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結婚は人生の大きな節目であり、将来の家族計画を考える重要な時期です。お互いの健康状態を理解することは、将来の子どもの健康にも関わる重要な要素となります。特に遺伝性疾患については、事前に知識を持ち、必要に応じた対策を講じることで、より安心して家族計画を立てることができます。この記事では、結婚前に知っておきたい遺伝性疾患のリスクと、その対応方法について解説します。
遺伝性疾患とは何か
遺伝性疾患とは、DNA(遺伝子)の異常や変異によって引き起こされる疾患のことを指します。これらの疾患は様々な形で次世代に引き継がれることがあります。
遺伝様式の種類
遺伝性疾患は、その伝わり方(遺伝様式)によっていくつかのタイプに分類されます:
- 常染色体優性遺伝:片方の親から変異遺伝子を受け継ぐだけで発症する可能性がある(例:ハンチントン病、家族性高コレステロール血症)
- 常染色体劣性遺伝:両親から変異遺伝子を受け継いだ場合に発症する(例:嚢胞性線維症、フェニルケトン尿症)
- X連鎖遺伝:X染色体上の遺伝子変異によるもので、男性に症状が現れやすい(例:血友病、デュシェンヌ型筋ジストロフィー)
- 多因子遺伝:複数の遺伝子と環境要因が組み合わさって発症する(例:糖尿病、心臓病の一部)
- ミトコンドリア遺伝:母親からのみ受け継がれる(例:ミトコンドリア脳筋症)
日本人に比較的多い遺伝性疾患
日本人集団には、特定の遺伝性疾患が比較的高い頻度で見られることがあります。結婚前に知っておくと良い主な疾患には以下のようなものがあります:
疾患名 | 特徴 | 発症率/保因者率 |
---|---|---|
ウィルソン病 | 銅代謝異常により肝臓や脳に銅が蓄積する疾患 | 約3万人に1人 |
先天性筋強直性ジストロフィー | 筋肉の弛緩障害を伴う筋疾患 | 約8,000~10,000人に1人 |
スピノセレベラー失調症(SCA) | 小脳の変性により運動失調を引き起こす疾患群 | 約10万人に10~20人 |
血友病 | 血液凝固因子の欠乏による出血傾向 | A型:約5,000人に1人、B型:約30,000人に1人 |
遺伝性乳がん卵巣がん症候群 | BRCA1/2遺伝子変異による乳がん・卵巣がんリスクの上昇 | 約300~500人に1人 |
これらの疾患は一例であり、他にも様々な遺伝性疾患が存在します。家族歴がある場合は特に注意が必要です。
重要ポイント
遺伝性疾患があるからといって、必ずしも結婚や出産を避けるべきということではありません。現代の医療技術の発展により、様々な選択肢や対策が可能になっています。大切なのは正確な情報を得て、パートナーと十分に話し合うことです。
結婚前に検討すべき遺伝カウンセリングと検査
遺伝カウンセリングとは
遺伝カウンセリングは、遺伝に関する専門知識を持つ医療者が、遺伝性疾患に関する情報提供や心理的サポートを行うサービスです。特に以下のような場合には検討する価値があります:
- 家族に遺伝性疾患の既往歴がある場合
- 血縁関係にある人との結婚を考えている場合
- 特定の民族グループに多い遺伝性疾患がある場合
- 35歳以上での妊娠を計画している場合
- 過去に原因不明の流産を複数回経験している場合
利用できる遺伝子検査
現在日本で利用できる主な遺伝子検査には以下のようなものがあります:
- キャリア検査:特定の遺伝性疾患の保因者(症状はないが遺伝子変異を持っている状態)かどうかを調べる検査
- 遺伝子パネル検査:複数の疾患関連遺伝子を一度に調べる検査
- 全エクソーム解析:タンパク質をコードするDNA領域(エクソン)全体を調べる検査
- 家系解析:家族の遺伝情報を組み合わせて分析する方法
これらの検査は医療機関や民間の検査会社で受けることができますが、検査前後の適切なカウンセリングを受けることが重要です。
