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発達障害の種類と特徴
最近の研究では発達障害を持つ人は人口の10%は存在していると言われています。グレーゾーンに関しては統計を取っていないためはっきりしていませんが、多くの疾患では患者数と同程度かそれ以上の予備軍がいると言われています。そう考えると発達障害の人は20%いてもおかしくないのです。だから自分が発達障害と診断されても落ち込む必要はありません。
今、活躍している有名人も発達障害だと公表している人もいます。そこで紹介する前に発達障害の種類と特徴をご紹介します。
発達障害は、発達障害者支援法により定義付けられ、主に自閉スペクトラム症(ASD)、学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)の3種類に分類されています。同じ同じ種類の発達障害であっても症状や特性は人それぞれ違います。
・自閉スペクトラム症(ASD)、アスペルガー症候群
自閉スペクトラム症・アスペルガー症候群はコミュニケーション・対人関係が苦手なのが特徴です。行動にパターン化が見られるという特徴があり、記憶力が優れている人がいます。
・学習障害(LD)
学習障害とは、全般的な知的発達に遅れはないのに、聞く、話す、読む、書く、計算する、推論といったことを学べなかったり、実行したりすることが困難に陥る特性があります。
注意欠陥多動性障害(ADHD)
「集中できない(不注意)」「じっとしていられない(多動・多弁)」「考えるよりも先に動く(衝動的な行動)」といった特徴がある発達障害です。
発達障害を持つ人の顔つき
自閉スペクトラム症(ASD)、アスペルガー症候群、ADHDなどの発達障害を持つ人の顔つきに特徴はありません。身体障害者のように見た目ですぐにわからないせいで発達障害に気づくのが遅れてしまいがちです。
特に女性の場合、大人になってから発達障害だと気づくことがあります。理由は女性は子どもの頃から自分を抑えたり、主張を控えめにしないと集団生活の中でついていけなくなります。その過程で発達障害的な部分を隠しながら過ごしていたため気づかずに成長したのです。
「アスペルガー症候群の処世術」と呼ばれる本「アスペルガー的人生」の著者であるリアン・ホリデー・ウィリーもその1人です。彼女は著書で人気のある同級生の口ぶりや振る舞いを観察して、上手に覚え込んで真似をしていたと記しています。
発達障害を公表した有名人①米津玄師さん
2018年『Lemon』の大ヒットで一躍有名になった米津玄師さんは20歳のころに高機能自閉症だと診断されました。
幼少のころから米津玄師さんはまわりの人の言っていることがうまく理解できない、周囲になじむことができないといった「自分は普通ではない」という違和感に悩まされてきたそうです。バンドを組んでもメンバーと仲たがいをしてしまい、一人で作業をする方が好きだったとインタビューで語っています。
20歳のときに自らクリニックを訪れ、高機能自閉症だと診断されて、納得がいったそうです。
高機能自閉症などの発達障害は、それそのものの症状よりも、周りに適応することができないことで発症してしまう、うつ病やパニック障害にも注意を払う必要があります。米津さんもうつ病を患っていた時期があった公表しています。
現在の米津玄師さんの活躍は皆さんも知るところです。高機能自閉症については、とても苦しまれたと思いますが、音楽やイラストの制作に没頭したことで現在の活躍があります。また、独創性のある世界観を持っているということも高機能自閉症のこだわりが昇華した結果とも捉えることができるでしょう。
発達障害を公表した有名人②SEKAINOOWARI・深瀬慧さん
SEKAINOOWARIの深瀬慧さんは雑誌のインタビューで、発達障害(ADHD)と診断され、精神病院の閉鎖病棟に入っていたことを告白しました。インタビューで当時のことをお話ししています。
もう挫折してボロボロだったのに、そんなお仕置き部屋みたいなところに入れられて。そこに1ヶ月ぐらい入院してってという感じでしたね。そこで、結局なんで小学校の時に勉強ができなかったかがわかるんです。俺、ADHDっていう病気だったんです。(ROCKIN’ON JAPAN 2012 8月号 VOL.403 pp49より引用)
