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NIPT 微小欠失の陽性的中率はどのくらい?


NIPT(非侵襲的出生前遺伝学的検査)は、胎児の染色体異常を調べる方法として広く利用されています。その中でも「微小欠失症候群」は、特定の染色体の一部が欠失していることで発生する疾患です。しかし、NIPTによる微小欠失の検出には限界があり、「陽性的中率(PPV)」が低いと言われています。本記事では、NIPTにおける微小欠失の陽性的中率について詳しく解説し、検査結果をどのように受け止めるべきかを考えます。

なお、ミネルバクリニックでは2024年8月より新方式のNIPTを採用し、微小欠失症候群の陽性的中率が100%となりました。 これにより、より正確な診断が可能になり、不安を抱える妊婦の方々にとって大きな安心材料となるでしょう。詳しくは記事内で解説しますので、ぜひ最後までお読みください。

NIPTとは?微小欠失とは?

NIPT(非侵襲的出生前遺伝学的検査)は、妊娠中の胎児の染色体異常を調べる検査です。この検査では、母体の血液に含まれる胎児由来のDNA断片を解析し、特定の染色体異常の有無を判定します。

微小欠失とは?

微小欠失とは、染色体のごく一部が欠失している状態を指します。通常、私たちの細胞には23対の染色体があり、それぞれの染色体には多くの遺伝情報が含まれています。しかし、何らかの理由で染色体の一部が欠けてしまうことがあり、それによって特定の遺伝子が失われることで、発育や健康に影響を及ぼす可能性があります。

なぜ染色体の一部が欠けてしまうのか?

染色体の一部が欠失する原因はさまざまですが、主に以下のような要因が考えられます。

  • 自然発生的な変異: 受精の過程や胎児の初期発育段階で、偶然に染色体の一部が失われることがあります。これは誰にでも起こりうる自然な現象です。
  • 遺伝的要因: 親のどちらかが同じ微小欠失を持っており、それを子どもが受け継ぐことがあります。ただし、ほとんどの微小欠失症候群は新生突然変異として発生することが多いです。
  • 外部環境の影響: 放射線や化学物質などの外部因子が、細胞分裂の際に染色体の異常を引き起こす可能性もあります。

微小欠失による影響

微小欠失が起こると、欠けた部分に含まれる遺伝子によって異なる影響が出る可能性があります。例えば、以下のような症候群が知られています。

  • 22q11.2欠失症候群(ディジョージ症候群): 免疫不全、心疾患、発達の遅れなどがみられる。
  • 1p36欠失症候群: 知的障害、成長の遅れ、筋緊張の低下などの症状が特徴。
  • ウィリアムズ症候群: 7番染色体の一部が欠失し、特徴的な顔貌や心疾患、発達の遅れなどが現れる。

NIPTで微小欠失を検出できるのか?

従来のNIPTでは、主にダウン症候群(21トリソミー)、18トリソミー、13トリソミーなどの大きな染色体異常を検出することが目的でした。しかし、近年ではより精度の高い解析技術が開発され、一部の微小欠失も検出可能になっています。ただし、すべての微小欠失を確実に診断できるわけではないため、確定診断には羊水検査や絨毛検査が推奨されることがあります。

NIPTで微小欠失を検出する仕組み

微小欠失の検出には、高精度なDNA解析技術が用いられます。しかし、標準的なNIPTよりも検出精度が低く、結果の解釈には注意が必要です。

DNA断片解析による微小欠失の検出

NIPTでは、母体の血液中に含まれる胎児由来のDNA断片(cfDNA)を解析します。微小欠失の検出には、次世代シーケンシング(NGS)技術を用いて、特定の染色体領域のDNA量を詳細に調べます。

検出の難しさと限界

微小欠失はごく小さな染色体の異常であるため、標準的なNIPTよりも検出が難しいとされています。その理由として以下の点が挙げられます。

  • 胎児DNAの割合が低い: 母体血中の胎児由来DNAは10~15%程度と少なく、微小な異常を検出するには高感度な解析が必要です。
  • 欠失領域のサイズ: 一般的なNIPTは数Mb(メガベース)以上の欠失を検出できますが、それ以下の欠失は見逃される可能性があります。
  • 22q11.2欠失症候群の検出の難しさ: 22q11.2欠失症候群(ディジョージ症候群)は、欠失領域が非常に小さいため、NIPTでは偽陰性(異常があるにもかかわらず陰性と判定されること)が多いとされています。そのため、NIPTで陰性だからといって、完全に異常がないとは言い切れません。
  • 技術ごとの検出精度の違い: 微小欠失を検出できるNIPTの種類によって、精度や対応できる欠失領域が異なります。

