目次
高温期の体温がゆっくり上昇しても妊娠の可能性は十分にあります。ただし、ゆっくり過ぎる場合、何かしらの原因があるため放っておくのはよくありません。
そこでこの記事では、以下の内容についてお伝えします。
- ・高温期に体温上昇がゆっくりである原因
- ・基礎体温と女性ホルモンの関係や体の変化
- ・基礎体温の正しい測定方法
- ・妊娠の可能性があるなら確認すべきこと
-
高温期なのに基礎体温がゆっくりでしか上昇しない方は、この記事を参考にしていただけると幸いです。
妊娠の可能性?高温期に体温上昇がゆっくりである原因
女性ホルモンの一種であるプロゲステロンの分泌不足が原因かもしれません。
プロゲステロン(黄体ホルモン)は、基礎体温を高め、受精卵が着床するための子宮内膜をフカフカの状態に保つなど、妊娠継続のための準備を促します。また産後は乳腺の発達を促し、母乳を出やすくする働きもあります。
これらの働きをするプロゲステロンの分泌不足の原因は、以下の通りです。
- ・排卵障害
- ・多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
- ・高プロラクチン血症
- ・甲状腺ホルモン異常
妊娠初期の高温期の上がり方は人それぞれです。一方で何かしらの病気や障害が原因でプロゲステロンが分泌されにくくなっているケースも十分考えられます。高温期の上昇があまりにも遅いなら産婦人科の受診をしましょう。
基礎体温がゆっくり上がる時の妊娠の可能性は?
基礎体温がゆっくり上がる場合でも妊娠の可能性は十分あります。ただし、あくまで可能性にすぎません。
基礎体温の変動は人それぞれ異なり、高温期になりやすい方もいれば、徐々に高温期になる方もいます。中には高温期になりにくい方もいます。また、基礎体温の測り方や時間により正確な値を取れていないこともあります。
一方で高温期の体温が低くても排卵さえあれば妊娠の可能性はあるので、ご安心ください。ただし低温期が続く場合や高温期が10日未満なら無排卵や黄体機能不全の可能性もあるため、一度産婦人科を受診し検査してもらいましょう。
基礎体温とは?女性ホルモンの関係
妊娠の可能性を探るために重要なデータとして基礎体温があります。
そこでこの章では、以下の2つについて解説します。
- ・基礎体温とは?
- ・基礎体温の基本的なグラフと関係するホルモン
基礎体温に関する基礎を知り、妊娠の有無やあなた自身の現在の状況を判断できるようになりましょう。
基礎体温とは?
基礎体温とは、生命維持に必要な最小限のエネルギーを保っている状態での体温値です。そして基礎体温のベースは夜間寝ている時であることから、正確な値を知りたければ覚醒直後に体温を測る必要があります。
基礎体温の記録は、排卵日や妊娠の有無を予測する重要な手がかりです。
基礎体温の変化には、プロゲステロン(黄体ホルモン)という女性ホルモンが関係しており、妊娠継続をするために基礎体温を高めて、高温期を維持する働きがあります。
つまり高温期とは、排卵が終わって妊娠の準備中、もしくは妊娠の可能性があることを示す時期と言えます。
※参考資料:厚生労働省/ヘルスケアラボ
基礎体温の基本的なグラフと関係するホルモン
基礎体温の基本的なグラフは、以下の図解をご覧ください。
※引用画像:厚生労働省研修班監修/ヘルスケアラボ
排卵期に排卵を促すエストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌が上昇します。排卵された卵子と精子が受精すると、スムーズに妊娠期に入るための準備をするプロゲステロン(黄体ホルモン)が分泌されます。
プロゲステロンは受精卵が着床・成長しやすいように高温期を維持する働きがあります。受精しなかった場合、プロゲステロンの分泌が終わるため低温期に戻り、次の月経周期が始まります。
基礎体温とは、これら一連の体温の変動を追ったものなのです。
基礎体温と体の変化の関係性
基礎体温は、以下の4つの月経周期に分類され、それぞれで特徴的な体の変化が生じます。
- ・増殖期(卵胞期)
- ・排卵
- ・分泌期(黄体期)
- ・月経期
では、それぞれの時期の体の変化について詳しく解説します。
増殖期(卵胞期)
増殖期(卵胞期)とは、排卵を始めるための準備期間です。基礎体温を上げるプロゲステロンの分泌はないため、低温期(体温は平常通り)で経過します。
この時期は脳下垂体の卵胞刺激ホルモンが分泌され、卵巣内で卵胞の成長を促します。成長した卵胞はエストロゲン(卵胞ホルモン)を分泌し、排卵に向けた準備が始まるのです。
また体の変化としてエストロゲンが分泌され、副交感神経が優位になり、気分が安定します。新陳代謝が高まり血行促進になるため、肌艶も良くなるでしょう。
