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自閉症スペクトラム(ASD)の特徴と原因・接し方を解説

自分の子どもが自閉スペクトラム症(自閉症)の可能性があったら心配だと思うのは当然です。成長しても生きづらさを感じてしまいしなくてもいい苦労をしてしまうからです。しかし、現在は早い時期から療育をすることで負担を軽くすることができます。

そのために欠かせないのが早めに診察を受けることです。今回の記事では自閉スペクトラム障害(ASD)の特徴と、自閉症のお子さんとどう接したらいいのかについて解説をしています。気になっている方はぜひ最後までご覧ください。

自閉症スペクトラム症(ASD)の子どもの特徴

自閉症スペクトラム(ASD)には生まれつき持っている発達障害の一つです。原因ははっきりしていませんでしたが、現在は遺伝子によるものだと判明しています。

特徴としては主に以下の11個が挙げられます。

  • ・他人の目を見たり、アイコンタクトをとろうとしない。
  • ・生後9ヶ月まで名前を呼ばれても反応しない。
  • ・生後9ヶ月まで嬉しい、悲しい、怒った、驚いたなどの表情を見せない。
  • ・生後12ヶ月までパタパタなどの簡単な触れ合う遊びをしない。
  • ・生後12ヶ月まで身振りをほとんど、あるいは全く使わない(例:バイバイと手を振らない)。
  • ・生後15ヶ月まで他の人と好きなものを見せないなど興味あることを共有しない。
  • ・生後18ヶ月までに、何か面白いものを見せようとしない。
  • ・生後24ヶ月頃まで他人が傷ついたり動揺しているのに気づかない。
  • ・生後36ヶ月までに他の子どもに気づかれない、遊べない。
  • ・生後48ヶ月までに、先生やスーパーヒーローなど、他のものになりきって遊ばない。
  • ・生後60ヶ月まで歌わない、踊らない、演技をしない。

これらの特徴や偏りの強さによって生活に支障が出てしまい、社会的に福祉的なサポートを受ける必要も出てきます。以前は親の育て方が悪いと言われていましたけど、先天的な特製であるためご両親は悲観的になる必要はありません。早ければ1歳~1歳半頃から、特定のパターンを繰り返す行動や、興味のあることには没頭し興味のないことは無視するといった特徴が次第に目立つようになります。

なお、WHO(世界保健機関)が定めた国際疾病分類(ICD)やアメリカ精神医学会の精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM)では、自閉スペクトラム症(自閉症)アスペルガー症候群などとともに広汎性発達障害というカテゴリーに入れられていました。ところが2013年に自閉症という障害名は廃止され、自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害の障害名に統合されました。そのため自閉症という名称はなくなる可能性があります。しかし日本では現在も耳にする名称であり、また発達障害者支援法などの法律や文部科学省でも使用されている関係もあり、今後も残っていくかもしれません。

自閉症スペクトラム(ASD)の子どもに見られる行動

自閉症スペクトラム(ASD)の子どもにはよく見られる特徴的な行動があります。例えば、3歳で「ママ、ネンネ」「ブーブー、イタ」といった名詞と動詞のみを使う「二語文」を話すことです。他にも特徴的な子行動の一例がありますのでご覧ください。

  • 1.道順をよく覚える。(看板や行った場所などを目ざとく覚えている。しかし、他人に道を教えるのは苦手)
  • 2.換気扇、洗たく機、車のタイヤなど回転しているものをじっと見ていることが多い。
  • 3.物を綺麗に線状に並べる。(ミニカーやカードなど)
  • 4.なんでも一番でなければ気がすまない。
  • 5.数字や文字の形に興味があり、車などの乗り物の車種やポケモンの種類に詳しいなどといったカタログ的な知識がある。
  • 6.音(怒鳴る声、運動会のピストル)・風・臭いに敏感である。
  • 7.自己中心的な行動が多くマイペースである。
  • 8.仲間とのトラブルが多い。(衝動的に手が出る、言わなくてもいいことを言ってしまう)
  • 9.言葉を省略するとわからず具体的に話さないとわからない。(「あれ」、「それ」がわからない)
  • 10.自分の頭などを叩く自傷行為、他人に噛みつく
  • 11.叩く・蹴る・つねるなど他傷行為があること。
  • 12.三輪車がこげない。(両足を地面につけて進む)
  • 13.テレビのセリフを繰り返すなど独り言が多い。(ゲームをやっている時うるさい)
  • 14.冗談が通じない。

3歳くらいから6個以上当てはまると自閉スペクトラム症の可能性があるかもしれません。ただし、この行動をしているからといって自閉スペクトラム症と決まったわけではありません。もし疑われる部分があれば医師の診察を受けるようにしましょう。

