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女性特有の疾病は複数ありますが、中でも女性の約4人に1人が罹患すると言われているのが子宮筋腫です。
ほとんどは良性の腫瘍で、適切な治療を受ければ完治しますが、人によって症状の度合いは異なります。
実際に子宮筋腫にかかった、あるいは罹患の疑いがある場合に正しい行動を取れるよう、基本的な知識を得ておきましょう。
本記事では、子宮筋腫の概要や主な症状、種類、診断法法、治療方法についてわかりやすく解説します。
子宮筋腫とは?
子宮は、内側から子宮内膜、子宮筋層、漿膜(しょうまく)の3層で構成されています。
このうち、真ん中の子宮筋層に発生する良性の腫瘍が子宮筋腫です。
子宮筋腫は女性ホルモンが分泌している20~40代に発生・発育しやすい傾向にあり、閉経後は筋腫は縮小します。
筋腫は複数発生するケースが多いですが、数や大きさはさまざまです。
一般的に、腫瘍のサイズと症状の度合いは比例しているため、女性ホルモンの分泌量が多い20~40代は症状が強く出やすく、逆に閉経後は症状も収まってきます。
ただし、症状には個人差があり、ほぼ無症状で健康診断で偶然発見されることもあれば、日常生活に支障を来すほどの症状に悩まされる方もいます。
子宮筋腫の発生率
30歳以上の女性における子宮筋腫の発生率は、大小含めると約2~3割と言われています。[注1]
前述の通り、腫瘍が小さいうちは症状が出にくいため、発生当初は気付かれないケースも少なくありませんが、決してめずらしい腫瘍ではありませんので、定期的に検査を受けて早期発見・早期治療を目指すのがベストです。
[注1]公益社団法人 日本産科婦人科学会「子宮筋腫」
www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=8
子宮筋腫の検査・治療はどの病院で受けられる?
子宮筋腫の検査や治療は、総合病院や大学病院の婦人科のほか、レディースクリニックで受けられます。
総合病院や大学病院はがん診療連携拠点病院に指定されているケースが多く、仮に腫瘍が悪性(がん)であっても、入院・手術を含む治療を引き続き受けられるところが利点です。
ただし、カウンセリングや医師の指名には対応していない場合が多いほか、受診には紹介状が必要になることもあります。
一方のレディースクリニックは、女性の専門医が在籍しているところが多く、子宮筋腫について不安なこと、疑問に思うことを相談しやすいのがメリットです。
また、妊娠中に子宮筋腫が見つかった場合、出産を前提とした治療やサポートを受けることもできます。
専門的な検査(MRIなど)は他院に委託しなければならないこともありますが、事前カウンセリングも行っているクリニックが多く、納得した上で通院することが可能です。
子宮筋腫の症状
子宮筋腫の症状は、腫瘍が発生した部位によって異なります。
子宮筋腫の種類について詳しくは後述しますが、一般的な症状は以下のようなものがあります。
- ・過多月経
- ・過長月経
- ・月経痛
- ・便秘・頻尿
- ・不妊
過多月経
過多月経は1回あたりの生理期間の出血量が150ml以上あることです。
子宮筋腫が子宮内に突出すると、内腔が変形してしまい、子宮内膜の表面積が増えます。
そのぶん、子宮内膜が剥がれ落ちる量も多くなるため、出血量も増加すると考えられています。
過多月経になると貧血気味になるため、立ちくらみやめまい、動悸、息切れ、だるさなどを感じることもあります。
出血量が通常に比べて多いかどうか判断するのは難しいですが、日中でも夜用のナプキンを使う日が3日以上ある場合や、普通のナプキンでは1時間もたない場合、経血にレバー状の大きな塊が混じっている場合などは、過多月経の可能性があります。
過長月経
過長月経とは、生理期間が8日以上続く状態のことです。
生理期間には個人差がありますが、正常な期間は3日~7日とされており、それ以上生理が続く場合は過長月経とみなされます。
子宮筋腫になると、子宮内膜の排出がスムーズに行かなくなり、出血が長引きやすいと言われています。
月経痛
子宮筋腫ができると、子宮の収縮が強くなり、月経痛がひどくなる傾向にあります。
月経痛そのものは、正常な状態でも起こり得る症状なので、痛みがあるからといって直ちに子宮筋腫があると考えるのは早計ですが、痛みがひどい場合は病院を受診することをおすすめします。
不妊
子宮筋腫が発生した部位によっては、受精卵の着床が妨げられたり、卵管の通過に障害が発生したりして、不妊の原因になる可能性があります。
また、健常な場合に比べると流産や早産のリスクが高くなるとも言われています。
頻尿・便秘
子宮の前には膀胱があるため、子宮筋腫が前方に発育した場合、腫瘍が膀胱を圧迫して頻尿になることがあります。
一方、子宮の後ろには大腸があるため、筋腫が後方に発育した場合は大腸が圧迫されて便秘がちになります。
子宮筋腫の種類
子宮筋腫の種類は、発生した場所によって大きく4種類に分類されます。
筋層内筋腫
子宮壁を構成する平滑筋に発生する子宮筋腫です。
最も発生頻度の高い子宮筋腫で、小さいうちはほとんど症状が出ませんが、大きく発育すると過多月経や不妊などの原因となります。
