目次
NIPT陽性時の中絶はいつまで?
法律と期間を臨床遺伝専門医が解説
Q. NIPT陽性後、中絶はいつまで可能ですか?
A. 日本では母体保護法により、人工妊娠中絶は妊娠21週6日までと定められています。
NIPTで陽性が出た場合、確定検査(羊水検査など)を経てから中絶を選択することになるため、時間的な余裕は想像以上に限られています。早めの行動が選択肢を広げます。
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中絶可能な期限 → 妊娠21週6日まで(22週以降は法律上不可) -
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母体保護法の条件 → 「身体的または経済的理由」により母体の健康を著しく害するおそれがある場合 -
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スケジュールの目安 → NIPT陽性→確定検査→結果判明→決断まで最短でも3〜4週間 -
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早期検査のメリット → 妊娠初期にNIPTを受けることで、十分な検討時間を確保できる
1. 人工妊娠中絶の期限|21週6日までの理由
【結論】 日本では母体保護法により、人工妊娠中絶は妊娠21週6日までと定められています。妊娠22週以降は胎児が母体外でも生存可能な時期とされ、法律上、中絶は認められていません。
「NIPTで陽性が出たけれど、中絶はいつまでできるの?」「もう間に合わないのでは…」そんな不安を抱えてこのページにたどり着いた方も多いでしょう。まずは深呼吸して、一緒に正確な情報を確認していきましょう。
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人工妊娠中絶の法的期限:妊娠21週6日まで(22週0日以降は不可)
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22週の根拠:胎児が母体外で生存可能とされる「胎児の生存可能性(viability)」の境界
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週数の数え方:最終月経初日を0週0日として計算(超音波での修正あり)
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違反した場合:医師は母体保護法違反、刑法の堕胎罪に問われる可能性
💡 用語解説:妊娠週数の数え方
妊娠週数は最終月経の初日を0週0日として数えます。例えば、最終月経から154日経過していれば「22週0日」となり、この日以降は中絶ができません。実際の妊娠期間より約2週間長く計算されるため、「妊娠に気づいてからの時間」は思ったより短いのです。超音波検査で胎児の大きさから週数を修正することもあります。
なぜ22週が境界線なのか
妊娠22週は、医学的に「胎児の生存可能性(viability)」が認められる時期とされています。新生児医療の進歩により、22週で生まれた赤ちゃんでも生存できる可能性が出てきたため、この週数が法的な境界線となっています。
妊娠初期(〜11週)
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中絶手術は比較的短時間・低リスク
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吸引法や掻爬法で対応可能
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日帰り手術が一般的
妊娠中期(12〜21週)
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入院が必要になることが多い
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陣痛を起こして分娩する方法
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身体的・精神的負担が大きい
2. 母体保護法と人工妊娠中絶の条件
【結論】 日本では母体保護法に基づき、「身体的または経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれがある場合」に人工妊娠中絶が認められています。胎児の染色体異常を直接の理由とした中絶は法律上認められていませんが、実際には「経済的理由」などで行われています。
「染色体異常が理由で中絶できるの?」「法律的に問題はないの?」と不安に思われる方も多いでしょう。ここでは母体保護法の内容と、出生前診断後の中絶がどのように行われているかを正確にお伝えします。
💡 用語解説:母体保護法とは
母体保護法は、不妊手術や人工妊娠中絶について定めた日本の法律です。1948年に「優生保護法」として制定され、1996年に現在の名称に改正されました。この法律により、都道府県知事が指定した「母体保護法指定医」のみが人工妊娠中絶を行うことができます。
母体保護法で認められる中絶の条件
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①
身体的・経済的理由
妊娠の継続または分娩が身体的または経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれがある場合 -
②
性犯罪による妊娠
暴行もしくは脅迫によって、または抵抗もしくは拒絶することができない間に姦淫されて妊娠した場合
⚠️ 重要なポイント:日本の法律では「胎児の異常」を理由とした中絶は明文化されていません。しかし実際には、染色体異常が判明した場合、「将来の経済的負担」や「精神的健康への影響」などを理由として、母体保護法第14条第1項(経済的理由)に基づいて中絶が行われています。
中絶に必要な同意と手続き
| 必要な要件 | 内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 本人の同意 | 必須 | 書面での同意が必要 |
| 配偶者の同意 | 原則必要 | 配偶者が不明・意思表示不能の場合は不要 |
| 実施できる医師 | 母体保護法指定医のみ | 都道府県医師会が指定 |