検査結果の解釈について

微小欠失のNIPT検査結果は、あくまでスクリーニング(可能性の評価)であり、確定診断ではありません。特に22q11.2欠失症候群の場合、NIPTで陰性であっても可能性を完全には否定できないため、臨床的な症状や追加の検査(羊水検査や絨毛検査など)を考慮することが重要です。

微小欠失におけるNIPTの陽性的中率とは?

一般的に、NIPTの陽性的中率(PPV:Positive Predictive Value)は、疾患の種類や母体の年齢、検査方法によって異なります。微小欠失のPPVは通常低め(10~40%程度)とされており、確定診断には羊水検査などの追加検査が推奨されます。

なぜ微小欠失のPPVは低いのか?

微小欠失におけるNIPTのPPVが低い理由には、以下のような要因が関係しています。

  • 疾患の発生頻度が低い: 微小欠失症候群は比較的まれな疾患であるため、母集団全体に対する陽性的中率が低くなりやすい。
  • 技術的な限界: 微小欠失はごく小さな染色体異常であるため、母体血中の胎児DNAを用いるNIPTでは検出精度に限界がある。
  • 偽陽性の可能性: 検査の特性上、実際には異常がないのに陽性と判定されるケース(偽陽性)が一定数存在する。

疾患ごとのPPVの違い

微小欠失の種類によってもPPVは異なります。例えば、22q11.2欠失症候群(ディジョージ症候群)はNIPTで検出可能な微小欠失の中でも比較的PPVが高いとされますが、それでも他の染色体異常(ダウン症候群など)に比べると低めです。

陽性結果が出た場合の対応

微小欠失に関してNIPTで陽性と判定された場合、以下の対応が推奨されます。

  • 遺伝カウンセリングの受診: 検査結果の意味やリスクについて専門家と相談する。
  • 確定診断検査の実施: 羊水検査や絨毛検査を行い、実際に染色体異常があるかどうかを確認する。
  • 追加の超音波検査: 胎児の成長や異常の有無を超音波で詳しく確認する。

微小欠失のNIPT結果はあくまでスクリーニング検査であり、確定診断ではありません。陽性が出た場合でも、追加の検査を行うことで正確な診断を得ることが重要です。

陽性的中率が低い理由

微小欠失症候群のような希少疾患では、NIPTの陽性的中率(PPV)が低くなる傾向があります。特に、疾患の発生頻度が低いほど、偽陽性の影響を受けやすくなります。以下の表で具体的に見てみましょう。

1万人に1人の疾患でNIPT(感度99.9%、特異度99.9%)を行った場合

カテゴリ 計算 結果
検査を受けた妊婦の総数 10,000人 10,000人
実際に疾患を持っている胎児 1万人に1人の割合 1人
疾患があるのに陽性と判定(真陽性) 1人 × 99.9%(感度) 約1人
実際には疾患がない胎児 10,000人 – 1人 9,999人
疾患がないのに誤って陽性と判定(偽陽性) 9,999人 × 0.1%(1 – 特異度) 約10人
陽性と判定された総数 真陽性 + 偽陽性 1人 + 10人 = 11人
陽性的中率(PPV) 真陽性 ÷ 陽性判定総数 1 ÷ 11 ≒ 約9%

このように、NIPTで「陽性」と判定されても、実際に疾患を持っている可能性は約9%しかありません。ただし、これは極端な一例であり、実際には疾患の種類によって陽性的中率は大きく異なります。

一般的に、NIPTでの微小欠失の陽性的中率は 70%程度 とされることが多いですが、検査会社や検査の種類によっては 30%程度しかない場合 もあります。そのため、NIPTの結果が陽性だった場合でも、確定診断として羊水検査や絨毛検査を受けることが重要です。

偽陽性・偽陰性のリスクと対策

微小欠失に関しては、偽陽性や偽陰性の可能性を考慮し、結果を慎重に解釈することが重要です。確定診断には羊水検査や絨毛検査が有効です。

偽陽性とは?

