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妊娠中の女性で出生前診断を受けることを検討している方も多いのではないでしょうか?いざ検査を受けようと思っても医療機関ではさまざまな検査を実施しているため、どの検査を受けたらいいのか迷うこともあるでしょう。出生前診断は大きく分けて確定的検査と非確定的検査があり、それぞれいくつかの種類があります。今回は出生前診断の種類とその特徴について解説していきます。
出生前診断の種類
出生前診断には、確定的検査と非確定的検査の2種類があります。
確定的検査では、胎児の疾患の有無を確定させることができます。非確定的検査では、胎児に疾患があるかどうかの可能性を調べることができます。
確定的検査は、お腹に針を刺し、羊水や絨毛細胞を採取するため、侵襲的な検査です。そのため、確定的検査はわずかではありますが流産のリスクがあります。非確定的検査は、母体から採血したり、超音波を使ったりして検査をするので、非侵襲的であり、確定的検査と比べて流産のリスクなどはありません。
確定的検査は、胎児の細胞が多く含まれている羊水や絨毛細胞を採取するため、検査の精度は非常に高いです。
非確定的検査の中でも新型出生前診断(NIPT)などは、精度の高い検査ですが、あくまで非確定的検査であるため、診断を確定させるには、確定的検査を受ける必要があります。
確定的検査
確定的検査の種類には、以下の2種類があります。
● 羊水検査
● 絨毛検査
それぞれの検査の検査時期や結果が出るまでの期間、料金は下記の表の通りです。
検査時期 | 検査が出るまでの期間 | 料金 | |
---|---|---|---|
羊水検査 | 妊娠15週目以降 | 約4週間 | 10~20万円 |
絨毛検査 | 妊娠10~13週 | 2~3週間 | 10~20万円 |
確定的検査の目的は、胎児の状態を知り、安全な分娩方法を検討することにあります。羊水検査も絨毛検査も検査の精度は非常に高いですが、必ずしもすべての疾患が見つかるわけではなく、流産などのリスクもあります。では、羊水検査と絨毛検査について詳しく見ていきましょう。
羊水検査
羊水検査では、母体から羊水を採取し、羊水内の胎児の細胞を調べ、染色体異常の有無などを検査します。
羊水検査は下記のような手順で行います。
1. エコーで胎児の状態を確認する
2. エコーで胎児の位置を確認しながら、おへその下辺りに針を刺す
3. 約20mlの羊水を採取する
4. エコーで胎児に異常がないか確認する
5. 約30分間安静にし、再度エコーで異常がないか確認する
羊水検査を実施する目的は、採取した羊水に含まれている胎児の細胞を調べることによって、胎児の染色体異常の有無を診断することです。
染色体異常だけでなく、特定の遺伝子疾患の有無を調べることを目的として、羊水検査を行うこともあります。
メリット
羊水検査のメリットには、下記のようなものがあります。
● 安全な出産計画が立てられる
● 養育や療養についての準備ができる
● 心の準備ができる
羊水検査は、妊娠15週から受けることができます。そのため、妊娠の早い段階で赤ちゃんの状態を知っておくことにより、赤ちゃんを迎える準備ができます。検査で赤ちゃんに何らかの疾患が見つかった場合は、安全な出産に対する計画を立てられる時間的余裕ができるでしょう。
また、疾患が見つかった場合は、出生後の養育や療養について、専門医がいる病院を探すなど万全の準備ができます。
早期に胎児の状態がわかることで、もし疾患が見つかった場合、心の準備をする期間も十分にあります。我が子に先天性疾患が見つかった場合、さまざまな葛藤や不安があるでしょう。パートナーと十分に話し合う時間を持つことができ、さらには遺伝カウンセリングなどで専門医にアドバイスを受けることもできるでしょう。
羊水検査は、下記のような人に向いています。
● 高齢出産の人
● 近親者に遺伝性疾患がある人
● 染色体異常児の出産経験がある人
● 非確定的検査の結果が陽性であった人
デメリット
羊水検査のデメリットには、下記のようなものがあります。
● 命の選別に繋がる恐れがある
● 流産のリスクがある
● 金銭的負担が大きい
羊水検査の結果、赤ちゃんに疾患が見つかった場合、命の選別に繋がることもあります。羊水検査の本来の目的は、胎児の状態を知り、最適な分娩方法を検討することにあります。しかし、現状においては、羊水検査を受け、疾患が見つかった場合、生まないという選択をする夫婦もいます。
