目次
カリオセブン症例集・不均衡型転座例
通常NIPTでは検出不可能な8症例
Q. 親が均衡型転座保因者の場合、NIPTで胎児の異常はわかりますか?
A. 通常のNIPTでは検出不可能ですが、カリオセブンなら検出できます。
本記事では、親が均衡型転座保因者で、子に不均衡型転座が生じた8症例を検査画像とともに臨床遺伝専門医が詳しく解説します。
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不均衡型転座とは → 親の均衡型転座が子に不均衡な形で遺伝した状態 -
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8症例すべて → 母親が均衡型相互転座の保因者で、胎児に異常が生じた -
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通常のNIPT → 21・18・13トリソミーのみ検査するためこれらの異常は検出不可能 -
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カリオセブン → 全染色体の7Mb以上の欠失・重複を検出し、羊水アレイCGHで確定
1. 不均衡型転座とは:親の転座が子に与える影響
【結論】 不均衡型転座とは、親が持つ均衡型転座が子に遺伝する際に、染色体の一部が過剰または欠損した状態で伝わることです。通常のNIPT(21・18・13トリソミー検査)では検出不可能ですが、カリオセブンなら検出できます。
均衡型転座(親)
染色体の一部が別の染色体に移動しているが、遺伝子の総量は正常。本人は健康で症状なし。ただし子への遺伝時にリスクあり。
不均衡型転座(子)
親の転座が遺伝する際に、染色体の一部が余分(重複)または欠損(欠失)した状態で伝わる。発達や成長に影響を与える可能性あり。
本記事で紹介する8症例すべてが、母親が均衡型相互転座の保因者で、胎児に不均衡型転座が生じたケースです。これらの異常は通常のNIPTでは「異常なし」と判定されてしまいます。
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①
全染色体の異数性:21・18・13トリソミーだけでなく、全22対の常染色体+性染色体の異常を検出
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②
染色体構造異常(7Mb以上):全染色体の全領域で欠失・重複を検出 ← 本記事の症例
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③
9種類の微細欠失症候群:日本で最多の9疾患を検出
2. 症例1:7番染色体と9番染色体の不均衡型転座
【症例概要】 母親が46,XX,t(7;9)(p15;q22)の均衡型相互転座保因者。胎児に7番染色体短腕の重複と9番染色体の重複が検出され、羊水アレイCGHで確定診断された症例です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 母親の核型 | 46,XX,t(7;9)(p15;q22) — 均衡型相互転座保因者 |
| 胎児の異常① | Dup7p23.3p21.2 — 15 Mb(7番染色体短腕の重複) |
| 胎児の異常② | Dup9p24.3-q31.1 — 107.5 Mb(9番染色体の重複) |
| 確定検査 | 羊水アレイCGH |
✅ グラフの読み方
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左側:アレイCGH(羊水)— 確定検査の結果
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右側:マルチNIPTkaryo7 cfDNA— スクリーニング結果
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両者が一致しており、カリオセブンが正確に検出できたことを証明
🏥 臨床的意義
9番染色体の重複が107.5Mbと非常に大きく、7番染色体短腕の重複と合わせて重篤な異常です。親が均衡型転座保因者の場合、通常のNIPT(13・18・21のみ)では絶対に検出できない異常です。カリオセブンの7Mb解像度だからこそ発見できた症例です。
3. 症例2:13番染色体と20番染色体の不均衡型転座
【症例概要】 母親が46,XX,t(13;20)(q21;q13.3)の均衡型相互転座保因者。胎児に13番染色体の欠失と20番染色体の重複が同時に検出された症例です。
13番染色体(欠失)
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異常:Del13q33.3q34 — 11.4 Mb
- •
種類:長腕末端部の欠失
20番染色体(重複)
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異常:Dup20q13.33 — 1.9 Mb
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種類:長腕末端部の重複
💡 特筆点:この症例では欠失(Del)と重複(Dup)が同時に検出されています。20番の重複は1.9 Mbと比較的小さいですが、カリオセブンで検出できました。不均衡型転座では、一方の染色体の欠失と他方の重複が同時に生じることが特徴です。
