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羊水検査(マイクロアレイ)の基礎知識|検査の流れ・費用・異常が見つかった時の対応方法

非確定的検査で染色体異常を疑われた方が次に考えるのは確定診断のできる検査ではないでしょうか。

現在、日本で染色体異常(遺伝子異常を含む)の確定診断ができるのは、「羊水検査」と「絨毛検査」の2種類です。そして、より詳細な検査ができるマイクロアレイ検査というものがあることをご存知でしょうか。

そこでこの記事では、羊水検査のマイクロアレイ検査の基礎知識や受けるメリット・デメリットについて解説します。

非確定的検査で陽性判定(先天性障害がある)だった方が、今後の検査を検討するのに参考になる内容となっているので、ぜひ一読ください。

羊水検査とは?

羊水検査とは、採取した羊水をもとに染色体異常を分析する検査のことです。

羊水とはお母さんのお腹の中で胎児が浮かんでいるプールのことです。 胎児は出産まで羊水の中で育ちます。そして、羊水には胎児の細胞の破片が浮かんでおり、これらの細胞の破片から染色体・遺伝子の分析を行います。

出生前検査における確定的検査(確定検査)として用いられます。

では、羊水検査について詳しく見ていきましょう。

参考資料:兵庫医科大学病院 産婦人科/羊水検査とは

羊水検査の流れ

羊水検査の流れは、以下のとおりです。
羊水検査
大阪市/羊水検査より画像引用)

  • ・エコー検査(超音波検査)で胎児の状態を確認する
  • ・お母さんの臍の下あたりから針を刺す
  • ・羊水を採取する
  • ・エコー検査(超音波検査)で胎児の状態を確認する
  • ・検査後30分は安静に過ごす(施設により時間は異なる)

検査自体は「5分〜10分」で、検査後の安静時間を含めても「40分弱」で終わります。 基本的には日帰り入院でできるため、検査後に医師が異常なしと判断すれば、すぐに帰宅できます。

検査結果は2〜3週間後であり、妊娠15〜18週(施設によっては17週までの場合もある)の期間で受検可能です。

非確定的検査で先天性異常を指摘された方が対象となり、医師と相談の上、検査を受けるかを決めましょう。

参考資料:大阪市/羊水検査

羊水検査の種類

羊水検査の種類は以下のとおりです。

  • ・Gバンド染色体検査
  • ・FISH検査
  • ・マイクロアレイ検査

また検査種別による違いは、以下の参考画像をご覧ください。

羊水検査の種別
八重州セムクリニック/羊水検査より画像引用)

Gバンド染色体検査とは、採取した染色体(細い糸状になり絡み合っている)を一つひとつの個体に分解して顕微鏡で観察する検査です。

Gバンド
大阪市/羊水検査より画像引用)

染色体の本数や欠失や転座(染色体の一部が入れ替わる) など顕微鏡で確認できる範囲の異常がわかります。

FISH法検査とは、特定の染色体だけを光らせて解析する検査です。

FISH法
大阪市/羊水検査より画像引用)

特定した染色体の本数がわかるうえに 培養の必要がないため、検査結果も1〜2日でわかります。ただし、部分欠失・重複・転座(染色体の一部が入れ替わる)については解析できません。

SNP(スニップ)マイクロアレイ検査とは、Gバンド染色体検査やFISH法検査では解析できなかった微小な異常についてわかる検査です。詳しくは次章で解説しますので、ぜひご覧ください。

参考資料
八重州セムクリニック/羊水検査
大阪市/羊水検査

絨毛検査との違い

羊水検査と絨毛検査の違いは、以下の表をご覧ください。

羊水検査 絨毛検査
採取検体 羊水 絨毛
実施場所 お腹 お腹もしくは膣
検査時期 妊娠15〜18週
(施設によっては15〜17週)
妊娠10〜13週
(施設によっては11〜13週)
検査費用 約10〜20万円 約10〜20万円

検査時期は羊水検査よりも絨毛検査の方が早く受けられ、どちらも確定診断ができるという特徴があります。

ただし、羊水検査に比べて絨毛検査の方が合併症のリスクが高いと言われているため、緊急で検査しない限り、羊水検査の方が安全に受けられるでしょう。

また、どちらの検査も合併症はつきものであるため、検査前に医師からの説明を十分理解した上で臨むことが大切です。

羊水検査の合併症

羊水検査による合併症は、以下のとおりです。

  • ・流産・死産
  • ・出血
  • ・子宮収縮の誘発
  • ・破水
  • ・感染

検査ではお母さんのお腹から針を刺します。エコー(超音波)検査にて胎児の状態や場所を確認しながら慎重に行われますが、手技によっては胎児や周辺臓器を傷つけてしまうこともあります。