胎児の障害を理由とする中絶を認めても良いのかという問題は、非常に難しい問題であり、今なお明確な基準は示されていません。
また羊水検査は、母体から羊水を採取するため、流産のリスクが約0.3%あります。針をお腹に刺すため、出血したり胎児が傷ついたりする可能性もあります。
羊水検査の費用の相場は、医療機関によって異なりますが、10~20万円前後です。羊水検査は保険適用外であるため、全額自己負担です。羊水検査のみを受ける場合は少なく、非確定的検査を受けてから羊水検査を受けることが多いため、その総額は約30~40万円となり、金銭的負担は大きいです。
ウイルス肝炎の保因者や血液型がRh陰性の妊婦さんは、羊水検査時に問題が生じる可能性もあるため、受検前に十分に医師と相談してください。
絨毛検査
絨毛検査では、母体から絨毛細胞を採取し、絨毛細胞に含まれている胎児の細胞を調べ、染色体異常の有無などを検査します。
絨毛検査の方法には、経腹法と経膣法の2種類があります。
経腹法では腹壁を通して、経膣法では子宮頸管を通して絨毛細胞を採取します。どちらの方法を選択するかはエコーで胎盤の状態を調べ判断します。
経腹法は胎盤が子宮の前壁や底部にある場合に行い、経膣法は胎盤が子宮の後壁や子宮頸部に近い前壁にある場合に行います。
経腹法と経膣法の検査手順は下記の通りです。
● 経腹法
1. 腹部に針を刺すため、事前に局所麻酔をする
2. エコーで胎盤の状態や位置などを確認しながら、腹部に注射器に接続した細い針を挿入し、絨毛細胞を採取する
3. 採取した絨毛細胞を顕微鏡で確認し、問題がなければ終了
● 経膣法
1. 婦人科診察で内診を行うのと同じように内診台に乗り、エコーで胎盤の状態や位置などを確認しながら、膣に鉗子を挿入し、子宮頸管を経て胎盤から絨毛細胞を採取する
2. 採取した絨毛細胞を顕微鏡で確認し、問題がなければ終了
絨毛検査を実施する目的は、採取した絨毛細胞に含まれている胎児の細胞を調べることによって、胎児の染色体異常の有無を診断することです。
染色体異常だけでなく、筋ジストロフィーなどの遺伝子疾患も診断できます。
メリット
絨毛検査には、下記のようなメリットがあります。
□ 早い段階で判断ができる
□ 心の準備ができる
□ 安全な出産や養育の計画が立てられる
同じ確定的検査が妊娠15週から受けられるのに対し、絨毛検査は妊娠10~13週に受けることができます。そのため、早い段階で胎児の疾患の有無について知ることができます。
妊娠初期に検査できるため、胎児に疾患が見つかった場合、早期から心の準備をすることができます。もし、胎児に疾患があるとわかった場合、さまざまな不安や葛藤があるでしょう。そのようなことをパートナーとゆっくりと話し合う時間を持つことができ、産まれてくる赤ちゃんとしっかりと向き合うことができます。
また、胎児に疾患が見つかった場合には、安全な出産ができる専門病院を探したり、養育の計画について遺伝カウンセリングなどで専門家のアドバイスを受けたりすることもできるでしょう。
絨毛検査は、下記のような人に向いています。
● 高齢出産の人
● 近親者に遺伝性疾患がある人
● 染色体異常児の出産経験がある人
● 非確定的検査の結果が陽性であった人
● 羊水検査よりも正確な診断を得たい人
デメリット
絨毛検査のデメリットには、下記のようなものがあります。
● 「染色体モザイク」などによって判断できないことがある
● 流産のリスクがある
● 倫理的な問題がある
● 金銭的負担が大きい
「染色体モザイク」という正常な染色体と異常な染色体の両方が混在している場合、絨毛検査では正確な結果が出ないことがあります。そのような場合は、改めて妊娠15週以降に羊水検査を受ける必要があります。
また、絨毛検査には流産のリスクがあります。羊水検査の流産リスクが約0.3%であるのに対し、絨毛検査のリスクは約1%とやや高いです。
絨毛検査に倫理的な問題があるのは、羊水検査と同様です。絨毛検査を受けて胎児の疾患の有無を知り、「産むか産まないか」の選択の判断材料とする人もいるのが現状です。
絨毛検査の相場は、医療機関によって異なりますが、約10~20万円です。絨毛検査は保険適用外であるため、全額自己負担です。また、非確定的検査を経て、絨毛検査が実施されることが多いため、検査総額は約30~40万円となり、金銭的負担は大きいです。
胎盤の位置などによっては、絨毛検査が出来ないこともあります。そのような場合、羊水検査の時期まで確定的検査の受検を待つこととなります。
非確定的検査
