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NIPTにおいて胎児の心拍を確認してから検査をすることの重要性

ミネルバクリニックでは、胎児の心拍が確認された後にNIPT(非侵襲的出生前検査)の遺伝カウンセリングを受けていただいております。この手順を取る理由について、詳しく説明します。

胎児の心拍確認の重要性

胎嚢が見えても胎児の心拍が確認できないケースは少なくありません。研究によると、妊娠6週以内に胎嚢が確認された場合でも、約15-20%のケースで心拍が検出されないと報告されています(参考文献: Journal of Ultrasound in Medicine, 2020)。この割合は、妊娠初期の超音波検査で心拍確認が重要な理由の一つです。

また、胎児が十分に発育していない段階でNIPTを実施すると、母体血中の胎児由来DNA(cfDNA)の濃度が低すぎて正確な検査結果が得られない可能性があります。適切なDNA濃度が確保されない場合、検査が無効と判断されるか、誤った結果を生むリスクがあります。

一部の検査所での懸念点

一部のNIPT検査所では、胎児DNA濃度が低い状態で検査結果を報告しているケースがあります。しかし、性別検査ができないほどDNA濃度が低い場合に、染色体異常の結果だけを報告することは科学的な信頼性に欠けると考えられます。NIPT技術は、女性の血液中からY染色体の微量成分が発見されたことを契機に発展しました。そのため、DNA濃度が十分でない場合に性別以外の結果を出すことには疑問が残ります。

早期NIPT他院検査結果2

こちらは、別のクリニックの検査結果です。ミネルバクリニックでは同等の検査を海外に出していますが、そちらの検査会社では胎児分画が3%ないと検査結果の正確性が保証できないとして検査結果自体が出ません。

NIPT(新型出生前診断)では、母体血中の胎児由来DNA(胎児分画)の割合が一定以上でないと検査の信頼性が担保されません。胎児分画が不足している状態で性別判定ができない場合、他のトリソミーや染色体異常の検査結果を報告することには、以下の危険性があります。

まず、胎児分画が不足すると、母体由来DNAの影響が大きくなり、偽陽性(異常と判断されたが正常)や偽陰性(正常と判断されたが異常)のリスクが高まります。特に性別判定ができないほど胎児分画が不足している場合、トリソミーなどの結果も信頼性に欠ける可能性が大きいと考えられます。

また、精度が不十分な結果を報告することで、不必要な不安や安心感を与えるリスクがあります。例えば、偽陽性の場合は不要な精密検査や心理的負担を引き起こし、偽陰性の場合は異常が見逃されることで必要なフォローアップが遅れる可能性があります。

さらに、胎児分画不足での結果報告は、医学的および倫理的に問題を伴います。検査の信頼性を損なう行為であり、患者との信頼関係に影響を及ぼす可能性があるため、慎重な対応が求められます。

これは、他の医療機関の検査結果ですが、検査結果の中にはきちんと10週以降の2回目の検査が大事であると書かれています。

結論として、胎児分画不足の場合には検査結果を報告せず、その理由を丁寧に説明し、再検査や適切なフォローアップを提案することが重要です。これにより、患者の安心感を保ちながら適切な医療を提供できます。

胎児の心拍確認を優先する理由

心拍確認は、胎児が正常に発育していることを確認するための基本的なステップです。心拍が確認されることで、妊娠の継続可能性が高いと判断され、NIPTをより安全かつ有効に実施することが可能になります。

例えば、国際的なガイドラインでも、胎児心拍の確認は妊娠継続を評価する重要な要素として推奨されています(参考文献: American College of Obstetricians and Gynecologists, 2019)。心拍確認後にNIPTを行うことで、無駄な検査を回避し、妊婦の不安を軽減することができます。

胎嚢が見えてから心拍が確認できないケースの割合

胎嚢が確認されても心拍が見られないケースは約15-20%とされています。この数字は、妊娠週数や胎児の発育状況によって変化する可能性があります。そのため、胎児の発育状況を慎重に観察し、適切なタイミングでNIPTを実施することが重要です。

