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ニーマンピック病という難病のお子さんが3人生まれたご夫婦のニュースをご紹介します。
ニーマン・ピック病C型(Niemann-Pick disease type C, NPC)が発症するのは乳児期、小児期、成人期どの時期でもあり得ます。ニーマンピック病は脂質蓄積病の一つで、脂質の代謝がうまくいかず、脂質が大量に蓄積されることで病気を発症します。多くの症例では小児期の中期以降に、認知症や運動失調を来します。脳実質に脂質が蓄積されるため、ジストニアとけいれんがよくみられます。嚥下障害により経口摂取が不可能となり、通常は10代後半か20代に誤嚥性肺炎で死亡します。成人期の発症では、認知症や精神症状を認める傾向にあります。
3人の子全員が認知症に似た難病で「20歳まで生きられない」と言われた
3人の子全員が認知症に似た難病で「20歳まで生きられない」と言われた母親、思いを語る(豪)
5/17(水) 21:00配信
Techinsight
8歳、6歳、4歳の3人の子供たちが全員、遺伝性の難病「ニーマンピック病C型」を発症しているというオーストラリア在住のシングルマザー、レネー・スタスカさん(画像は『New York Post 2023年5月9日付「My 3 kids have childhood dementia ― doctors say they won’t live to 20」(Channel 9/A Current Affair)』のスクリーンショット)
オーストラリア在住のレネー・スタスカさん(Renee Staska)は最近、豪テレビ番組『A Current Affair』に出演し、3人の子供たちが患う難病について語った。8歳、6歳、4歳の子供たち全員が遺伝性の難病「ニーマンピック病C型(Niemann-Pick disease type C: NPC)」を発症しており、医師には「20歳まで生きられない」と告げられているそうだ。レネー・スタスカさんは、ハドソン君(Hudson、8)、ホリーちゃん(Holly、6)、オースティン君(Austin、4)の3人の子を育てるシングルマザーである。子供たちは3人とも難病「ニーマンピック病C型」を発症しており、レネーさんの心配は尽きない。
ニーマンピック病C型とは、肝脾腫のほかに知的機能の退行、歩行失調、ジストニアなど多様な神経症状が特徴の遺伝性疾患で、症状が悪化すると発音不明瞭や嚥下障害が現れ、誤嚥性肺炎で死亡する例も少なくない。
レネーさんが「小児の認知症」と語るニーマンピック病C型について知ったのは2020年のことで、3番目のオースティン君が生後8か月の時、肝臓が肥大していることが判明し、検査を受けたことがきっかけだった。
レネーさんは当時のことをこのように振り返る。
「検査の結果、オースティンがニーマンピック病C型であることが分かり、医師からは病気について説明された紙1枚を渡されたのです。そして『これがこの病気の特徴。治療法はなく致死的な病である』と言われました。」
「当時は上の2人の子に健康上の異常は見られませんでしたが、専門家から『2人も25%の確率で同じ病気である可能性が高い』と告げられ、検査をする決意をしたのです。その結果、3人とも同じ病気であることが分かり、私はただひたすら泣き続けました。そしてすぐ、緩和ケアの紹介まで受けたのです。」
なおニーマンピック病C型は、父親と母親の異常遺伝子が揃った時に発症する常染色体劣性遺伝の疾患で、低年齢で発症すると神経症状の進行が早いという。レネーさんは「この病気のほとんどの子供たちは20歳まで生きられない」と肩を落とし、現在の子供たちの様子についてこのように明かした。
「診断から3年が経ち、ハドソンとホリーには明らかに発達の遅れが見られるようになりました。ハドソンは学校での読み書きに苦労していて、ホリーは他の子たちのペースについていくことができずにとても傷ついています。自分自身が一生懸命努力しているにもかかわらず、なぜ他の子と同じようにできないのか、理解できないのです。」
「あの子たちの症状は改善することがなく、今後は発達が退行し、記憶や身体機能などを失うでしょう。この病気はあの子たちが失うものがなくなるまで、全てを奪うのですから…。そして話すことや食べることもできなくなるのです。」
それでもレネーさんは、子供たちのために前向きさを忘れないようにしているようで「今の私は子供たちの勇敢さに助けられ、次の日も頑張ることができています。子供たちのために自分が強くなくてはならないし、そうすることで子供たちも強くなることができるでしょうから」と述べている。
ちなみに豪パースにあるマードック大学のメイ・アウン=トゥッ医師(Dr.May Aung-Htut)によると、認知症と似た疾患を持つ子供たちは、遺伝子の異常により脂質が分解できずに蓄積してしまうのだという。そして脂肪性物質が蓄積すると、脳内の細胞が死んでしまう有害な環境を作り出すそうだ。そのため同医師らのチームは現在、この脂肪性物質の蓄積を抑制する研究を急ピッチで進めているが、薬の開発については「10か月後かもしれないし、20年後かもしれない」と述べている。
オーストラリアでは現在、連邦政府が約2億4千万円(270万豪ドル)を投じ、3つの大学が共同で小児の認知症の研究をしており、有効な新薬の開発には大きな期待が寄せられている。
