InstagramInstagram

高齢出産は何歳から?リスクやメリットを紹介

出産は体にかかる負担が非常に大きいです。
年齢が高くなればなるほど、体への負担がより大きくなっていきます。

高年齢になってから出産することを高齢出産と呼びます。
体への負担が大きいのなら、出産を諦めなくてはいけないのかと考えている方もいるかもしれません。

しかし、高齢だからといって出産ができないということはありません。
リスクについて正しく理解したうえで、高齢出産に臨むことが大切です。

本記事では高齢出産は何歳からなのか、どのようなリスクがあるのか、メリットはあるのかなどについて解説します。

高齢出産は何歳から?

高齢出産は何歳から?リスクやメリットを紹介

日本産婦人科学会は一般的に高齢出産を35歳以上と定めています。[注1]
初めて妊娠する場合は35歳以上、一度出産した経験がある場合は40歳以上が高齢妊娠に該当します。

しかし、35歳未満だからといって出産のリスクがないわけではありません。
もちろん、高齢出産には該当しないのですが、出産によるリスクは年齢に比例して高くなっていきます。

つまり、34歳で出産をする場合でも、高齢出産ではないものの相応のリスクが発生するということです。

高齢出産に該当するか否かでリスクが上がるのではなく、年齢が上がればそれに応じてリスクが高くなると考えてください。

[注1]公益社団法人 日本産婦人科医会「分娩時年齢の高年齢化 現状と問題点」
www.jaog.or.jp/sep2012/know/kisyakon/54_120509.pdf

世代別のリスク

年齢に応じてリスクが高くなると説明しましたが、20代であればそれほど大きな違いはありません。
25歳と29歳では、29歳の方が出産のリスクは高くなりますが、注意しなくてはいけないほど大きな差ではありません。

しかし、31歳と35歳になるとリスクの差は大きく異なります。
同じ4歳差ではありますが、リスクの上がり方が異なるのです。

このように高年齢になればなるほど、リスクの上がり方が大きくなっていきます。

40代になると1/53の確率で障害を持った子供が生まれてくると言われています。
1歳しか年齢が変わらなかったとしても、リスクが大きくなってしまうので、子供を希望するのであればできるだけ早めに妊娠に向けた取り組みをしていくことが大切になります。

高齢であっても出産することは可能です。しかし、母体はもちろんですが、子供にも影響が及ぶ可能性があります。少しでも早く出産をすればリスクを少なくすることができることは覚えておくようにしてください。

高齢出産する人はどのくらいいる?

高齢出産をする人の割合については、厚生労働省が調査を行っています。
1990年では35歳以上の人の出産数は
出産数の数%程度しかありませんでしたが、2000年には11%を超え、2016年には約30%になっています。[注2]

高齢出産の割合が多くなっている理由は、女性の社会進出が考えられるでしょう。
昔は女性が結婚をすると家で家事をするのが一般的でしたが、現在ではそういった風潮はほとんどなくなっています。

女性でも男性と同じように社会に出て働く人が増えてきた結果、結婚や出産のタイミングが遅くなっています。

大学に進学をしてから就職するとなると、働き始めるのが20代前半です。
仕事に慣れるまでは結婚や出産のために時間を確保する余裕がない方も多いでしょう。
また、仕事に夢中になり、それ以外のことは考えられないという方もいます。

そのため、結婚をするタイミングが遅くなり、結果として高齢出産になっています。
今後も女性の社会進出は進んでいくでしょうから、高齢出産の割合は多くなっていくと考えられます。

高齢出産が多くなれば、高齢でも安全に子供が産めるように対応してくれる病院も増えていくでしょう。
そのため、社会的には高齢出産がしやすい環境になりつつあるといえます。

[注2]厚生労働省「妊産婦の診療の現状と課題」
www.mhlw.go.jp/content/12401000/000488877.pdf

高齢出産のリスク

高齢出産を考えるうえで一番重要なのがリスクについて理解することです。
子供を産みたいという気持ちが強い方も多いでしょう。

しかし、リスクを考慮したうえで本当に高齢出産に取り組むのかどうかを考えなくてはいけません。
出産を諦めるという決断も時には必要になるでしょう。

妊娠をしてからリスクについて知るといったことがないように、パートナーと共になるべく早く、高齢出産のリスクを理解しておくようにしてください。

1. 妊娠の確率が下がる

高齢出産をするうえで悩む方が多いのが、そもそも妊娠できないという点です。
もちろん、20代でも流産などの可能性はあるのですが、高齢になるとその確率が大きく上がります。

高齢になると妊娠の確率が下がる主な理由は、女性ホルモンの分泌量の減少です。
ホルモンの減量により、排卵される卵子の量が少なくなり、着床する可能性が下がり妊娠しづらくなってしまいます。

