InstagramInstagram

人工授精妊娠しない原因とは?人工授精しないで体外受精でも失敗の原因

人工授精で妊娠しない4つの主な原因

妊娠の可能性が十分あるにもかかわらず人工授精を何度か行っても妊娠しない、明らかな不妊原因が見つからない場合は、原因不明不妊と診断される場合が多いです。

ここでは、原因不明不妊と診断されたカップルが妊娠しない原因として考えられるものをいくつかご紹介します。

ピックアップ障害

ピックアップ障害とは、なんらかの原因で排卵された卵子が卵管采に吸い上げられない状態のことです。

本来、排卵された卵子は卵管の先にある卵管采という器官に吸い上げられ卵管内で精子と受精しますが、この機能がうまく機能していないと卵子は精子と出会うことすらできず、妊娠にいたらないことがあります。ピックアップ障害の原因は、はっきりと明確にわかっているわけではありません。しかしピックアップ障害は、以下のような理由で起こっていることが考えられます。

  • 卵管や卵管采がほかの臓器と癒着している
  • 子宮内膜症
  • 虫垂炎などで骨盤内を手術した経験がある
  • クラミジアなどの感染症
  • 年齢を重ねたことによる卵管采の機能低下
  • 卵管采の形

ピックアップ障害は、卵巣の機能や子宮などの検査をしても異常が見つからない場合に疑われますが、原因がはっきりしないピックアップ障害は病院で検査する方法がなく、治療法も存在しません。

受精障害

受精障害は、精子が十分いるにもかかわらず受精が起こらない状態のことで、卵管や頸管が狭くなったり詰まったりして卵子や精子が通過しにくくなるために起こります。

原因としては、卵子や精子、その両方などさまざまなケースが考えられます。以下は、受精障害が起こる原因の例です。

  • 卵子の殻が固いまたは厚い
  • 精子が卵子の殻を通り越した際に起こるはずの卵子の活性化が起こらない
  • 頸管や頸管粘液の状態が精子の通過に適していない
  • 男女のどちらかが抗精子抗体を保持している
  • 精子に機能的な問題がある

精液の検査で正常と判断された場合でも、精子の受精障害が5%程度起こる可能性もあります。

受精卵が成長しない

無事卵子と精子が出会い受精したとしても、途中で卵子の分割が止まってしまうと受精卵が成長しないため、妊娠にはいたりません。通常、受精すると卵細胞の分割がはじまり、受精3日後には8個ほどの細胞にわかれた分割胚になり、5日後くらいには胚盤胞となります。

卵子が分割し成長するスピードには個体差があるため、成長が早い卵子もあれば、遅い卵子もあります。中には途中で成長がストップしてしまう卵子もあり、残念ながら妊娠にはいたらないケースも。

途中で卵子の成長がストップしてしまうのには、以下のような原因が考えられます。

  • 卵胞の分割を担っている機能性タンパク質が十分な量供給されていない
  • 精子に卵子を活性化させる能力がない

多くの場合は、卵子が育つ環境の中で十分な栄養が供給されていないことによるものです。精子が原因で卵子の成長がストップしてしまうケースもありますが、確率的にはかなり低くなります。

着床障害

着床障害は、子宮内膜が着床に適した状態になっていないことで起こる不妊原因です。

通常、卵子と精子が卵管で出会い受精した場合、受精卵は細胞分裂を繰り返しながら卵管を通過して子宮内膜へ着床します。

しかし着床までの工程は非常に複雑なため、なんらかの原因によって受精卵が子宮に着床できないケースも多く、その原因を突き止めることもとても難しいです。

着床障害が起こる原因としては、現在のところ以下のようなものが考えられます。

  • 受精卵の染色体異常
  • 子宮内膜症や子宮筋腫
  • 子宮内膜が薄い
  • 子宮内膜癒着

子宮内膜はいつでも受精卵を着床させる準備がされているわけではなく、準備にかかる時間も人それぞれ違ってきます。そのため、排卵のタイミングで人工授精を行っても、着床の準備が完了しておらず妊娠にいたらないケースもあるのです。

男性側の原因

人工授精でで妊娠できない原因は女性だけではなく男性側にもあります。どういった原因があるのかご紹介します。

造精機能障害

精子の数が少ない、または無い、あるは精子の運動性などの性状が悪いと人工授精でも妊娠しづらくなります。造精機能障害とは、精子を作る機能に障害があり、精子濃度や運動率といった精子の機能が弱まってしまう状態のことです。

原因としては半分が不明となっており、残りは精索静脈瘤が約36%でホルモン低下によるものが1.2%と言われています。精索静脈瘤とホルモン低下は治療が可能です。

精子濃度が1600万/ml未満の状態が乏精子症、精液検査で精子が見つからない状態が無精子症で、精子運動率が42%未満の状態が精子無力症です。

加齢による影響

女性は35歳を過ぎると卵子の質が落ちてしまいますが、男性も年齢を重ねると精子の質が落ちることがわかっています。女性ほど急激ではないものの35歳を過ぎると徐々に精子の質が落ちてくるため高齢の男性はパートナーを妊娠させられる確率が下がります。

人工授精は何回目で妊娠できるのか

日本産婦人科学会が発表している登録施設による生殖補助医療2019年の結果から見てみますと、体外受精が行われたの数が88,074件です。出生児のの数が2,977になります。ただし年齢によっても変わってくるので年齢別に見てみましょう。

年齢 妊娠率/総治療
30歳 27.5%
35歳 25.2%
37歳 23.4%
38歳 20.8%
40歳 15.6%
42歳 9.9%
45歳 3.3%

日本産婦人科学会発表ARTデータブック2019年を参考に作成)

