この記事の監修・執筆:仲田洋美(臨床遺伝専門医)
ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医・総合内科専門医・がん薬物療法専門医。1995年に医師免許を取得し、遺伝医療と出生前診断に携わっています。
記事の作り方(編集方針)

全前脳胞症は、おなかの赤ちゃんの脳がつくられるごく初めの時期に、前脳が左右の大脳に分かれきらないことで起こる、生まれつきの脳の形の変化です。原因は染色体の変化・遺伝子の変化・妊娠中の環境など幅広く、同じ「全前脳胞症」でも、次のお子さんで同じことが起こる確率は、原因によって大きく変わります。このページでは、全前脳胞症に関係する19の遺伝子をまとめて調べる遺伝子パネル検査で何がわかり、結果が出たあと何ができるのかを、臨床遺伝専門医が解説します。原因がわかれば、お子さんの見通しや合併症への備え、そして次の妊娠でどう備えるかを、具体的に考えられるようになります。
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. この検査で何がわかりますか?
全前脳胞症に関係するSHH・ZIC2・SIX3など19の遺伝子に、病気の原因となる変化がないかを一度に調べます。原因の遺伝子がわかると、遺伝のしかたと、次のお子さんで起こる確率を考えられるようになります。
🧬 Q. どんな人が受けるとよいですか?
全前脳胞症と診断されたお子さんとご家族、次の妊娠を考えているご両親、ご家族に全前脳胞症の方がいる方です。染色体の検査(13トリソミーなど)で原因がわからなかった方の、次の検査にも向きます。
🧬 Q. 費用・日数・検体は?
検査費用は330,000円(税込)、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・口の内側の粘膜などで、オンライン診療でも受けられます。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。
🧬 Q. 結果のあとはどうなりますか?
結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。原因が見つかれば、ご両親の検査や、次の妊娠での出生前診断(絨毛検査・羊水検査を院内で)を計画できます。意義がまだわからない変化(VUS)の扱いもご説明します。
1. 全前脳胞症とは
全前脳胞症(holoprosencephaly、HPE)は、胎児期に前脳が左右の大脳半球に分かれきらないことで起こる脳の形成異常で、ヒトの前脳の生まれつきの形の変化のなかで最も多いものとされています[1]。脳の分かれ方の程度によって型が分かれ、多くの方で顔の真ん中の形にも特徴が出ます。
脳の分かれ方による型
遺伝性疾患の解説書GeneReviewsでは、重いほうから次のように分類されています[1]。
🧠 全前脳胞症の型(重いほうから)
※分類はGeneReviews(2026年6月改訂)[1]による。
顔の特徴
GeneReviewsによると、全前脳胞症の方の約80%で顔の形の特徴がみられます[1]。重いほうから、目がひとつになる単眼症(鼻の位置に突起を伴うことがある)、エスモセファリー(ethmocephaly)、セボセファリー(cebocephaly)、目と目の間がとても狭い・目が小さいまたはない状態、上あごの中央の骨が欠けて唇の真ん中が裂ける正中口唇裂、両側の口唇裂や鼻すじの低さなどがあり、ほぼふつうの顔立ちの方もいます。とくにZIC2遺伝子の変化による全前脳胞症では、顔立ちが比較的ふつうであることが多いとされています[1]。
脳の重さと顔の特徴の重さは、必ずしも同じではありません。顔立ちがふつうに見えても全前脳胞症のことがあり、反対に、顔の特徴だけで脳には異常がない「マイクロフォーム」の方もいます。見た目だけで原因や重さを決めることはできません。
どれくらいの頻度か
小児慢性特定疾病情報センターの解説では、全前脳胞症は出生1万人あたり約1人と推測されています(2026年10月時点で確認したページ。ページの作成は2014年)。生まれてきた赤ちゃんで見た数字です。
見通し(寿命)と合併症
見通しは型と原因によって大きく違います。GeneReviewsでは、単眼症やエスモセファリーの赤ちゃんは多くが生後1週間を越えて生きられない一方で、症状の軽いお子さんのかなりの割合と一部の重いお子さんは1歳を越えて成長し、重い型を含めて成人まで成長される方もいると記載されています[1]。
