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胎児水腫の原因や予防方法は?治療についても紹介

赤ちゃんは産まれてくるまでにお母さんのお腹で成長していきますが、その過程に何らかの要因によって問題が生じることがあります。
なかでも胎児水腫は、場合によっては死産に陥ることも想定される危険な状態です。

本記事では胎児水腫について、その原因や治療方法を詳しく解説いたします。

胎児水腫とは?

胎児水腫とは?原因や治療方法を詳しく解説

お母さんのお腹の中にいる赤ちゃんの体がむくんでしまっている状態のことを、胎児水腫といいます。

赤ちゃんのお腹や胸、皮膚の下、胎盤などにむくみができる胎児水腫は、赤ちゃんにとって望ましい状態ではありません。状況によっては、死産に陥るケースもあります。

[注1]妊娠中について(胎児水腫について):地方独立行政法人 大阪府立病院機構 大阪母子医療センター
www.wch.opho.jp/ninpu/ninshin/taiji-byouki.html

胎児水腫の原因

胎児のイメージ画像

胎児水腫は、免疫に関わるものとそうでないものの2種類に分類できます。ほとんどのケースが非免疫性の胎児水腫だとされています。それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

免疫性胎児水腫

人の血液型は、すなわち赤血球の型のことを指します。赤血球の表面の糖鎖やタンパク質の違いによって分類され、2021年の段階で41種類の血液型が確認されています。免疫性胎児水腫発症の原因は、お母さんと赤ちゃんで血液型の不適合が存在する点にあります。

とくに多いとされているのが、Rhs式血液型不適合妊娠の場合に認められるケースです。お母さんがRhD抗原に対して陰性で、何らかの形でRhD抗原の抗体を持っていると、それが胎盤を介してお腹の中の赤ちゃんに移ります。

もし、お腹の中の赤ちゃんがRhD抗原に対して陽性だと、免疫反応が生じて赤ちゃんの赤血球が壊され、重篤な貧血状態に陥ります。赤ちゃんが重篤な貧血状態になることで、毛細血管にある水分が外に漏れやすくなるといった要因により、胎児水腫となるのです。

現在では、Rh型陰性など免疫性胎児水腫を発症する可能性がある場合、抗Dヒト免疫グロブリンの予防的投与など、予防策を講じることができます。そのため、免疫性胎児水腫が発症することは、ほとんどありません。

非免疫性胎児水腫

現在ではほとんど免疫性胎児水腫を見かけないのに対して、非免疫性胎児水腫は多く報告されています。原因疾患が多いのが特徴で、報告については以下の通りです。

  • ・心血管疾患:20〜40%
  • ・染色体異常:10〜35%
  • ・血液疾患:4〜12%
  • ・原因不明:25%

心血管疾患の場合、胎児心不全を起こして胎児水腫に至るとされています。そのほか、染色体異常が原因のケースだと、心奇形や消化管奇形といったほかの胎児異常も起きていることも珍しくありません。

非免疫性胎児水腫の関連疾患
心・大血管系異常 胎児脈拍症、胎児不整脈、心奇形、心房中隔欠損(心室中隔欠損、右心低形成、Epstain奇形、大動脈狭窄症、大動脈弁閉鎖、単心室、心内膜下繊維弾性症)など
染色体異常 ダウン症およびそのほかのトリソミー個体、ターナー症候群など
奇形症候群 致死性四肢短縮症、低フォスファターゼ血症、骨形成不全症、軟骨無形成症、Pena Shokier I型など
多胎妊娠 双胎間輸血症候群
溶血性疾患 α-Thalassemia、A-Vシャント、G-6-PD欠損賞など
代謝性疾患 嚢胞性線維症、β-グルクロシダーゼ欠損症、Tay-Sachs病、Gaucher病など
尿路系異常 尿道閉鎖、後部尿道弁膜形成、膀胱頚部解放不全、先天性ネフローゼ、Prune belly症候群など
呼吸器系異常 横隔膜ヘルニア、肺嚢胞性腺腫、肺過誤腫、肺血管腫、縦隔奇形腫、肺低形成など
消化器系異常 空腸閉鎖、腸軸捻転、腸回転異常、胎便性イレウスなど
肝疾患 肝線維症、胆汁鬱滞、胆管閉鎖、肝血管奇形など
母体疾患 重症糖尿病、重症貧血、低蛋白血症など
胎盤・臍帯異常 胎盤血管腫、母児間輸血、臍帯血管粘液腫、臍帯静脈瘤など
薬物性 出生前インドメタシン投与
感染症 サイトメガロウイルス、トキソプラズマ、単純ヘルペスI型、風疹ヒトパルボウイルス
そのほか 先天性リンパ浮腫、先天性胸水・乳糜胸、先天性神経芽腫、仙尾奇形腫など

非免疫性胎児水腫の予防方法は、ほとんどありません。ですが、一部原因となる関連疾患を防ぐ方法があります。
それは、ヒトパルボウイルスB19です。ヒトパルボウイルスB19は、りんご病の原因とされています。りんご病は、頬や手足がりんごのように赤くなり、関節痛や風邪症状を引き起こす感染症のひとつです。