引用元:article.yahoo.co.jp/detail/7150d68bb4d9bf03b67594d563a78a50f603063a
ニーマンピック病C型の原因とは
記事の中にもあるように、これらは病気を引き起こす遺伝子が二つあわさると発症する常染色体劣性遺伝子疾患です。
劣性遺伝とは、特定の遺伝的特徴が表現されるために両親から受け継がれた両方の遺伝子が劣性の状態でなければならない遺伝の形式です。遺伝子には「優性」と「劣性」という二つの形態があり、優性遺伝子は劣性遺伝子よりも表現されやすい特徴を持ちます。
たとえば、遺伝子の一対が「A(優性)」と「a(劣性)」で表されるとします。この場合、以下のような組み合わせが考えられます。
AA(両方優性):優性の特徴が表現されます。
Aa(優性と劣性の混合):優性の特徴が表現されます。
aa(両方劣性):ここで初めて劣性の特徴が表現されます。
劣性遺伝の特徴は、その特徴を持つ遺伝子が両親からそれぞれ受け継がれた場合にのみ表現されます。例として、特定の遺伝的疾患は劣性遺伝によって引き起こされることがありますが、その疾患の遺伝子を持つ親が健康である場合(Aa)、子どもにその疾患が現れる確率は低くなります。しかし、両親ともにその遺伝子を持つ場合(aa)、子どもに疾患が現れる可能性が高くなります。
ニーマン・ピック病C型(NPC)
ニーマン・ピック病C型(NPC)は、脂質代謝障害の一種で、特に細胞内でのコレステロールおよび他の脂質の輸送と代謝に影響を与える遺伝性の疾患です。以下の特徴があります。
遺伝的原因: NPCは主にNPC1またはNPC2という遺伝子の変異によって引き起こされます。これらの遺伝子は、細胞内での脂質の輸送および代謝に関与しています。
症状の範囲と重症度: 症状は非常に多様で、個人によって異なります。一般的な症状には、神経学的障害、肝臓の問題、呼吸困難、発作、筋力低下、学習障害、そして精神的な遅れが含まれます。
診断: 診断は臨床的症状、細胞診、遺伝子検査に基づいて行われます。特定の細胞機能のテストや遺伝子分析が重要な役割を果たします。
治療と管理: 現在、この病気の根治治療法は存在しませんが、症状の緩和と生活の質の向上を目指した対症療法が行われます。これには薬物療法、理学療法、言語療法などが含まれることがあります。
進行と予後: NPCは進行性の疾患で、しばしば早期発症すると重症化し、寿命を短くすることがあります。しかし、発症年齢や症状は個人差が大きく、予後もそれによって異なります。
NPCはレア疾患(希少疾患)の一つであり、その希少性と症状の多様性から、診断が遅れることがしばしばあります。
一般人口中のNPC1遺伝子病的変異の保因者(キャリア;片方だけ病的遺伝子を持っているが生涯発症しない)は194人に1人です。
NPC2遺伝子病的変異の保因者も194人に1人と報告されています。
疾患頻度は(1/194)×(1/194)×(1/4)で約16万分の1となります。
このご夫婦の組み合わせで疾患のお子さんが産まれる確率は(1/4)。3人続けて疾患のお子さんが産まれる確率は1/64となります。
このケースでは、第3子が生後8か月の時に肝腫大のため精密検査をして、ニーマンピック病C型と診断されて、上のお子さん2人を検査したら同じ診断だったことが分かっています。
重い遺伝病のお子さんがうまれるのを予防する方法
アメリカでは現在、お子さんを作る前に保因者検査をして、病気のお子さんが産まれる可能性がないのかを見ることが一般的になっています。保因者とは病的遺伝子を持っているが一生涯発症しない人を言います。
米国ではすでに保因者頻度が200人に1人以上の113遺伝子を含む保因者スクリーニング検査を妊娠前にすることが推奨されています。
関連記事:キャリア(保因者)スクリーニング検査|米国人類遺伝学会の推奨内容
お子さんが先天異常をもって生まれる確率は3%。実に30人に1人と多いものです。遺伝子の異常による疾患はその2割を占める多いものです。今では遺伝子検査でその可能性を事前に知ることができます。「転ばぬ先の遺伝子検査」として是非ご検討ください。
日本では、遺伝にまつわる話を避ける人が多く、また、こうした検査を受けると破談になったらどうしようとか怖くなるお気持ちもあると思いますが、重い遺伝病のお子さんが産まれてから自分たちが保因していたことを知るよりは、はじめから知り、避ける方法があれば避けるほうが現実的で解決的ではないでしょうか?
その解決を導くための検査が保因者スクリーニング検査なのです。保因者スクリーニング検査で当該カップルがある疾患の病的遺伝子を持っていて、1/4の確率でお子さんが病気になると判った場合には、体外受精をして着床前診断をすることにより疾患のないお子さんを持つことができる時代になっています。
少子化の時代。少ないお子さんを健康に産むためにも、保因者スクリーニング遺伝子検査がおすすめです。
ミネルバクリニックでは、以下のブライダルチェック遺伝子検査を提供しています。ミネルバクリニックでは臨床遺伝専門医が常駐しており、お二人の未来の幸せなライフスタイルの実現をサポート致します。また、この検査はオンライン診療でも可能ですので、全国どこからでもミネルバクリニックにお越しにならずに完結致します。ブライダルチェック遺伝子検査は結婚後でも妊娠後でも大丈夫です。お子さんをもとうとする前に、一生に一度しか受ける必要がない検査ですので、是非ご検討下さい。
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