合併症としては、下垂体の働きの低下などホルモンの問題があり、染色体の変化や症候群によらない全前脳胞症では、のどの渇きと尿量が増える中枢性尿崩症が飛び抜けて多いとされています。思春期以降の方では、感音難聴が約30%、脳の働きによる見えにくさ(皮質性視覚障害)が約20%にみられると報告されています[1]。原因がわかると、こうした合併症にどう備えるかを考える手がかりになります。症状・顔の特徴・寿命について、さらに詳しくは全前脳胞症の症状・原因・顔についての解説をご覧ください。このページでは、検査を受けるかどうかを決めるために必要なことを中心にお伝えします。
2. 全前脳胞症の原因:染色体・遺伝子・妊娠中の環境
全前脳胞症の原因でいちばん多いのは染色体の変化で、全体の約25〜50%を占めます。そのほか、ひとつの遺伝子の変化や、妊娠前からの糖尿病などの環境も原因になります[1]。原因によって、調べる検査も、次のお子さんで起こる確率も変わります。
染色体の変化(13トリソミーが最も多い)
GeneReviewsによると、全前脳胞症の原因で最も多いのは13トリソミーで、原因を問わない全前脳胞症の40〜60%、染色体の変化による全前脳胞症の約75%を占めます。18トリソミーや三倍体でも起こることがあり、染色体の一部が欠けたり増えたりする変化(病的なコピー数の変化)は、全前脳胞症の方の約10%で見つかると報告されています[1]。これらは、このページの遺伝子パネル検査ではなく、染色体の検査で調べます。
ひとつの遺伝子の変化
GeneReviewsでは、全前脳胞症の方の約18〜25%が、ほかの症状も伴う「症候群」の一部として、ひとつの遺伝子の変化で全前脳胞症になっているとされています[1]。また、全前脳胞症だけが起こるタイプ(症候群でない全前脳胞症)では、SHH遺伝子が約5.4〜5.9%、ZIC2遺伝子が約4.8〜5.2%、SIX3遺伝子が約3%、TGIF1遺伝子が1%未満を占めると示されています[1]。SHHは、脳や顔の真ん中の形づくりに欠かせないソニック・ヘッジホッグのシグナルの中心となる遺伝子です。
日本の小児慢性特定疾病情報センターの解説では、常染色体優性(顕性)遺伝の家族例では遺伝子の変化が見つかる割合が40%前後である一方、ご家族にほかに患者さんのいない例では、最も多いSHHでも5%未満とされています(2026年10月時点で確認、ページの作成は2014年)。遺伝子パネル検査で原因が見つからない方も少なくないことを、受ける前に知っておいていただきたいと考えています。
妊娠前からの糖尿病などの環境
GeneReviewsでは、全前脳胞症を起こすことが知られている環境要因で最も多いのは、お母さんの糖尿病で、とくにインスリンが必要な妊娠前からの糖尿病では、全前脳胞症のリスクが10倍を超えて高くなるとされています[1]。環境が原因の場合は、遺伝子検査では見つかりません。
3. 遺伝のしかたと、次のお子さんで起こる確率
遺伝子の変化による全前脳胞症の多くは常染色体顕性(優性)遺伝で、同じ変化をもっていても、全前脳胞症になる方から、顔の特徴だけの方、まったく症状のない方まで、重さに大きな幅があります[1]。そのため、次のお子さんで起こる確率は、「原因が何か」と「ご両親が同じ変化をもっているか」で大きく変わります。
常染色体顕性(優性)遺伝と、症状の幅
SHH・ZIC2・SIX3・TGIF1などの変化による全前脳胞症は、常染色体顕性(優性)遺伝のしかたをとります[1]。ただしGeneReviewsは、同じ家族の中でも、単眼症を伴う無分葉型から、診察でもまったく異常のない方まで、重さに大きな幅があると記載しています。原因をもっていても発症しない人がいることを「浸透率が100%ではない」、同じ原因でも重さが違うことを「表現型の多様性」といいます。とくにSIX3では浸透率が低いため、ご家族に全前脳胞症の方がいないように見えることがあり、軽い顔の特徴だけが手がかりになることもあるとされています[1]。
⚠️ 「親は元気だから、子どもも大丈夫」とは言えません
親御さんが症状に気づいていなかったり、まったく症状がなかったりしても、同じ変化を受け継いだお子さんが重い全前脳胞症になることがあります。GeneReviewsは、親御さんが臨床的に症状がない場合でも、浸透率が100%でないことやモザイクの可能性から、きょうだいのリスクは高いものとして考えるとしています[1]。症状の有無だけで判断せず、検査で確かめたうえで計画することに意味があります。
ご両親のどちらかが同じ変化をもっているとき
お子さんの原因の変化をご両親のどちらかがもっている場合、次のお子さんがその変化を受け継ぐ確率は2分の1です[1]。受け継いだ場合でも、全前脳胞症になるか、顔の特徴だけか、症状が出ないかは、前もって予測できません。そのためGeneReviewsは、新しく起きたように見える変化が見つかったお子さんでも、ご両親の遺伝子検査を勧めています[1]。