このようも増殖期は排卵に向けた準備期間であるとともに、心身が落ち着いた時期であります。
排卵期
排卵期とは、卵巣で作られた卵子が精子と受精するために卵管に生み出される時期のことです。
この時期から受精卵が順調に育つための準備としてプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌が始まり、基礎体温が上昇し始めます(高温期)。そのため微熱が続いたり、風邪症状にも似た体のだるさや下腹部痛が出たりなどの妊娠初期症状が現れるでしょう。
また、おりものの量が増えたり、少量出血が混じったりするなど症状が現れる場合もあります。これらの症状とエストロゲンの分泌量が減ることも相まって、情緒不安定になることも考えられます。
分泌期(黄体期)
分泌期(黄体期)とは、排卵後、妊娠しても良いように高温期を維持する時期のことです。排卵期同様に黄体からプロゲステロンの分泌が盛んに行われており、子宮内膜をフカフカな状態に保ちます。
体の変化として情緒不安定が続いたり、胸が張ったりします。また、おりものの量が徐々に減り、白く濁った粘っこくなるのも特徴です。そして分泌期(黄体期)終盤で生理前には、おりものの色が黄色味がかったり、いつもよりも臭いがキツくなったりします。
月経期
月経期とは妊不成立となり、次の妊娠に備えた準備を行う時期のことです。
受精できなかった卵子、つまり黄体は不要になった子宮内膜と一緒に膣外へ排出されます。同時にプロゲステロンの分泌もなくなるため、結果として低温期に移行します。
体温が急激に低下する低温期への移行は血流不良の原因となり、体が怠くなったり、頭痛や生理痛を感じやすくなったります。また、ニキビや肌荒れ・乾燥などが治りにくく、生理痛と相まって憂鬱になることも考えられるでしょう。
一方で生理が終われば再びエストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌が増えてくるため、気分が安定してくるので、安心してください。
基礎体温を正しく測る方法やポイント
基礎体温は女性の体の変化を見抜くための重要なデータです。そして正確な値を測り続けないと、妊娠の有無を見分けることはできません。
そこでこの章では、基礎体温の正しい測定方法やその際のポイントについて解説します。
測定方法やポイントをしっかりと押さえて、基礎体温の正確なデータを取れるようになりましょう。
基礎体温計を使った正しい測り方
基礎体温計は感温部を舌の裏側で付け根付近に挟んで測ります。脇の下に挟んで体温を測る一般的な体温計とは測り方が異なるので注意しましょう。
具体的には、体温計を舌で挟みながら固定して口を閉じます。測定が終わったら、忘れないうちに基礎体温表に記録しておきましょう。
基礎体温を測る際のポイント
基礎体温を測る際には、いくつかのポイントがあります。これらのポイントを押さえておかないと、妊娠の可能性を予測するためのデータとして不十分になるため、注意が必要です。
基礎体温を測る際のポイントは、以下の通りです。
- ・覚醒して1番最初に測る
- ・測定位置を一定にする
つまり、同一条件で基礎体温を測る必要があるのです。覚醒直後に体を動かすと、代謝が始まって体温が上昇するため、正確な値を測れません。そのため寝る前に基礎体温計を枕元に準備して、体を動かさなくても基礎体温が測定できるようにしておくことがポイントになります。
妊娠したかも?と感じたら確認すべきこと
妊娠した可能性があるからといって、すぐに妊娠検査薬を使ったり、産婦人科に受診したりするのはハードルが高いでしょう。妊娠しているか簡単に探る方法は誰でも試してみたいと思うはずです。
そこでこの章では、妊娠の可能性がある方が見るべき観察ポイントについて、以下の3つをお伝えします。
- ・基礎体温
- ・妊娠初期症状
- ・妊娠判定
とくに2つ目の妊娠初期症状は、この記事を読み終わった後すぐに観察できるので、必ずチェックしておきましょう。
では、1つずつ解説します。
基礎体温
妊娠の可能性がある場合、基礎体温はメジャーな観察ポイントになります。そして常日頃から基礎体温を測定しているなら、妊娠を予測するデータとして非常に有効です。
高温期と合わせて風邪に似た症状が長期的に続くなら妊娠の可能性も十分考えられます。
そのためにも普段から基礎体温を小まめに測っておくことが大切です。基礎体温の正しい測り方やポイントについては前章で解説しているので、参考にしていただけると幸いです。
妊娠初期症状
