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胚盤胞とは?|グレードによる妊娠率の違いを解説

近年の晩婚化に伴い、妊娠を望むカップルにおいて不妊症に悩む人が増加している傾向にあります。

不妊症の治療方法には体外受精がありますが、治療の中では、よく「胚盤胞」や「グレード」といった言葉を耳にするのではないでしょうか?

この記事では、胚盤胞に関する説明から始まり、グレードが体外受精におけるどのような指標であるのか、グレードと妊娠率の関係性についてご説明していきます。ぜひ最後までご覧ください。

胚盤胞とは?

疑問点のイメージ画像
「胚盤胞(はいばんほう)」とは精子卵子が受精し、受精卵となった後に細胞分裂を繰り返し、受精卵が子宮に着床できるような状態へと変化したものです。

胚盤胞へと成長していくまでの過程をより詳しく見ていくと、精子と卵子の受精によって受精卵が生まれ、受精卵の中では細胞分裂が行われるようになります。

始めは丸々とした1つの受精卵ですが、受精後1日目、1回目の細胞分裂によって2つに分割され、2回目には分割された2つの細胞のそれぞれが更に分割され4つになり(受精後2日目)、3回目には8つに分割される(受精後3日目)といったように細胞分裂を繰り返すことで、その数を倍々で増やしていきます。

細胞分裂によって分割された細胞は、その後互いにくっつき合い、受精後4日目に細胞が8~16に分割された「桑実胚(そうじつはい)」、受精5日目には「胚盤胞」へと変化していきます。また、細胞が8分割未満である受精卵を「初期胚(しょきはい)」と呼びます。

受精卵が胚盤胞まで成長すると、「外細胞塊(がいさいぼうかい)」という受精卵を包み込んでいる層と、外細胞塊に包み込まれた中心部分である「内細胞塊(ないさいぼうかい)」という細胞群に分かれ、内部は液体で満たされるようになります。

そして、外細胞塊は胎盤、内細胞塊は胎芽(胎児と呼ばれる前の段階にある赤ちゃんのことであり、赤ちゃんとなるモトのようなものです)を形成していきます。

受精卵から始まり、初期胚、桑実胚、胚盤胞へと成長していきますが、自然妊娠である場合には、これら一連の成長は女性のおなかの中で行われていきます。

一方で、不妊症治療のための体外受精の場合には、精子と卵子を受精させ受精卵とした後に、女性のからだへ受精卵を戻す(子宮へ移植する)という工程を踏むこととなります。

移植方法は受精卵を子宮へ移植する際の、受精卵の状態により「初期胚移植」、「桑実胚移植」、「胚盤胞移植」とがあります。

受精卵から胚盤胞までのグレード

グレーディング
これまでの受精卵の移植手術は初期胚移植が主流でしたが、初期胚が子宮にあるというのは自然妊娠のケースと比較してみると不自然な状態となっていました。

自然妊娠の状態へと近づけるためには子宮内膜への着床に適した状態にある胚盤胞まで成長させた後に子宮内へ戻す方が自然な形と言えます。そして、現代では受精卵を胚盤胞まで培養する技術が発達し安全な培養が実現されるようになりました。

ここでは、「受精卵(初期胚)から胚盤胞まで」というように、さまざまな状態での子宮への移植が可能となる中で、どのような受精卵が着床しやすいのかを示すグレードに関して見ていきたいと思います。

初期胚のグレード

初期胚のグレードは「フラグメント」と呼ばれる、細胞分裂を繰り返す中で生じる細胞のかけらの有無と、「割球(かっきゅう)」と呼ばれる分割されたそれぞれの細胞の大きさのバランスに基づいてグレード1~5までが存在します。

以下の表が2つの指標とグレードの関係性です。

初期胚のグレード フラグメント 割球の大きさのバランス
良好胚 グレード1 なし 均等
グレード2 少し 均等
グレード3 なしまたは少し 不均等
不良胚 グレード4 半分程度 均等または不均等
グレード5 大部分 不均等

初期胚のグレードは数字が小さいほど着床への可能性が大きい胚(受精卵)であるということになります。

良好胚と不良胚の境界に関しては診察を受けている病院ごとに変わることもあるかと思いますが、多くの病院がグレード3を含めたそれ以上に良好な胚を移植の対象としています。

胚盤胞のグレード

一般的に、受精卵の多くは初期胚の時点で染色体異常によって着床まで至らないということや、着床したとしても流産するということが多いため、胚盤胞へと成長するというだけでもたくましい受精卵であると言え、着床の可能性も大きいです。

そのような胚盤胞のグレードは、初期胚のように状態の良い悪いだけの指標になっているわけではなく、発育の状態も加味したグレードが定められています。

先にどのようなグレードをつけられるのか一例を挙げておくと、「BL4AB」や「BL6CB」というふうにグレードがつけられます。初めの3文字の部分(BL〇)が胚盤胞の発育状態を表しており、数字の後に続く1文字目が内細胞塊、2文字目が外細胞塊の細胞数に基づいたグレードになっています。