お子さんで新しく起きた変化(de novo)だったとき
ご両親の血液から変化が見つからず、お子さんで新しく起きた変化(de novo変異)と考えられることもあります。GeneReviewsでは、新しく起きた変化の割合は、SHHで約10〜30%、ZIC2で約70〜80%、SIX3で約10〜20%と推定されています[1]。新しく起きた変化なら、ご両親のどちらのせいでもないことがはっきりします。
GeneReviewsは、ご両親から変化が見つからない場合、多くのご家族をまとめて見ると、次のお子さんで起こる確率は低いものの一般の方より少し高いとしています。その理由が、ご両親の卵子や精子のもとになる細胞(生殖細胞)にだけ変化がある「性腺モザイク」の可能性です[1]。変化をもつ生殖細胞からできる卵子・精子は2分の1の確率で変化を受け継ぎます。生殖細胞のうちどれくらいが変化をもつかは実際の診療では調べられないため、お子さん1人あたりの確率は『最大で2分の1』とお伝えしています。血液で変化が見つからなかったことは、生殖細胞に変化がないことを意味しません。「新しく起きた変化だから次は大丈夫」と小さく見積もらないことが大切です。
X連鎖の遺伝子(STAG2・SMC1A)
このパネルに含まれるSTAG2遺伝子とSMC1A遺伝子はX染色体にあり、染色体を束ねるコヒーシンというたんぱく質の部品をつくります。GeneReviewsでは、これまでに報告されたX連鎖の全前脳胞症の方はすべて女性で、新しく起きた変化によるものとされています[1]。米国の全前脳胞症の研究では、277人のうち5人(1.8%)にコヒーシンの遺伝子の働きを失わせる変化が見つかり、ほかの施設の例を合わせた15人のうち11人がSTAG2またはSMC1Aの変化をもつ女性でした[2]。この研究では、ほとんどが新しく起きた変化でしたが、お母さんから受け継いだSTAG2の例も1例ありました[2]。
4. どんな人がこの検査を受けるとよいか
全前脳胞症と診断されたお子さんの原因を知りたいご家族、次の妊娠を考えているご両親、ご家族に全前脳胞症の方がいる方に向く検査です。原因がわからないまま病院を回る時間を、この検査で短くできる可能性があります。ただし、染色体の変化が疑われる場合は、先に染色体の検査を考えます。
この検査が向いている方
- ●MRIなどの画像検査で全前脳胞症と診断されたお子さんと、そのご家族
- ●染色体の検査(G分染法・マイクロアレイ)で原因が見つからなかった方
- ●全前脳胞症のお子さんがいて、次の妊娠を考えているご両親
- ●ご家族に全前脳胞症の方がいる方、目と目の間が狭い・正中の口唇裂など、全前脳胞症に関係する顔の特徴がある方
- ●妊娠中に赤ちゃんの全前脳胞症を指摘され、原因を考えたい方(妊娠中の調べ方は第7章)
症状のないご両親・ご家族の検査
第3章のとおり、全前脳胞症の遺伝子の変化は、症状のない方や、顔の特徴がごく軽い方にも隠れていることがあります。見た目やご家族の話だけでは、変化をもっているかどうかは判断できません。お子さんで原因の変化が見つかったら、ご両親が同じ変化をもっているかを確かめることで、次のお子さんの確率を考えられるようになります。全前脳胞症の方のきょうだいが、将来ご自身の結婚や妊娠を考えるときの手がかりにもなります。
この検査より別の検査が向いている場合
GeneReviewsは、13トリソミーが疑われるときは染色体の検査(核型)を、そうでなければ染色体マイクロアレイ検査を先に行い、そのうえで欠失・重複の解析を含む遺伝子パネル検査を行い、それでも原因がわからなければエクソーム・ゲノム解析を考える、という順番を示しています[1]。
🔍 状況に合わせた検査の選び方
※検査の順番はGeneReviews[1]による。どの検査が合うかは、これまでの検査結果・症状・ご家族の情報で変わります。遺伝カウンセリングで一緒に決めましょう。
5. この検査で調べる19の遺伝子
この検査では、C2CD3・CDON・CNOT1・EMX2・GLI2・GLI3・ICK・IFT80・PPP1R12A・PRRX1・PTCH1・RAD21・SHH・SIX3・SMC1A・STAG2・TGIF1・WDR81・ZIC2の19遺伝子を一度に調べます。遺伝子ごとに、全前脳胞症とのかかわりの強さは違います。下の表は、GeneReviews(2026年6月改訂)などで確かめられた内容を示しています。
🧬 調べる19遺伝子と、全前脳胞症とのかかわり