非確定的検査の種類には、以下の4種類があります。
● 新型出生前診断(NIPT)
● コンバインド検査
● 母体血清マーカー検査
● NT(nuchal translucency)
それぞれの検査の検査時期や結果が出るまでの期間、料金は下記の表の通りです。
検査時期 | 結果が出るまでの期間 | 料金 | |
---|---|---|---|
新型出生前診断(NIPT) | 妊娠10~15週 | 1~2週間 | 20万円 |
コンバインド検査 |
妊娠11~13週 | 約2週間 | 5万円 |
母体血清マーカー検査 |
妊娠15~18週 | 約2週間 | 3万円 |
NT |
妊娠11~13週 | 当日 | 5000円 |
非確定的検査の目的は、胎児に疾患があるかどうかの可能性を診断することです。新型出生前診断(NIPT)などは精度が高いものですが、あくまで非確定的検査であるため、結果が陽性であった場合、診断を確定させるには確定的検査を受ける必要があります。では、それぞれの検査について詳しく見ていきましょう。
新型出生前診断(NIPT)
新型出生前診断(NIPT)は、母体から血液を採取し、胎児の染色体異常の有無などを調べる検査です。
検査は、採血を行うのみです。
NIPTは、染色体異常の早期発見を目的としています。染色体異常が見つかれば、その他にも異常がある可能性が高くなります。例えば、内臓に疾患が見つかった場合、発育段階からの早期治療が可能となります。このような治療への準備もNIPTの目的となっています。
ただ単純に、ダウン症候群(21トリソミー)を発見し、産むか産まないかの判断材料とするための検査として存在している訳ではありません。
メリット
新型出生前診断(NIPT)には、下記のようなメリットがあります。
● 胎児の状態を知ることができる
● 心の準備ができる
● 流産などのリスクがない
NIPTは、妊娠10週から実施することができるため、早い段階で胎児の状態を把握することができます。検査結果が陰性であれば、その後の妊娠生活が安心して送れるでしょう。
検査結果が陽性であった場合、確定的検査を受ける必要がありますが、早い段階で胎児に疾患があるかどうかの可能性を知ることで、心の準備をする時間ができます。パートナーとゆっくりと話し合う時間も持てるでしょう。
また、確定的検査には若干の流産のリスクがあるのに対し、NIPTは流産のリスクはありません。検査は採血のみのため、胎児に直接影響を与えることはなく、安心して検査を受けることができます。
NIPTは、下記のような人に向いています。
● 高齢出産の人
● 過去に流産の経験がある人
● 近親者に遺伝性疾患がある人
● 安全な方法で出生前診断を行いたい人
デメリット
新型出生前診断(NIPT)には、下記のようなデメリットがあります。
● 金銭的負担が大きい
● 受検期間が限られている
● 検査結果は100%ではない
NIPTは、非確定的検査の中でも費用が約20万円と高額です。また、保険適用外であるため、全額自己負担になります。金銭的負担は大きく、また受検期間が妊娠10~15週と限られているため、妊娠がわかった後にすぐに受検を決断することは難しいと言えるでしょう。
また、NIPTの検査精度は高いですが、検査結果は100%ではありません。本当は陽性であっても陰性と結果が出る「偽陰性」の確率もゼロとは言い切れません。また、検査結果は胎児に疾患があるかどうかの可能性を示すものなので、診断を確定させる場合、確定的検査を受ける必要があります。
検査は高額であり、結果によっては命の選別につながることもあるため、安易な気持ちで受けることはおすすめしません。NIPTについての正しい知識と理解を持った上で、受検を検討してください。
コンバインド検査
コンバインド検査は、超音波検査(エコー)と血清マーカー検査を組み合わせて行います。
血清マーカー検査は、母体から血液を採取して行います。
超音波検査では、NT(nuchal translucency)と呼ばれる赤ちゃんの首の後ろのむくみを測定します。NTはすべての赤ちゃんにありますが、これが厚くなっている場合、染色体異常や心奇形の可能性があります。
血清マーカー検査では、赤ちゃんもしくは胎盤由来のタンパク質やホルモンに関する分析を行います。
コンバインド検査の結果は確率で示されます。そのため、確定的検査を受けるかどうかの目安として行う場合もいます。
コンバインド検査は、胎児がダウン症候群(21トリソミー)とエドワーズ症候群(18トリソミー)である確率を示すことを目的としてます。