妊娠初期症状とは、妊娠直後から現れる妊婦特有の症状のことです。受精卵が子宮内膜に着床して妊娠が成立するとともに現れます。メジャーな所だとつわりや腹痛などがあり、風邪や生理前の症状に似ていると表現されることもあります。
妊娠を確信するためのデータとしては不十分ですが、可能性を示唆するサインとして観察するのには有効です。ただし、妊娠初期症状の程度は人それぞれ異なり、症状自体が現れない方もいます。
具体的な妊娠初期症状については、以下の記事で詳しく解説しています。
記事:妊娠検査薬以外で妊娠は見抜ける?初期症状や妊娠の予感がしたら注意するべきこと/ミネルバクリニック
妊娠判定
基礎体温や妊娠初期症状の観察は妊娠の可能性を探る方法として有効な手段ですが、確定診断にはなりません。確定診断をするためには、以下の2つの段階を踏む必要があります。
- ・市販の妊娠検査薬
- ・産婦人科で妊娠検査
市販の妊娠検査薬は、尿に排泄されるhCGホルモン(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)を検知して妊娠判定を行います。精度も高く、妊娠を確認する方法として一般的です。
ただし、不妊治療中や糖尿病の既往があって尿糖が多いなどの方は偽陽性になるケースがあり、信ぴょう性に欠けることもあります。
確定診断をするには産婦人科で妊娠検査を受ける必要があります。実際に行われる検査は、以下の3つです。
- ・血液検査
- ・尿検査
- ・経膣超音波検査(エコー検査)
経膣超音波検査で胎児心拍が確認されたら、妊娠が確定となります。
妊娠検査薬の使用や産婦人科を受診するタイミング
基礎体温や妊娠初期症状の観察はあくまで妊娠の可能性を探るにすぎません。確信を得るためには、妊娠検査薬や産婦人科を受診する必要があります。
そこでこの章では、以下の2つについて解説します。
- ・妊娠検査薬を使用するタイミング
- ・産婦人科を受診するタイミング
それぞれのタイミングがズレると、正しい妊娠判定を得られないこともあるので注意しましょう。
妊娠検査薬を使用するタイミング
妊娠検査薬は、生理予定日から1週間以上過ぎたタイミングで使用しましょう。
妊娠判定には妊娠後に分泌が始まるhCGホルモン(ヒト絨毛ゴナドトロピン)を検出するからです。妊娠検査薬が尿中hCGホルモンを検出できる分泌量になるのには、妊娠して5週間以上かかると言われています。
つまり、生理予定日の1週間後から妊娠検査薬を使用すると、正しい結果が得られやすいことになります。
また検査時に尿をかけすぎると偽陽性などの誤判定が出る可能性があるため、注意が必要です。その他、以下の状況で偽陽性が出ることもあるため、現在のあなたの状況と照らし合わせて確認しましょう。
- ・hCG注射による不妊治療中
- ・卵巣がん・子宮頸がんなどの腫瘍病変にかかっている
- ・糖尿病や腎障害にかかっている
- ・流産の可能性がある
妊娠検査薬の精度は高い一方で偽陽性になる可能性もあります。そこで、判定結果に確信をえるためには、産婦人科の受診をしましょう。
産婦人科を受診するタイミング
産婦人科を受診するタイミングは、胎児心拍が確認できる生理予定日の10〜14日後です。 胎児心拍とは、赤ちゃんの心臓音のことです。つまり、受精卵が順調に成長して、生命としての活動を開始したサインでもあります。
産婦人科では、以下の3つの妊娠検査が行われます。
- ・血液検査
- ・尿検査
- ・経膣超音波(エコー)検査
産婦人科を受診するのはハードルが高いと感じるかもしれませんが、確定診断を得るためには必須です。妊娠検査薬で陽性判定があり、つわりなどの妊娠初期症状が確認できれば、産婦人科の受診をしましょう。
まとめ: 体温の上昇が穏やかな高温期なら一度産婦人科を受診してみる
以上、基礎体温の上昇がゆっくりである原因や体の変化、正しい基礎体温の測定方法などについて解説しました。
高温期における基礎体温の上昇スピードは人それぞれで、妊娠している可能性も十分あります。一方で、基礎体温がゆっくり上昇する原因としてプロゲステロンの分泌不足が挙げられ、その背景には異常疾患や症状が隠れている危険性もあります。
そのため、気になった方は一度産婦人科を受診しましょう。
また、基礎体温の測定方法を見直すことも大切です。基礎体温は覚醒直後で体を動かしていない状態の体温のことです。そのため、手の届く場所に体温計を準備したり、測定環境を一定に保ったりするなどの工夫が必要でしたね。
これらのことを考慮した上で、妊娠検査薬の使用や産婦人科で妊娠検査をしてもらうと良いでしょう。
高温期に体温がゆっくり上昇する原因が分かり、必要なタイミングで産婦人科への受診ができるために、この記事が参考になれば幸いです。