娠後、早い時期に流産してしまった可能性が考えられる

一口に流産と言っても、様々な種類や呼び方があります。

では、次に流産の診断と治療について詳しく見ていきましょう。

流産の診断と治療

産婦人科・婦人科・内科の病院で診察する女性医師・医者と妊婦の患者女性

流産の診断には、以下の検査が用いられます。

  • ・問診や内診
  • ・エコー検査(超音波検査)
  • ・血液検査

問診や内診により症状の経過を観察して、流産になっているかを探ります。また、流産を助長する膣の形態異常がないかも確認できるかもしれません。

次にエコー検査で胎児心拍を確認します。この時点で胎児心拍が確認されなければ、残念ですが子宮内胎児死亡が確定します。そして、血液検査にて流産した原因の究明や裏づけを探るのです。

これらの検査結果から「流産後」もしくは「切迫流産」の診断が行われます。すでに流産しているなら自然排出を待つか、手術により強制的に胎児を取り除かなければいけません。

一方の切迫流産なら、まだ助かる見込みがあります。妊娠12週未満の切迫流産には有効な治療法がありませんが、安静に過ごすことで切迫流産の進行を止めて妊娠継続ができます。

そのため、仕事や運動習慣に制限がかかるとともに、性行為などの激しい運動は避けなければいけません。また、実際にどれくらいの行動制限が必要なのかは、かかりつけ医の指示に従いましょう。

参考資料:公益社団法人 日本産科婦人科学会/流産・切迫流産

流産のリスクが高まる?妊娠初期に注意すべき3つの行動と対策

相談を受ける白衣の女性スタッフ

この章では、妊娠初期の流産のリスクが高まる以下の3つの行動について詳しく解説します。

  • 行動①:喫煙・飲酒
  • 行動②:人の多い場所に行く
  • 行動③:不用意な性行為は避ける

すべての妊婦さんがこの記事を読み終わってすぐに始められる対策なので、ぜひ参考にしてみてください。

行動①:喫煙・飲酒

喫煙や飲酒習慣があれば、すぐにやめることをおすすめします。

タバコに含まれるニコチンや一酸化炭素が血管を収縮させ、胎児へ十分な酸素や栄養素を送れなくなります。特に胎盤が作られる妊娠初期から中期(妊娠12〜15週あたり)は、母子で血液循環が共有され始めるため注意が必要です。

また、アルコールの代謝産物であるアセトアルデヒドも流産のリスクを高めます。妊娠初期の胎児は肝機能が成熟しておらず、アルコールの代謝ができないため、健康被害をダイレクトに受けるからです。

お母さんに飲酒習慣があると流産になるリスクが高まるだけでなく、胎児発育不全や知的障害を伴う赤ちゃんが生まれる可能性もあります。

そのため喫煙や飲酒がある方は胎児への健康被害を考えて、禁煙・禁酒することが望ましいでしょう。

また、受動喫煙の観点からもパートナーも禁煙も必要です。胎児はお母さん一人で育てているわけではありません。夫婦で協力し合いながら、大切に育てていきましょう。

参考資料:日本産婦人科医会・先天異常委員会委員 国立成育医療センター 周産期診療部 胎児診療科 左合 治彦 /飲酒・喫煙と先天異常

行動②:人の多い場所に行く

お母さんが感染症になることも流産のリスクを高めるため、不用意に人の多い場所に行くのをやめましょう。

お母さんと胎児は一心同体です。お母さんの体調が悪いと、もちろん胎児にも悪影響を及ぼします。そして、特に注意すべき感染症は「風疹」です。

風疹に感染すると流産のリスクを高め、無事に生まれてきたとしても先天性風疹症候群と呼ばれる先天性異常になることがわかっています。

具体的には以下の障害を抱えることになります。

  • ・心疾患
  • ・難聴
  • ・白内障
  • ・低出生体重児
  • ・血小板減少性紫斑病

流産やこれらの重度な先天性障害のリスクを避けるためにも、人混みを避けて感染症をもらう確率を減らしたり、風疹の抗体価があるかを確認したりしましょう。風疹の抗体価がないなら、今からでも予防接種すべきかを医師に相談する必要があります。

参考資料
NIID 国立感染症研究所/先天性風疹症候群とは
横浜市立大学医学部産婦人科/風疹と母子感染

行動③:性行為は避ける

性感染症も妊娠初期の流産のリスクを高めます。そのため、不用意な性行為は避ける、もしくは徹底した感染症対策を行ったうえで性行為をしましょう。

例えば、性クラミジア感染症は膣から子宮にかけて炎症を引き起こし、これらが刺激となり子宮収縮を促します。妊娠初期に子宮収縮が始まると治療方法がないため、残念ながら流産に至ることも…。

また、胎児自体が性感染症にかかると胎児死亡や破水を促して、早産になるリスクを高めます。

性感染症の感染経路は性行為が多いため、不用意な性行為は避けるべきです。流産のリスクについてパートナーと話し合い、理解してもらう必要があるでしょう。どうしても性行為をしなければいけないなら、避妊具を使い、感染症対策を徹底する必要があります。

妊娠初期の流産に関するよくある5つの質問

現代の診療所での医療相談中に若い女性患者と話している婦人科医

この章では、妊娠初期の流産に関するよくある5つの質問についてお答えします。

  • 質問①:妊娠初期に安静にしても流産は防げないって本当?
  • 質問②:妊娠初期に少量の出血があったら流産の可能性はありますか?
  • 質問③:妊娠初期に流産したら手術は必要ですか?
  • 質問④:一度流産すると次回もしやすいって本当?
  • 質問⑤:流産後の生活で注意することはありますか?

