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妊活を続けているのに、なかなか妊娠できないとお悩みの方のなかには、体外受精を検討したいと考えている方も多いのではないでしょうか。
体外受精は、卵巣から卵子を採取し、体外で精子と受精させて受精卵を培養、その後子宮に戻して着床を目指すという治療方法です。
1978年に世界ではじめておこなわれた体外受精は、現在多くの方が利用し、日本では年間約6万人の赤ちゃんが体外受精によって誕生しています。
この記事では、体外受精を受ける夫婦の不妊原因と、体外受精の流れ、副作用として多い卵巣過剰刺激症候群について詳しくご紹介します。
不妊から体外受精を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
体外受精を受ける理由(不妊原因)とは?
体外受精は、不妊治療や外科的治療をおこなっても妊娠が困難な方や、加齢により卵巣機能が低下している方などに対して用いられます。
まずは、体外受精を受ける夫婦の不妊の原因を詳しくご紹介します。
卵管性不妊症
女性の不妊原因のなかで最も多いとされているのが、卵管性不妊症です。
鉛筆の芯ほどの細さである卵管は、炎症が起こることで内腔が狭くなったり、詰まったりすることがあります。
炎症が起こる原因として以下のような原因が考えられます。
- クラミジアなどの性感染症
- 子宮内膜症による癒着
近年増えている卵管への炎症の原因は、クラミジアに感染したことによる卵管閉塞です。
クラミジアに感染すると女性は無症状のことが多く、感染を知らずに治療を行わないでいると、クラミジア感染は子宮頚管から子宮、卵管へと広がり、卵管閉塞の原因となります。
子宮内膜症は子宮を覆っている子宮膜が、子宮外の場所に根付いてしまう病気です。子宮内膜が卵管に癒着すると、卵管が詰まる原因となります。
子宮内膜症
卵管以外の場所での子宮内膜の癒着も、不妊の原因となります。
通常、子宮の内側から剥がれ落ちた子宮内膜組織は、月経の際に腟から外へ流れていきますが、子宮以外の卵巣や腹膜などで増殖した子宮内膜組織は、腹腔内にとどまって炎症や癒着の原因となります。
子宮内膜症は子宮と直腸の間や卵巣内に発生し、臓器同士を癒着させてしまいます。骨盤内の、妊娠に重要な役割を担う骨盤臓器どうしが癒着することにより、不妊の原因となります。
子宮内膜症によって骨盤内に水が貯まると、卵胞の発育障害、卵の質の低下が起こり、受精率、妊娠率がともに低下します。
さらに、チョコレート嚢胞と呼ばれる卵巣内に発育した子宮内膜症は、卵巣機能を低下させると言われています。
免疫性不妊症
女性の体内には、精子と結びついて運動性や受精能力を損なう抗精子抗体と呼ばれる物質ができていることがあります。
さらに、卵の表面の膜と結びつくことで発育を障害する抗体や、男性の体内にある精子と結びつき、その働きを障害する抗体などがあります。
それらの抗体が不妊に関係している場合、免疫性不妊となり、免疫性不妊は不妊の5~10%に関わっているとされています。
機能性不妊
機能性不妊とは、不妊の原因がわからない状態のことを言い、原因不明不妊とも呼ばれます。
不妊の原因を探る検査は、血液検査でのホルモン量の測定、超音波検査での卵巣や子宮の観察などさまざまな検査がありますが、これらの検査ではっきりした原因がわからない場合は機能性不妊となります。
機能性不妊の場合、誘発剤を使用したタイミング指導や人工授精を行っても妊娠に至らないケースでは、次のステップとして体外受精を行います。
男性不妊症
男性不妊症とは、不妊の原因が男性側に存在するもので、不妊症に悩む夫婦の不妊原因の約半数は男性側にあるとも言われています。
男性不妊症の原因はいくつかあり、精子をうまくつくれない造精機能障害、勃起や射精がうまくできない性機能障害、精子の通り道に問題がある精路通過障害などがあります。
体外受精治療の流れ
体外受精は、患者さんによって年齢や卵巣機能が異なることから、以下のステップとは流れが変わってくるケースもありますが、代表的な治療として、ここでは体外受精の流れをご紹介します。
卵巣刺激
妊娠の確率を上げるために、まずは卵巣刺激からスタートします。より多くの卵子を成熟させた状態で採卵するために、ホルモン薬によって排卵をコントロールします。
以下は、卵巣刺激の方法と特徴です。
クロミッド法 自然周期法 |
FSN/hMG+アンダゴニスト法 クロミッド+FSN/hMG+アンダゴニスト法 |
