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産休取得の条件とは?育休との違いや雇用形態ごとのメリットについて解説

現代では働く女性が増加しており、結婚後や妊娠後も仕事を続けている方がほとんどです。

厚生労働省が発表した「令和2年版働く女性の実情」によると、令和2年の女性の労働力人口は3,044万人となっており、全体の44.3%を占めていることがわかります。

最近では、新型コロナウイルス感染症の流行により、経済的な不安を感じることも多いです。そのため、妊娠していても仕事を辞めずに産休や育休を取得して、共働きの状態を継続したいと思っている方も多いことでしょう。

ただ、産休というと正社員だけの特権というイメージも根強く、契約社員やパート、アルバイトでは取得できないと思っている方もいるようです。

結論から申し上げると、産休は雇用形態に関係なく取得することができます。

この記事では、産休取得の条件や育休との違い、雇用形態ごとのメリットについてご紹介します。今妊娠している方だけでなく、今後妊娠、出産を検討されている方もぜひ最後まで読んでみてください。

産休取得の条件とは

産休中のため自宅でくつろいでいる妊婦さん

妊娠や出産、育児と仕事を両立することは、働く女性にとって非常に難しいことであるとともに重要なことです。妊娠中や出産後はホルモンバランスや生活の変化により、体調が崩れやすく精神も不安定になりがちです。そのため、通常の状態と同じように働くことが困難な場合もあります。

そのようなライフスタイルの大きな変化の中、働く女性が安心して子どもを産み育てられるようにするための権利が「産休」や「育休」なのです。

では、産休を取得するためには、なんらかの条件をクリアしなければいけないのでしょうか。ここでは、産休取得の条件や育休との違いなどについてご紹介します。

労働基準法で定められている「産休」とは

「産休」と一口にいっても、「産前休業」と「産後休業」という2つの休暇を合わせたものであることをご存知ですか?

どちらも働く女性の体を守るために、労働基準法第65条によって定められている制度であり、出産予定日の6週間前(双子の場合は14週間前)から出産後の8週間後まで取得できます。

産前休業は、女性が自ら申請することで取得できますが、産後休業については取得が義務付けられており(医師が認めた場合は産後6週間)、事業者はその期間働かせてはいけないと決められています。

産休取得の条件

冒頭でもご紹介した通り、産休は正社員や派遣社員、パートやアルバイトなど雇用形態に関係なく取得可能です。労働基準法では、非正規雇用であっても産休や育休を取得できると定められています。

正規社員ではない場合の産休取得条件については、会社の上司でも知らない方もいるため、産休を取りたいと伝えた際に断られた場合は、きちんと確認してもらうようにしましょう。

また、産休の取得には勤務年数も関係ありません。働きはじめてすぐに妊娠した場合でも産休は取れますので安心してください。

産休の申請方法

産休を取得するためには、雇用されている事業者へ「産前産後休業届」を提出しなければいけません。

それと同時に、「健康保険・厚生年金産前産後休業取得者申出書」も提出する必要があります。この書類は、産休期間中の社会保険料を免除してもらうためのものです。

提出書類などは勤務先によってそれぞれ異なるため、担当者に相談し用意してもらいましょう。

産休中の給与について

勤務先にもよりますが、産休中は給与の支払い義務がないため、基本的に無給の状態になります。その代わり、加入している健康保険より、出産後に出産一時金として子ども1人につき42万円が支給されます。

さらに、社会保険(健康保険)の被保険者の方は、過去12か月の平均賃金の3分の2相当の給付金が受け取れるので、産休取得時に「出産手当金」の申請についても相談してみましょう。

ただし、出産手当金は被扶養者や国民健康保険の被保険者は受給できません。あくまでも勤務先の社会保険の被保険者であることが条件なので、その点に注意が必要です。

産休と育休の取得条件の違いとは

産休は雇用形態や勤務日数に関係なく、女性労働者でこれから出産を迎える方であれば取得可能です。しかし、育休を取得するためには以下の要件を満たす必要があります。

  • 同一事業者に過去1年間以上雇用されていること
  • 子どもが1歳の誕生日を迎えた後も引き続き雇用されることが見込まれる
  • 子どもが1歳6か月もしくは2歳を迎える前々日までに雇用契約がなくなることが明らかでないこと

