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高齢出産と障害│自閉症の子供が生まれてくる確率とリスク

テレビや新聞、雑誌などで「高齢出産では発達障害を持った子供が生まれる確率が高くなる」ということを耳にする機会は増えてきたと思われます。
この様な内容を目にした妊娠中の方の中にはもしかしたら自分の子どももダウン症や自閉症などの発達障害を持って生まれてくるのではないか、と不安に思われる方もいらっしゃるかもしれません。
今回は発達障害の分類の1つである自閉症と高齢出産(35歳以上の女性の出産)の関係について記していきたいと思います。

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自閉症とは?

生まれつき脳の発育が通常と異なるために幼児の頃から症状の出る「発達障害」の分類の一つに自閉症スペクトラム障害という分類が存在し、この自閉症スペクトラム障害に含まれるものが自閉症です。
典型的な症状としては「コミュニケーションが苦手」、「興味・行動の強いこだわり」、「相互的対人間関係の障害」といった3つの特徴が挙げられます。最近では自閉症スペクトラム障害の方は100人に1~2人存在すると言われており、女性より男性の方が数倍多いとも言われています。

高齢出産で自閉症の子どもが生まれてくるリスクは上昇するのか?

過去10年間の複数の研究結果では年配の男女は自閉症の子供を持つ可能性は高くなるという報告がなされており、特に父親の年齢は影響しやすい傾向にあるといったことが言われています。
ただし、その原因は明らかになっておらず未だ不明な部分も多いようです。

父親の年齢

増加

男性の年齢は生まれてくる子供が自閉症を持つか否かに影響を与えやすいと言われています。年配の男性は精子に多くの変異を蓄積して染色体異常をきたし、子供の発達異常に寄与している可能性があると言われています。

イスラエルの研究論文のデータによると、30代の男性は30歳未満の男性に比べて自閉症の子供を持つ可能性が1.6倍、40代の男性は6倍に増加するという報告がされています。
スウェーデンの研究論文のデータでは、45歳以上の男性が20代前半の男性と比べて自閉症の子供を持つ可能性は1.75倍、55歳以上の男性は30歳未満の男性と比べて自閉症の子供を持つ可能性が4倍であるとも言われています。

母親の年齢

男性と比較すれば影響は与えにくいですが、女性の出産年齢も生まれてくる子供が自閉症を持つか否かに影響を与えると言われています。精子ほどではありませんが卵子も変異を蓄積するため、この変異の蓄積が原因である可能性があると言われています
カリフォルニア州の研究結果では、40歳以上の女性は、25歳から29歳までの女性と比較すると自閉症の子供を持つ可能性は1.51倍、25歳未満の女性と比較すると1.77倍の可能性があると報告しています。

また、無痛分娩(和痛分娩)と自閉症のお子さんの出生との関係性も取りざたされていますが、こちらについては科学的根拠に疑問があります。以下のリンクでご覧ください。

自閉症の子供が生まれてくる確率

2017年の研究では、20代の親に生まれた子供の自閉症の発症率は約1.5%、40代の親に生まれた子供の自閉症の発症率は約1.58%であると言われています。

子どもが障がいを持って生まれてくる確率

29歳以下は妊娠出産能力が高く、障害の子どもが生まれてくる可能性は約1/400です。やはり卵子の劣化が起きていないためです。何かしら異常を持っていなければ健康な子どもが産まれるでしょう。

ただ、女性の年齢が35歳を超えてくると話は変わってきます。この頃から卵子の劣化が始まり、ダウン症や自閉症スペクトラムといった先天性疾患を持つ子どもが生まれてくる可能性が高くなるからです。

35歳で1/192、39歳で1/83、41歳で1/53と年齢が上がるにつれて確率が上がっていきます。

ダウン症の子どもが産まれる確率

ダウン症の場合も他の障害と同じように高齢出産になると確率は上がっていきます。

母体年齢 ダウン症候群の確率
25歳 1/1250
30歳 1/952
35歳 1/385
37歳 1/243
39歳 1/147
41歳 1/86
45歳 1/29

高齢出産のリスクと対策

ご紹介したように高齢出産は赤ちゃんが自閉症などの障害を抱えているリスクがあります。他にもどういったリスクがあるのかと対策についてご紹介します。

女性の場合

35歳になると、徐々に女性ホルモンの分泌量が減っていくため自然妊娠できる確率が低くなっていきます。ドイツの研究機関のデータによると、何周期で妊娠にいたったかを調査したところ、1回の排卵を1周期とした場合、20代後半だと5周期、30代前半で6周期、30代後半になると13周期になったそうです。

上の表にも記載したように年齢が高くなればなるほど生まれてくる赤ちゃんがダウン症になる確率が上がっていきます。特に40歳を超えると30代よりも確率が高くなるのでダウン症を持った赤ちゃんが生まれるリスクが高まることを重々承知して臨む必要性があるでしょう。

ダウン症や自閉症になる子どもが生まれてくる確率を下げる方法はありません。そもそも妊娠そのものがしにくくなっているので、そちらの確率を高めるためにも、できるだけストレスを溜めないようにしたり、発散できる環境を作ったりしておくのが大切です。

男性の場合

男性も加齢とともに精子の運動量と量は減少していきます。一見、元気に見えても染色体を構成するDNAが損傷している精子が増加してゆくため、自然妊娠しにくくなるのは女性と変わりません。

ダウン症の赤ちゃんが生まれてくることについて、父親の年齢はほとんど関係していないようです。しかし、子どもが自閉症になる確率については上述したように男性側にも原因があることを知っておいてください。

妊娠前に自閉症の子どもが生まれてくる確率を下げる方法はありません。男性も女性と同じように高齢になると妊娠しにくくなっているのでまずは精子検査を受けるところからスタートとなります。男性妊活については以下の記事で紹介していますので参照してみてください。

まとめ

高齢出産の2人目

高齢出産では自閉症の子供が生まれてくる割合が上昇するといった報告が多数なされています。
しかし、自閉症の子供が生まれてくる確率の項でも記した通り、リスクは高くなりますが絶対的な確率までもが跳ね上がるわけではありません。
また、自閉症は病気ではなく生まれつきの特性と言われており、深刻な問題として捉えるのではなく、その人にあったやり方で日常的な暮らしや学校・職場での過ごし方を工夫出来れば持っている本来の力を発揮できるようにもなります。
とはいえ、自閉症のお子さんが生まれるのではないかと心配でたまらず、お子さんをもつことを躊躇するご夫婦が増えていることも感じます。
そこで、ミネルバクリニックでは自閉症のリスクを検査できる遺伝子検査メニューをご用意しています。

案ずるより産むが易しとも申しますので、ぜひご検討ください。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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