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女性にとって、人生の一大イベントである妊娠と出産。
お腹に新しい命が宿り、嬉しさが溢れ出て涙する方も多いです。自分の体が徐々に変化し、赤ちゃんがお腹にいるという喜びを感じていることでしょう。しかしその一方で、産休中はこれまで通り働けなくなるため、給与が支払われるのかと不安に思われる方もおられるようです。
近年、女性の社会進出により働く女性が増え、今やほとんどの方が日々仕事をこなしながら家事に育児に奮闘されています。
「自分が産休に入ってしまったら、その間のお給料は出るの?」「支払われなければ、収入が減ってしまう!」など、産休中に給与が支払われるかどうかは、出産を控えた女性にとって家計に関わる非常に大きな問題ではないでしょうか。
そこでこの記事では、産休中にお給料がもらえるケースとお給料の代わりになる経済的支援について解説していきます。産休を控え、経済的な不安を感じている方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
産休中は基本的に給与は支払われない
産休とは、産前の6週間と産後の8週間の間に取れる休暇のことです。この産休中は休暇扱いであり、基本的にお給料は出ません。
なぜなら、産休は法律で決められている権利ではあるものの、その間の給与についてはこれだけ支払わなければならないなどの明確な規定がないからです。
そもそも給与とは、働いたことへの対価として支払われるものであり、産休中に給与を支給するかどうかは、完全に会社へ一任されています。そのため、たとえ産休であっても、実際に仕事をしていない労働者に対して給与が支払われることは少ないでしょう。
ただし、出産の翌日から8週間の間は就業させてはならないことは、労働基準法第65条に規定されています。この規定を知らずに雇い主が就業させてしまうと、処罰の対象となってしまうため、注意が必要です。
このように、産休中は実質無給の状態になります。休暇中に受け取れる手当などもありますが、給与のように毎月コンスタントに入ってくるわけではありませんので、あらかじめ家計のやりくりについて決めておくとよいでしょう。
産休中にお給料がもらえるケース
仕事をしている女性で妊娠、出産を控えた方は、産前産後にいわゆる産休を取得する方がほとんどです。妊娠中に普段と同じように働くというのは、非常に大変なことですので、体の調子に合わせて早めに産休を取りたいとお考えの方もおられるでしょう。
上述したように、その間会社から給与を支払う義務はありませんが、一部のケースでは産休中も給与が支給されることも。そのようなケースでは、給与の一部が支給される場合や、ボーナスのみ支給される場合など、会社によってさまざまなようです。
では、具体的にはどのようなケースで産休中もお給料がもらえるのでしょうか。
公務員の場合
実は公務員の場合、産休中も通常通り満額の給与が支給されます。なぜなら、公務員の産休は勤務日扱いになるからです。
県の公務員の場合は県から、市役所などに勤務する市の公務員の場合は市からと、給与の支払い元は所属先によって異なるでしょう。
しかも、基本給だけでなく住宅手当など普段毎月支給されている手当についても、全額支給されます。ただし、残業手当や通勤手当などの実際に勤務しなければ発生しない手当は、支給されないので注意が必要です。
さらに、産休中にボーナスの支給日がある場合も全額支給されますが、査定期間に産休を取得した分については減額されることになります。そのため、ほとんどの場合産休から復帰後の次のボーナスが減額されることになるでしょう。
また、産休中は公務員共済組合の掛金が免除となります。共済組合とは、国家公務員の年金や福祉事業に関する業務を行っている社会保険組合です。毎月の給与額から天引きされていますが、産休中はこの掛け金の支払いをする必要がありません。
掛け金の額は人それぞれ異なりますが、毎月数万円が免除になるのはありがたいことです。免除には所属先を通じた手続きが必要になりますので、申請方法を事前に調べておくとよいでしょう。
会社独自の制度を定めている企業の場合
多くの場合、産休中は休暇を取得できますが、給与の支払い義務がないため支給されません。しかし、「産休中の給与を支給する」と会社独自の制度によって定められている場合には、給与の一部または全額が支給されることになるでしょう。
たとえば、フリマアプリ「メルカリ」を運営するメルカリでは、2016年2月から「merci box(メルシーボックス)」という新人事制度を導入しています。
