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自閉スペクトラム症(ASD)が軽度だったときに及ぼす影響
自閉スペクトラム症(ASD)は、人によって特徴がまちまちです。そのため医師の診察なしで判別するのは難しいと言われています。
中には言葉や運動の発達が目立たずに成長すると本人にとって大きな影響が出てきます。今回の記事では自閉スペクトラム症が軽度だった場合、どんな影響が出るのかを詳しくご紹介していますのでご興味のある方は最後までお付き合いください。
自閉スペクトラム症の主な特徴
ASDに関連する社会的コミュニケーションおよび社会的相互作用の特徴の例には、次のものが含まれます。
- ・アイコンタクトを回避または維持しない
- ・生後9ヶ月までに名前に反応しない
- ・生後9か月で、幸せ、悲しみ、怒り、驚きなどの表情を見せない
- ・生後12か月までにパットケーキのような単純なインタラクティブゲームをプレイしない
- ・生後12か月までにジェスチャーをほとんどまたはまったく使用しない(たとえば、さようならを振らない)
- ・他の人と興味を共有しません(たとえば、15か月齢までに彼または彼女が好きなオブジェクトを表示します)
- ・18ヶ月までにあなたが指しているものを指し示したり見たりしません
- ・生後24か月までに他の人が怪我をしたり悲しんだりしたときに気づかない
- ・遊びのふりをしません(たとえば、30か月齢までに人形に「餌をやる」ふりをしません)
- ・仲間にほとんど関心を示さない
- ・36ヶ月以上で他人の気持ちを理解したり、自分の気持ちを話したりするのに苦労している
- ・生後60ヶ月までに順番を取っているゲームをプレイしません
他にも幼少期から特定のものごとやルールに強いこだわりを示し、好き嫌いが極端なのが特徴です。周囲が気にしないようなちょっとした物音に過敏に反応したり、寒い日に薄着をしても気にしないといった感覚のかたよりも見られます。そして以下のような特徴も含まれます。
- ・言語スキルの遅れ
- ・遅延運動スキル
- ・認知または学習スキルの遅延
- ・過活動、衝動的、および/または不注意な行動
- ・てんかんまたは発作障害
- ・異常な食生活と睡眠習慣
- ・胃腸の問題(例、便秘)
- ・異常な気分や感情的な反応
- ・不安、ストレス、または過度の心労
- ・恐れの欠如または予想以上の恐れ
こうした特徴が見られると自閉スペクトラム症の可能性があります。軽度の場合だと見逃してしまうことも珍しくありません。ただし人によってばらばらなので気になるところがあれば医師の診察を受けるようにしましょう。
軽度だと見逃されやすい
自閉スペクトラム症は早期に見つけることが大切です。早く診断できたことで療育や家族の理解、周囲の協力などで本人の生きづらさを少なくできる環境を作れるからです。しかしながら軽度の場合、発見が遅れてしまいます。そうなると学童期に不適応を起こして、ようやく気づかれるケースもあります。
どうして気付かれにくいのかと言いますと、自閉スペクトラム症の特徴でもある運動や言葉の発達に遅れがみられないためです。
しかも現在よりも自閉スペクトラム症の理解が進んでないときに軽度だった方はほとんどが診断から漏れてしまっているので気づかないまま50代や60代を迎えている方もいます。
幼児期の自閉スペクトラム症チェックリスト
自閉スペクトラム症は幼児期から他の検査子どもと行動の違いが見られます。この行動をしたら間違いといったものはありませんけど、疑いを持ってもいい行動がいくつかありますのでご確認ください。
- ・ほとんど泣かない
- ・些細な事でも激しく泣く
- ・夜中ちょっとした物音ですぐ起きる
- ・独りで寝ていても起床時に泣かない
- ・目が合いにくい
- ・指さしした方向を見ない
- ・あやしたりくすぐったりしても笑わない
- ・表情が乏しい