染色体異常のうち、53%がダウン症候群、13%がエドワーズ症候群であるため、コンバインド検査によって66%の染色体異常が調べられることになります。
ただし、コンバインド検査の確率が高い場合に疾患の有無を確定させるには、確定的検査を受ける必要があります。
メリット
コンバインド検査には、下記のようなメリットがあります。
● 簡便に客観的なデータを得られる
● 染色体異常の多くを占める疾患を調べることができる
● 超音波検査と比較すると検査の精度が高い
NTを測定する場合、どうしても検査をする人の技量に結果が左右されてしまいます。コンバインド検査では、超音波検査でのNT測定と血清マーカー検査を組み合わせることにより、より簡易かつ客観的なデータを得ることができます。そのため、コンバインド検査は欧米では染色体異常のスクリーニング検査として最も広く活用されています。
また、ダウン症候群とエドワーズ症候群を調べることができるため、染色体異常の中でも可能性の高い疾患を調べることができます。
さらには、コンバインド検査では、精密な超音波検査と血清マーカー検査を組み合わせているため、超音波検査のみの場合と比較すると、検査の精度は高いです。
コンバインド検査は、下記のような人に向いています。
● 特定の疾患について調べたい人
● 確定的検査を受けるかどうかの目安を知りたい人
● 検査費用を抑えたい人
デメリット
コンバインド検査には、下記のようなデメリットがあります。
● 検査結果は100%ではない
● どのような確率が出たら確定的検査を受けるか検討する必要がある
● 検査の対象疾患が限られている
コンバインド検査の結果は、疾患の有無が確率で示されるため、確率が高い場合でも、診断は確定的ではありません。検査結果で確率が高かった場合、診断を確定させるには羊水検査や絨毛検査を受ける必要があります。また、疾患がある可能性が低かった場合でも、必ずしも疾患がないとは言い切れません。
コンバインド検査は、確率で疾患の可能性が表示されるため、どのような確率が出たら、確定的検査を受けるのかを事前にパートナーと話し合っておく必要があります。遺伝カウンセリングで専門家からアドバイスを受けてもいいでしょう。ただし、専門家から助言を受けたとしても、最終的に判断するのは妊婦さんとパートナーです。確定的検査は、お腹に針を刺すなど侵襲的であり、流産のリスクも伴うため、判断に迷うこともあるでしょう。
また、コンバインド検査は検査できる疾患が限られています。特定の疾患については調べることができますが、胎児のすべての疾患が検査できる訳ではない点にも注意が必要です。
検査の結果を受けて、どのような対応をするのか夫婦でしっかりと話し合っていない場合は、受検をおすすめしません。まずは、検査の意義などについてパートナーと話し合いましょう。
母体血清マーカー検査
母体血清マーカー検査は、母体から採取した血液中に含まれる特定の成分を調べることで、染色体異常や神経管の異常を調べる検査です。
検査には、3つの血清マーカーで調べるトリプルマーカー検査、4つの血清マーカーで調べるクアトロマーカー検査があります。現在は、トリプルマーカー検査より精度の高いクアトロマーカー検査が主流です。
母体血清マーカーは、ダウン症候群(21トリソミー)やエドワーズ症候群(18トリソミー)、開放性神経管奇形を調べることを目的としています。
クアトロマーカー検査によるダウン症候群の検出率は約87%、エドワーズ症候群は約77%、開放性神経管奇形は約83%です。
メリット
母体血清マーカー検査のメリットには、下記のようなものがあります。
● 検査が比較的安価である
● 流産などのリスクがない
● 染色体異常の多くを占める疾患を調べることができる
母体血清マーカー検査は、新型出生前診断(NIPT)などと比較すると、検査費用が約3万円と安いです。金銭的な負担は抑えられるでしょう。
また、NIPTなどと同様、母体から血液を採取して検査するため、胎児に直接的な影響はなく、流産のリスクもありません。安心して受けられる点もメリットの一つです。
さらには、コンバインド検査と同様、染色体異常の原因の多くを占めるダウン症候群とエドワーズ症候群について調べることができ、その検出率も高いのが特徴です。
母体血清マーカー検査は、下記のような人に向いています。
● 特定の疾患について調べたい人
● 安全な検査を受けたい人
● 検査費用を抑えたい人
デメリット
母体血清マーカー検査には、下記のようなデメリットがあります。
● 検査結果は100%ではない