※割合は「症候群でない全前脳胞症」に占める割合で、GeneReviews(2026年6月改訂)[1]による。STAG2・SMC1Aは文献[1][2]による。対象遺伝子は当院の検査内容による。
6. この検査でわかること・わからないこと
この検査でわかるのは、19の遺伝子の小さな変化(塩基の置き換わりや、小さな挿入・欠失)と、遺伝子まるごとなどの大きめの欠失・重複です。一方で、遺伝子検査には必ず限界があります。
わかること
次世代シーケンサー(NGS)で、遺伝子のたんぱく質をつくる部分(コード領域)と、その境目(スプライス部位)を読みます。欠失・重複の解析では、ひとつの遺伝子まるごとの変化(頬の粘膜・血液の検体)と、となり合う2つ以上のエクソンにわたる変化(血液の検体のみ)を見つけられます。見つかった欠失・重複は、別の原理の方法(qPCR法やMLPA法)でもう一度確かめてから報告します。読み取りの質が低い部分の変化は、サンガー法という別の方法で確かめます。
わからないこと
- ●染色体の変化:13トリソミーなどの染色体の数の変化や、染色体の一部の入れかわり(転座・逆位)は、この検査では調べません。染色体の検査が必要です。
- ●調べていない遺伝子:19遺伝子以外の原因は見つかりません。GeneReviewsに載っているFGF8・FGFR1・DISP1などは、このパネルに含まれていません[1]。
- ●見つけにくい変化:1つのエクソンだけの欠失・重複はふだんは検出されません。繰り返し配列の伸び、遺伝子の働きを調節する部分(プロモーターなど)や、エクソンから20塩基より離れたイントロンの変化も調べません。ZIC2遺伝子では、3塩基の繰り返し配列が伸びる変化は評価しません。
- ●モザイク:体の一部の細胞にだけ変化がある状態(体細胞モザイク)を見つけるようにはつくられていません。がんの組織の検査には使えません。
- ●意義がまだわからない変化(VUS):病気の原因かどうか、今の知識では判断できない変化が見つかることがあります。
- ●陰性でも否定はできません:原因が見つからなくても、染色体の変化・調べていない遺伝子・環境など、ほかの原因が残ります。全前脳胞症の診断そのものが否定されるわけではありません。
専門的な情報:読み取りの深さ(カバレッジ)
調べる遺伝子の領域の99%以上を、20回以上重ねて読み取ります(≥99% at 20x)。同じ場所を何回も読むことで、読み間違いによる見落としや誤りを減らすためです。ほかの遺伝子とよく似た配列(偽遺伝子など)がある部分では、変化を見つけにくいことがあります。
7. 結果が出たあと
結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングで直接ご説明してから、マイページにアップします。結果だけをお送りすることはありません。陽性・陰性・VUSのそれぞれで、次にできることが違います。報告書の読み方は遺伝子検査の結果の見かたで解説しています。
原因の変化が見つかったとき:診断と見通し
原因の遺伝子がわかると、病名がはっきりし、遺伝のしかたが決まります。症候群の一部とわかれば、ほかの臓器で気をつけることもわかります。尿崩症などのホルモンの問題や、聞こえ・見え方の確認など、主治医の先生と早めに備える手がかりになります。
ご両親・ご家族への影響
お子さんで見つかった変化を、ご両親が同じようにもっているかを確かめます。GeneReviewsは、新しく起きたように見える場合でも、ご両親の遺伝子検査を勧めています[1]。ご両親のどちらかがもっていれば次のお子さんの確率は2分の1、どちらからも見つからなければ性腺モザイクを考えて「最大で2分の1」と考えます(第3章)。症状のないご家族の検査は、知ることの意味をよく考えてから受けていただけるよう、遺伝カウンセリングでご説明します。
原因が見つからなかったとき
まだ染色体を調べていなければ、染色体の検査を考えます。染色体もこのパネルも陰性なら、全エクソーム検査が次の選択肢です[1]。原因がわからない場合も、全前脳胞症の診断が否定されるわけではなく、次のお子さんで起こる確率は、ご家族の状況から個別に考えます。
意義がまだわからない変化(VUS)が見つかったとき
VUSは、それだけで診断に使ったり、ご家族の検査や出生前診断に使ったりはしません。研究が進んで、のちに意味がはっきりすることもあります。調べた目的とは別の病気の原因が見つかった場合の扱いは、当院の二次的所見の開示方針をご覧ください。
次の妊娠を考えている方:出生前診断の相談