では、詳しく解説します。

質問①:妊娠初期は安静に過ごしても流産は防げないって本当?

妊娠初期は安静に過ごしても流産を防げません。

というのも、妊娠初期の流産の原因はほとんどが染色体異常(遺伝子異常)だからです。流産になる運命は受精した時点で決まるため、誰にも予測・予防ができません。

一方、胎盤が完成する妊娠12〜15週以降はお母さんの状態や行動が胎児へ直接影響すると考えられています。なぜなら臍帯を通じて、お母さんから胎児へ酸素や栄養素を送り始めるからです。

では妊娠初期に安静に過ごすことは意味のないことなのでしょうか?

答えは「いいえ」です。

例えば安静に過ごしていれば下腹部への強い刺激を受ける可能性は減らせます。妊娠初期であっても下腹部への強い刺激は流産の原因になりえるからです。

ただし、安静を意識しすぎて全く動かないのもかえって不健康なので、医師と相談しながら適度な運動をすると良いでしょう。

質問②:妊娠初期に少量の出血があったら流産の可能性はありますか?

妊娠初期に出血する原因は、流産以外にも以下の状態であると考えられます。

  • 着床出血
  • 絨毛膜下血腫
  • ・異所性妊娠(子宮外妊娠
  • ・胞状奇胎
  • ・子宮頸部びらん
  • ・子宮頸管ポリープ
  • ・子宮頸がん

着床出血のように妊娠サインとしても出血のほか、子宮以外で着床・妊娠する異所性妊娠などによる出血が考えられます。また、子宮頸部びらんや子宮頸管ポリープ ・がんなどの婦人科疾患が原因で出血することもあります。

妊娠初期には、少量の出血や軽い腹痛を感じることも珍しくありません。ただし、下腹部が急激に痛くなり出血が続くなどの症状があれば、進行流産や異所性妊娠など緊急性の高い状態も考慮して、すぐに産婦人科を受診しましょう。

質問③:妊娠初期に流産したら手術は必要ですか?

流産の種類によって手術するかしないかが決まります。

例えば、化学流産や完全流産なら胎児や付属物が自然排出されるため、手術は必要ありません。一方で、不全流産・稽留流産のように胎児死亡が確認されているにも関わらず、胎児や付属物が排出されていないなら、手術で取り除く必要があるでしょう。

また、不全流産・稽留流産などのように胎児や付属物が子宮内に残った状態を放置すると、重篤な感染症や次回妊娠での流産のリスクにもなるため、手術は避けて通ることができません。

手術は10分〜30分程度で終わり、施設によっては日帰り入院の場合もあります。

質問④:一度流産すると次回もしやすいって本当?

一度流産を経験すると「次回妊娠で流産をしてしまうのではないか」と心配になりますよね。

結論から言うと、今回と次回妊娠における流産の因果関係はありません。また、流産しやすくなるという噂も医学的な根拠はないので、ご安心ください。

なぜなら、妊娠初期の流産の多くは染色体異常のような偶発的に起こるケースがほとんどで、妊娠をするなら誰しもが流産する可能性があるからです。

ただし、今回の流産後の処置で子宮内に胎児や付属物が残っていると、次回妊娠の流産の原因になります。そのため、流産後の処置を怠らないことが重要です。

質問⑤:流産後の生活で注意することはありますか?

流産後の生活の注意点は、以下のとおりです。

  • ・流産後、初回生理があるまでは性行為は避ける
  • ・症状が落ち着くまでは無理をしない

「次回の妊娠率」と「流産からの期間」に因果関係はないと考えられています。ただし、流産による身体的・精神的な負担を考えて、次回生理があるまでは性行為は避けましょう。

身体面の傷は時間とともに癒えますが、精神面の傷はなかなか癒えることはありません。

特に流産後はホルモンバランスが急激に崩れるため、情緒不安定になります。友人に相談したり、心理カウンセリングを受けたりしながら、流産した事実を受け入れられるようにしましょう。

また、お母さんの血液型(Rh型)によっては次回妊娠の赤ちゃんへの影響を考えて、免疫グロブロン注射が必要になる場合もあります。詳しくは流産の処置を行った後に医師から説明があります。

まとめ: 妊娠初期の流産のほとんどは「染色体異常」が原因

赤ちゃんに絵本の読み聞かせをする両親

妊娠初期の流産の原因は、ほとんどが染色体異常(遺伝子異常)です。

そのため絶対的な予防方法がなく、妊婦の方なら誰でも流産する可能性があります。ただし、性感染症や婦人科疾患が原因の流産については、予防可能です。

妊娠初期はホルモンバランスの乱れから情緒不安定になり、流産やその他さまざまなことで不安な気持ちになります。産婦人科で相談して異常がなければ安心できるため、いつもとは違う感じや体調不良が続くなら一度受診しましょう。

この記事が妊娠初期の流産について少しでも不安解消に繋がれば幸いです。

わかりやすく動画で紹介

【早期流産の原因の半分、実はコレです】現役医師がこっそり教えます

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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