| 週数制限 | 妊娠21週6日まで | 22週以降は法律上不可 |
3. 確定検査(羊水検査・絨毛検査)の必要性
【結論】 NIPTはスクリーニング検査であり、陽性の場合でも偽陽性(実際には異常がない)の可能性があります。そのため、中絶を検討する場合は必ず羊水検査または絨毛検査による確定診断が必要です。
「NIPTで陽性だったから、もう確実なのでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、NIPTで陽性でも実際には染色体異常がないケースが一定数存在します。取り返しのつかない決断をする前に、確定検査で診断を確かめることが極めて重要です。
💡 用語解説:陽性的中率(PPV)とは
陽性的中率(Positive Predictive Value)とは、「検査で陽性と出た人のうち、実際に病気がある人の割合」です。NIPTの陽性的中率は検査項目や母体年齢により異なり、21トリソミー(ダウン症)で80〜95%程度、18トリソミーや13トリソミーではさらに低くなることがあります。つまり、NIPT陽性でも5〜20%は偽陽性の可能性があるのです。
NIPTと確定検査の違い
| 項目 | NIPT | 羊水検査 | 絨毛検査 |
|---|---|---|---|
| 検査の種類 | スクリーニング | 確定検査 | 確定検査 |
| 検査時期 | 妊娠10週〜 | 妊娠15〜18週 | 妊娠11〜14週 |
| 検査方法 | 採血 | 羊水を採取 | 絨毛を採取 |
| 流産リスク | なし | 約0.1〜0.3% | 約0.2〜1% |
| 結果の精度 | 感度99%以上 | 99.9%以上 | 99.9%以上 |
| 結果判明 | 約1〜2週間 | 約2〜3週間 | 約1〜2週間 |
⚠️ 確定検査なしの中絶は絶対に避けてください
NIPTで陽性が出ても、5〜20%程度は偽陽性の可能性があります。確定検査を受けずに中絶を選択すると、実際には染色体異常のない健康な赤ちゃんを失ってしまうリスクがあります。必ず羊水検査または絨毛検査で確定診断を受けてから、最終的な決断をしてください。
確定検査の結果を待つ間、不安ではありませんか?
一人で抱え込まないでください。
臨床遺伝専門医が結果の解釈から今後の選択肢まで丁寧にご説明します。
※オンライン診療も対応可能です
4. NIPT陽性から中絶までのスケジュール
【結論】 NIPTで陽性が出てから中絶の決断・実施までには、確定検査と結果待ちの期間を含めると最短でも3〜4週間必要です。21週6日の期限を考えると、NIPTは遅くとも妊娠15週頃までに受けておくことが望ましいです。
「まだ時間があると思っていたのに…」という声を、私たちは何度も耳にしてきました。ここでは、NIPT陽性後の具体的なスケジュールを確認し、なぜ早めのNIPT受検が重要なのかをお伝えします。
-
①
NIPT受検(妊娠10〜12週)
採血後、結果判明まで約1〜2週間 - ②
- ③
-
④
確定検査の結果判明(妊娠17〜19週)
結果判明まで約2〜3週間(FISH法なら数日で速報) -
⑤
決断・手術実施(妊娠19〜21週)
21週6日までに中絶手術を完了する必要あり
時間が足りなくなるケース
以下のような場合、21週6日の期限に間に合わなくなるリスクが高まります。
⚠️ 間に合わなくなるケース
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NIPTの受検が妊娠16週以降
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確定検査の予約が取れない
- •
結果説明までに時間がかかる
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決断に時間を要する
✓ 時間を確保するポイント
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妊娠10〜12週でNIPTを受検
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確定検査も同じ施設で受ける
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FISH法で速報を得る
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事前に選択肢を考えておく
🩺 院長コラム【時間との闘いを避けるために】
NIPT陽性後に「時間が足りない」と焦る方を、私は数多く見てきました。21週6日という期限は、想像以上に早く訪れます。特に、確定検査の予約が取りにくい施設では、数週間待ちになることも珍しくありません。
当院では2025年6月より産婦人科を併設し、羊水検査・絨毛検査を院内で実施できるようになりました。NIPTから確定検査まで一貫して対応できるため、転院の必要がなく、スケジュールの遅れを最小限に抑えられます。
「備えあれば憂いなし」です。NIPTを受ける時点で、陽性だった場合のスケジュールも頭に入れておいていただければと思います。
5. 中絶手術の方法と時期による違い
【結論】 中絶手術の方法は妊娠週数によって異なります。妊娠初期(11週まで)は日帰り手術が可能ですが、妊娠中期(12週以降)は入院して分娩形式となり、身体的・精神的負担が大きくなります。
「中絶手術はどのように行われるの?」「痛みや身体への影響は?」という不安をお持ちの方も多いでしょう。ここでは、妊娠週数による手術方法の違いをお伝えします。
妊娠週数別の中絶方法
| 時期 | 方法 | 入院 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 妊娠初期 (〜11週) |
吸引法・掻爬法 | 日帰り可能 | 手術時間10〜15分程度、身体的負担が小さい |
| 妊娠中期 (12〜21週) |
分娩誘発法 | 入院必要 | 陣痛を起こして分娩、2〜3日の入院が一般的 |
💡 用語解説:分娩誘発法(中期中絶)
妊娠12週以降の中絶では、子宮収縮剤(プロスタグランジン製剤など)を使って人工的に陣痛を起こし、分娩と同じように胎児を娩出します。通常のお産と同様の過程を経るため、身体的にも精神的にも大きな負担がかかります。週数が進むほど、分娩にかかる時間も長くなる傾向があります。