上記の要件を満たしていない場合や、週の所定労働日数が2日以下の方や日々雇用の方は育休を取得できません。ただし、育休の取得については会社の規定によるところも大きいので、担当者に確認してみることをおすすめします。

また、産休は女性のみ取得可能ですが、育休は男性も取得可能です。2022年4月より、男性版産休との呼び声も高い「育児・介護休業法」の改正案が施行されますので、今後はさらに男性も育児に参加しやすくなるでしょう。

産休を取得する雇用形態ごとのメリット

カフェでゆっくりと過ごしている妊婦さん

産休は通常の休暇とは異なり、出産前の女性が赤ちゃんを迎える準備をし、産後は大仕事を終えた体をゆっくりと休め、育児に専念するために仕事を休業する制度です。

ただ、非正規雇用の方の中には産休を取得できることを知らない方も多く、退職してしまう方もいるようです。また、知っていても産休を取ったことによって仕事に復帰できないかもしれないという不安を抱えている方も。

産休は、働く女性の権利です。妊娠や出産、産休や育休の取得などを理由に不利益な取り扱いをすることは、男女雇用機会均等法第9条と育児・介護休業法第10条に違反することになるため、不安を感じる必要はありません。

ここでは、産休を取得する雇用形態ごとのメリットについてご紹介します。

正社員

まずは、正社員が産休を取得するメリットです。

  • キャリアを再スタートできる
  • 離婚や死別などで万が一シングルマザーになっても安心
  • 手当が支給される上に社会保険料が免除になる

一部の企業では、給与が満額支給されたり給与と手当の差額が支給されたりするようです。さらに、同じ職場へ復帰することでキャリアを再スタートできるのも、正社員が産休を取得するメリットといえます。

万が一夫と離婚したり死別したりした際も、正社員として産休を取得して復帰した方が安定した収入を得られるほか、福利厚生も充実しているため、一人で子どもを育てていけるでしょう。

派遣社員

次に、派遣社員が産休を取得するメリットです。

  • 正社員と同じように休める
  • 産前産後に雇用の不安やストレスを抱えなくて済む
  • 社会保険に加入していれば、出産手当金が受給できる上に社会保険料が免除される

産休は派遣元や派遣先の規定に関係なく利用できる制度です。派遣先との契約を切らずに安心して出産と子育てに集中できるのが大きなメリットではないでしょうか。

ただ、派遣社員でも正社員と同じように産休を取得できますが、出産予定日の6週間前以降も契約が継続していなければ取得できない点に注意が必要です。産休と同時に契約が切れてしまう場合は、解雇ではないため契約終了が禁止されていません。

そのような場合は、派遣元が自社の直接雇用に切り替えてくれる場合もあるので、担当者に相談してみることをおすすめします。

パート、アルバイト

最後は、パートやアルバイトの方が産休を取得するメリットです。

  • パートを辞めてまた保育園を探すよりも産休中のパートの方が有利
  • 産休後に戻って働く場所がある
  • 前例がない場合、自分が2人目を妊娠したときや同僚に取得しやすくなる

パートやアルバイトの方が産休を取得する1番のメリットは、認可保育園に入りやすくなることだといえます。休職中は優先順位が低いですが、在職中であれば優先順位も高く入りやすくなるため、認可保育園に入園させてから正社員としての雇用を目指すことも可能です。

もちろん、パートやアルバイトでも勤務先の社会保険に加入していれば、出産手当金が受給できるほか、社会保険料が免除されます。

まとめ

産休取得の条件や育休との違い、雇用形態ごとのメリットについてご紹介しました。

産休は、労働者の雇用形態にかかわらず、申請すれば誰でも取得できる休暇です。出産前後の大切な時期に仕事を気にせず自分の体と赤ちゃんのために休めるのは、ママにとってもメリットが大きいことです。

また、一方の雇い主側からしても優秀な人材を出産や育児のために手放してしまうという事態を避けられるため、双方にとってメリットがある休暇なのではないでしょうか。

現在妊娠中で産休の取得を検討している方や、自分は産休が取得できるのか不安に感じている方は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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