発生頻度はどれくらいか

自閉症の子どもと女性の手を使った、世界の自閉症啓発デー、パズル、ジグソーのパターン

近年ではおよそ20~50人に1人が自閉スペクトラム症と診断されており、かなりの高確率といえるでしょう。また男の子のほうは割合は高く、女の子の約2~4倍と言われています。

ただ、女性の自閉スペクトラム症は知的障害や言語の遅れが目立たないケースがあり、社会的困難の現れが出てこないので過小評価されている可能性も考えられます。

自閉症スペクトラム(ASD)の原因と治療法

自閉症スペクトラムの原因は、9割が遺伝子の先天性異常によるものです。根本的な治療はできないので特徴を理解し、個々のこだわりや苦手分野を知って対策をしたり、早期から介入し療育をおこなったりするあげることで困りごとを改善させていきます。

例えば、同じ遊びをしているときに、無理に別の遊びをさせてから他の遊びに誘ってみたり、「ちゃんと座って」「そこに置いて」などの曖昧な表現は避けて「前を向いて座ろう」「机の上に置いて」など短くても具体的な言葉で伝えたりしてください。

自閉症スペクトラムの特徴は個人個人で変わってきます。ご両親が早めに理解して環境を整えてあげることが大切です。

大人の自閉症の特徴

大人の自閉症スペクトラムの特徴は、子どもの頃と変わりません。コミュニケーションを取るのが苦手です。相手との距離感がつかめず、不用意な発言をすることで困難を招くことがあります。

また、「言葉を文字通り解釈する」「想像力が乏しい」という特徴があり、社交辞令や冗談が通じないのも特徴です。そして子どもの自閉症スペクトラムと同じく曖昧言葉で言われると判断や対応が難しい場合があります。

もうひとつの特徴としては「強いこだわり・限られた興味」があることです。こだわりすぎてしまい仕事が遅くなったり、周りとトラブルを起こしたりします。

例えば、テレビゲームが趣味で寝食を忘れてしまい、仕事に行くのを忘れてしまうのも特性の一つです。こだわりが強すぎて仕事が片付かなかったり、融通がきかない奴と思われたりします。

二次的な症状

特徴が理解されずに過ごしていると職場などで孤立してしまうことが多く、二次的な症状を引き起こしてしまいます。よくあるのが、人間関係で孤立する状況などからくる「引きこもり」や「うつ病」です。

また、不安や恐怖に敏感なため、強いストレスを受けやすく、「パニック障害」や「対人恐怖症」などを伴うケースもあります。

力を発揮するためには

特性によって生きづらさを感じやすい自閉症スペクトラムの人が社会で過ごしやすくなるためには行動の改善が必要です。本人の思考や行動パターンを変え、ソーシャルスキルの習得をするのがいいでしょう。

不得手な場面での対処法を身につけることで、こだわりや興味あることにのめり込むという特徴がプラスに働きます。まずはご自分の特性をよく理解し、仕事や住居などの環境を整えてください。

これから就職を目指す人や、既に仕事をしている人のために、それぞれの目標に合った専門のグループケアなどを行っている医療機関があります。また、全国のハローワークや、障害者職業センター、発達障害者支援センターなどでは、発達障害の特性に合った職業相談・就職支援を行っています。そうしたグループに参加してみるとアドバイスや支援が受けられるでしょう。

自閉症スペクトラム(ASD)と発達障害・アスペルガー症候群との違い

発達障害の中に自閉症スペクトラムとアスペルガー症候群がありますので、基本的な違いはありません。アスペルガー症候群は対人関係の障害やパターン化した興味や活動という自閉症の特徴はありつつ、言葉の発達や知的発達に遅れが見られないことが特徴です。

他にも遠まわしな表現や比喩を使った表現、表情やしぐさから相手の感情を読み取ることに困難さがあるため、自分の話ばかりしてしまったり、相手が傷つく言葉を悪気なく伝えてしまったりするなどの困りごとがあると言われています。アスペルガー症候群は知的発達や言語発達の遅れがないため大人になるまで発見できないケースがあります。もし気になる方がいたら1人で悩まずに医師へ相談をしてみてください。

まとめ

眼鏡をかけた子どもに話しかける心理療法士

今回は自閉症スペクトラムの特徴について解説をしました。症状は早ければ1歳半から2~3歳で現われてくると言われていますけど、小さな子どもならやっていても不思議ではないことも多くあるため保護者の方だけで判定するのは困難です。もし他の子どもと比べて違和感を覚えるならば早めに診察を受けるのがいいでしょう。そのためには原因の9割と呼ばれる遺伝子の検査も必要になるかもしれません。大人の方で、いくつも特徴が当てはまると感じたら医療機関に相談してみてください。

東京の「ミネルバクリニック」は遺伝子検査を実施している医療機関です。そして遺伝のエキスパートである臨床遺伝専門医が在籍しております。もし遺伝子検査のことでご不明な点があれば遠慮なくミネルバクリニックまでご相談ください。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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