また、卵子の量が少なくなるだけでなく、卵子の質が下がってしまうのも妊娠しづらい理由です。

このように、高齢出産に臨む方は、自然妊娠ができない可能性も考慮しておくべきでしょう。
少しでも妊娠ができる可能性を高くするために、生活習慣や食生活の改善も欠かせません。

また、ストレスがかからないような環境づくりも大切です。

2. 障害を持って生まれる可能性が上がる

高齢出産をすると子供がダウン症などの障害を持って生まれる可能性が上がります。
29歳以下で出産をした場合の赤ちゃんが障害を持って生まれてくる確率は、1/400程度と言われています。

それに対して35歳で出産をした場合の確率は、1/192です。
倍近く障害を持って生まれてくる確率が高くなっていることがわかります。

さらに高齢になるとどんどん確率は高くなっていきます。

もちろん、障害を持っていたとしても子供であることに違いはありません。
高齢出産をする際には、障害についてのリスクを正しく理解しておくことが大切です。

3. 妊娠糖尿病の発症

母親が妊娠糖尿病発症する可能性も高まります。
今まで糖尿病になったことがある人が発病しやすいのはもちろんですが、糖尿病には縁がなかった人でも妊娠をきっかけに糖尿病を発症する可能性があります。

妊娠糖尿病を発症すると、母親の健康状態が悪化するのはもちろん、合併症によって赤ちゃんにも悪影響が及ぶ可能性があるため、早めに予防しておかなくてはいけません。

高齢出産はただでさえ出産時のリスクが大きいです。
妊娠していると食べる量が多くなったり、運動が億劫になったりしますが、食生活に気をつけたり、適度に運動をしたりすれば、妊娠糖尿病は予防できます。

妊娠糖尿病による影響が赤ちゃんに及んでしまうと、無事に出産できる可能性が大きく下がってしまいます。
赤ちゃんの健康を守るためにも、妊娠中の生活習慣には普段より気をつかうことが重要です。

高齢出産のメリット

高齢出産のリスクについて説明してきましたが、メリットもあります。
もちろん、母親や赤ちゃんの健康面においては、早めの出産が望ましいです。

しかし、高齢出産だからこそ得られるメリットもあることを知っておいてください。

1. 経済的に安定している

高齢出産にあたる35歳以上の女性は社会経験が長いため、経済的にゆとりのある場合が多いと考えられます。
出産や子育てはさまざまなお金がかかります。

経済的に安定している高齢出産の女性は、金銭的な不安を抱えずに安心して出産や子育てが行えるのは大きなためメリットといえます。

2. キャリアを積んでから出産や育児ができる

高齢出産の女性は長い社会人経験があり、キャリアもしっかり積んだあとに出産、育児を迎えられます。
そのため、産休や育休を経てからも、築いたキャリアを活かして職場に復帰すりこともスムーズに行えます。

子育てに専念できるように支援してくれる会社も多くなってきてはいますが、会社や状況によってはサポートが十分ではない場合もあります。
キャリアの浅いうちに出産した場合、挑戦できる仕事の範囲が狭くなってしまう側面もあるでしょう。

キャリアアップのために海外転勤などの話があったとしても、子供がいるのならば断らざるを得ないかもしれません。

高齢出産は若いうちに仕事に没頭できるというメリットもあります。

3. 精神的に余裕を持って育児ができる

高齢出産を迎える女性は、それなりに人生経験を積んできた年齢です。
楽しいことややりたいこと、辛いこともたくさん経験し、精神的にも成熟しています。

子育ては楽しいこともありますが、我慢や自分のことは後回しにしなければならない場面が多々あります。
若いうちは遊びたい、自分のこともしたいという欲求も強いため、子供ができると自分の欲求と子育ての折り合いをつけるのが難しい可能性もあるでしょう。

まだ、やりたいことがまだまだたくさんあるという方は、あえて高齢出産を選ぶのも1つの選択肢といえるでしょう。

年齢を重ねれば、精神的なゆとりも増えていきます。

子育てに気持ちの余裕をもって取り組めることは高齢出産の大きなメリットといえるでしょう。

【まとめ】高齢出産はリスクだけでなくメリットもあることを知ろう

紹介したように、高齢出産にはいくつかのリスクがあります。
しかし、高齢出産だからこそ、経済的な安定やキャリアを積んでから出産を迎えられるといったメリットがあります。

若いうちに出産したから、高齢出産だからということではなく、大切なのは年齢に関わらず、「子供を産みたい」「自分の子供がほしい」という気持ちがあるかどうかです。
子供を産みたいという気持ちが強ければ、子育ても精力的に行っていけます。

高齢出産はリスクがあるから子供を諦める、若いうちに出産した方がリスクが減るから早いうちから妊活を始めるといった行動は避けるべきです。

子供を産みたいと心から思ったタイミングでパートナーと一緒に出産に向けて進んでいきましょう。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 (がん薬物療法専門医認定者名簿)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医(臨床遺伝専門医名簿:東京都)として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

関連記事