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出生前診断。受けた後悔、受けなかった後悔。
どちらの後悔もあると思うのですが。
知恵袋でも出生前診断を受けるべきかという質問がいくつかありますので、皆様の関心が高いことがわかります。
受けなかった後悔については別ページでご紹介していますので、今回は出生前診断を受けて中絶して、出生前診断を受けたこと自体を後悔している、中絶するんじゃなかった、妊娠中絶したくなかったのに夫が納得してくれなかったので仕方がなかった、という方をご紹介します。
結局は、『ちゃんと理解して陽性の場合には厳しい選択を迫られる』ということを覚悟して受けないと、出生前診断というものは受けても受けなくてもどちらも後悔するということです。
出生前診断・受けた後悔
検査当日の様子|大丈夫よ、どうせ陰性だから。
ミネルバでNIPTを始めたころの患者さんの話です。
ある日、すごいキャリアの女性が来ました。
不妊治療に何年か通って、お腹の赤ちゃんを顕微授精でやっと授かりました。第1子はいるのですが、やはりもう一人お子さんがどうしても欲しくて頑張って体外受精を何度もしました。NIPTを受けに来たのは「陰性を確認に来ただけですから」と言いました。そんな調子なので、NIPTについて説明しようとする私の話も真面目にあまり聞いていません。そんなこといいから早く終わってよ、っていう雰囲気でした。
日本でも最大手の職場で、高い専門資格をもって、たくさんのスタッフに囲まれて、診療の予約を取るのもクリニックを探すのもスタッフが手配してくれるような恵まれた環境で仕事をしてきた女性でした。
ひととおりのNIPTに関する説明をして、同意書をいただくときになって、彼女はいいました。
「いいんです。わたしはどうせ陰性ですから。それが確認したくて来ただけですから」
わたしは驚いて言いました。
そうですか?50人に一人は陽性です。あなたが陰性と決まっているわけではないので、たかをくくらないほうがいいですよ。絶対陰性だと思うという態度で受けると、本当に陽性だった時に、まずその事実を受け入れられず、ショックが大きくて、そこからなかなか立ち直れないですよ。
そう言いながら、悪い予感がしました。わたし(仲田洋美)、幼いころからとっても勘が鋭いんです。
でも、残念ながら彼女は本当にすごいキャリアウーマンで、肩で風を切って歩いていたので、わたしのような場末の専門医の言葉は、彼女の心には何一つ響きませんでした。これは別に彼女が悪いわけではありません。心にちゃんと響く言葉を発することができなかったわたしが専門医としてふがいないのです。
結果はトリソミー陽性
検査を出す時から本当に嫌な予感がしていました。そして祈っていました。どうかわたしの勘が外れますように。
勘のいい人には分かると思いますが、わたしにはそう本当に願う瞬間が人生においてたくさんありました。
そして.彼女の結果が届いた時、わたしは卒倒しそうになりました。21トリソミー。ダウン症(21トリソミー)のお子さんの可能性が90%以上。
そのころは、結果をお伝えするのも必ず診療のもと行っていて、予約制でした。陽性な彼女のためには1時間以上お取りしました。患者さんたちには自分にどれくらいの時間が割り当てられているのか、結果開示の場合はわからないようになっていました。それがわかったら、時間が長ければ陽性と最初からわかってしまうので。
だから、当時は結果をお伝えするための予約をとるにも意外と苦労しました。なんにもシステムがないところから、なにか問題があるたびに真摯に改善していくということしかできないのですが、その間にいろんなことをインターネットに書き込まれてしまって、ネットの恐ろしさにも初めて対峙し、わたしはもう,NIPT扱うのをやめようかと思い始めていた時期でした。
そのころの患者さんたちは、みな一様に嫌になっている私を励ましてくれていました。
当時の顧問弁護士に言っても、全然わたしの気持ちが落ち着くようにとか話をしてくれなくて、反面教師にするしいかないなとかおもったりして。
そんなころでした。彼女が来たのは。
21トリソミーという結果を伝えました。彼女は泣き崩れてしまいました。
まだわからないから、羊水検査を受けましょう、90%は高く見えますが、10%は正常なお子さんの可能性があるってことですよね。10人に一人は多くないですか?そういう話をしました。
1時間くらいいろんな話をしました。
彼女は自分がなにか罪を犯したからこういう結果になったのかとか、いろんなことをおっしゃっていたので、誰も悪くないんですよ、もともと女性の卵子には20歳過ぎの若い人でも1割くらいは染色体異常があるし、卵子は私たちが生れる前からずっと同じ状態で存在しているので、自分の年齢と卵子の年齢が同じなんです。だからその間に毎日DNAに障害が積み重なっていくのです。細胞にはDNA修復酵素と言うのがあるので、通常はDNAに障害が問題になるほど積み重なっていくという事はないのですが、卵子は作り変えられる、つまり細胞が死んで新しい細胞に生まれ変わるという事がなく、ずっとそのままあるので、異常が蓄積されていき、年齢とともに染色体の不分離、つまりちゃんと別れることができないということから1本多い、という本数の異常を女性側の生殖細胞は起こしやすくなるのです、というありきたりの話をしました。
大事なことは彼女が何かしたから、何かしなかったから、何を食べたから、何を食べなかったから、そういう理由で染色体異常のお子さんになるということはないのだということを分かってもらう事でした。
そして、わたしはとても後悔しました。彼女が検査を受けるときに、もっと彼女がちゃんと理解できるように、もっと陽性の可能性を強く想定して、それを受け止める心の準備ができるように、なぜもっと彼女ときちんとはなしをしなかったのか?