偽陽性とは、実際には疾患がないのにNIPTの結果が「陽性」と判定されてしまうことを指します。微小欠失は非常に小さな染色体異常であり、解析の精度や胎児由来DNAの割合の影響を受けやすいため、偽陽性のリスクが高くなります。

偽陰性とは?

偽陰性とは、実際には疾患があるのにNIPTの結果が「陰性」と判定されてしまうことを指します。特に22q11.2欠失症候群などの微小欠失では、欠失領域が小さいため、検出が難しく偽陰性が発生する可能性があります。

偽陽性・偽陰性を防ぐための対策

  • 結果を鵜呑みにしない: NIPTはスクリーニング検査であり、確定診断ではありません。結果が陽性でも、すぐに結論を出さずに追加の検査を検討することが重要です。
  • 確定診断を受ける: NIPTで陽性となった場合は、羊水検査や絨毛検査を行うことで、より確実な診断が可能です。
  • 遺伝カウンセリングを活用する: 検査結果の意味や次のステップについて、専門家と相談することで、より正確な情報に基づいた判断ができます。

偽陽性・偽陰性のリスクを理解し、必要に応じて確定診断を受けることで、より正確な情報を得ることができます。

ミネルバクリニックの採用しているCOATE法によるNIPTの臨床試験結果

ミネルバクリニックが採用しているCOATE法の臨床試験において、微小欠失の検出結果は以下のようになりました。

項目 結果
True Positive(真陽性) 9
True Negative(真陰性) 1,062
False Positive(偽陽性) 0
False Negative(偽陰性) 0
Sensitivity(感度, 95% CI) 100% (62.9–100%)
Specificity(特異度, 95% CI) 100% (99.6–100%)
Accuracy(正確性, 95% CI) 100% (99.6–100%)
PPV(陽性的中率, 95% CI) 100% (62.9–100%)
NPV(陰性的中率, 95% CI) 100% (99.6–100%)
AUC(曲線下面積) 1.000

結果のポイント

この臨床試験では、COATE法によるNIPTの評価として、陽性的中率(PPV)・陰性的中率(NPV)ともに100%という非常に高い精度が示されました。

特に、偽陽性・偽陰性がゼロであり、感度・特異度ともにほぼ100%であることから、微小欠失の検出において高い信頼性が期待できる結果となっています。

遺伝カウンセリングの重要性

NIPTの結果に関しては、専門医や遺伝カウンセラーと相談することが重要です。結果の意味や次のステップについて正しく理解しましょう。

遺伝カウンセリングとは?

遺伝カウンセリングとは、遺伝に関する専門的な知識を持つ医師やカウンセラーが、検査結果の説明や将来的なリスクについてアドバイスを行うサポートのことです。

遺伝カウンセリングを受けるメリット

  • 検査結果の正しい理解: NIPTの結果が陽性または陰性だった場合、その意味を正しく理解し、適切な対応を取ることができます。
  • 偽陽性・偽陰性の可能性の確認: 検査の限界やリスクについて説明を受けることで、不必要な不安を避けることができます。
  • 次のステップの相談: NIPTで陽性の場合、確定診断のために羊水検査や絨毛検査を受けるかどうかなど、今後の選択肢を専門家と相談できます。
  • 家族の遺伝的リスクの評価: 遺伝カウンセリングでは、胎児だけでなく家族に関わる遺伝的リスクについても考慮することができます。

遺伝カウンセリングを受けるタイミング

遺伝カウンセリングは、以下のようなタイミングで受けるのが望ましいとされています。

  • NIPTを受ける前(検査のメリット・リスクを理解するため)
  • NIPTの結果が陽性だった場合(次の検査や対応を決めるため)
  • 検査結果に不安がある場合(精神的なサポートを受けるため)

NIPTの結果は、単に「陽性」または「陰性」と判断するものではなく、検査の精度や個々の状況を踏まえて慎重に解釈する必要があります。専門家と相談しながら、正しい情報に基づいた判断を行いましょう。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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