● どのような確率が出たら確定的検査を受けるか検討する必要がある
● 検査の対象疾患が限られている
検査の結果は確率で示されます。確率が高いからと言って必ずしも疾患があるとは限りません。また、確率が低い場合でも疾患がある可能性もあります。
検査結果は、「1/500」のように出ます。これは、同じ結果(1/500)を得た妊婦さんが500人いる場合、そのうちの1人が対象疾患の赤ちゃんを妊娠している可能性があるというものです。この結果をどう受け止め、どのような確率が出たら確定的検査を受けるのか、事前にパートナーと話し合っておく必要があります。
また、母体血清マーカー検査の対象疾患は3疾患に限られているため、結果が陰性であっても、赤ちゃんがその他の染色体異常であることもあります。
母体血清マーカー検査の確率を出す際に、母体の年齢が加味されています。そのため、妊婦さんの年齢が高いほど、検査結果で陽性が出やすいことに注意が必要です。
特に35歳以上の妊婦さんは、母体血清マーカー検査において精度が下がるため、その他の検査の受検も視野に入れた方がいいでしょう。
NT(nuchal translicency
NT(nuchal translucency)とは、赤ちゃんの首の後ろのむくみを指します。NTはすべての赤ちゃんにありますが、これが厚くなっている場合、染色体異常や心奇形の可能性があります。
NTの測定は超音波で行います。NTが判別できる時期は、妊娠11~13週の限られた期間です。
NTの検査結果は、有無ではなく「〇.〇mm」という数値で表されます。
NTの厚さが3mm以上ある場合、ダウン症候群の可能性が高いとされています。しかし、NTが3mm以上でも赤ちゃんに染色体異常がある確率は約3~4%であり、この数値はあくまでもNTが厚くない赤ちゃんと比べて、ダウン症候群の可能性が高いという意味に過ぎません。
NT測定の目的は、ダウン症候群の可能性を調べるだけでなく、胎児のさまざまな疾患を発見するきっかけをもたらすことにあります。NTの結果とその他の指標、そして別の検査を組み合わせて、胎児に疾患があるかどうかを確認していくことが有効だとされています。
メリット
NT測定には、下記のようなメリットがあります。
● 出生前診断の中で検査の費用が最も安価である
● 胎児が疾患を持っているかどうかの目安となる
● 当日結果が出る
NT測定は、出生前診断の中で最も検査費用が安いです。新型出生前診断(NIPT)の費用が20万円であるのと比較すると検査費用は5,000円であるため、その差は大きいでしょう。
また、NTを測定することで、さまざまな疾患の発見のきっかけとなります。診断を確定させる検査ではありませんが、その可能性がわかることで、心の準備をすることもでき、確定的検査を受けるかどうかの目安ともなるでしょう。
新型出生前診断(NIPT)の検査結果が約1~2週間後に出るのに対し、NT測定の結果は当日出るため、検査の結果を受け止め、その後の対応を考える時間も十分にあるでしょう。
NT測定は、下記のような人に向いています。
● 検査費用を抑えたい人
● 胎児に疾患があるかどうかの可能性を知りたい人
● 検査結果を即日知りたい人
デメリット
NT測定には、下記のようなデメリットがあります。
● 検査の結果はあくまで目安でしかない
● 測定する医師の技量で結果に差が生じる
● 日本では標準的な検査ではない
NT測定の結果はあくまで目安であり、例えばNTが5mmあってもその50%に異常はありません。NTが厚いからと言って、疾患が必ずしもあるわけではないのです。
また、NTを測定する手技は難易度が高く、医師の技量によって結果が異なります。そのため、検査結果は不安定であると言えます。ある病院ではNTの厚さに問題がない場合でも、別の病院では問題があると診断される可能性もあるのです。
NT測定は主に染色体異常を発見するための検査ですが、現在のところ、日本ではスタンダードな出生前診断ではありません。
NTの厚さが5mmと出た場合、妊婦さんの年齢が30歳の場合と45歳の場合では、染色体異常の確率も異なります。
検査を受ける際は、結果に年齢が加味されることにも注意が必要です。
まとめ
出生前診断には、診断を確定させる確定的検査と疾患があるかどうかの可能性を調べる非確定的検査があります。それぞれの検査には、メリットとデメリットがあります。まずは、各検査について正しい知識を持つことが大切です。その上で出生前診断を受けると決断した際は、より自身の状況に適した検査を受けましょう。