勉強の成績も思わしくなかったみたいですし,集中して何かを覚えたりするのは苦手だったのでしょう。他のインタビューでもこのように答えています。
元々、僕は中学校にあんまり行ってなくて、高校も1年で中退して。で、アメリカンスクールに1年間通った後に2年間の予定でNYに留学するんですけど、まあちょっと、精神的な不安定もあったのか、パニックになって帰ってきちゃって。そこで精神病院に入院して……(bounceより引用)
留学先のアメリカでパニック障害になって帰国したこと告白しています。発達障害(ADHD)の方は普通のサラリーマンになると生きづらくて苦しい日々を送る場合が多いですけど、音楽や絵画、お芝居など芸能や芸術の分野で才能を発揮することはあります。深瀬さんはその後、ギターの中島真一さんと知り合ってから音楽を始めて、才能を開花させました。
発達障害(ADHD)は完治しない病気ですので、現在も症状に苦しんでいるかもしれません。しかし。深瀬さんはツイッターで自身の発達障害についての思いを記しています。
なので基本的に自分がADHDの話をする時は何かが出来る、所謂長所として、特技として自己PRとして話す事を当時は心掛けていました。もちろん、難しい事ですし、ひけらかすことに違和感を感じる方もいます。でもそのさじ加減は誰にでもある人間関係の範疇だとも思います。
— Fukase(SEKAINOOWARI) (@fromsekaowa) April 14, 2020
SEKAINOOWARIは今や、若者を中心に大人気のバンドですし、深瀬さんは俳優デビューもするほど芸能界で活躍されています。もしかしたら深瀬さんの繊細なメロディや柔らかな言葉が並ぶ歌詞は発達障害(ADHD)だったからこそ生まれたのかもしれません。
発達障害を公表した有名人③イーロン・マスク
イーロン・マスクはアメリカの電気自動車メーカー『テスラ』のCEOで、2021年アメリカの人気コメディー番組に出演した際に、自身が自閉症スペクトラム(ASD)の一つであるアスペルガー症候群であることを公表しました。
番組の中でイーロン・マスクは自閉症スペクトラムの特徴の一つである自身の抑揚のない話し方に触れ、それがコメディ向きであると笑いを取りました。
また、画期的な電気自動車を考案していることや、現在取り組んでいる宇宙開拓のことに触れて「そんなことを思いつくやつが普通のやつだと思ったのかい?」と、アスペルガー症候群を自分の特性として好意的に捉えていることを伝えました。
この番組での振る舞いが反響を呼び、アメリカのASD支援団体への問い合わせが急増したそうです。
発言の一つひとつが注目を集めるイーロンマスク。アスペルガー症候群を前向きにとらえ、強みを磨いていくことで、社会的成功をつかめることを教えてくれています。
発達障害を公表した有名人④沖田×華さん
沖田×華(おきたばっか)さんはドラマ化もされ大ヒットとなったマンガ『透明なゆりかご』の作者です。
自分の好きな青色への強いこだわりがあり、小学生のころから青色のものに囲まれていないと落ち着かなかったそうです。現在でも小物や洋服に青色を選んでいます。青色に囲まれることでパニックになったり、イライラしたりしないそうです。自分の特性とうまく共存してていらっしゃいますね。
沖田さんは聴覚の過敏さに長年悩んでおり、特に子供の声は戦闘機のように大きな音に聞こえてしまうそうです。レストランなどではお店の人の声、BGMがすべて混ざって聞こえ、目も前の友人の声を聞き取ることが難しいそうです。
そして特に苦手なのが、人とのコミュニケーション。社交辞令や本音と建前を理解できないことがしばしばあるそうです。そのため、コミュニケーションについての気づきや心がけをメモ書きして記録しているそうです。そのお陰で、他人との関係が良好になったと出演したテレビ番組で語っています。
自身のアスペルガーの症状をマンガ作品『毎日やらかしています。』で発表しており、同じ症状を抱える読者からの反響や、障害を理解することができたという声が寄せられています。