GeneReviewsは、ご家族で全前脳胞症の原因の変化がわかっていれば、妊娠中の検査が可能だとしています[1]。原因がわからないままでは、妊娠中に何を調べればよいかを決められません。お子さんの原因を確かめておくことが、次の妊娠で備えるための出発点になります。
当院では、羊水検査・絨毛検査を院内で行っています(2025年6月から産婦人科を併設)。重い型の全前脳胞症は妊娠10〜14週ごろの超音波検査で見つかることがありますが、軽い型は超音波では見つけにくいとされています[1]。
また、全前脳胞症の原因で最も多い13トリソミーは、当院のNIPT(新型出生前診断)で調べられます。当院のNIPTは妊娠9週から受けられ、妊娠6〜8週の方は臨床研究として受けられます。陽性だった場合は、確定検査(羊水検査・絨毛検査)まで院内で受けられます。出生前診断の遺伝カウンセリング料は30分33,000円(税込)です。
8. 日本の制度(2026年10月時点)
全前脳胞症は、小児慢性特定疾病の対象疾病として、小児慢性特定疾病情報センターに掲載されています(神経・筋疾患の「脳形成障害」の群。2026年10月時点で確認)。医療費の助成を受けるには、制度の認定の条件を満たし、申請する必要があります。認定の基準や申請の方法は、小児慢性特定疾病情報センターや、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。
この検査は自費診療で、保険は適用されません。病名がはっきりすると、使える制度を主治医の先生と確かめやすくなります。
9. 検査の流れ・費用・結果までの日数・検体
検査費用は330,000円(税込)、結果までは2〜3週間です。検体は血液・唾液・口の内側の粘膜などで、オンライン診療でも受けられます。
ご予約
▶
遺伝カウンセリング臨床遺伝専門医
▶
検体の採取血液・唾液・頬の粘膜
▶
結果のご説明2〜3週間後・マイページへ
💴 費用・日数・検体
※ご夫婦・カップルで同じ検査を同じ日に一緒に受ける場合は、遺伝カウンセリング料が1人分になります(検査費用の割引はありません)。報告書の読み方は遺伝子検査の結果の見かたをご覧ください。
オンライン診療(ビデオ通話)で遺伝カウンセリングを行ったあと、検体を当院にお送りいただきます。検体の採取キットは、検査料金をお支払いいただいたあとにお送りします。検体の取り違えや、検査に使えない検体になることを防ぐため、キットが届く前にご自身で検体を採取しないでください。
遺伝カウンセリングでは、検査で何がわかり、何がわからないか、結果がご家族にとってどういう意味をもつかをご説明します。検査を受けるかどうかは、説明を聞いて納得してから決めていただきます。
10. 院長コラム
🩺 院長コラム【原因を知ることは、誰かを責めるためではなく、次を考えるため】
私自身、希少な常染色体顕性(優性)遺伝性疾患の当事者です。子どもに病気を受け渡したくない、という遺伝の病気をもつ方の思いはよくわかります。また、お子さんが重い症状で発症したのをきっかけに、ご自身も同じ遺伝子の変化を持っていたとわかり、自分のせいだと責めてしまう親御さんを、何度も見てきました。私の当事者としての話は、遺伝性疾患の当事者として、臨床遺伝専門医になった理由に書いています。
遺伝子の変化は誰にでも起こりうるもので、誰のせいでもありません。全前脳胞症は、同じ遺伝子の変化をもっていても、重い方からまったく症状のない方まで、重さに大きな幅がある病気です。だからこそ、「自分たちは元気だから」「家族にほかの患者さんはいないから」という見た目の印象だけで、次のお子さんのことを決めてしまわないでほしいと考えています。
遺伝子検査は、やってみないとわからないことを、何度も経験してきました。検査をしないと何も言えない、というのが私の確固たる考えです。たとえば、きょうだいのお子さんの病気をきっかけに念のため検査を受けた方に、まったく別の遺伝子の病的な変化が、体の一部の細胞だけにある状態(モザイク)で見つかったことがあります。ご本人は発症していませんでしたが、卵子や精子のもとになる細胞にもその変化があれば、お子さんが発症することがある病気でした。こうした経験から、当院では、検査を受けずにリスクだけをご説明することはしておりません。検査をせずにリスクをお伝えするほうが、かえって危険だと考えているためです。
わからないまま悩み続けるより、わかったことから次を考えるほうが前に進める、と考えています。原因がわかれば、次の妊娠で何を調べればよいかが決まり、出生前診断まで当院で続けて支えることができます。知る・知らない、検査を受ける・受けない、どの選択をされても、その選択を尊重します。
よくある質問(FAQ)
Q1. 全前脳胞症は何人に1人ですか?