4. 症例3:3番染色体と5番染色体の不均衡型転座
【症例概要】 母親が46,XX,t(3;5)(q21.3;q35.3)の均衡型相互転座保因者。胎児に3番染色体の大きな重複(69.4Mb)と5番染色体の欠失が検出されました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 母親の核型 | 46,XX,t(3;5)(q21.3;q35.3) |
| 胎児の異常① | Dup3q21.3-q29 — 69.4 Mb(3番染色体長腕の重複) |
| 胎児の異常② | Del5q35.3 — 2.2 Mb(5番染色体長腕の欠失) |
| 確定検査 | 羊水アレイCGH |
🏥 臨床的意義
3番の重複が69.4 Mbと非常に大きい一方、5番の欠失は2.2 Mbと7Mb閾値以下ですが検出されています。5q35.3欠失はSotos症候群(脳性巨人症)の責任領域に近い位置であり、臨床的に重要な所見です。
5. 症例4〜8:その他の不均衡型転座症例
【概要】 残り5症例を紹介します。いずれも親が均衡型転座保因者で、胎児に不均衡型転座が生じた症例です。特に症例7はウォルフ・ヒルシュホーン症候群の原因領域を含む重要な症例です。
症例4:7番染色体と10番染色体の不均衡型転座
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 母親の核型 | 46,XX,t(7;10)(q36;q25) |
| 胎児の異常 | Del7q36.2q36.3(25 Mb) + Dup10q25.3q26.3(24 Mb) |
| 臨床的意義 | 7q36領域の欠失はSHH遺伝子(全前脳胞症関連)を含む可能性 |
症例5:1番染色体と7番染色体の不均衡型転座
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 母親の核型 | 46,XX,t(1;7)(p36.2;q21) |
| 胎児の異常 | Del1p36.23p33.33(9 Mb) + Dup7q21.12q36.3(73 Mb) |
| 臨床的意義 | 1p36欠失は1p36欠失症候群の領域。7番の重複73Mbは非常に大きい |
📌 1p36欠失症候群は単独の微小欠失症候群としてもスクリーニング対象ですが、この症例では転座由来であることが判明。通常の「1p36欠失症候群スクリーニング」では転座の背景までは分からないため、カリオセブンの全染色体解析が有用であることを示しています。
症例6:9番染色体と18番染色体の不均衡型転座
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 母親の核型 | 46,XX,t(9;18)(p11.2;p11.2) |
| 胎児の異常 | Dup9p24.3p13.1(38 Mb) + Del18p11.32p11.21(15 Mb) |
| 臨床的意義 | 18p欠失は18p欠失症候群、9p重複は9pトリソミーに相当 |
症例7:4番染色体と19番染色体の不均衡型転座【重要】
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 母親の核型 | 46,XX,t(4;19)(p12;p12) |
| 胎児の異常 | Del4p16.3p12(48 Mb) + Del19p13.3p12(22 Mb) |
| 特筆点 | 両方とも欠失(Del)という珍しいパターン |
⚠️ この症例の重要ポイント
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4p欠失はウォルフ・ヒルシュホーン症候群(Wolf-Hirschhorn syndrome)の原因領域を含む
- •
4p16.3領域にはWHSC1, WHSC2遺伝子が含まれる
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48 Mbと22 Mbという大きな欠失が2つ同時に存在する重篤な症例
症例8:10番染色体と13番染色体の不均衡型転座
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 母親の核型 | 46,XX,t(10;13)(p15.1;q22) |
| 胎児の異常 | Del10p15.3p15.1(7 Mb) + Dup13q22.3q34(42 Mb) |
| 特筆点 | 10番の欠失がちょうど7 Mbでカリオセブンの検出閾値ギリギリ |
💡 13番染色体の部分重複について:通常のNIPTで「13トリソミー陰性」と出ても、このような部分的な13番の異常(42Mb重複)は検出されません。13番染色体の「部分トリソミー」は完全な13トリソミー(パトウ症候群)とは異なりますが、臨床的に重要な異常です。
均衡型転座保因者の方へ
ご自身やパートナーが均衡型転座保因者の場合、
通常のNIPTでは胎児の不均衡型転座を検出できません。
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6. 8症例のまとめと従来検査との違い
【結論】 本記事で紹介した8症例すべてが、親が均衡型転座保因者で、子に不均衡型転座が生じたケースです。これらは通常のNIPT(21・18・13トリソミー検査)では絶対に検出不可能な異常です。