妊娠初期の経腟超音波検査において、胎嚢が確認された後に心拍が検出されないケースは一定の割合で発生します。ここでは、英語の論文を基にした情報をもとに、心拍が確認できない割合やその要因、診断基準について詳しく解説します。

心拍が確認できない割合

妊娠6週以内に胎児の心拍が確認できないケースは、全体の15-20%程度と報告されています。この割合は妊娠初期の不安要因となり得ますが、妊娠週数やその他の要因によって心拍が確認されるタイミングが遅れる可能性があることを考慮する必要があります。

ある研究では、初回の超音波検査で心拍がない胚が確認され、その後7日以上の間隔を空けて再検査しても心拍が確認されなかった場合、胎児の生存率は0%であるとされています。このデータは、妊娠初期の心拍確認が妊娠継続の重要な指標であることを示唆しています。

心拍検出に影響する要因

心拍が確認できるかどうかは、妊娠週数をはじめとするいくつかの要因に依存します。

  • 妊娠週数
    通常、胎児の心拍活動は妊娠6-7週の間に初めて確認されます。しかし、個人差や妊娠過程の違いにより、この時期は多少前後することがあります。
  • 排卵や着床のタイミング
    排卵が通常より遅れた場合や着床が遅れた場合、心拍が確認できるタイミングも遅れる可能性があります。例えば、排卵が通常の14日目ではなく18-20日目に起こった場合、心拍が確認できる時期が約1週間遅れることがあります。
  • 超音波技術の進歩
    最近の超音波装置の技術進歩により、小さな胎嚢でも胚や卵黄嚢を詳細に検出できるようになりました。しかし、この進歩は一方で、心拍が確認されると期待される時期についての基準を見直す必要性も生じさせています。

診断のガイドライン

妊娠初期に心拍が確認できない場合の診断については、慎重な判断が求められます。現在のガイドラインでは、以下のような基準が設けられています。

  • 頭殿長が7mm以上で心拍が見られない場合
    胎児の頭殿長(CRL)が7mm以上で心拍活動が確認されない場合、妊娠失敗と診断されることがあります。
  • 胚が見えない胎嚢の場合
    胚が確認できない胎嚢については、平均胎嚢径(MSD)が25mm以上で胚が見られない場合に妊娠失敗と診断されることがあります。
  • 妊娠6-7週未満のケース
    妊娠6-7週未満で心拍が確認できない場合、それが必ずしも妊娠失敗を意味するわけではありません。不確実な場合は、適切な間隔を空けて超音波検査を繰り返し、胎児の生存を確認することが推奨されています。

NIPTにおける心拍確認の重要性

非侵襲的出生前検査(NIPT)を実施する際に胎児の心拍を確認することは、検査の適切性を判断するために非常に重要です。心拍が確認されることで、胎児が正常に発育している可能性が高まり、検査の信頼性が向上します。

心拍が確認される前にNIPTを実施すると、検体に十分な胎児由来DNAが含まれない場合があり、結果が不明確になるリスクが増します。また、心拍が確認されない場合、妊娠継続の可能性が低いことが考えられるため、不必要な検査や精神的負担を避けるためにも、心拍確認後に検査を行うことが推奨されます。

心拍確認は、妊娠の健全性を評価する重要なステップであり、NIPTをより安全かつ正確に実施するための基盤となります。

まとめ

妊娠初期における心拍の確認は、妊娠の正常な進行を判断する上で重要な指標です。しかし、心拍が確認されない場合でも、妊娠週数や排卵・着床のタイミング、超音波検査の技術的限界を考慮する必要があります。ガイドラインに基づいた慎重な診断が求められるとともに、必要に応じて再検査を行うことで、適切な判断が下されるべきです。

妊娠中の不安を軽減するためにも、医療従事者からの丁寧な説明とサポートが重要です。妊婦やその家族に対して、正確な情報と安心感を提供することが医療現場の役割であるといえます。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

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