小児慢性特定疾病情報センターの解説では、出生1万人あたり約1人と推測されています。原因で最も多いのは13トリソミーなどの染色体の変化で、全体の約25〜50%を占めます。
Q2. 全前脳胞症はいつわかりますか?
重い型(無分葉型)は、妊娠10〜14週ごろの超音波検査で見つかることがあります。軽い型は超音波では見つけにくいとされています。原因が染色体か遺伝子かは超音波ではわからないため、染色体や遺伝子の検査で調べます。
Q3. 全前脳胞症は遺伝しますか?
原因によります。染色体の変化や環境が原因のこともあります。遺伝子の変化による全前脳胞症の多くは常染色体顕性(優性)遺伝で、同じ変化をもっていても、全前脳胞症になる方から、症状のない方まで重さに大きな幅があります。そのため、親御さんに症状がなくても、同じ変化をもっていることがあります。
Q4. 次の子どもで全前脳胞症が起こる確率は?
原因によって大きく変わります。お子さんの原因の変化をご両親のどちらかがもっていれば、次のお子さんが受け継ぐ確率は2分の1です。ご両親から見つからない場合も、卵子や精子のもとになる細胞にだけ変化がある可能性があるため、お子さん1人あたりの確率は最大で2分の1とお伝えしています。原因を確かめることが、確率を考える出発点になります。
Q5. 遺伝子検査で原因が見つからなかったら、どうなりますか?
全前脳胞症の診断が否定されるわけではありません。染色体の変化、このパネルで調べていない遺伝子、妊娠中の環境などの原因が考えられます。まだ染色体を調べていなければ染色体の検査を、染色体もこのパネルも陰性なら全エクソーム検査を考えます。
Q6. 染色体の検査も必要ですか?
はい。全前脳胞症の原因で最も多いのは染色体の変化です。13トリソミーが疑われるときは染色体の検査(核型)を、そうでなければ染色体マイクロアレイ検査を先に行い、そのうえで遺伝子パネル検査を行う順番が示されています。当院では染色体マイクロアレイ検査も行っています。
Q7. 症状がないご両親も検査を受けたほうがよいですか?
お子さんで原因の変化が見つかった場合、ご両親が同じ変化をもっているかを確かめることが勧められています。全前脳胞症の遺伝子の変化は、症状のない方や顔の特徴がごく軽い方にも隠れていることがあり、見た目だけでは判断できないためです。
Q8. 費用はいくらですか?保険は使えますか?
検査費用は330,000円(税込)で、自費診療のため保険は適用されません。遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)が別にかかります。結果までは2〜3週間で、至急オプション(55,000円)で約7日短くなります。
🧬 原因を知って、ご家族のこれからを考える
生まれ持った遺伝子は一生変わりません。全前脳胞症の原因がわかれば、お子さんの合併症への備えだけでなく、ご両親の検査や、次の妊娠でどう備えるかを考える手がかりになります。当院では、検査の前後の遺伝カウンセリングを臨床遺伝専門医が行い、羊水検査・絨毛検査による出生前診断まで、院内で続けて受けていただけます。
お電話でのお問い合わせ:03-3478-3768
参考文献
- [1] Tekendo-Ngongang C, Muenke M, Kruszka P. Holoprosencephaly Overview. In: GeneReviews®. University of Washington, Seattle; 2000 (Updated 2026 Jun 9). [NCBI Bookshelf NBK1530]
- [2] Kruszka P, Berger SI, Casa V, et al. Cohesin complex-associated holoprosencephaly. Brain. 2019;142(9):2631-2643. [DOI: 10.1093/brain/awz210](PMID: 31334757)
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