「知ることは力です。遺伝性疾患についての知識は、恐れるためではなく、より良い選択をするための道具となります。」
— 日本人類遺伝学会
遺伝性疾患が判明した場合の選択肢
遺伝性疾患のリスクが判明した場合でも、様々な選択肢があります:
1. 自然妊娠・出産を選ぶ
多くの遺伝性疾患は、早期発見や適切な治療により管理可能です。生まれてくる子どもに対して早期からの医療的介入が可能となります。
2. 出生前診断を検討する
妊娠中に胎児の遺伝子検査を行うことで、特定の遺伝性疾患の有無を調べることができます。主な検査方法には以下があります:
- 非侵襲的出生前遺伝学的検査(NIPT)
- 羊水検査
- 絨毛検査
3. 生殖補助医療技術の利用
着床前遺伝子診断(PGT)は、体外受精で作られた胚を子宮に戻す前に遺伝子検査を行い、特定の遺伝子変異がない胚を選択する方法です。
4. 精子・卵子提供やその他の選択肢
第三者からの精子や卵子の提供を受ける、または養子縁組など、生物学的につながらない家族形成の方法も選択肢となります。
パートナーとの話し合いのポイント
遺伝性疾患について話し合う際には、以下のポイントを意識すると良いでしょう:
- 情報共有のタイミング:関係が真剣になった段階で、お互いの家族歴を含めた健康情報を共有しましょう
- 感情的サポート:遺伝性疾患の話題は感情的になりやすいため、互いに尊重し合う姿勢が大切です
- 将来の計画:子どもを持つかどうか、どのような家族を作りたいかについて率直に話し合いましょう
- 専門家の助けを借りる:必要に応じて、遺伝カウンセラーなどの専門家を交えた話し合いも検討しましょう
「遺伝性疾患について話し合うことは難しいかもしれませんが、それはお互いの将来と家族の健康のために不可欠なステップです。」
公的支援制度
遺伝性疾患に関連する公的支援制度には以下のようなものがあります:
- 特定疾患医療費助成制度:指定難病に認定されている遺伝性疾患に対する医療費助成
- 小児慢性特定疾病医療費助成制度:18歳未満の子どもの特定疾患に対する医療費助成
- 障害者総合支援法:障害のある人の地域生活や就労を支援するサービス
- 自立支援医療:精神通院医療、更生医療、育成医療に対する公費負担
また、各自治体独自の支援制度もあるため、お住まいの地域の保健所や福祉課に相談することをおすすめします。
まとめ:前向きな家族計画のために
遺伝性疾患のリスクを知ることは、決して恐れるためではなく、情報に基づいた選択をするためのステップです。結婚前に以下のことを心がけましょう:
- お互いの家族歴について率直に話し合う
- 必要に応じて遺伝カウンセリングを受ける
- 検査オプションについて理解する
- 様々な選択肢について検討する
- 互いの価値観や考え方を尊重する
現代の医療技術と支援制度を活用することで、遺伝性疾患があってもより良い家族計画を立てることができます。大切なのは、正確な情報を得て、パートナーと十分に話し合い、自分たちに合った選択をすることです。
専門家に相談しましょう
この記事の情報はあくまで一般的なものです。具体的な状況については、遺伝カウンセラーや遺伝専門医に相談することをおすすめします。

ミネルバクリニックでは、「未来のお子さまの健康を考えるすべての方へ」という想いのもと、東京都港区青山にて保因者検査を提供しています。遺伝性疾患のリスクを事前に把握し、より安心して妊娠・出産に臨めるよう、当院では世界最先端の特許技術を活用した高精度な検査を採用しています。これにより、幅広い遺伝性疾患のリスクを確認し、ご家族の将来に向けた適切な選択をサポートします。
保因者検査は唾液または口腔粘膜の採取で行えるため、採血は不要です。 検体の採取はご自宅で簡単に行え、検査の全過程がミネルバクリニックとのオンラインでのやり取りのみで完結します。全国どこからでもご利用いただけるため、遠方にお住まいの方でも安心して検査を受けられます。
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