東京でNIPTを提供するミネルバクリニックです。
NIPTでは陰性の結果だったけど、生まれてみたら赤ちゃんに障害があった症例が1例出ましたのでケースレポートしたいと思います。
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先日、患者さんから連絡をいただきました。
イルミナ(ベリナタ)のNIPTで微小欠失を調べて陰性だったのだけど、お子さんがうまれたら、一番多い微小欠失症候群の特徴に合致するような異常があったという連絡でした。
仲田先生、こんにちは。
私は11月にNIPTを受け、全て陰性の結果を頂いておりましたAと申します。
帝王切開で出産することになり、入院していたのですが、モニターの結果が安定せず、さらに前倒しで出産致しました。
帝王切開自体は無事終わりましたが、産まれてすぐ子どもの心臓に異常が見つかり、NICUに入りました。
心疾患だけであれば、今後手術して行けば大丈夫とのことで一安心していたのですが、さらに検査した結果、他にも併発していたことがわかり、染色体検査をすることになりました。
こどもの症状をネットで検索したところ、22番の微小欠失症候群なのではないかと思っています。
まだ確定が出ていないのですが、残念ながら偽陰性だったのかな、と思っています。今後どのような症状が出るのか不安ばかりの毎日です。
確定診断がでましたらまた、改めてご報告させていただきます。
*実際には症状はもっと詳しく書かれていますが、私のほうで問題ない範囲を出すために削除しています。
患者さんには、すぐにメッセージをして。
電話もして留守電に残しました。
数日後、患者さんから電話をいただきました。
いろんなお話をして。
うちでは検査の時に、偽陰性などについても説明しているので、こういうこともあるのかなとは思えたらしいのですが
もっと罵倒されてもいいのに
患者さんはかえって初めて偽陰性が出て一緒にショックを受けているわたしに気を使ってくださってました。
うちはまだ、基本の染色体の数の異常の検査の偽陰性は出てないのですが。
微細欠失(微小欠失)での偽陰性が最初とはびっくりしました。
ベリナタにもらった資料を見返すと、一番おおいこの微細欠失の偽陰性の頻度は1/5万と書かれてあって。
やっぱり、多くなるトリソミーとかは診断しやすいが
少なくなるものは診断できにくいのかな?とか
いろいろ考えてしまいました。
という話を正直にしました。
お子さんが退院したら会いに行きたい、っていったら
ご快諾いただきました。
そして、そのあとメールもいただきました。
先程お電話させていただきましたAです。
電話では話しているうちにどうしてもまだ泣いてしまってなかなかうまく伝えられないので、メールします。長くなってしまったらすみません。
先生のところで検査をし、もし確定診断までして陽性だったら、私たち夫婦はかなり高い確率で妊娠を諦める選択をしていたと思います。
でもあかちゃんはその検査をくぐり抜けて、私たちのもとに生まれて来ました。これは何か意味があることなんだろうかと思うこともあります。
もしあの時陽性だったら、今ここにいるあかちゃんには会えなかったのかもと考えると、偽陰性でむしろ良かったのでは、という思いもある一方、これから先どんな症状が出て来て、その度にこどもに辛い治療や手術などを経験させなければならないのかと思うと、いくら染色体異常が突然変異だからお母さんのせいじゃないですよ、と言ってもらっても、やはり健康に産んであげられなくて申し訳ないという気持ちはどうしても出てきてしまいます。
でも小さい身体でこどもは精一杯生きようとしています。これから起きるかどうかわからないことに怯えて暮らすよりも、今を一生懸命生きるしかないので、とりあえず心臓の手術をするために体重を増やすことを目標に頑張りたいと思います。
退院したら会いに来てくださると言っていただいて嬉しかったです。いつ退院できるかはまだ未定ですがお目にかかれる日が来たらいいな、と思います。
こどもの写真を添付します。毎日少しずつですが成長しているのを見るのは嬉しいし、やはり我が子はかわいいです。
この小さな手と足が、お腹の中でモニョモニョ動いていたのかと思うと、感慨深いです。頑張って生まれてきて良かった、とこどもが思えるようにしてあげたいと思っています。まだまだ気持ちが不安定ではありますが、精一杯頑張ります。
気持ちが不安定な中、こうしてメールをいただけて、こころに響くとともに
いろんな人たちの生涯を左右する大事な検査を提供していることに
身が引き締まる思いがしました。
どんなことがあっても
一度でもわたしの患者になった人たちには
いつまでもどんな手でも差し伸べられる医師でありたいと思います。
一期一会。
目の前の人ともう会えないと思って一瞬一瞬を大切に過ごす。
茶の湯のおもてなしの心をわたしは大事にしています。
そして
たとえ偽陰性であっても
こうして報告をくれて
わたしとつながっていてくれる患者さんとのこういう医師患者関係を作れることを
誇りに思っていいかな。
涙がでながらちょっとそう思いました。