ロング法 ショート法 |
|
費用負担 | 軽い | やや重い | 重い |
採卵できる卵の数 | 少なめ | やや少なめ | 多め |
副作用 | 弱い | やや強い | 強め |
自然周期法は排卵誘発剤を使用しないので、副作用が少なく、より自然に近い状態での体外受精を希望される方が選択されます。
クロミッド法は内服薬のみで卵巣を刺激する方法で、自然周期法にくらべて排卵数はやや多くなりますが、妊娠率が高くなるとは言えません。
内服薬に加えてアンダゴニストという注射薬を用いて行う方法は、連日注射を打つ必要があるため副作用が強いですが、その分妊娠率も高くなります。
ショート法、ロング法は一度に採卵できる卵子の数は多いという一方で、身体的な負担が大きいので、年齢的に実施できない場合もあります。
採卵・採精
排卵日の直前に、成熟した卵子を体外に取り出します。採卵時は痛みを伴うので、静脈麻酔や局所麻酔をして行うのが一般的です。
経腟超音波ガイド下に採卵専用の細い針を用いて、卵巣内の卵胞液を吸引し、同時に卵子を採取します。
採卵すると同時に、採精も行います。採卵当日に採精室で採取するか、当日の朝自宅で採取した精液を持参します。
体外受精
採取された精液から良好運動精子を回収し、卵子と受精させます。受精には以下の3つの方法が用いられます。
- 体外受精
- 顕微授精
- スピリット法
体外受精は良好運動精子を回収後、卵子の入っているディッシュに精子を振りかけることで、精子が自ら卵子に侵入し、自然に受精するのを待つ方法です。
顕微授精は精子を細いガラス針のなかに1つ吸い取り、卵子に穿刺することで、卵子細胞室の中に精子を注入する方法です。
スピリット法は複数の卵子が採取できている場合に、体外受精と顕微授精の両方を行う方法です。
胚培養
受精卵は細胞分裂を開始すると胚と呼ばれます。胚は最大7日間、徹底的に管理された最適な環境で培養されます。
インキュベーターと呼ばれる温度やガス濃度がコントロールされた、体内と似た環境が作れる機械の中で培養がおこなわれます。
胚移植・黄体ホルモン補充
胚移植用のカテーテルにて、腟から子宮内に胚を戻します。
胚移植時にはほとんど痛みは感じないので、麻酔は行われません。胚移植が完了したら、院内でしばらく休んでから帰宅となります。
当日は、激しい運動を避ける以外は、通常通り生活できます。
胚移植後は、着床率を高めるために数回にわたって黄体補充療法が行われます。
胚移植から2週間ほどで、尿検査によって妊娠を判定します。このとき、自分自身で判断せずにかならず体外受精を受けた医療機関で判定をしてもらうようにしましょう。
副作用として多い卵巣過剰刺激症候群とは
体外受精を行う際に、一度に複数の卵子を採取するために使用する排卵誘発剤は、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)という副作用を起こす可能性があります。
排卵誘発剤での卵巣刺激によって卵巣が腫れ、以下のような症状が起こる場合があります。
- お腹が張る
- 尿量の減少
- 急激に体重が増加する
- 腹痛
- 下痢
- 喉の渇き
排卵誘発剤によって、卵巣内の卵胞が一度に成長すると、卵巣が腫れて表面の血管から水分が腹腔内に露出してしまうことがあります。
水分が露出すると腹水となることで血液が濃縮されて、尿量が減少したり、お腹が張ったりする症状が起こります。
排卵誘発剤に敏感に反応してしまう方が発症しやすいといわれていて、35歳以下の方や痩せている方は注意が必要です。
卵巣過剰刺激症候群と診断を受けたら、症状の度合いによって自宅安静から入院となる場合までさまざまで、卵巣過剰刺激症候群を伴って妊娠した場合は重症化されることが予想されるので、一旦すべての胚を凍結して胚移植はキャンセルすることになります。
まとめ
体外受精を受ける夫婦の不妊原因と、体外受精の流れ、副作用として多い卵巣過剰刺激症候群について詳しくご紹介しましたが、参考になりましたか?
体外受精を受ける方の不妊の原因で最も多いのは、卵管性不妊症とされています。
ほかにもさまざまな原因があり、妊活を続けているにもかかわらず妊娠にいたらなかった、というご夫婦は多く、体外受精を検討されている方も多いことでしょう。
日本では不妊治療の主流として体外受精が認知されていて、1年間に45万周期もの治療が行われ、その件数は世界第1位となっています。
体外受精を検討されている方は、ぜひこの記事を参考になさってください。