体外受精の成功率は年齢を追うごとに低下します。30歳未満の成功率が40~45%に対し、40代前半では10~20%と半分を下回ります。そのため、体外受精を検討する際は早めの行動が大切です。
本記事では、体外受精の年代別成功率と、成功率を上げるポイント、体外受精の年齢制限について解説します。
体外受精の成功確率
体外受精の成功率を計る指標には、胚移植1回あたりの以下の数値を用いるのが一般的です。
【着床率】
子宮内膜に接着し侵入する割合
着床により妊娠成立と考える
【FHM率】
胎児の心拍が確認できた割合
臨床妊娠率ともいう
【分娩率】
胎児が母体から娩出された割合
なお、上記の成功率は体外受精の方法や医院によっても若干変動があります。ここでは、女性の年齢を元に、総合的な体外受精の成功率を年代別に解説します。
30歳未満の体外受精の成功率
女性の年齢が25~29歳までに体外受精を行ったときは40~45%以上と、もっとも高い成功率となります。
なお、1周期あたりの自然妊娠の確率も20代では25~30%と高くなっています。
30歳~34歳の体外受精の成功率
30歳~34歳で体外受精を行なったときの成功率は35~45%程度です。数値だけ見れば20代よりは低いものの、おおよそ3回に1回の確率で体外受精に成功しているものと考えられます。
なお、1周期あたりの自然妊娠の確率は25~30%程度です。
35歳~39歳の体外受精の成功率
35歳~39歳になると、体外受精の成功率は25~35%ほどと、20代と比較すると10~15%確率が下がります。なお、40代になると更に成功率が下がるため、30代後半は体外受精を検討する1つの目安としてよいでしょう。
なお、1周期あたりの自然妊娠の確率も約18%程度と減少傾向にあります。
40歳以上の体外受精の成功率
40歳以上では、年齢が上がるごとに体外受精の成功率は顕著に低下していきます。
40歳~44歳では約10~20%であるものの、45歳以上になると成功率は5%を下回ります。
また、1周期あたりの自然妊娠の確率も1~5%程度です。
40代になると卵子の数自体が減ってしまい、多くの場合、採取自体が困難となります。その影響もあり、成功確率も低下してしまいます。
体外受精を繰り返すと成功率に影響はあるか
なお、体外受精を繰り返しても成功率への影響はないと考えられています。ただし、5回以上体外受精を繰り返しても成果を得られないときは、女性側の子宮や卵子、男性側の精子に問題がある可能性も否めません。
体外受精を繰り返すときの女性側の注意点としては、排卵誘発剤により引き起こされる副作用の、卵巣過剰刺激症候群が挙げられます。重症例ではさまざまな合併症を引き起こすため、吐き気や、お腹の張り、体重の急激な増加、尿量の減少などが見られたときはすぐにかかりつけ医に連絡しましょう。
また、採卵時には出血及び感染症のリスクもあります。
体外受精は流産しやすいのか
全体的な自然妊娠の流産の確率は15%程度です。一方、体外受精で妊娠したときの流産の確率は20%程度と考えられています。
体外受精と多胎妊娠の可能性
従来の体外受精では妊娠の確率を上げるため、2個以上の胚を戻すことから、双子や三つ子などの多胎妊娠の可能性も高い状況でした。
しかし、現在では多胎妊娠のリスクを考慮し、原則1つの胚のみを子宮に戻す治療方法が取られています。
そのため、体外受精をしても多胎妊娠の確率が上がるわけではありません。
体外受精の成功確率を上げるためのポイント
体外受精の成功確率を上げるためには、良質な卵子や精子が必要です。そのため、女性・男性ともに生活習慣を正して健康に配慮しましょう。また、体外受精のような高度な不妊治療では、医院の選択も重要です。
バランスのよい食事をする
食べ物は体を作る土台です。妊娠に必要な栄養はバランスよく取るようにしましょう。
積極的に摂取したい栄養は、良質のたんぱく質とコレステロール、ビタミンD、鉄分、亜鉛、葉酸です。これらの栄養素は妊娠しやすい体を作ったり、胎児の成長を助けたりする役割があります。ビタミン、ミネラルなど他の栄養バランスも意識しながら、適切に摂取しましょう。
適正体重を維持する
肥満が原因で排卵が起こらない症状を「多嚢胞性卵巣」といいます。肥満の状態では妊娠中も妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などの障害が発生しやすく、さらに、帝王切開や術後の血栓症のリスクも上がります。
低体重の女性も痩せすぎであれば排卵が止まることがあり、妊娠しづらいこともあります。原因としては、母体の栄養状態が悪いときに妊娠すると生命維持が困難になるためと推測されています。
以上の理由から、まずはBMI18.5~25を基準に、適正体重を維持しましょう。
適度な運動で血行促進
軽く汗ばむ程度の適度な運動は、血行を促進し卵巣などの機能向上にも役立ちます。出産を無事に迎えるための体力作りや気分転換、ストレス発散にも有効です。ウォーキングであれば、週2~3回、1時間程度行うか、毎日30分行なってもよいでしょう。
なお、過度な運動はかえって妊娠を妨げる恐れがあるため注意しましょう。
体の冷えを防止する
冷えによる血行不良は卵巣機能にも悪影響がある可能性があります。
半身浴をしたり、カイロや湯たんぽを使ったりして、体を冷やさないようにしましょう。
ストレスは解消する
男女ともに、ストレスは妊娠の大敵です。運動や趣味など、健康的な方法で発散しましょう。
ストレス発散のためとはいえ、過度な飲酒や喫煙など人体に有害な方法は控えましょう。
禁煙する
妊娠前の喫煙や受動喫煙は卵子の老化につながると考えられています。妊娠を希望する場合、早めにタバコはやめるようにしましょう。
睡眠時間を確保する
良質な睡眠は、体と心、双方を回復する役割があります。ホルモンバランスも整うため、妊娠を意識する上でも大切です。
体外受精の専門性が高い医院を選ぶ
最後に、体外受精を成功させるためには、個人の努力だけでなく医院の協力が不可欠です。不妊治療に特化しているなど、専門性の高い医院を選びましょう。
体外受精の年齢制限
体外受精は男性に年齢制限はないものの、女性は43歳未満までしか保険が適用されません。とはいえ、43歳以上でも、実費で治療を受けることは可能です。
保険適用は43歳未満まで
2022年4月の法改正により、体外受精を含む不妊治療にも健康保険が適用されるようになりました。なお、年齢や回数の条件は以下のとおりです。[注1]
- ・40歳未満:1子ごとに通算6回まで。
- ・40歳以上43歳未満:1子ごとに通算3回まで。
[注1]厚生労働省:令和4年4月から、不妊治療が保険適用されます。www.mhlw.go.jp/content/000913267.pdf
43歳以上でも実費で治療はできる
なお、43歳以上であっても、実費で体外受精を受けることは可能です。しかし、成功率が低下するだけでなく、費用負担も高額になってしまいます。
そのため、妊娠を希望する際は治療の検討段階でも問題ないので、早めに医院に相談しましょう。
【まとめ】体外受精を希望するときは相談だけでも早めにしよう!
体外受精の成功率は年齢が上がるにつれ低下します。さらに、40代になると採卵自体が難しくなるため、物理的に処置が難しくなる恐れもあります。
そのため、体外受精での妊娠を希望する際は、予定段階でもよいので、早めに病院に相談することが大切です。また、病院も不妊治療の専門性が高い医院を選びましょう。