お母さんがりんご病に感染すると、お腹の中の赤ちゃんにまでその影響が及び、胎児水腫に至る可能性があります。りんご病の感染対策を徹底しましょう。
もし、りんご病の感染が疑われた場合、胎児輸血などによる治療が検討されます。

胎児水腫の症状

胎児の超音波写真と聴診器

赤ちゃんが胎児水腫になると、胸やお腹に水が溜まったり、皮下や胎盤にむくみができたり、羊水過多になったりします。これらに加え、心臓や肝臓、膵臓といった臓器が腫れることもあります。

胎児水腫の赤ちゃんの状態は、超音波検査によって確認します。先述のとおり、胎児水腫は赤ちゃんにとって大変危険な状態にあるため、死産や流産、早産になるかもしれません。

また、胎児水腫の症状は、出生後も続きます。呼吸障害が起きるなど、全身の状態が悪化することも珍しくないとされています。

赤ちゃんの全身にむくみができるように、お母さんの体にもむくみができる場合もあります。突然の手足のむくみや体重の急激な増加、呼吸困難といった症状が報告されています。

胎児水腫の治療方法

胎児

胎児水腫の治療は、原因を正しく判明させることが極めて重要です。原因によっては、出産前から治療が行われることもあります。

たとえば重症貧血が原因の場合、胎児輸血による改善が検討されます。ほかにも、不整脈が原因であれば、母体に抗不整脈薬の投与が効果的な治療方法として考えられます。

このほか、一絨毛膜性の双子の場合、赤ちゃんはそれぞれ胎盤を共有しているため、血管の状態が原因で胎児水腫となることが考えられます。このケースでは、内視鏡を使用して血管の治療介入が効果的です。

しかし、多くの場合、胎児水腫の治療は出生後となります。出生後に胎児水腫の治療を行うのであれば、妊娠週数や赤ちゃんの状態を見て、早い段階での出産が検討されます。早い段階で出産すると、赤ちゃんが外界に適応できない恐れがあります。

よって、産まれてから酸素投与や輸液などによる集学的治療が必要です。胎児水腫を起こすと、胸やお腹のむくみによって呼吸動態にまで悪影響を及ぼすことがあります。そのため、出生前の段階で穿刺排液についての検討も行われます。

いずれの原因にしても、それを明確にしたうえで特異的な治療を考慮することが、胎児水腫において極めて重要となります。

薬物療法について

お腹の中にいる赤ちゃんが不整脈となっているために、胎児水腫を発症している場合、薬を用いた治療が検討されます。

不整脈には脈が早くなっている頻脈と逆に遅くなる徐脈がありますが、前者については薬物療法により80%以上が改善が見込めるとされています。徐脈性不整脈の場合、薬物療法での治療は困難です。

赤ちゃんが不整脈であるために投薬が必要ですが、薬を実際に飲むのはお母さんです。胎盤を介して赤ちゃんまで薬を届けなければならないため、不整脈でないにもかかわらず少なくない量の薬を飲む必要があります。

このことから、投薬による副作用が見られる場合があります。リスクについては、担当の医師や薬剤師から詳しく伺うことをおすすめします。

胎児水腫が自然に治る可能性

妊娠してから4〜7週目の妊娠初期の場合、この段階で確認された胎児水腫は自然に治ることがあります。しかし、その報告例は多くありません。胎児水腫は、そのものが危険ではありますが、関連疾患によるリスクが懸念されます。よって、自然に胎児水腫が治った場合でも、染色体異常や心臓の奇形といった原因となっていた関連疾患まで治ることはありません。

胎児胸水について

胎児のイメージ画像

胎児の全身でむくみが見られるものが胎児水腫ですが、胸の部分に液体が溜まっている状態を胎児胸水といいます。先天性乳び胸といわれるもので、リンパ液が肺の外側に漏れ出すことで発症します。

その頻度は、およそ1万に1です。胎児胸水は自然に改善されるケースもありますが、そのまま悪化していくことも珍しくありません。この場合、心臓が圧迫され続けることで胎児水腫に至ったり、肺の発育を阻害したりする恐れがあります。

胎児胸水だとわかった際は、胸水が羊水膣内へ排液されるようにカテーテルを挿入します。排液されれば、やがて肺はふくらみ、心臓への圧迫もなくなることから大きくなります。その結果、胎児水腫に至るリスクの回避が見込めるのです。

【まとめ】医師との相談で適切な治療方法を探るのが重要

医師と胎児の超音波写真を見る女性の手

胎児水腫は、赤ちゃんが極めて危険な状態にあることを意味します。考えうるリスクを踏まえたうえで、できる予防策はあらかじめ講じておくことが必要です。

もし胎児水腫になったのであれば、医師と相談したうえで検査を行い、適切な治療方法を探ることが重要です。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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