漿膜下(しょうまくか)筋腫
子宮壁の最も外側にある漿膜に発生する子宮筋腫です。
外に向かって発育するため、筋腫が子宮から突出してしまう場合もあります。
他の種類でよく見られる過多月経や貧血などの症状が出にくいため、筋腫ができても気付きにくい傾向にあります。
ただ、筋腫が大きく発育すると周辺の臓器を圧迫するため、頻尿や便秘になることもあります。
粘膜下筋腫
子宮内膜の粘膜の下に発生する子宮筋腫です。
腫瘍が小さいうちから不正出血や過多月経、貧血などの症状が出やすいところが特徴です。
また、受精卵の着床を妨げるケースが多く、不妊につながりやすいタイプとも言われています。
頸部筋腫
子宮の膣側に発生する子宮筋腫です。
発育すると尿路の一部をふさいだり、膣の中に突出したりすることがあり、排尿障害や尿路感染症のリスクが高くなります。
また、性交時に痛みを感じることもあります。
子宮筋腫の診断方法
子宮筋腫を診断する方法は大きく分けて4つあります。
問診・内診
現時点の自覚症状や、妊娠歴の有無、生理期間、経血量などを確認した上で、内診を行う方法です。
子宮筋腫がある程度の大きさまで発育していれば、内診で発見することができます。
超音波検査
プロープと呼ばれる細い管を膣内に入れ、超音波をあてて子宮内を調べる方法です。
超音波が子宮や卵巣に反射した画像をモニターで確認し、腫瘍の有無や場所を検査します。
内診ではわからないような小さな筋腫も見つけられるほか、腫瘍の大きさや数、位置も把握できます。
MRI検査
悪性腫瘍(がん)との区別が難しい場合や、手術が必要と判断された場合に行われる検査です。
MRI検査を実施すると、石灰化した筋腫や、多発筋腫など、超音波では判断しにくい筋腫もきちんと診断することができます。
子宮鏡検査
子宮の中に、胃カメラよりも細いカメラを挿入して内腔の状態を確認する方法です。
粘膜下筋腫の有無や、筋腫の突出状態などを調べる際に行われます。
子宮筋腫の治療方法
子宮筋腫は必ずしも治療が必要な腫瘍ではなく、ほとんど自覚症状がなく、かつこぶし大サイズ以下であれば、定期的な検診を受けながらの経過観察で済みます。
ただし、サイズが大きいものや、増大が著しいもの、日常生活に支障を来す症状がある場合などは、医療機関で適切な治療を行います。
子宮筋腫の治療方法には、薬物療法と手術療法の2種類があります。
薬物療法
薬物療法には、偽閉経療法と対症療法の2種類があります。
偽閉経療法は薬剤によって卵巣ホルモンの産生を抑え、筋腫を縮小させる方法です。
閉経が近い場合や、重篤な合併症のために手術を回避したい場合などに行われます。
一方の対症療法は、子宮筋腫による過多月経や過長月経、月経痛などの諸症状を緩和するための治療法で、症状に応じて鉄材の処方や非ステロイド性抗炎症薬の投与、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤の投与などを行います。
また、子宮内に黄体ホルモンを持続的に放出する子宮内黄体ホルモン放出システムと呼ばれる施術を実施することもあります。
手術療法
子宮筋腫によって日常生活に大きな支障を来しており、かつ患者さんが希望する場合は、筋腫を取り除く外科手術を行います。
子宮筋腫の主な手術には以下のようなものがあります。
- ・子宮全摘術
- ・子宮筋腫核出術
- ・子宮鏡下子宮筋腫摘出術
- ・子宮鏡下子宮内膜焼灼術
- ・子宮動脈塞栓術
子宮全摘術
開腹手術や腹腔鏡手術などで子宮を全摘する手術方法です。
妊娠の希望・予定がなく、子宮温存の必要がない場合は選択肢のひとつになります。
子宮筋腫核出術
開腹手術または腹腔鏡手術で子宮筋腫の部分のみをくり抜く方法です。
子宮は残るので、術後も妊娠可能ですが、そのぶん子宮筋腫が再発するリスクもあります。
子宮鏡下子宮筋腫摘出術
特別な液体を子宮内に満たし、子宮内を膨らませた状態で子宮鏡を挿入して腫瘍を切開・切除する方法です。
子宮鏡は膣から子宮頸管を経由して挿入するので、切開を伴わないところが特徴です。
子宮鏡下子宮内膜焼灼術
マイクロ波を使って子宮内膜を壊死させる方法です。
子宮筋腫そのものを治療する手術ではないので、筋腫の縮小は期待できませんが、過多月経などの症状を緩和させることができます。
ただし、妊娠が不可能になるので、子どもを望む方には適しません。
子宮動脈塞栓術
鼠径部から血管内に挿入したカテーテルを通して血管塞栓物質を東予市、血流を遮断して筋腫を縮小させる方法です。
子宮筋腫の諸症状の緩和に効果的ですが、治療後に疼痛や発熱などの合併症を引き起こす可能性があります。
また、妊娠機能が低下するリスクもあると言われています。
【まとめ】子宮筋腫は症状に応じて適切に治療することが大切
子宮筋腫は良性の腫瘍なので、悪性腫瘍に比べると直ちに命に関わる疾患ではありません。
無症状かつ腫瘍のサイズが小さければ経過観察で治療が不要なケースもありますが、腫瘍が大きい場合や、過多月経・月経痛などで日常生活に支障を来す場合は、医療機関で適切な治療を受ける必要があります。
日常生活で気になる症状がある場合は、まず医療機関を受診し、子宮筋腫の検査を受けてみることをおすすめします。