流産や出血を招いたり、検査自体が刺激になり子宮収縮を誘発したりする危険性もゼロではありません。

また、胎児の浮かぶ羊水は無菌状態であり、検査により細菌やウイルスなどが侵入すると、重篤な感染症や胎児の命を危険にさらしてしまうリスクもあります。そのため、検査では細心の感染症対策をしたうえで行われます。

羊水検査を検討中の妊婦の方は、 検査による合併症まで十分理解した上で臨むことが重要なのです。

羊水検査を受ける前に知っておくべき注意点

羊水検査を受ける前に知っておくべき注意点は、以下のとおりです。

  • ・胎児の正常を保証する検査ではない
  • ・羊水検査で解析できる染色体異常には限界がある
  • ・モザイク型の異常は診断できない
  • ・検査を受けたからといって必ずしも結果が出るとは限らない

羊水検査をはじめ出生前診断は胎児の正常(健康)を保証するための検査ではありません。簡単に言うと、胎児に異常がないことを確認して安心するための検査ではないということです。

出生前診断の意義は早い時期から胎児に関する情報を知り、「安全な分娩方法を選択」と「出産後の生活のイメージや準備をすること」です。

絨毛検査とともに確定診断という位置付けですが、解析できる先天性異常の範囲には限界があることもわかっています。例えば、モザイク型と言われる染色体異常の場合、正常と異常の染色体が入り混じっているため、判定が難しいことがあげられます。

また、検査で羊水が採取できない、何らかが原因で採取した羊水に母親の血液が混じるなど、検査結果を出せないこともあると知っておきましょう。

マイクロアレイ検査とは?

シートに羊水検査サイン。

マイクロアレイ法とは「羊水検査」もしくは「絨毛検査」の解析方法の一種で、「Gバンド染色体検査」「FISH法検査」では解析できない微小な障害を予測することのできる染色体検査のことです。

ただし、マイクロアレイ法が他の検査に比べて優れているというわけではありません。非確定的検査(NIPTなどの出生前診断)で、異常が見つかった染色体の番号によって有効な検査かどうかは決まります。

マイクロアレイ検査はGバンド染色体検査のおよそ100倍も細かく染色体変化を解析できることから「微小欠(染色体の特定位置の遺伝子の欠失のこと)」「片親性ダイソミー(UPD:片方の親から染色体を2つ受けること)」なども発見できます。

マイクロアレイには、以下の2種類があります。

  • ・アレイCGH法(比較ゲノムハイブリダイゼーション)
  • ・SNP(スニップ)マイクロアレイ検査

特にSNP(スニップ)マイクロアレイ検査は、顕微鏡検査だけでは確認できなかった微小なDNA構造の変化まで解析できるため、今まで以上に先天性異常について詳しくわかるようになりました。

一方で「均衡型相互転座」や「逆位」の解析はできないため、マイクロアレイ検査をしたからといって100%先天性異常を発見できるというわけではありません。

では、マイクロアレイ法についてさらに詳しく見ていきましょう。

参考資料:公益社団法人 日本産婦人科医会/2.染色体異常

検査対象となる方

検査対象となる方は、以下のとおりです。

  • ・妊婦健診のエコー(超音波)検査で異常が指摘された方
  • ・出生前診断で染色体異常が疑われた方

これらの方を対象に確定診断をするために行う検査が「羊水検査や絨毛検査(マイクロアレイなどの検査)」です。羊水検査や絨毛検査は、出生前診断で異常があった方に医師から進めるのが一般的です。しかし、中には希望して受ける方もいます。

前段階の出生前診断については、誰でも受けられるため、先天性異常について早い時期から知りたいとお考えであれば、かかりつけの産婦人科医に相談しましょう。

マイクロアレイで分かる先天性異常

マイクロアレイ法で分かる先天性異常は、以下のとおりです。
マイクロアレイの先天性疾患
LSIメディエンス/WEB総合検査案内より画像引用)

一般的な羊水検査で用いられるGバンド染色体検査では「5〜10Mb」というレベルまでしか染色体異常の観察ができません。一方のマイクロアレイ法ならGバンド染色体検査のおよそ1/100レベルの染色体の変化も解析できます。

これが先天性異常には、予後不良や治療が極めて難しいもの、救命できる可能性があるなどさまざまです。また、先天性異常によっては長期的な治療や通院・手術などが必要であり、出産後の身体・経済的な負担をイメージするのにも役立つでしょう。