沖田×華さんには、アスペルガー症候群の他にも、学習障害やADHDの症状もみられるそうです。その反面、沖田×華さんには見た景色をそのまま映像のように記憶する「映像記憶」という能力や、音楽を聴くとカラフルな玉が見える「共感覚」を持っています。
代表作『透明なゆりかご』は、産婦人科で働く看護学生の目線から、生命の誕生と死にまつわる物語を、優しい筆致で繊細に描いています。沖田さんの抱えてきたアスペルガー症候群や、その他の発達障害は、沖田さんの豊かな感性に影響を及ぼしているのかもしれません。
発達障害を公表した有名人⑤黒柳徹子さん
黒柳徹子さんは、ご自身の著書で「計算障害・読書障害」であった可能性があると記しています。
私はこの退学になった理由を、子どもらしい好奇心の旺盛な元気な子どもだったから、という率直な気持ちですべて本当のことを書いた。ところが、(中略)『窓ぎわのトットちゃん』をLD(学習障害)の子を多く診ていらっしゃる専門家や研究者から見れば、何もかもがLDに当てはまるということだった。こんなこと私は思ってもいなかった(『小さいときから考えてきたこと』(新潮社)より引用)
また、ベストセラーになった自伝的物語の『窓際のトットちゃん』(講談社)では、入学した小学校で机の蓋を何度もパタパタさせ叱られたかと思うと、今度は窓際に行き外を歩くチンドン屋を呼び込んでしまい一年生で退学処分にされたエピソードが掲載されています。その後、転向した小学校の校長先生に「君はいい子なんだよ」と言われて救われた思いになったそうです。そして自分が他人と違うことも落ち着きのないことも良い点と捉えて、自分のことを好きになったと語っています。
自分で自分を好きと言えるような言葉をくれた人に出会えたのは発達障害を持つ人にとってすごく大切なことだと思います。発達障害の人は人と同じ事ができなくて苦しむことがよくあります。みんなと同じでなくても生きていていいんだと思える人と出会えるのが発達障害でも充実した人生を過ごすのに重要なのかもしれません。
発達障害を公表した有名人⑥栗原類さん
「ネガティブタレント」として大ブレイクした栗原類さんも、8歳の当時住んでいたニューヨークでADD(多動の少ないADHD)だと診断されています。8歳で診断を受けたことで、苦手なことを把握し、母親もそれに合わせた子育てをしてくれたため、のびのびと育つことができたそうです。
さらに、栗原類さんのお母さんも同時期にADHDの診断をされたそうです。記憶力が弱い栗原さんに対して、お母さんは記憶力が強いそうで、その症状に違いがあるそうです。
栗原さんは自閉症スペクトラム(ASD)を支援するチャリティーイベントの中で、ASDやADHDといった発達障害の人たちの成長の速度は、そうでない人たちと比べれば遅いかもしれない。理解して優しく見守ってほしい。またそんな障害を抱える自分を責めないで受け入れることが大切だと語っています。
栗原類さんが発達障害について語った著書『発達障害の僕が 輝ける場所を みつけられた理由』(KADOKAWA)は大反響を呼び、同じく発達障害に悩む人たちを勇気づけたそうです。お母さんの栗原泉さんも、類さんの子育てについて『ブレない子育て 発達障害の子、「栗原類」を伸ばした母の手記』(KADOKAWA)でも語っています。
発達障害を公表した有名人⑦パリス・ヒルトン
パリス・ヒルトンはヒルトンホテル創業者の一族に生まれ、10代の頃からモデルとして活躍しています。アメリカのリアリティ番組「シンプル・ライフ」に出演し、自由奔放な言動から、お騒がせセレブとして大ブレイクしました。
彼女はジュエリーやサマンサタバサの財布、Parlux Fragranceの香水といったプロダクトのプロデューサーとしても活躍しています。また、女優としても映画に出演しています。
世界中で活躍する一方で、幼少期からADHDの治療を行っていることを公表しています。ADHDを公表したのも「同じ障害に苦しむ人の助けになるなら」と思ったことが理由とのことです。
その背景にはアメリカでは4歳から11歳の子供たちの約11%がADHDと診断されていることや、ADHDと診断される女児は同じくADHDの男児と比べて、友達とうまく関係性を作ることができないために、トラウマを抱えやすいといわれている背景があるのかもしれません。