30歳で27.5%、35歳だと25.2%なので約4回で妊娠できる可能性が高く、年齢が上がるごとに回数は増えていきます。38歳になると20.8%と5回になり、40歳だと15.6%なので6回と回数は増えます。42歳以上になると10回でようやく妊娠できるかもというくらい確率が下がっていきます。そのためタイミング療法から人工授精に移るのも年齢が若い方が妊娠しやすくなります。

人工授精で成功率を上げるには

不妊に悩む男女

受精卵を凍結しておく

人工授精を続けると卵子の質は落ちてしまいますし、数も減っていきます。もし妊娠を望むならば早い段階で受精卵を凍結しておくのがいいでしょう。

マイナス196℃で凍結された受精卵は、それをお迎えできる日まで品質を落とすことなく静かに眠って待っていてくれます。若い頃に受精させておいた受精卵を凍結保存しておけば妊娠する確率は高くなるでしょう。

人工授精の2〜3日前に性行為をしておく

一般的に、女性の体内で精子の受精能力が持続するのは24時間から48時間程度だといわれています。その一方で卵子が受精できるのは排卵後12時間程度だとされており、男女でタイミングを合わせるのはなかなか難しいものです。

人工授精の2〜3日前に性行為を行っておくともっとも妊娠率が高いという報告もありますので、排卵日周辺で数回程度性行為を行っておくことも、妊娠の確率を上げる方法として有効であるといえます。

治療の際に精子をたくさん出そうとして禁欲する男性もいますが、7日間以上射精していないと精子の質が極端に低下するのでおすすめできません。ただし、人工授精前後の性行為についてはかかっている病院によって方針が違いますので、主治医に聞いてみるとよいでしょう。

妊娠しやすい体づくりをする

人工授精で妊娠しないときは、妊娠しやすい体になるように体調を整えておくことが大切です。女性が妊娠しやすい体づくりをするのはもちろんですが、人工授精では元気のよい精子を得ることが非常に重要ですので、男性も妊娠しやすい体になるように2人で協力して治療に臨みましょう。

以下は、女性が妊娠しやすい体になるために大切なことです。

  • ストレスを溜めない
  • 適度な運動
  • 体を冷やさない
  • 栄養バランスのとれた食事

次は、男性の精子を元気にするために大切なことです。

  • ストレスを溜めない
  • たっぷり睡眠をとる
  • 深酒しない

男女ともに、ストレスを溜めないことと栄養バランスのとれた食事をすることが妊娠しやすい体づくりにつながります。

不妊治療は、2人で一緒に取り組まなければうまくいきません。パートナーと日頃の生活習慣についてよく話し合うようにしましょう。

パートナーと足並みを揃える

人工授精は、男女の温度差が生まれやすい治療であるため、お互いへの不満を募らせてしまうことがあります。人工授精に限らず、妊活はカップルが2人で行うものです。具体的にどうするのか、どうしたいのかをパートナーと話し合い、足並みを揃えることが重要です。

男女で差があるのは当たり前だという意識を忘れずに、差を認め合ったうえでどうするべきかを素直に話し合える関係を築けるように、普段から積極的にコミュニケーションを取りましょう。

人工授精で妊娠できなかったら

妊娠のイメージ画像

人工授精で妊娠しない原因を突き止めるのはなかなか難しいケースも多く、そのような場合は原因がはっきりしているものと比べると妊娠するまでに時間がかかります。なかなか妊娠せずに焦ってしまうカップルも多いですが、可愛い赤ちゃんを授かれるようにこれからご紹介する5つの対処法を行ってみましょう。

体外受精、顕微授精に移行する

男女ともに35歳を超えているなど年齢が高い場合、不妊治療は時間との勝負です。一般的に人工授精は1回目で妊娠するカップルがもっとも多く、2回目3回目と回数を重ねるごとに徐々に妊娠率が低下します。

体外受精や顕微授精は、ピックアップ障害や受精障害などが原因の場合に有効な方法です。そのため、不妊原因がわからない場合や人工授精で治療が行き詰まったと感じているカップルにおすすめです。

6回程度治療を行って結果が出ない場合は、体外受精や顕微授精への移行を検討した方がよいでしょう。

リフレッシュ期間を設ける

人工授精で赤ちゃんを授かったカップルの中には、1度不妊治療から離れてリフレッシュ期間を設け、再び治療を行ってすぐに妊娠したケースが多くあります。不妊治療には、治療の行き詰まりや家族からのプレッシャー、パートナーとの関係などさまざまなストレスがつきものです。

不妊でお悩みの方は、治療に費やす時間とエネルギーが非常に多いために自分たちの人生を楽しむことが疎かになりがちです。治療がつらくなってしまったときは、パートナーと話し合って一定期間治療から離れてみるのもよいでしょう。

まとめ

人工授精で妊娠しない原因と対処法をご紹介しました。人工授精は、男性側に軽度の不妊原因がある場合や不妊原因が明らかでない場合に、タイミング法からステップアップして行われることが多い治療法です。

ステップアップするに従い妊活の期間は長くなるため、身体的にも精神的にも徐々に負担が大きくなってきます。とくに女性への負担は大きく、年齢による焦りなども加わって、よりストレスが溜まりやすくさらに妊娠しにくくなってしまうケースもあります。

男性側もそういった女性を支えていかなければならないことや、なかなか妊娠しないことへの不安などから、パートナーとの関係性が悪くなってしまう方も。人工授精でなかなか赤ちゃんを授からないカップルは、不妊治療は2人で一緒に行うものであることを忘れずに、今回ご紹介した対処法を試してみてくださいね。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

関連記事