グレードという評価が設けられている一方で、妊娠に至るまでには受精卵の状態だけでなく、子宮やホルモンの状態も大きく影響してきます。そのため、良質な胚(受精卵)を移植しても着床しなかったというケースや、グレードの低い胚であったけれども妊娠することができたというケースも存在しています。

良い状態であることに越したことはないのですが、グレードという指標はあくまでも参考程度ということを念頭に置いて、それぞれに関して見ていきましょう

胚盤胞の発育状態

胚盤胞の発育状態は、BL1~BL6までの6段階で示されており、数字が大きいほど胚盤胞が成長しているということを表しています。

BL1であれば桑実胚から胚盤胞へと成長したばかりの状態であり、BL6であれば着床する準備の整った状態にあるということです。

各成長段階とグレードを照らし合わせたものが以下の表になります。

胚盤胞のグレード(発育状態) 胚盤胞の状態
成長速度が遅い BL1 内側に胞胚腔(ほうはいくう)という空間ができる
BL2 胚盤胞内の胞胚腔が半分ほどの空間を占める
BL3 胚盤胞内の胞胚腔が大きくなり全体にいきわたる
成長速度が速い BL4 胞胚腔が大きくなるとともに、透明帯が薄くなる
BL5 孵化が始まり、受精卵が透明帯を破り始める
BL6 孵化が終わり、受精卵が透明帯から完全に脱出する

桑実胚から胚盤胞へと成長をすることで、胞胚腔という液体で満たされた空間ができるようになります。この空間が徐々に広がっていくと同時に、細胞は外細胞塊(後の胎盤)と内細胞塊(後の赤ちゃん)という2つの細胞群に分かれていきます。

外細胞塊は受精卵を包み込むように存在していますが、さらにそれを包み込む薄い膜のようなもの(透明帯)があり、これの外へと出ていく段階がBL5、透明帯から脱出して着床の準備が整った状態がBL6となります。

受精から5日ほどのタイミングが胚盤胞へと成長しているタイミングですが、BL1の状態は成長が遅い状態であり、つまりは着床のための準備が十分には整っていないということです。そのような状態の胚盤胞を移植したとしても無事に着床する可能性は低いと言えます。

内細胞塊・外細胞塊の細胞数

BL3以上の胚盤胞になると内細胞塊と外細胞塊それぞれの細胞群への分化もはっきりとしてきます。胚の発育状態を示すグレード(BL〇)に続く1文字目は内細胞塊、2文字目は外細胞塊の評価を示しており、細胞数によってA~Cのグレードがつけられます。

細胞が十分に多い状態がA、細胞がやや少ない状態がB、細胞が非常に少ない状態がCとなっています。

着床・妊娠を考える場合にはAのグレードであることが最も望ましい状態であり、Cのグレードは細胞の数が少ないため、複数の受精卵を比較したうえでの移植となると優先順位は下がることとなります。

グレードと妊娠率の関係性

一定のラインを超えると成績がいいイメージ
最後に確認するのはグレードと妊娠率の関係性に関してです。

結論を述べると、「受精卵のグレードが高い方が妊娠率も高い傾向」にあります。体外受精に関する論文では、妊娠率はグレードが高いものでは約40%、グレードが低いものでは約20%という結果が示されています。

このように、グレードによる「妊娠率」には差が見られますが、グレードの違いによる流産や胎児異常となってしまう確率には差が見られなかったということ、グレードの違いによる妊娠後の出産率についても差が見られなかったということも十分に理解する必要があります。

グレードというのは、あくまでも胚移植を行う際にどの受精卵を優先的に移植するのかを定めるための目印のようなものであると思っていただければ幸いです。事実、グレードが高い場合でも妊娠に至れなったというケースや、グレードは低かったものの妊娠することができたというケースもあります。

受精卵の判定に一喜一憂してしまいそうですが、体外受精に希望を持つことを忘れずにいましょう。

まとめ

仲良く見つめあう男女
ここまで、胚盤胞に関して、受精卵が胚盤胞へと育つ中で移植の優先度の指標となる「グレード」、グレードと妊娠率の関係に関してご紹介してきましたが、ご理解いただけたでしょうか?

グレードによって妊娠率に差が生まれると知ると、どのようにすればグレードを高められるのだろう、と気になるのではないでしょうか?

答えはずばり、「卵子と精子の質を上げること」です。これらの内容に関しては以下のミネルバクリニックのコラムにてご紹介していますので、ぜひそちらの記事も読まれてみてください。

卵子の質を上げる方法|妊娠しない原因と年齢の関係を解説

東京の「ミネルバクリニック」は臨床遺伝専門医が在籍するNIPT実施施設であり、たくさんの妊婦さんの悩みや不安と真摯に向き合い、笑顔になれる出産に導いてきました。ミネルバクリニックでは、妊娠9週から受けられる赤ちゃんの健康診断である「NIPT」を業界最新の技術と業界随一の対象疾患の広さで行っております。遺伝のエキスパートである臨床遺伝専門医が出生前診断を提供しておりますので、是非、お気軽にご相談ください。妊娠初期からの出生前診断を受ける医療機関にお悩みの方は、知識・経験・実績とも「第三者から認証されている」臨床遺伝専門医が診療している「ミネルバクリニック」まで是非、ご相談ください。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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