今のミネルバは外苑にあり、診察室が4つあるので一つふさがっていても大丈夫なので、一人の時間が大幅に長くなってしまっても十分に話をしてお帰りいただけます。
でも、当時のミネルバは診察室が一つしかなくて、一人の時間も1時間ときまっていて、延びると他の患者さんの診療がずれていくので、時間を長くとるのが難しかったんです。あとはやっぱり彼女が社会的地位が高い女性なので、わたしなんかがいろいろ言っても聞き入れてもらえないと思ってしまったんですよね。
でも、この彼女は本来陽性になることを全く想定せずにいたので、陽性になったときにショックが大きいことは明らかです。だから、すごく後悔しました。
だから,はやく診察室が複数もてるところに引っ越したい、とそう思ったんです。
話を元に戻しましょう。
彼女は羊水検査を受けることになったとか、それからは丁寧に連絡をくれました。
そして、ある日、泣きながら電話をくれました。
お子さんはやっぱりダウン症候群(21トリソミー)で中絶した、と。次はもうNIPTなんて受けない、どんな子でも産む、と泣きじゃくっていました。
彼女はそれからしばらくふさぎこみ、お仕事もできなくなってしまいました。
今でも彼女のことはとても気になっています。
わたしのこと,ネットでは、検査を理解できない人に受けてほしくないと偉そうにいわれた、という批判もいただいているようですが、その短い言葉の裏に、いろんな患者さんたちをみたので、患者さんたちを本当に守るにはどうすべきかということを常に自問している、という姿勢があって、でも、それは患者さんたちには見えないので、誤解されてしまうこともある、ということを少しでもご理解いただけたらと思います。
軽い気持ちで受けると後で気持ちの整理ができなくなったりする人もいるので、優しいという事は本当は強くないといけないな、といろんな人たちを見て感じてきたので、今の私の態度があるのです。
このキャリアウーマンの彼女が仕事もできなくなるくらい傷ついてしまった、という事実は私にはとても重くて、自分をいましめています。安易な気持ちで受ける検査ではない、と思ってたけど彼女の存在はわたしにそれを確信させてくれました。
でも、専門医としては失格ですよ。だって、そんなこと患者さんに教えられることではなく分り切っていることなので。
彼女があんなに傷つくことから守ってあげられなかった。どんなことをしても守るべきだった。
今もそう思っています。だから、だれにも安易に受けてほしくないんです。その先にあるのは重い決断かもしれません。そしてどんな状態でも全力で寄り添える専門医でありたい、と日々格闘しています。
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まとめ
この患者さんの場合は、出生前診断を受けたことでダウン症の赤ちゃんとわかり、中絶することとなり、受けたことを後悔していますが、実際に出生前診断を受けなかったらどうなったでしょうか?
そのまま生まれていたらダウン症のお子さんだったわけですから、出生前診断を受けなかった後悔が沸き起こり続くんじゃないでしょうか。
いずれにせよ、軽い気持ちで受けるものではないなと心底思います。
出生前診断・受けなかった後悔
出生前診断(NIPT)は、妊娠初期に赤ちゃんの染色体異常の可能性を調べることができる検査です。
特にNIPTは精度が高く、母体への負担も少ないため、多くの妊婦さんが選択しています。
一方で、「どんな子が生まれても愛して育てる」と考え、出生前診断を受けない夫婦もいます。
7年前に第一子を出産したBさんも、その一人でした。
初めての妊娠
夫婦で決めた「検査は受けない」という選択
Bさんが第一子を妊娠したのは35歳を過ぎた頃。
当時もNIPTはありましたが、「初めての妊娠だし、どんな子が生まれても夫婦二人で育てよう」と考え、
出生前診断は受けませんでした。
「何があっても大丈夫」という気持ちの方が強く、深く悩むこともありませんでした。
実際に生まれてきた我が子はダウン症
押し寄せる後悔
しかし、出産後にわかったのは、お子さんがダウン症であるという事実でした。
突然の告知に、Bさんは現実を受け止められませんでした。
覚悟していたつもりでも、想像をはるかに超える衝撃。
「もし事前に知っていたら、気持ちの準備ができたのでは」と、
受けなかったことへの後悔が押し寄せました。
7年経った今も消えない思い
周りの子と比べる辛さ
それから7年。
Bさんのお子さんは小学校に通っていますが、
同じ年齢の子と比べてしまう気持ちは今も消えません。
成長がゆっくりなことは頭では理解しているものの、
運動会や学校行事では、どうしても他の子どもと比較してしまう。
そのたびに「NIPTを受けていたらどうだっただろう」という思いが浮かんでしまうのです。
「中絶したかどうかはわからない」
それでも知ることには意味がある
Bさんは、「仮にNIPTを受けてダウン症だとわかっても、中絶したかはわからない」と話します。
それでも、「知らないまま突然現実を突きつけられるより、
事前に知って覚悟を持って出産を迎えた方が良かったのでは」と感じています。
出生前診断を受ける・受けないは自由ですが、
「何も知らずに産んで後悔する」という状況は避けたかったとBさんは振り返ります。
出生前診断は夫婦での話し合いが大切
後悔しないために
出生前診断を受けるかどうかは、夫婦の考え方や価値観によって異なります。
大切なのは、「あのとき調べておけばよかった」と後悔しない選択をすることです。
どんな結果でも受け止める覚悟を持つためには、
正しい情報を知り、夫婦でよく話し合うことが欠かせません。
NIPTならミネルバクリニックへ
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ミネルバクリニックでは、
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