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性染色体異常
性染色体とは?
ヒトには46本の染色体があり、このうち1~22番は常染色体。
性別に関係する染色体を性染色体といい、女性はXX, 男性はXYです。
x染色体とY染色体は両性で異なり,特有の遺伝形式をとり,最初の性の決定に関わることから,長年注目されています。
X染色体とY染色体は異なる構造をもち,異なる遺伝的調節を受けるのですが、男性の減数分裂時には対合します。
つまり、くっついてお互いの遺伝子を交換して子孫の多様性を実現するのです。
このような理由から性染色体の研究には特別な注意が払われてきました。
性染色体と性の決定
性を決定するのは染色体のxxとXYの組み合わせです。
Klinefelter症候群の男性は、1本のY染色体と2本のX染色体を含む47本の染色体をもつことがわかった(核型は47,XXY)。
一方でTurner症候群の女性のほとんどは、 1本だけのx染色体を含む45本の染色体しかもたないことがわかりました(核型は45,X)。
こうした発見により、正常な男性の発生においてY染色体が重要な働きをしていることが明らかになりました。
常染色体の異数性が非常に大きな影響を及ぽすのに比べて、X染色体の異数性核型は、男性においても女性においてもあまり大きな影聾を及ぽさないこともわかっています。
現在ではこのような現象は、X染色体とY染色体に固有の生物学的特性から説明できるようになっています。
性決定の過程
●受精時の染色体レベルの遺伝学的な性(chromosomal sex)の確立(XYまたはxx)。
●性腺の分化経路の間始による性腺の性(gonadal sex)の決定。通常はY染色体上の精巣決定因子の有無により決定される。
• 内性器・外性器の性特異的分化の進行。
• 特に思春期以降に、男性か女性としての表現型の性(phenotypic sex)を形成する二次性徴の発来。
性染色体は遺伝学的な性と性腺の性を定める上で決定的な役割を果たすのですが、性染色体と常染色体の両方に存在する多く遺伝子が、性決定とそれに続く性分化に関与しています。ほとんどの場合、これらの遺伝子の役割は各種の性分化疾患の患者から明らかになったものです。
Y染色体の構造と性の発逹における役割
分子レベルとゲノムレベルの双方でわかってきました。
男性の減数分裂ではX染色体とY染色体は通常短腕の末端部で対合し、この領域で組換えを行います。
この対合する領域は、X染色体とY染色体の偽常染色体領域を含むものです。
名前のとおり、この領域に存在するX染色体とY染色体上のコピーは基本的に同じであり、一対の常染色体のように第一減数分裂で相同組換えを起こすためです。
X染色体長腕とY染色体長腕の遠位末端には、より小さな第二の偽常染色体領域が存在します。
常染色体やX染色体と比べてY染色体には遺伝子が少なく、約20のタンパクを決定する100未満の遺伝子しかありません。
しかし、これらの遺伝子の多くは、性腺と性器の発達に関連した機能をもっています。
Y染色体の構造と性の発逹における役割
X色体異数性は細胞遺伝学的に最もよく認められる異常です。
X染色体に異常があっても発生が比較的可能であることは, X色体が2本あるうちの片方がほぼ不活化されていることで説明できます。
X染色体不活化は,女性が2本もっX色休のうちの1本にある遺伝子のほとんどがエピジェネティックに抑制される過程です。
もともと1本不活化されているくらいなので、X染色体が1本なくても結構大丈夫なのです。
X染色体不活化に関しては、別ページで説明することにします。
NIPTでわかる性染色体の本数の異常(異数性)により起こる疾患
- 1.ターナー症候群(モノソミーX) (Monosomy X)
モノソミーXともいいます。女性では通常XX、つまりX染色体は2本あるところ、1本しかないのです。女性の2本のX染色体のうち1本は全員不活化されているので、1本になっても支障があまりなくて生まれて来れるのがX染色体のモノソミーです。その他の染色体のモノソミーは生まれて来れません。心臓に問題があったり、低身長、翼状頸、不妊を認め、軽い知的障害を認めますが日常生活に問題はなく、普通学級で大丈夫です。詳しくはリンク先をご覧ください。 - 2.トリプル X症候群 (Trisomy X)
トリプルXは通常女性ならX染色体が2本のところ3本ある状態です。女児千人に一人程度と意外と多いのですが、ほとんどなんの目立った症状もなく、妊孕性や二次性徴なども問題ないため、偶発的に染色体検査で発見される程度です。詳しくはリンク先をご覧ください。 - 3.クラインフェルター症候群 (XXY)
クラインフェルター症候群は、男性ではX染色体が1本のところ2本あるというコピー数の異常が原因でおこります。男児出生500~1000人に1人の割合で発生します。高身長、不妊などの症状はありますが知的障害などはほとんどないまたは非常に軽く、不妊外来に行って染色体検査をされなければ生涯診断されない人たちが殆どです。詳しくはリンク先をご覧ください。 - 4.XYY症候群
XYY症候群はヤコブ症候群ともいい、男性ではY染色体が1本のところ2本あるというコピー数の異常が原因でおこります。男児出生1000人に1人の割合で発生します。47,XYY症候群のほとんどの男性は、男性ホルモンテストステロンの正常な産生と正常な性的発達を示し、通常は妊孕性もあり、遺伝もしません。ます。詳しくはリンク先をご覧ください。 - 5.XXYY 症候群
XYYY症候群は、男性ではXY染色体がそれぞれ1本のところ両方とも2本あるというコピー数の異常が原因でおこります。男児5万人に一人の割合で生まれ、軽度の骨格異常、性器形成不全の可能性が高く、精神遅滞がより頻繁に発生します。詳しくはリンク先をご覧ください。
性染色体異数性の特徴 | ||||
---|---|---|---|---|
特徴 | Klinefelter症候群 | 47,XYY | 47,XXX | 45,X |
頻度 | 1/600男性 | 1/1000男性 | 1/1000女性 | 1/2500~ 4000女性 |
臨床所見 | 高身長 | 高身長 | 低緊張 発達の遅れ 平均より高身長傾向 | 低身長 翼状頸 リンパ浮腫 先天性心疾患リスク |
認知・知性 | 平均以下 | 平均以下 | 正常から 平均以下 | 典型的には正常 |
行動 | 社会適応が乏しい | 行動面で問題 | 問題なし | 社会的適応が低い |
性分化・妊孕制 | 不妊 | 正常 | 正常? | 不妊 |
核型のバリアント | 48,XXXXなど Xが増えると 重症度が増す |
これらの詳細についてはそれぞれのページをご覧ください。