では、次に検査の流れについて見ていきます。

参考資料
LSIメディエンス/WEB総合検査案内
大阪市/羊水検査

検査の流れ

マイクロアレイ法で羊水検査または絨毛検査を受けるからといって、通常の方法と異なることはありません。

検査実施の流れは施設により多少異なりますが、おおよそ以下の流れで行われます。

  • ・エコー検査にて胎児の状態や位置を確認
  • ・細長い針でお腹から針を刺して羊水を採取
  • ・検査後30分は安静にする
  • ・異常がなければ即日帰宅可能(※異常があれば入院)
  • ・検査結果は2〜3週間後

基本的には出生前検査(非確定的検査)を受けて染色体異常が指摘され、確定診断を受けるために申し込みます。また、予期せぬ結果になった際もカウンセリングを受けられる施設もあります。

詳しくは検査を受ける施設に確認しましょう。

マイクロアレイ検査の2つのメリット

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マイクロアレイ検査のメリットは、以下の2つです。

  • ・メリット①:全ての染色体の数の変化を検出できる
  • ・メリット②:子宮内胎児死亡や死産・不育症などの原因の特定

あなたがマイクロアレイ検査を受けるメリットがあるかを判断するのにご活用ください。

メリット①:全ての染色体の数の変化を検出できる

マイクロアレイ検査なら、全ての染色体の数の変化を検出できます。

例えば、Gバンド染色体検査では検出ができない「微小欠(染色体の特定位置の遺伝子の欠失のこと)」「片親性ダイソミー(UPD:片方の親から染色体を2つ受けること)」などの検出ができることから、これまで発見ができなかった先天性異常を発見できるようになりました。

そのため、従来よりも羊水検査や絨毛検査の精度が高まったと言えます。

メリット②:子宮内胎児死亡や死産の原因を特定できる

残念ながら子宮内胎児死亡や死産になった場合、その原因を特定するのに有効な検査でもあります。

米国では妊娠20週以降の妊婦の160人に1人が死産を経験するというデータがあります。これらの原因を探ることで、子宮内胎児死亡の再発リスクの軽減や死産への理解を深めることが期待されるでしょう。

また、胎児が亡くなった原因がわかれば、妊婦やパートナーの自責の念を減らすこともできる点で羊水検査(マイクロアレイ検査)の意義は十分あるでしょう。

参考資料:日本産科婦人科学会 周産期委員会 委員会報告(2021年6月)/ 出生前検査における染色体マイクロアレイ検査の利用上の留意点

マイクロアレイ検査の2つのデメリット

マイクロアレイ検査のデメリットは、以下の2つです。

  • ・デメリット①:全ての先天性異常が見つかる訳ではない
  • ・デメリット②:検査を受けられる場所・時間に制限がある

検査後に後悔しないためにも、デメリットまで理解したうえで受けるようにしましょう。

デメリット①:全ての先天性異常が見つかる訳ではない

大前提として、Gバンド染色体検査よりも詳しく検査できるマイクロアレイ検査も万能ではないことを知っておきましょう。

そして、全ての先天性異常が見つかる訳ではないため、検査で胎児の正常が確認できても先天性異常がある確率を完全に否定したわけではありません。

例えば、日本小児遺伝学会(他二機関)によると、以下の先天性異常については検出が難しいと考えられています。

  • ・均衡型染色体再構成(相互転座、逆位など)の検出はできない
  • ・低頻度モザイクの検出は極めて難しい
  • ・ゲノムコピー数異常をもたらした染色体再構成については確認できない

簡単に言うと、検査でわかる先天性異常にも限界があるということです。

また、遺伝子や染色体については未だに解明されていないことも多いため、これからの医学の進歩でより広範囲な検査ができるようになるかもしれません。

参考資料:日本小児遺伝学会・日本先天異常学会・日本人類遺伝学会/診療において実施するマイクロアレイ染色体検査ガイダンス(2019年3月31日) P2

デメリット②:検査を受けられる場所・時間に制限がある

検査を受けられる場所・時間に制限があります。そのため、非確定的検査(出生前検査)を受けた病院やクリニックで確定診断までしてもらえるとは限りません。

そこで、以下の2つの手段で検査の受けられる施設を探す必要があります。

  • ・自分で探す
  • ・かかりつけ医に紹介してもらう

羊水検査(マイクロアレイ検査)が受けられる施設を自分で探すなら、インターネットの検索窓で「羊水検査 マイクロアレイ (地名)」のように検索しましょう。お住まいの地域を中心に検査のできる施設が見つかるでしょう。