- ・初語がかなり遅い
- ・名前を呼んでも振り返らない
- ・抱っこをするのを嫌がったり、暴れたりする
気をつけてほしいのは、上記の行動をしていたからといって自閉スペクトラム症だと勝手に判断してしまうことです。あくまでも医師の診断を聞いてから療育や環境づくりに取り組んでください。
大人の自閉スペクトラム症をチェックする方法
自閉症や広汎性発達障害(自閉症スペクトラム)の兆候を、イギリスの精神科医ローナ・ウイング氏は3つにまとめています。
- 1、社会性の障害(対人関係)
- 2、コミュニケーションの障害(ことばの遅れ)
- 3、イマジネーション、想像力の障害
以上が大人の自閉スペクトラム症でチェックすべき項目です。一つ目の「社会性の障害」は、常識や社会の暗黙のルールから外れた行動を取ってしまい、周囲の人と相互的な交流を行うことが困難なことを指します。常識を知っていても日常生活で使うことができないのです。
二つ目の「コミュニケーション障害」は、相手のボディーランゲージや表情が示すところを感じ取ることができません。そのため冗談が通じず、相手の言葉を額面通りに受け取ってしまいます。
そして「イマジネーションの障害」は、次に起こることが想像できない状態です。目の前に具体的にないものをイメージできませんので物事の見通しを立てるのが苦手です。そのため、1つのことを集中して行うのは得意ですが、複数のことを同時進行ができません。
判別方法の一つとして職域でしばしば用いられる「ストレスチェック」があります。しかしながらASD特性が強いと仕事ができないという不全感や対人緊張のために、不安感やゆううつ感を認めやすくなります。そうなるとASD特性以外の要素が大きくなるので判別しにくいのが難点です。
自閉スペクトラム症だと疑いを持ったら
もし幼児期に自閉スペクトラム症だと疑いを持ったら早めに専門の医師の診察を受けるようにしてください。先述したように早めにわかれば療育や環境づくりを始められます。また、知的障害があれば「療育手帳」(地域によって「愛の手帳」「みどりの手帳」と呼ばれています)、知的障害が見られないASDであれば「精神障害者保健福祉手帳」の申請対象です。取得するとことで以下の行政サービスが受けられます。
- ・税金の優遇措置
- ・公共料金・電話料金の割引
- ・公共交通機関・公共施設・映画館などの無料化または割引
- ・生活保護の障害者加算
大人になって自閉スペクトラム症の疑いを持った場合、確実なのが遺伝子検査です。以前は生まれつきの脳機能の異常と言われていましたけど現在では9割方遺伝子の異常によるものだと判明しています。そのため遺伝子検査を受けることで自閉スペクトラム症かどうかを調べられます。その際に注意してほしいのが遺伝子に関する専門的な知識を持った医師から検査の前に遺伝カウンセリングを受けることです。
まとめ
自閉スペクトラム症が軽度だった場合について詳しくご紹介してきました。自閉スペクトラム症は人によって症状も重度も違うため気づかずに見逃してしまうこともあります。少しでも生きづらさを軽減するためには早めに発見するのが不可欠です。そのためには少しでも気になる行動があったり、自分に当てはまるような症状があるときは医師の診察を受けるようにしましょう。
東京の「ミネルバクリニック」では遺伝子検査を実施しており、遺伝のエキスパートである臨床遺伝専門医が在籍している医療機関です。もし遺伝子検査のことでご不明な点があれば遠慮なくミネルバクリニックまでご相談ください。
自閉症遺伝子パネル
ミネルバクリニックでは自閉症の診断や次のお子さんのリスク、カップルから自閉症のお子さんが生まれるリスクなどを総合的に評価可能な自閉症遺伝子パネルをご提供しています。早期診断は早期に療育につなげて社会性を獲得する一助になります。遺伝子検査はこの10年で飛躍的に進化を遂げ、たくさんの知見が得られてきました。不安に思っている方々を力強くサポートしていきたいと願っています。