ADHDの特性には多動性と衝動性が挙げられますが、常人では真似できないエネルギッシュなパリス・ヒルトンの活動は、その特性が上手く発揮された結果なのかもしれません。
発達障害を公表した有名人⑧市川拓司さん
市川拓司さんはベストセラーとなった「いま、会いにゆきます」の著書で有名な小説家です。子供頃は発達障害と診断されたことはありませんでしたが、40代になってからその言動から発達障害ではないかと指摘されたことでクリニックを受診し、発覚したそうです。
子供のころから落ち着きがなく、授業中には教室でほふく前進をしていたそうです。市川さんは幼いころからこのようなADHDや、局所的なこだわりをみせる自閉症スペクトラムの症状に悩まされてきました。
一方で、想像力が豊かだったため、現在は皆さんご存じのとおり、作家として活躍しています。作家になる前は一般企業で働いていた市川拓司さんでしたが、3ヶ月で退社したそうです。社会に出て働くとなると、はっきりと言語された事柄以外にも、相手の表情や状況で意味をくみ取らなければいけないことがあります。こうしたことを苦手とするのは自閉症スペクトラムや発達障害の人の大きな特徴です。
市川さんは「ぼくが発達障害だからできたこと」(朝日新書)の中で、自身の発達障害のことを語っています。同じく発達障害で悩む人やその家族、また病気を理解する上でたくさんのヒントとなりそうな書籍です。
発達障害を公表した有名人⑨スーザン・ボイル
スーザンボイルは2009年にイギリスのオーディション番組「ブリテンズ・ゴット・タレント」に出演し、その美しい歌声で世界中を魅了しました。
2012年には自身がアスペルガー症候群であることを公表しました。アスペルガー症候群は自閉症スペクトラムの一つで、コミュニケーション障害や、こだわりの強さ、感覚の鋭さといった症状や特徴が挙げられます。彼女自身、コミュニケーションが苦手な自覚があったそうですが、子供のころは診断が下されていなかったそうです。
診断を受けて「自分の特性がアスペルガー症候群と診断されたことで納得した。病名が付いたことで、皆さんが私のことを理解してくれるとほっとしています。病名に縛られず、アスペルガー症候群と共存していきたい」と語っています。
多くのオーディションを受け続け、その才能を世に知らしめることができたのは、彼女のこだわりの強さや根気強さの賜物でしょう。学校では周囲とうまくなじめず、いじめにもあっていたそうです。学習障害を疑われたこともあったそうですが、彼女の周囲の人はスーザン・ボイルの頭の良さを語っており、実際に平均より高いIQを持っているそうです。
発達障害を公表した有名人⑩小島慶子さん
元TBSアナウンサーで、現在はタレント・エッセイストとして活躍している小島慶子さんは、2018年7月にインターネットでの記事「日経DUAL」にてADHD(注意欠陥多動性障害)の診断を受けたと発表しました。
幼い頃から落ち着きがなくじっとしていられず、先生が説明中なのに割って入り話の腰を折るなど、周囲を困らせていたそうです。成人しても周りと同じようにできない自分に悩んでしまい、不安障害や摂食障害などの二次障害も抱えていたこともあるそうです。
診断を受けた小島さんは「ホッとした」「もっと早く知りたかった」と語っています。公表したのは自分の個性だと思えるようになったからだそうです。現在はご自分の特性を知り、対策を取ることで周りの人と調和できるようになったと語っています。
発達障害だからといって社会の中で生きていけないわけではない
自閉スペクトラム症(ASD)や発達障害(ADHD)の人たちは、そうでない人たちと比べて世界の認知の仕方が異なります。コミュニケーションや行動において独自性がある分、もちろん生きづらさを抱えてしまうことでしょう。
しかし、自分のできること、できないこと、苦手なこと、得意なことを理解し、それにあった環境の中で過ごしていければ、その能力を発揮することができます。
また、なるべく早期に診断を受けることで、症状に合った支援を受けることができるでしょう。「もしかしたら」と心当たりがある場合は、発達障害専門の医療施設で診断を受けてみましょう。