この制度では、産休、育休中の社員の給与を会社が100%保障します。通常と同じ金額の給与を受け取れるよう、女性社員は産前10週間と産後約半年、男性社員には産後8週間、健康保険から給付される以外の部分を補填してくれるのです。
女性の社会進出が進む中、仕事のノウハウをもつ社員が妊娠、出産によって会社を去ることのリスクを考えた新しい時代の制度だといえるのではないでしょうか。今後、このような制度を導入する企業は徐々に増えていくかもしれません。
現在産休中に給与が支給される規定のある企業にお勤めの方で、もらえる金額が健康保険から支給される手当よりも少ない場合は、その差額を受け取れます。会社を通じて加入している健康保険組合に問い合わせてもらうとよいでしょう。
産休中のお給料の代わりになる経済的支援について解説
上記では、産休中に給与が支払われるケースについてご紹介しましたが、公務員以外で産休中も給与が支給されるケースはごく一部です。
ほとんどの場合は無給となるため、「自分が働けない間、家計のやりくりができそうにない」「生活費が足りなくなるのでは」など産休、育休中の生活について不安に感じる方も少なくありません。
実は、産休中は給与の支給はありませんが、その間支払われる手当や給付制度が用意されています。ここでは、産休中のお給料の代わりになる経済的支援について解説します。
受け取れる2つの手当、給付制度
産休中は休暇中の生活をサポートするために、給与の5〜7割に相当する2つの手当、給付制度が健康保険や雇用保険によって設けられています。
以下は、産休中に受け取れる2つの給付金です。
- 出産手当金:産休中の給与の代わりに出産や生活費を援助する目的で給付される手当。勤務先の健康保険に加入している場合にもらえる。支給される額は、計算式によって決定される。
- 出産育児一時金:基本的に全額自己負担となる出産費用を補助するために、公的医療保険に加入している被保険者や被扶養者が出産した際に、1児につき42万円が支給される。
出産手当金と出産育児一時金は、健康保険から産休期間にもらえます。出産手当金は、出産のために休暇を取得する健康保険加入者、出産育児一時金は妊娠4ヶ月以上で出産を予定しているすべての健康保険加入者が支給対象です。
出産手当金は、産休中に給与をもらっていない、もしくはもらっていたとしても出産手当金よりも少ない場合に受け取れます。出産育児一時金は、健康保険に加入していれば給与の有無に関係なく受け取れるので、混同しないように注意しましょう。
パートやアルバイト、派遣社員の場合は?
パートやアルバイト、派遣社員など正社員として雇用されていない場合でも、産前産後の休暇を取得できることは、労働基準法によって定められています。
それに伴い、出産手当金や出産育児一時金を受け取れるかどうかは、産休を取得する方が健康保険の被保険者であることが条件です。パートやアルバイト、派遣社員に関わらず、被保険者として健康保険に加入しているかどうかで、それらの手当が支給されるかが判定されるというポイントを知っておきましょう。
産休中は夫の控除対象配偶者に該当する可能性も
共働き世帯で、夫と妻共に給与所得者であり、それぞれに103万円を超える収入がある場合は、お互いを控除対象配偶者にはできません。しかし、妻が産休に入り、会社からの給与が年間103万円以下になる場合は、夫の控除対象配偶者に該当することになります。
上記でご紹介した健康保険より支給される手当は、所得税の課税所得には該当しないため、控除対象配偶者の判定には関係ありません。
産休によって給与が減少して夫の控除対象配偶者に該当するケースでも、このことを知らずに会社へ提出する扶養控除申請書に例年通り提出してしまうケースも多いです。
万が一、年末調整に間に合わない場合は、確定申告で申請もできます。産休で給与が変動する場合は、控除対象配偶者に該当するかきちんとチェックするようにしましょう。
まとめ
産休中にお給料がもらえるケースと、お給料の代わりになる経済的支援について解説しました。
産休中は、残念ながら基本的に給与は支給されません。しかし、出産手当金などでひと月の給与の5〜7割程度のお金を受け取れますし、出産費用も出産育児一時金で補填されますので、必要以上に不安になることはないでしょう。
ただしこれらの費用は、毎月給与と同じように振り込まれるわけではありません。妊娠がわかったら、産休に入る前に振り込まれるタイミングを確認し、家計をやりくりできるように考えておくことをおすすめします。
産休中のお給料について不安を感じている方は、本記事を参考に健やかな産休期間を送ってくださいね。