妊娠12週以降の中絶で必要な手続き
妊娠12週以降に中絶を行った場合、法律上「死産」として届出が必要になります。
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死産届の提出:7日以内に市区町村役場へ届出
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死産証書:医師が作成
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埋葬・火葬:火葬許可証を取得し、火葬が必要
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出産育児一時金:12週以降は申請可能(約50万円)
6. 心理的サポートと遺伝カウンセリング
【結論】 NIPT陽性後の決断は、人生で最も辛い選択の一つかもしれません。遺伝カウンセリングでは、医学的な情報提供だけでなく、心理的なサポートも受けられます。一人で抱え込まないでください。
「どう決断すればいいかわからない」「誰にも相談できない」そんな孤独感を抱えていませんか?あなたの気持ちは、とても自然なものです。私たち臨床遺伝専門医は、あなたが自分らしい決断ができるよう、寄り添います。
遺伝カウンセリングで受けられるサポート
📚 医学的情報の提供
染色体異常の種類、予後、合併症、生活の質など、正確な医学情報をお伝えします。インターネットの情報だけでは得られない、専門家の視点からの説明を受けられます。
💭 選択肢の整理
妊娠継続と中絶、それぞれの選択肢についてメリット・デメリットを一緒に整理します。どちらが「正解」ということはなく、あなたにとっての最善を探します。
🤝 心理的サポート
不安、悲しみ、罪悪感…様々な感情を安心して話せる場所を提供します。感情を否定せず、あなたのペースで気持ちを整理するお手伝いをします。
🏠 社会資源の紹介
妊娠継続を選んだ場合の療育支援、福祉制度の情報や、中絶後のグリーフケア(悲嘆のケア)についてもご案内します。
💡 遺伝カウンセリングは「指示」ではありません:遺伝カウンセラーや臨床遺伝専門医は、「こうすべきだ」と指示することは決してありません。あくまでも情報提供と心理的サポートを行い、最終的な決断はご本人とご家族にしていただきます。どんな決断も、尊重されます。
🩺 院長コラム【「正解」のない決断に寄り添うということ】
30年近く臨床遺伝の現場に立ってきた中で、私は何百組ものご夫婦の決断に寄り添ってきました。妊娠を継続される方、中絶を選ばれる方、どちらの選択も「正解」であり「不正解」ではないと、私は確信しています。
ある方は「この子を産んで育てたい」と涙ながらに決意され、ある方は「今の私たちには難しい」と苦渋の決断をされました。どちらの方も、お子さんのことを真剣に考え抜いた結果です。
私の役割は、どちらかの決断に誘導することではありません。医学的に正確な情報をお伝えし、あなたが「自分で決めた」と納得できる選択をサポートすること。それが臨床遺伝専門医としての私の使命だと考えています。どうか一人で抱え込まず、私たちに相談してください。
7. ミネルバクリニックのサポート体制
ミネルバクリニックでは、臨床遺伝専門医が開業した稀有な医療機関として、NIPTから確定検査、その後のサポートまで一貫した体制を整えています。
🏥 院内で確定検査まで対応
2025年6月より産婦人科を併設し、羊水検査・絨毛検査も院内で実施可能に。転院の必要がなく、スケジュールの遅れを防げます。
💰 互助会で費用面も安心
互助会(8,000円)に加入いただくと、陽性時の確定検査(羊水検査)費用を上限なしで全額カバー。経済的な不安を軽減します。
🌐 オンライン対応
オンラインNIPTにより全国どこからでも受検可能。遺伝カウンセリングもオンラインで受けられます。
💡 当院の「3つのリスクヘッジ」
ミネルバクリニックでは、NIPT陽性時に備えた3つのリスクヘッジを提供しています。
① 経済的リスク:互助会による確定検査費用の全額カバー
② 時間的リスク:院内での確定検査実施による転院不要
③ 心理的リスク:臨床遺伝専門医による回数無制限のカウンセリング
よくある質問(FAQ)
🏥 一人で悩まないでください
NIPT陽性後の不安、確定検査への迷い、中絶の決断…
どんなことでもお気軽にご相談ください。
臨床遺伝専門医があなたとご家族に寄り添います。
参考文献
- [1] American College of Obstetricians and Gynecologists (ACOG). Practice Bulletin No. 226: Screening for Fetal Chromosomal Abnormalities. Obstet Gynecol. 2020;136(4):e48-e69. [PubMed]
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- [3] International Society for Prenatal Diagnosis (ISPD). Position statement on cfDNA testing. Prenat Diagn. 2015;35(8):725-734. [PubMed]
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- [6] Norton ME, et al. Cell-free DNA Analysis for Noninvasive Examination of Trisomy. N Engl J Med. 2015;372(17):1589-1597. [PubMed]
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- [8] 日本産科婦人科学会. 出生前に行われる遺伝学的検査および診断に関する見解. [日本産科婦人科学会]
- [9] World Health Organization (WHO). Safe abortion: technical and policy guidance for health systems. [WHO]
- [10] National Society of Genetic Counselors (NSGC). Position Statements. [NSGC]