また、周りにマイクロアレイ検査適応の羊水検査を受けたことがある人がいるなら、その方からの口コミも参考になります。

ただし、検査ができる施設であっても出生前検査に否定的な医師が主治医だと検査を勧められないこともあるため、ホームページなどで事前に医師の方針を確認しておく必要がありそうです。

もう1つの手段は、非確定的検査を受けた病院の医師に紹介してもらうことです。こちらの方が施設を探す手間が省け、紹介状を書いてもらえればあなたのことを理解したうえで検査してもらえるメリットがあります。

また、検査期間は妊娠15〜18週と限られています。この期間中に検査を実施し、「妊娠継続 or 人工妊娠中絶」の選択をしなければいけません。そのため、冷静に検査施設を探すことができず焦る可能性もあるため、医師に紹介してもらう方が安心できるでしょう。

【保険適応外】羊水検査(マイクロアレイ)の検査費用

医療費と料金のコンセプト。スマートドクターの手は、太陽の光の下で現代の病院での医療費に電卓とスマートフォンを使用しました

出生前診断は確定的検査・非確定的検査を問わず、すべて保険適応外です。つまり、全額自己負担ということです。

そのため、検査内容や対象となる染色体の項目により、検査費用は大きく異なります。

通常の羊水検査(Gバンド染色体検査)だけだと「約10〜20万円」ですが、マイクロアレイ検査などのように特殊な検査を追加した場合は、プラスで「約10〜20万円」が必要です。

また、非確定的検査を受けてから羊水検査に臨んでいるなら、合計で「約30〜60万円」の自己負担になります。

そして、出生前診断は自由診療であることから施設ごとに費用が異なります。そのため、検査をお考えの方は検査を受ける予定の施設へ事前に 確認しておくことをおすすめします。

参考資料:FMC東京クリニック/料金一覧

羊水検査(マイクロアレイ)で異常が見つかった時の対応方法

羊水検査(マイクロアレイ)で異常が見つかった時は、遺伝子カウンセリングを受けましょう。

遺伝子カウンセリングとは、日本産婦人科学会専門医のいる病院やクリニックで受けられるカウンセリングのことです。臨床遺伝専門医資格を持った産婦人科医、または臨床経験が豊富な産婦人科医が臨床遺伝専門医と連携してカウンセリングを行います。

遺伝子カウンセリングを受けるメリットは、以下のとおりです。

  • ・専門家に直接相談できる
  • ・染色体異常について正しく理解できる
  • ・障害受容ができる
  • ・検査後の意思決定をサポートしてもらえる

予期せぬ結果に不安が大きくなる妊婦の方も少なくありません。そこで、臨床遺伝専門医にカウンセリングをしてもらい不安の解消や検査後の意思決定をサポートしてもらいましょう。

また、夫婦以外の第三者が介入すると検査結果を冷静に受け止められ、前向きに考えられます。

不安の大きい時期だからこそ、一人で悩むのは危険です。検査後の正しい選択をするためにも、遺伝子カウンセリングや周りの人にサポートしてもらうことが重要なのです。

参考資料:公益社団法人 日本産科婦人科学会/『生殖医療に関する遺伝カウンセリング受入れ可能な臨床遺伝専門医』

まとめ: 先天性異常について詳細な検査がしたいなら羊水検査(マイクロアレイ)

愛とキャリアへのケアを示す表情で病院のハートハンドと黒人女性看護師。 仕事で幸せな笑顔と自己愛のサインと制服を着た専門の医療施設労働者

以上、羊水検査を受けようか悩んでいる妊婦の方向けに、マイクロアレイ検査の基礎知識を解説しました。

おさらいになりますが、羊水検査には以下の3種類の検査方法がありましたね。

  • ・Gバンド染色体検査
  • ・FISH検査
  • ・マイクロアレイ検査

その中でも今回取り上げたマイクロアレイ検査なら、より微小な染色体異常を発見することもできました。ただし、非確定的検査により指摘された異常のある染色体の部分によっては、マイクロアレイ検査では確認できないものもあります。

重要なのは、非確定的検査から自分にマイクロアレイ検査を受ける必要があるか考えることです。

また、羊水検査をはじめとする出生前診断は、保険適応外であるため全額自己負担が基本です。そのため、「経済的な負担」と「診断を受ける必要性」を天秤にかけて、今のあなたに必要な検査かどうかを考えることが重要でしょう。

この記事で学んだ羊水検査(マイクロアレイ検査)の基礎知識をもとに、羊水検査について今一度考えてみる機会になれば幸いです。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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