| 症例 | 親の転座 | 胎児の異常 | 確定 |
|---|---|---|---|
| 1 | t(7;9)(p15;q22) | Dup7p(15Mb) + Dup9(107.5Mb) | ✓ |
| 2 | t(13;20)(q21;q13.3) | Del13q(11.4Mb) + Dup20q(1.9Mb) | ✓ |
| 3 | t(3;5)(q21.3;q35.3) | Dup3q(69.4Mb) + Del5q(2.2Mb) | ✓ |
| 4 | t(7;10)(q36;q25) | Del7q(25Mb) + Dup10q(24Mb) | ✓ |
| 5 | t(1;7)(p36.2;q21) | Del1p36(9Mb) + Dup7q(73Mb) | ✓ |
| 6 | t(9;18)(p11.2;p11.2) | Dup9p(38Mb) + Del18p(15Mb) | — |
| 7 | t(4;19)(p12;p12) | Del4p(48Mb) + Del19p(22Mb) ※両方欠失 | — |
| 8 | t(10;13)(p15.1;q22) | Del10p(7Mb) + Dup13q(42Mb) | — |
従来のNIPTとカリオセブンの比較
| 検出項目 | 基本NIPT | カリオセブン |
|---|---|---|
| 21、18、13トリソミー | ✓ | ✓ |
| 全染色体の異数性 | ✗ | ✓ |
| 不均衡型転座の検出 | ✗ | ✓ |
| 7Mb以上の欠失・重複 | ✗ | ✓ |
| 9種類の微細欠失症候群 | ✗ | ✓ |
🩺 院長コラム【不均衡型転座の検出がなぜ重要か】
本記事で紹介した8症例は、すべて母親が均衡型転座保因者のケースです。均衡型転座保因者は約500人に1人の割合で存在するとされ、ご本人は健康ですが、子への遺伝時に不均衡型転座が生じるリスクがあります。
特に注目すべきは症例7です。ウォルフ・ヒルシュホーン症候群の原因領域を含む4p欠失が検出されました。これは通常のNIPTでは絶対に見つからない異常です。
均衡型転座保因者の方、またはその可能性がある方は、カリオセブンによる全染色体スクリーニングをお勧めします。当院では羊水検査も院内で実施でき、臨床遺伝専門医がその後のサポートまで一貫して対応いたします。
7. ミネルバクリニックのカリオセブン検査体制
ミネルバクリニックでは、臨床遺伝専門医の専門性を活かした検査体制を整えています。カリオセブンの結果説明から、陽性時の確定検査まで一貫してサポートいたします。
🔬 検査会社との連携
カリオセブンはベリファイ(Fulgent Genetics社)が提供。当院は検査会社と共同発表を行うなど、密接な連携体制を構築しています。
🏥 院内で確定検査まで対応
2025年6月より産婦人科を併設。カリオセブンで陽性の場合も、羊水検査・絨毛検査を院内で実施可能です。
👩⚕️ 臨床遺伝専門医が常駐
遺伝カウンセリングから結果説明、陽性時のフォローまで、臨床遺伝専門医が一貫して対応します。
💰 互助会で費用面も安心
互助会(8,000円)加入で、陽性時の羊水検査費用を全額カバー(上限なし)。安心して検査を受けられます。
不均衡型転座の検査をご検討の方へ
本記事の8症例はすべて通常NIPTでは検出不可能でした。
より広範囲な検査をご希望の方はカリオセブンをご検討ください。
※オンライン診療で全国対応可能です
よくある質問(FAQ)
🏥 不均衡型転座の検査をご検討の方へ
均衡型転座保因者の方、またはより広範囲な検査をご希望の方は、
カリオセブンについてお気軽にご相談ください。
臨床遺伝専門医があなたとご家族に寄り添います。
参考文献
- [1] Gardner RJM, Sutherland GR, Shaffer LG. Chromosome Abnormalities and Genetic Counseling. 4th ed. Oxford University Press; 2011.
- [2] Wapner RJ, et al. Expanding the scope of noninvasive prenatal testing: detection of fetal microdeletion syndromes. Am J Obstet Gynecol. 2015;212(3):332.e1-9. [PubMed]
- [3] Shaffer LG, et al. The use of chromosomal microarray analysis in prenatal diagnosis. Prenat Diagn. 2012;32(4):327-333. [PubMed]
- [4] American College of Obstetricians and Gynecologists. Screening for fetal chromosomal abnormalities: ACOG Practice Bulletin, Number 226. Obstet Gynecol. 2020;136(4):e48-e69. [PubMed]
- [5] Fulgent Genetics. Verify Prenatal Test Clinical Validation Data. [Official Site]
- [6] 日本産科婦人科学会. 出生前に行われる遺伝学的検査および診断に関する見解. [日本産科婦人科学会]


